おしゃべり三人少女湖のひみつ (文学の扉 32)

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  • 金の星社
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784323009223

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  • 桂(けい)、五美(いつみ)、清美(きよみ)の仲良しおしゃべり三人組。ある日、山の中にある桂の叔父さんの別荘に流れ星を見にやってきました。途中で子猫のウーコを仲間にいれ、危険な崖の道を渡ってようやく湖のほとりに山荘にたどり着きます。
    濃い霧がたちこめる夜、三人を待ち受けていたのは世にも不思議なできごとでした…。(あらすじ)

    古い本ですが、むちゃくちゃ名作でした。舞台は完全に日本なんですけど、どこか外国の片田舎のようなイメージも湧いてきて、福永先生ならではの自然描写が秀逸です。できればずっと手元に置いておきたい。読んでいると山の中を探検したかのような錯覚に陥り、どこか自然の豊かなところで木を植えて暮らそうかななんて考えてしまう。
    福永マジックですね。この方の本を読んでいると、どうしても自然を愛する心が芽生えてしまうのです。

    作品を通して訴えていることはクレヨン王国シリーズと同じなのですが、こちらのほうが少しリアリティ強め(魚がしゃべったりはするのですが)。
    ファンタジー色を抑えることで、読者はより自分事として考えられるような気もします。
    美しかった自然がどんどん失われていった原因は、私たち人間が底なしの欲望を爆発させた結果です。
    確かに自然の中にいると汚れますし、危ないことも沢山あります。
    それでも、地球は人間だけのものではありません。人間の快適さだけを追求したところで、心に真の平和や幸せは訪れないのではないでしょうか。
    昭和後期から平成初期にかけての頃、あの頃はまだ不便さの残る世の中ではありましたが、今よりも少しだけ時の流れが遅く、世界が美しかったのです(福永先生著、『クレヨン王国ファンタジーポエム』の写真を見て下さい)。
    人間の文明は、あのくらいで止まっていたほうが良かったのかもしれないなどと思ってしまいます。
    新しいものを求めて進むことだけが正しいとは思えません。行き過ぎたら戻る、これだって大切なことではないでしょうか。”過ぎたるは猶及ばざるが如し”です。

    時を戻すことはできませんが、地球を再生することはきっとできる。
    自然を愛して助けることは、大人にも難しいことです。でも物語の中に「でも、こどもでしかできないことも、ありますよ」という魚のセリフがあります。
    福永先生は、心がまだ美しい子供達に託したのですね。
    私も、子供の頃にこの本に出会っておきたかった…。

    本当に良書なので、ぜひ多くの方に読んで欲しいと思います。
    絶版本で手に入れることは難しいかもしれませんが、公立図書館では取り寄せてもらえるので、探してみて下さい。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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