ハナミズキのみち

  • 金の星社
4.10
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本棚登録 : 154
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784323072586

感想・レビュー・書評

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  • 黒井健さんというお名前を聞くだけで、瞼の奥がじわんとしてくる。
    「ごんぎつね」や「てぶくろをかいに」の、あの優しい挿絵を描かれた方だ。
    そして作者の浅沼キミ子さんは、陸前高田市で東日本大震災に遭い、25歳の長男・健さんを亡くされた。
    本書は浅沼さんが実に2年もかけて必死に言葉を紡いだ一冊だ。
    浅沼さんにしろ黒井さんにしろ、どれほどの思いを込められたか、悲しみの中で逡巡する思いとどれだけ闘ったか、そんなことを思わずにいられない。
    作品はあくまでも美しい。
    言葉を紡ぐ、人々への思いを込めるとは、つまりこういうことなのだろう。

    ドキッとする津波の描写もあり、瓦礫の山と化した海辺もある。
    ふるさとの景色が、一変する。
    語り手は、亡くなった息子さんだ。
    そして、【みんなが あんぜんなところへ にげる目じるしに ハナミズキのみちを つくってね」という言葉へと続く。
    後書きによれば、会いたくて会いたくて泣いてばかりいた日々に、そういう息子さんの声が聞こえてきたのだという。

    読む目的はひとそれぞれで構わないが、この浅沼さんの気持ちだけは伝えたい。
    たくさん描かれた薄桃色のハナミズキの花と、裏表紙にまで丁寧に描かれた黒井健さんの絵が、さざなみのように胸に押し寄せる。
    約4分。3,4歳から。
    読みながら泣いても、これはもう仕方がないかな。

    • メイプルマフィンさん
      実家が陸前高田の隣市で、陸前高田は海水浴など、幼いころから何度も訪れたところでした。
      「ふるさとの景色が、一変する。」
      こんなことがあっ...
      実家が陸前高田の隣市で、陸前高田は海水浴など、幼いころから何度も訪れたところでした。
      「ふるさとの景色が、一変する。」
      こんなことがあっていいのかと、いまだにやるせない気持ちです。
      この絵本のことは今回初めて知りました。
      黒井健さんも大好きです。
      是非是非、読んでみたいと思います。
      2014/06/24
    • nejidonさん
      メイプルマフィンさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      幼い頃からの思い出の土地なのですね。
      やるせない気持ち、お察ししま...
      メイプルマフィンさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      幼い頃からの思い出の土地なのですね。
      やるせない気持ち、お察しします。
      想像をはるかに超えた被害の大きさに、どんなにか無念だったことでしょう。
      この作品は、美しいだけにいっそう、作者さんの悲しみの深さがストレートに伝わります。
      黒井健さんもお好きということで、何だか嬉しいです。
      どうぞ手に取ってくださいませ。
      2014/06/25
  • みじかい言葉でこんなに思いを紡げるのか

  • 被災した地でこれまで長い間築かれてきた人々の営みを決して忘れず、なくなった人の分まで、未来のいのちをまもるために生きていきたいです。

  • 黒井健さんの絵で手に取ったが、震災の津波で息子さんを亡くした方のお話でした。残された者は悲しいけれど、温かくなれるお話です。

  • 美しいふるさとの景色や大切な家族をさらった津波。
    でも家族の絆やかけがえのない思い出までさらうことはできない。
    息子さんを津波で亡くされた淺沼さんの心のうちが伝わってきて、胸を打たれました。
    息子さんと一緒につくっていくハナミズキのみちは命を守る道、希望の道として未来につながっていく。
    淺沼さんの強い意志をもちながら優しく語りかけるような文章と黒井さんの真に迫った悲しく美しい絵が
    印象的なこの絵本。忘れられない一冊になりそうです。

  • 絵が語っている。心に直接。津波のシーンも、ラストのシーンも。言葉にならない想いを。

  • 東日本大震災の津波で息子さんを亡くされた淺沼さんがご自身の体験をもとに2年の歳月をかけて描いた絵本。

    絵本を開くと静かな街並みと、青く穏やかな海が広がる。まるで、思い出を回想しながらやさしく息子さんに語りかけているように感じさせる。
    しかし、津波は一瞬にして何もかも奪ってしまう。
    後半、津波で命を亡くした'ぼく'がおかあさんに語りかける。

    「津波が来たとき、みんながあんぜんなところへにげるめじるしに、ハナミズキのみちをつくってね。
    町の人たちがもう二度と津波でかなしむことがないように、ぼくは、はなみずきといっしょに
    みんなを、まもっていきたいんだよ」と。
     
    「悲劇を二度と繰り返さないで」という思いが痛切に伝わってくる。
    また、黒井健さんの絵がやさしいタッチで描かれ、素敵だ。

  • 作者の淺沼ミキ子さん、絵を描いた黒井健さんは、一体どれほどの苦悩を経てこの絵本を描かれたことだろう。きっと、それは東日本大震災を直接に体験していない我々には想像もつかないような苦悩だっただろう。

    その苦悩を乗り越えて書かれた淺沼さんの文章は、繊細で、子どもたちにわかりやすく伝わるように配慮されていて、そして淺沼さんの想いも込められている。東日本大震災大震災関連の絵本はこれまでいくつか出版されているけれど、想いは込められていても文章は読みにくい、とい☆ものが多かった。淺沼さんの文章には「子どもたちに伝えたい、伝わって欲しい」という配慮が見て取れる。

    そして、黒井健さんの絵。淺沼さんの陸前高田の数々の想い出、津波、津波に破壊された街。美しい風景が1ページめくるだけで、恐ろしい破壊の絵に変わる。黒井健さんはこの絵をどのように描くか真っ向から向き合い、偽ることなく津波の恐ろしさ、津波がもたらす破壊を描ききっている。この絵を描くのにどれだけ悩みながら筆を取られただろう。どれだけ苦しみながら描かれたことだろう。

    そして、圧巻なのはこの津波と破壊の後の物語。淺沼さんが悲しみから立ち上がることができた、亡くなった息子さんへの想いと、物語をハナミズキを通して伝えることの希望、その希望がハナミズキとなって暗い海に降りそそぐ。この物語を黒井さんは見事に描いている。そこには、黒井さん自身もまた、自ら描いた津波の破壊の絵から自分自身を救い出したかのように見える。

    2人の作者の「伝えなければ」という渾身の想いが込められた絵本です。

  • 1分50秒☆見返しの奇跡の一本松は、福島の希望。春に花咲くハナミズキに思いを寄せて未来をみつめる。「いのちを守る木を植えたい」亡き息子とつながる母の願いは、尊い。

  • 読み聞かせ会、朗読会用に選びました。
    願いと祈りの込められた本です。
    黒井健さんの描く風景が大好きで子供の頃から読んでいましたが、津波の場面の絵に言葉を失います。青空に浮かぶ白い雲となだらかな緑の丘、というのが黒井さんの描く絵のイメージだったので、灰色一色の瓦礫の山の絵は胸に突き刺さりました。
    子どもたちがこの絵本にどんなことを感じてくれるのか、しっかり耳を傾けたいと思います。

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