よくわかる条例審査のポイント ~新版市町村条例クリニック~

  • ぎょうせい
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784324104231

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  • 元参議院法制局職員2名(うち1名は、参議院法制局長経験者)による、自治体職員向けの条例審査の指南本。第1編において条例に関する基本的な事項と条例起案の基本的心得を述べるとともに、第2編において実際に制定された市町村条例の中から現在は廃止された条例の中で興味深いものにして、かつ、立法政策的及び立法技術的に色々な問題点を含む市町村条例を取り上げて、立法政策的、立法技術的観点から各種の問題点を指摘し、場合によっては、単に問題点の指摘だけでなく、これらに対する「代案」を提示している。取り上げられる市町村条例は、「阿波谷町普通河川管理条例」、「相川町飲料容器の散乱防止に関する条例」など32条例である。ただし、自治体名は全て架空のものとなっている。
    この第2編が本書の大きな特色であり、他の法制執務解説書等には、ほとんど類例がないと思われる。一般的、概念的に述べられることが多い立法技術を、具体的、実践的な形で学ぶことができるものとなっている。著者が元参議院法制局職員であることから、国における法令審査はどのように行われているのかを垣間見ることができるという点でも有益な内容と思われる。
    本書では、実際の法令審査で参考になるポイントがいろいろと紹介されているが、「同じ事項を表す場合は、その表現を変えてはならない」、「法文、条文の記述は端的に、単刀直入に、必要最小限の表現でなされるべきであり、重複する表現、比ゆ的、暗喩的、隠喩的、暗示的な表現とか、意味深長な表現などは厳に慎むべき」といった指摘が特に心得ておくべき内容だと感じた。
    一方で、「猪野谷町空閑地等に繁茂した雑草類の除去に関する条例」と「翡翠谷市あき地等に係る雑草等の除去に関する条例」など、同じような主題の条例が複数取り上げられていたり、同じような指摘事項が繰り返されるということが散見されたので、条例の分野や指摘事項については、よりバリエーションがあった方がよかったと感じた。また、指摘の理由づけとして、「・・・が立法例である。」といった表現で片づけているものが多いことも気になった。さらに、P206に「「(以下次条第2項及び第15項において「事前協議」という。)」と表現するのである」とあり、同様の記述が他にもあったが、「(次条第2項及び第15項において「事前協議」という。)」が正しいと思われる。
    あと、「明徳村美しいむらづくり条例」における「美しいむらづくり」の「美しい」を、主観的な表現は用いるべきではないという観点から削除したり、「襟巻町自然生態系農業の推進に関する条例」における「自然生態系農業」を「有機農業」と言い換えるべきだと指摘されていて、確かに純粋な法制執務的観点からは正論だとは思うが、条例には、施策推進のシンボリックな意味やPR手段としての意味もあると思うので、そのようなある種の主観的であったり、特殊的な表現も一概に否定できないのではないかとも思った。

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