言語哲学大全2 意味と様相(上)

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  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326152278

感想・レビュー・書評

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  •  第1巻と変わらず読みやすい文体の第2巻。内容は、最新の(といっても1989年発行の本ですが…)理論の紹介というよりは、哲学史としての性格が強くなっているように感じました。既に多くの批判にさらされてきた論理実証主義という過去の哲学が、ウィトゲンシュタインからどのような着想を得て言語観を醸成し、そして、それを解体したクワインの言語観はどのようなものであったか。さらに推し進めて、クワインの理論における難点はどういったところか。といった議論が展開されます。
     現代の目線からすると、論理実証主義者についても、クワインについても、彼らの理論には各々の誤解が含まれているといわれますが、この本にはそういった誤解がなぜ生じたか、といったところにも都度言及があります。そのことがありがたい一方、初学者である私には混乱の種にもなってしまいました。

    私はミドリムシが動物なのか植物なのか考えるための参考のひとつとして、本書を読みました。感想、学べたことなどをnoteにまとめています。(https://note.com/midori_elena/n/n2eb4058fe0e5?magazine_key=mb1d3161dcc72

  • 必然性について、論理実証主義・規約主義・分析性との関連から論じる領域を担った巻。
    クワインについてかなり頁が割かれる

  • 論理実証主義者がウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を「誤読」することで生まれた意味の検証理論と、それがクワインの記念碑的論文「経験主義の二つのドグマ」によって批判されるまでの経緯が扱われている。

    論理実証主義の「意味の検証理論」は、基礎的言明への真理関数的分解と、基礎的言明と感覚的経験の照合によってそれぞれの言明の意味を定めるものである。クワインは、こうした意味の理論にひそんでいる「二つのドグマ」を批判する。

    分析命題と総合命題の区別という「第一のドグマ」に対するクワインの批判は、「意味」「分析性」「同義性」「必然性」といった一連の概念が、そのうちのどれかに依存しない限り定義できないというものであった。だがパトナムが述べたように、「クワインの議論は、「同義性」をどう定義してよいのか自分にはわからないと言っている以上を出ない」。他方、「第二のドグマ」、すなわち、単独で考えられた個別的言明についてその確証や反証が有意味に語ることができるという「還元主義」への批判は、全体論的な言語観を現代の言語哲学にもたらすことになった。いわゆる「デュエム=クワインテーゼ」は、カルナップが主張するような、言語そのものの変化(外部的変化)と一定の言語内での変化(内部的変化)をきっぱりと区別することはできないということを示すものである。

    本書の最後に取り上げられるのは、こうしたクワインの立場に対するC・ライトの批判だ。デュエムの議論は、個別の言明ごとにそれを確証・反証する経験的領域を指定することが不可能であることを示した。ただし、「経験の裁き」に直面してどの言明を保持しどの言明を捨て去るべきかを決定するのは、言明間の推論関係を手がかりにしてなされるほかない。ところがクワインのようなきわめてラディカルな全体論を採用するならば、そこで用いられる推論関係さえも全体論的な配慮の下で受け入れられるかどうかが決まることになる。ライトの議論は、こうしたクワインの全体論が無限後退に陥ることを示すものだった。著者はこうした議論に触れつつ、個別的言明に関してその真理性に寄与する言語的要因と事実的要因とをはっきりと分けることができないというクワインの主張から、分析的真理が存在しないということをただちに結論することはできないと論じている。

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著者プロフィール

飯田 隆(いいだ・たかし)
1948年北海道生まれ。主に言語と論理にかかわる問題を扱ってきた哲学者。東京大学大学院人文科学研究科博士課程退学。熊本大学、千葉大学、慶應義塾大学、日本大学文理学部で教え、現在は慶應義塾大学名誉教授。科学基礎論学会理事長と日本哲学会会長を務めた。著書に『言語哲学大全』(全4巻、勁草書房)、『ウィトゲンシュタイン――言語の限界』(講談社)、『新哲学対話』(筑摩書房)、『規則と意味のパラドックス』(ちくま学芸文庫)、『日本語と論理』(NHK出版新書)、『分析哲学 これからとこれまで』(勁草書房)、『虹と空の存在論』(ぷねうま舎)など、編著に『ウィトゲンシュタイン以後』(東京大学出版会)、『ウィトゲンシュタイン読本』(法政大学出版局)、『哲学の歴史11――論理・数学・言語』(中央公論新社)など多数。

「2022年 『不思議なテレポート・マシーンの話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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