ヒトは病気とともに進化した (シリーズ認知と文化 9)

制作 : 太田 博樹  長谷川 眞理子 
  • 勁草書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326199457

作品紹介・あらすじ

生活習慣病や統合失調症といった人類全体が共有する病気はなぜ存在するのだろうか。そうした病気に関わる遺伝子は進化の過程で淘汰されないのだろうか。従来の進化医学がダーウィンの自然淘汰や適応を重視するのに対し、本書では「生物進化の主要因は偶然である」という中立進化説を中心に、こうした多因子性の疾患について解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 進化医学、ダーウィン医学

    ■はじめに
    類書が適応進化を基礎に解説されてきたのと異なり、本書では中立進化のもとで説明可能な疾患リスク変異の人類集団における存在パターンの解説に重きを置く

    中立進化とは要するに、「生物進化の主たる要因は偶然である」という理論
     
    『病気はなぜ、あるのか』
    ・感染症に対する防御としての発熱
    ・抗生物質への細菌の抵抗性

    ■一章 進化医学の展望

    ○ヒトの進化の舞台としての環境
     適応進化環境
     EEA(Environment for Evolutionary Adaptendness)

    およそ180万年前から始まり1万2千年前に終わった更新世にホモ属の進化は起こっているので、EEAは更新世の環境であったに違いない。、9

    ある特定の現実の具体的な環境というよりは、そこがアフリカであれアジアであれ、「ヒトの進化史を通じて強く働いてきた重要な淘汰圧の集合」という概念的なもの

    およそ一万年前に濃厚と牧畜が出現するまで、すべてよ人々は狩猟採集民として暮らしてきた。ヒトの基本的な生活設計は狩猟と採集である。

    ○現代の狩猟採集民の暮らし p10
    ・うつ状態そのものは、誰にでも起こることであり、物事があまりうまくいかない時に、自分自身の活動レベルを低下させ、やり直しをはかるための適応であると考えられている

    ■4章 出アフリカはゲノムに何をもたらしたか

    ・ホモ・ハビリスを含むアフリカで誕生した原人段階の人類は、その後180万年前くらい前にアフリカの外へ出てユーラシア大陸に拡散した
    89

    ・ゲノム全体は現生人類がごく最近アフリカで誕生し世界各地へ拡散したというシナリオでなければ説明できないパターンを示している。
    94

    ■7章 ヒトらしさの起源

    ○疾患リスクアレルが広まるわけ
     193

    ・多因子疾患のほとんどは、その発症が40代以降のいわゆる成人病である。その発症時期は、少なくとも20世紀以前においては、すでに子育てをほぼ完了している年代に相当する。したがって、40代以降の世代が命を落としても、その後の子孫の生き残りにはそれほど強い影響は与えないと考えられるため、成人してから発症するような疾患のリスクを上昇させるアレルがあっても負の自然淘汰ははたらきにくいと考えられる。

  • 「ヒトはなぜ病気になるのか」――この問いをいとぐちに、医学に進化学の視点を取り入れた「進化医学」の最先端の知見を紹介する。

    編者:太田博樹・長谷川眞理子
    ジャンル 自然科学・建築
    ISBN 978-4-326-19945-7
    出版年月 2013年12月
    判型・ページ数 四六判・232ページ
    定価 本体2,700円+税

    生活習慣病や統合失調症といった人類全体が共有する病気はなぜ存在するのだろうか。そうした病気に関わる遺伝子は進化の過程で淘汰されないのだろうか。従来の進化医学がダウィンの自然淘汰や適応を重視するのに対し、本書では「生物進化の主要因は偶然である」という中立進化説を中心に、こうした多因子性の疾患について解説する。
    http://www.keisoshobo.co.jp/book/b146468.html

    【目次】
    はじめに

    第一章 進化医学の展望
     1 進化で医学を考えるとは
     2 適応と中立
     3 ヒトの進化史
     4 ヒトの進化の舞台としての環境
     5 現代社会とはどんな環境か?

    第二章 ダーウィンの視点を超えて
     1 ダーウィン医学
     2 DNAからみた進化のメカニズム
     3 分子進化の中立説
     4 ほぼ中立説
     5 病気と遺伝子
     6 病気の原因となる遺伝子の進化
     7 個人ゲノムにより何がわかるか

    第三章 ゲノム情報から疾患原因を見つける
     1 疾患の遺伝因子を探る
     2 遺伝マーカーの変遷
     3 ハプロタイプと連鎖不平衡マッピング
     4 国際ハップマップ計画
     5 ケース・コントロール関連検定
     6 ゲノムワイド関連解析の成果
     7 ヒトゲノム多様性研究
     8 オーダーメイド医療に向けて

    第四章 出アフリカはゲノムに何をもたらしたか
     1 ヒトの誕生
     2 ヒトの拡散とヒトゲノム多様性
     3 クローン病原因変異の進化

    第五章 疾患の進化的モデルとその意義
     1 適応と異なる理由
     2 有害な変異の蓄積
     3 集団のサイズ
     4 連鎖と組み換え
     5 遺伝性疾患
     6 多因子疾患
     7 遺伝と環境
     8 多因子疾患のモデル
     9 遺伝的浮動のモデル
     10 ポジショナルクローニング
     11 次世代シークエンサーの特徴
     12 疾患と進化

    第六章 古人骨から分かるヒトの病気の歴史
     1 古病理学という学問
     2 骨病変とは何か?
     3 古人骨から見えてくるもの

    第七章 ヒトらしさの起源
     1 ヒトらしさの起源と精神疾患
     2 適応不全による説明
     3 もう一つの説明

    おわりに
    引用・参考文献
    索引

  • 斜め読み
    GWASのトピックとかも入っててなかなか中身がある。ただ、文字が中心で理解に時間がかかる。羊土社みたいに図表だらけで出してくれるといいんだけど。。

  • 2015/12/16

  • 遺伝子の変異が人類に広まるのは、その変異が生存上有利な場合だけではなく、有利ではないが致命的でもない場合も多い。ビタミン C 生産能力の喪失が後者の一例である。鎌状赤血球のように微妙なバランスの元に残っている変異も含み、進化と変異について広く教えてくれる。
    人類の遺伝子の多様性の規模が、一万人でしかないということには驚かされた。アフリカで現生人類が生まれてから、そこを離れた集団が「ボトルネック効果」 (同じ概念が「びん首効果」と書かれた章もあるのは、不統一でよくない) のために小さいのはわかる。しかし、アフリカに残った集団も含めての値と読め、そこには説明が欲しかった。
    古人骨から人類の病気の歴史を知る章は、この本の他の部分からはやや離れて感じたが、内容は面白かった。

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