知ることの力―心情主義の道徳教育を超えて (教育思想双書)

著者 :
  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326298747

作品紹介・あらすじ

心や感情にはたらきかける道徳教育はどのような問題を抱えているのか?ポストモダン状況が疎んじてきた「知の力」を再生させ、知と行為を結びつける新たな道徳教育論を構想する。

感想・レビュー・書評

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  •  松下は、知ることと行うことのギャップを「知行不一致現象」と呼ぶ。この認識と行為を一致させる架け橋として心を位置づけ育もうとする「心情主義的道徳教育論」を否定する。この現象をロケット本体(認識)に燃料(心的エネルギー)を補充することによって、飛ぶ(行為)ことができるというロケットモデルと名づけた。知行不一致現象の原因は、道徳原理の理解 が未熟なためや理解の内部・外部に問題があるから(pp.81-120)であって、「認識や知から切り離された情意や感情なるものの欠如によって生じるのではない」(p.3)のである。そして理解を深める重要性を説き、「理解のどこにどのような問題点があるのかを自覚的に洗い出し、その問題の解決をめざしてことさらに行われる道徳教育が必要」(p.126)であるという。最後に心情主義的道徳教育論の問題点を挙げている。特に注目するのは、「知行不一致現象の拡大再生産」と「<他者>の声の抹殺」、「道徳の衰弱あるいは法の専制」である。「知行不一致現象の拡大再生産」とは、道徳原理を理解しようとする者と志向しない者がいる。だが心情主義的道徳教育論はこのような状態に「積極的に介入し、理解を志向している者に対しても理解を放棄するように働きかける」(p.151) のである。その結果として、「判断や認知と行為の乖離はますます生じやすくなる」(p.151) ことである。「<他者>の声の抹殺」とは、知行不一致現象は「生活形式を変容させ、社会をよりよきものへと変革するためには、むしろ必要」(p.158) なものであるが、「心情主義的道徳教育論は、知行不一致現象の克服ばかりに躍起になり、そうした<他者>の声を無視したり圧殺することによって、社会変革の芽を摘みとり、問題をはらんだ既存のシステムを擁護してしまう」(p.159)。「道徳の衰弱あるいは法の専制」とは、心情主義的道徳教育が威力を強めた場合に道徳原理の伝達もうまくいかなくなり、秩序を維持できなくなる。そうした場合には賞罰の強化や法の成立をすることになってしまう。
     大げさだと感じるだろうか。最初読んだときは大げさだと思ったが、実際モラルですんでいたものが条例化された例が多々ある…。

    ちょっと読みにくいけど、いい本。

    (まっちー)

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