国際政治の理論 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 3)

  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326301607

作品紹介・あらすじ

パラダイムシフトをもたらした名著をついに完訳。国と国との関係を決めるのは何か?政治家の手腕か?国家の体制か?国際政治のダイナミクスを科学的に考えぬき、国際システムの構造に光をあてる。

感想・レビュー・書評

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  • H. ハーツ「経験から引き出されたものは、再び経験によって無効にされうる」
    カント「経験的でかつ同時に絶対に真実なものはない」p6

    法則とは「観察される事実」であり、理論とは「それらを説明するために導入される推測の過程」である。p7

    アインシュタイン「理論は経験によって検証することはできるが、経験から理論を構築することはできない」p9
    →法則は発見されるものであるが理論は構築されるものである。

    「組織化された複雑性」p16

    個人または国家レベルに原因を求める国際政治の理論は、還元主義的である。他方、国際システムのレベルでも原因が作用しているととらえる理論は、体系的である。p23

    ユニットレベルとシステムレベルの両方を扱えるアプローチならば、システムで起こる変化と持続の両方に対処できることになる。しかも、そうしたアプローチは、変数を拡散したり範疇を増やすことなく、そうできるのである。p89

    国内政治と国際政治、企業と市場のアナロジー p94

    M.P. フォレット「A自身の活動が、彼の活動の原因となっている刺激に入り込む」。これは、結果が原因となる、おなじみの構造機能主義の論理の一例である。p98

    異なる「原因」が同じ結果を生むこともあれば、同じ「原因」が異なる結果を生むこともある。ある領域がどのように組織化されているかを知らなければ、原因と結果を区別することはできない。p102

    国家の差異は機能ではなく、能力においてである。p128

    構造はユニット間の能力分布によって定義される。アナーキー・システムにおいてもハイラーキー・システムにおいても、能力分布の変化はシステムの変化である。p133

    「小さな決定の専制」p146
    →強力な構造的影響に対する唯一の治療薬が構造的変化であるという教訓は、繰り返すに耐えるのである。

    世界政府が誕生すると予想することは、世界的内戦へ準備を整えよという招待状である。p148

    国内政治は権威、行政、法律の領域である。国際政治はパワー、闘争、妥協の領域である。国内領域がハイラーキカル、垂直的、中央集権的、非均一的、一方向的、人為的といった言葉で表現できるのに対し、国際領域はアナーキカル、水平的、非中央集権的、均一的、非方向的、相互順応的といった言葉で表現できる。p149

    国際政治の中のハイラーキカルな要素は主権の行使を制限し抑制するが、それはアナーキーというより大きなシステムによって強く条件付けられているのである。p152

    S.F.ネイデル「行動から抽象化された秩序が、行動に指標を与えることはできない」p159

    「敏感性としての相互依存」p184 ↔「相互脆弱性としての相互依存」p189

    「軍事的敗北という地獄を避けるためには、国家は悪魔とでも手を結ぶ」p219

    W・チャーチル「ヒトラーが地獄を侵略したならば、私は下院で、悪魔について少しは好意的に言及することになろう」
    (ドイツがソ連へ侵攻する前夜)p219

    第二次世界大戦以降、われわれがみてきたのは、パワーの政治的組織化と浸透であって、核の手詰まりにより軍事力が無力化されたことではない。p248

    他者を政治的に支配できないことは、軍事的な弱さを示すものではない。p250

    他者が自分に与える影響よりも、自分が他者にあたえる影響のほうが大きければ、その自分という行為主体にはパワーがある、という古くて単純な概念を提案したい。p253

    ダンカンとシュノーアーは、パワーを「他者が機能する条件を定める活動の束もしくは場所の能力」として、生態学的に定義した。p257

    M・オルソン「弱者が強者を『搾取する』傾向」という命題 p276

    4つの「P」問題として貧困(poverty)、人口(population)、公害(pollution)、拡散(proliferation) p279

    ウォルツは国際政治を「政治のなかでもっとも政治的な政治」と呼んだ。p281

    ユニットレベルから区別される構造としての国際システムの自立性を、徹底した一貫性と非妥協性で謳ったウォルツの理論は、リアリズム-リベラリズム、ペシミズム-オプティミズム、対立的-平和的といった定番の対立軸からは雛れたところで、社会科学がめざす者が取り組まざるをえない理論的課題や方法論的問題を国際政治学に呈示している。p282

  • 3990円購入2010-06-09

  • [枠の話]既存の国際政治学の見方に一石を投じ、その学問のあり方を変えるまでに至ったとされる一冊。理論としての国際政治を明確に打ち出し、ネオ・リアリズムとも呼ばれる学派の形成に一役買ったことでも知られています。著者は、アメリカ政治学会会長を務めたことでも知られるケネス・ウォルツ。訳者は、早稲田大学政治経済学術院で教授を務めた河野勝と安全保障関係に関する著作を多数世に送り出している岡垣知子。原題は、『Theory of International Politics』。


    はっきり言って前半部はとても難解でしたが、本書の重要部とも言える国際政治の構造に関する理論については、後の議論に大きな影響と反響をもたらしたこともあり、国際政治学に興味のある方にとっては読んでおいて損はないかと。著者が示した理論(それが決定的に正しいかどうかは誰にもわからないのではないかと邪推しますが)をいかに応用していくかというところに、本書の醍醐味があるような気がしました。


    〜国際政治の状況を国家の国内的性質から推論することはできないし、また国家の外交政策や対外行動の総和によって国際政治の理解に到達することはできないのである。〜

    読後の疲労感がとてつもなかった☆5つ

  • キッシンジャーは国際秩序がすべての大国によって受け入れられていれば政党であり、一国以上の大国がそれを拒否する場合は革命的であると定義した。
    国際政治の理論は、なぜ戦争が繰り返されるのかを説明し、戦争が生じやすくなったり生じにくくなる条件を提示するものである。しかし、それは特定の戦争が起こることを予測するものではない。
    国際政治の体系的理論は国家レベルではなく、国際レベルで佐藤している力を扱うものである。
    国際政治の理論は、国際政治についての物語と同じく、各時代の大国の観点から書かれる。
    国際政治理論は経済学、社会学、文化人類学、そのほかの非政治的分野の理論の確証を通して信頼性を獲得できる。アナーキーにおいては安全保障が最高次の目標。
    勢力均衡理論は、国際政治を競争的な領域として描く。

  • ネオリアリズムを構築したケネス・ウォルツによる名著
    国際システムが無政府的であることが国家を権力闘争に向かわせる要因だとする。そして、二極状態こそが国際システムを安定させる構造であることを解く。
    この理論はあくまでも力の分布のみに着目する理論であるので、他の理論によってその説明の浅さはカバーされるべきである。
    あと翻訳が遅すぎる。

  •  とても強固である。この一言に尽きる。
    と言ってもこれは装丁の話ではなく、その理論としての強度が尋常ではないという意味で、そう言える。
     本書は80年代のアメリカにおける国際政治学を席捲した。その内容は、国際政治を分析する際には構造を見るべきであり、その構造とは即ちパワーバランスである、また国際システムとはアナーキーであるために自助的なシステムであり、そのために国家はパワーバランスについて注視して対応する、というのが凡そであるから、そこまで極端なことを言っているわけではない。
     しかしその理屈も、国内の事情を勘案せずに分析されるとなると、それは極端であると、非難の対象となる。その上彼は、ミクロ経済の議論に則り、自身の理論が現実の結果と異なることも大した問題でない、とする。そうした自己擁護のために、全九章のうちの前半四章を費やしているのだから、そうそう論破できるものではない。是非ともこのロジックに舌を巻いて欲しい。
     そうやって方々から叩かれたせいか、同時に誤解されることも多い。決して彼は国内政治が不在であるかのように述べたわけではない。パワー以外の要素が存在しないとも言っているわけではない。これはあくまで国際政治において、体系的に論ずるための理念型としての理論の提示であり、何より大事なのは、分析の際にどのレベルで物を語るのか、そしてそのレベルで物を語った際にはどういうことが言えるのか、という議論の厳密化と細分化なのだとウォルツは示しているのだろう。なお、アメリカにおいては、この後10年はこの土台の上での議論が続いたが、その事実がまた強固さを示しているのだと思う。

  • 僕には少し難しかった。分かったことは、国際政治を見るときは幾つかの層(レイヤー)に分けて考えることが重要だということ。
    独学で読むにはあまり向かないと思う。誰か指導者や友人を見つけて、一緒にレジュメを作成しながら読み解くような本。

  • ネオ・リアリストの大家であるウォルツの翻訳本です。
    構造決定論的であるといわれているウォルツですが、
    思ったより、そこまで単純化されていなかった。

    一言でいえば、国家の能力によって、構造が構築され、それによって国家行動に制限を加えるということが書かれていました。

    冷戦の時代に書かれたこの本が、当時に大きな影響を及ぼしたのは想像に難くない。

    良い本です。

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著者プロフィール

ケネス・ウォルツ(Kenneth N. Waltz)

1924年生まれ。コロンビア大学でPh.D.を取得。87~88年にはアメリカ政治学会会長。カルフォルニア大学バークレー校で長く教授を務めた。専門は国際政治学。2013年逝去。主著:『国際政治の理論』(勁草書房, 2010年), 『人間・国家・戦争――国際政治の3つのイメージ』(勁草書房, 2013年), Realism and International Politics (Routledge, 2008) など。

「2017年 『核兵器の拡散 終わりなき論争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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