〈危機の領域〉: 非ゼロリスク社会における責任と納得 (けいそうブックス)

著者 :
  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326550814

作品紹介・あらすじ

リスクや不確実性から自由になりたいと私たちは願っている。しかし現実はそうではない。ではどうすれば良いのか。今よりも少し根気強く、辛抱強くリスクや不確実性に向き合い、さらには危機対応の不幸な失敗さえも納得して受け入れていくために、専門家、行政、市民を含めた多様な人間が、かなりの忍耐と寛容をもって多様な意見を交換する熟議の場が必要になってくる。そのような場所こそが、本書でいう〈危機の領域〉の到着地点となりそうである。

感想・レビュー・書評

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  • 何事も白黒をはっきりさせたいのは人情ではあるが、そううまくはいかない。なので、白と黒の間のグレーの領域をどのように扱っていったらよいかということを丁寧に論じている。その姿勢は素晴らしいと思うが、それにしても専門外のところにかなり大胆に踏み込んで論じているのがすごいと思う。

  • 18/09/23読了
    無謬性から離れられるか。
    仕方ないと関係者が思えるまで熟議できるか。
    時間的整合性をもてるか。

    頭の隅に常に意識しておきたいこと。

    以下は抜粋。

    ミルの自由論、異端の意見でなく正統の意見にこそ、言論の自由が必要。活発な論争がないと、正統な意見の根拠も、その意味も忘れ去られてしまう。

    不確実性下の意思決定は、マックス・ミン基準に従う。各プロジェクトのシナリオ別期待利得のうち、最も低い評価をプロジェクトの比較に使う。最悪を想定した期待利得の中でもっとも高い期待利得のプロジェクトを選択する。

    熟議を通じて成した危機対応に対する意思決定は、その危機対応が万が一に失敗したとしても、各人が引き受けた責任の範囲で失敗を真剣に反省し、納得して受け入れることが期待できる。

    危機の領域においては市場メカニズムのように素敵領域を最優先とするリベラルなアプローチよりも、多様な人々が対等の立場で参加した熟議を通じて公的領域で課題を解決するリパブリカンのアプローチの方が随分とマシなように思えたのである。

  • リスクの高さとそれに見合う対策をどう測り施策に盛り込むのか。
    命に関わる領域もあり、また、測定には個人の感覚が入る余地もあり、大変難しいことと感じた。

  • 東2法経図・6F開架 301A/Sa25k//K

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著者プロフィール

1960年愛知県生まれ。1983年京都大学経済学部卒業。1992年マサチューセッツ工科大学経済学部博士課程修了(Ph.D.)。住友信託銀行調査部、ブリティッシュコロンビア大学経済学部助教授、京都大学経済学部助教授、大阪大学経済学研究科助教授、一橋大学経済学研究科教授などを経て、2019年より名古屋大学大学院経済学研究科教授。
日本経済学会・石川賞(2007年)、全国銀行学術研究振興財団賞(2010年)、紫綬褒章(2014年春)。

著書
『新しいマクロ経済学』(有斐閣、1996年、新版2006年)
『金融技術の考え方・使い方』(有斐閣、2000年、日経・経済図書文化賞)
『資産価値とマクロ経済』(日本経済新聞出版社、2007年、毎日新聞社エコノミスト賞)
『原発危機の経済学』(日本評論社、2011年、石橋湛山賞)
『震災復興の政治経済学』(日本評論社、2015年)
『危機の領域』(勁草書房、2018年)
Strong Money Demand in Financing War and Peace(Springer, 2021年)他

「2023年 『財政規律とマクロ経済』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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