信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズム

  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326651207

作品紹介・あらすじ

人間の社会はにどのようなで対処しているのか。信頼を機能分析の土俵に乗せる。

感想・レビュー・書評

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  • この世界では自分も他人も自由に行動するため、あらゆる可能性がある。約束をしても守ってくれないかもしれない。自分も他人も自由気ままに生きている。とても複雑。▼「こうしなさい」というルールや慣習によって、こうした複雑さを減らすことができる。君の役割はこれ、私の役割はこれ。役割に沿って行為を選択。意思決定で一定のものを選び、他のものを排除する。無数の可能性を秩序化。こうして、見知らぬ人が作ったものでも食べることができる。他人が運転する車でも安心できる。見知らぬ相手でも取引できる。人(人格・人柄)への信頼ではなく、ルール・法(行為の選択の範囲を限定する構造)への信頼が、現代社会を支えている。人間の共同生活の秩序を支えている。▼選択の可能性が多く、複雑で不確実であるがゆえに、行為選択の範囲を限定する構造が生まれる。Luhmann, 1973

    機械は部品などそれ自身の要素を自ら生産しない。しかし、生物は細胞(要素)を生産し続けることによって生き続ける。自分で自分自身をつくりだすというサイクルを反復することで、自律的に秩序が生成される。▼社会も同じように、行為(要素)が生まれ続けることで、その全体を維持している。個別の要素(行為)が先にあって、それが集まって繋がって全体(社会)になるのではなく、全体(社会)が先にあって、その枠組みのなかで個別の要素(行為)が可能になるのでもない。Luhmann, 1984

  • 系・院推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F開架
    【請求記号】 361.3||LU
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/162020

  • 【要約】


    【ノート】

  • 機能主義的システム論に依拠して「信頼」を論じる。複雑な世界をシステムとして成立させるためには、複雑性を低減させるしくみが信頼。選択性を貨幣・真理・権力で担保することで、リスクをコントロールできる。

    単語の1対1対応を良しとするような訳文。あとがきでは、重要な語が文脈に応じて異なった訳語となり統一できなかったことをもって不完全としており、角カッコは翻訳者による元文にない文章か?論理的なのだろうけれど、読みにくかったです。

  • 個人的には信頼による複雑性の縮減よりは、社会の複雑性の受容の方が容易かなとおもった。
    ルーマンにしては珍しくイデオロギー的な色が強いと感じたのは個人的な趣味の問題かもしれない。
    ただし、信頼のシステムは現存する事は確かである。

  • 訳文が現代思想風で難しく、170ページほどの本文なのに、読むのに骨が折れた。サンクションとかアドホックなどの語は日本語にしてもいいんじゃないかと思う。内容は環境の複雑さを単純化するものとしての信頼の機能を論じており、環境の複雑さ(たとえば明日みんなが銀行にいって預金を下ろそうとするかもしれない等、この点はリップマンの『世論』におけるステレオタイプの「経済性」の前提と同じ)と複雑さを単純化したものとしてのシステム、時間の継続と変化、慣れ親しみなどが準備として述べられ、信頼が複雑さを単純にするとして、以後の考察がなされる。信頼では情報が過剰利用されること、罰の可能性があることが前提となる。「過剰利用」については、たとえば、政治家は彼を信頼する理由が詳細に説明されるほど、彼に対する信頼は不要になり、ほかの誰でもよくなるのである。つまり、政治家は「何が起こるか分からんが、この人ならやるだろう」という能力の点で信頼されているのだ。いちいち、ああなったら、この人はこうするだろうとか考えていたら信ずるべきかどうかを判定できないのである。この点は中世神学の「不条理ゆえに信す」(テルトゥリアヌス)とも通じるんじゃないかと思う。興味深かったのは、第6章の人格的信頼(リスキーな前払いとしての信頼)と第7章(真理・愛・権力・貨幣などのメディアを媒介にした権威)のシステム信頼の部分である。人格的な信頼とちがい、システム信頼は学習しやすいが、コントロールはしにくい。また、システム信頼においては信頼する者が個別化され、一般化され、システムが裏切っても、そう簡単に崩壊しないものになる(なんかマルクスの「疎外」みたいだ)。第9章の信頼の信頼も面白い。とくに他者が自分と同じやりかたで第三者を信頼しているだろうということ、これがシステム信頼の基礎なのだという。信頼と不信は相互におぎないあうもので、信頼が不信になったり、頻度は少ないものの、不信が信頼にかわることもあり、また組織では「なれ合い」を防ぐために不信を利用したり、組織の内外で信頼と不信が異なることなどを述べている。たとえば、仕事では信頼するが、金銭問題では信頼しないなど。この辺りは荀子の「信ずるべきを信ずるは信なり、疑うべきを疑うもまた信なり」を思い出した。信頼の基礎にある感情についても論じていて、感情が転用不能なことが述べられる。また、信頼が象徴として機能していて、ちょっとしたできごとで一気に崩壊することなども語られている。
    以上、抽象的な考察ではあるが、信頼のさまざまな側面の機能を分析していて、信頼についていろいろな問題を考えさせられる書物である。

  • 思ったよりも難しくない

  • さぞ難解かと思っていたら、訳注が理解を補ってくれて、とても面白く読めた。なるほどなーと思わされることも多く、非常に興味深く読んだ。

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著者プロフィール

ニクラス・ルーマン(Niklas Luhmann) 
ビーレフェルト大学名誉教授。1968年から1993年までビーレフェルト大学社会学部教授を務めた。著書は『社会システム』の他、『社会の……』や『社会構造とゼマンティク』のシリーズなど多数。1927年-1998年。


「2020年 『社会システム 下 或る普遍的理論の要綱』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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