街の人生

著者 :
  • 勁草書房
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本棚登録 : 675
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326653874

作品紹介・あらすじ

本書には5名のライフヒストリーが収録されています。子どものころに南米から日本に移住し、やがてゲイとしての自分に気づいた人。夜の世界でなんとか自分の生きる場所を切り開いてきた「ニューハーフ」。満州で生まれ、波瀾万丈の人生の果てに大阪でホームレスをしていた男性。さまざまな人たちが語る、「普通の人生」の物語です。

感想・レビュー・書評

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  • 150人のロングインタビューで「誰も最後まで読み通せない本」を作る | 文春オンライン
    https://bunshun.jp/articles/-/40057

    筑摩書房 岸政彦監修 『東京の生活史』プロジェクト
    https://www.chikumashobo.co.jp/special/tokyo_project/

    岸政彦「街の人生」書評 優しく聞きとる、隣人の生活史|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11614276

    街の人生 - 株式会社 勁草書房
    https://www.keisoshobo.co.jp/book/b177177.html

  • 様々な「街の人々」にそれまでの人生をインタビューした一冊です。
    マイノリティーの人々の人生色とりどり読めてとても興味深いです。
    誰の人生も一冊の本に等しいわけですが、この人たちの人生に比べたら僕は大分薄い一冊になりそうです。

  • 2018年11月29日に紹介されました!

  • 前知識なく読みました。

    冒頭の一文、
    「我々が空想で描いて見る世界よりも、隠れた現実の方が遥かに物深い(柳田国男)」を踏まえて読み続けました。

    ゲイ、ニューハーフ、摂食障害、シングルマザーの風俗嬢、元ホームレスの人生の記録が、インタビュー方式で淡々と記されていました。
    生きるためには都度選択肢を選び、そしてまた選びを綴ること。それが一つの命の灯火としてあり続けるのだと感じました。

    私は生き様という言葉が大嫌いです(他人が使うべきではない言葉だと思う)
    人には奥深さがあり、人の人生は言葉ひとつで語れるものじゃないなと思いました。

  • インタビューをそのまま活字にした本って「ライフヒストリー」と言うんだっけ(ちょっと違うと思うが)。この本は5、6人のそれまでの人生の「一部」をインタビューして話してもらったものの記録。中南米出身の日系ゲイ、ニューハーフ、摂食障害を持った人、シングルマザーでセックスワークしてる人、野宿者、覚えている限りでは対象者はそんなところか。

    最初の2人はセクマイ系の人だった。読んでると「ここ、もうちょっとツッコミが足らない」と思うところが何ヶ所もあった。けど、他の人のインタビューではそんなことは感じない。セクマイ系だけにそう感じてしまうのは、わたしがセクマイ系の定義にどうしても拘ってしまうためだ(たとえば「性自認」と「性的指向」は別物であるとか)。もちろんその定義から外れていたって全然構わないと自分でも思っている。「性転換した理由は」って聞かれて「男の身体であることは耐えられない」というのと「男性と同性同士だったら付き合える数が少ないから女になりたかった」というのは多分その人の中では両立してる。けど、わたしは、わたしが自分の目の前でそう言われたらきっと「それはあなたの中で本当に両立してるんですね」って改めて問いただしちゃうだろうなと。問いただして「そうだ」と言われたら改めて納得するんだろうなと。でもそのことに気が付いて、わたしは却って落ち込んでいる。「定義に拘ってないつもりが拘ってるじゃん」って。「定義に当てはめるつもりはないのに当てはめているのは自分じゃん」って。そこから脱却するためにはどうすればいいのだろう。


    まぁそれはさておいて、この中で一番読み応えがあったのは、電話を通してインタビューしたという、シングルマザーでセックスワーカーをしている人の話だった。インタビューする人もされる人も1回も直接会ったことはない。インタビューから10年ほど経っているが、今、どこで何をしているかは分からない。インタビュー中にした話も、他の人には誰にも話したことがなく、きっと見ず知らずの人だったから話せたんだろうという。そういう状況が読んでいるわたしにとってインタビュワーと一緒に「覗き見」している感覚になったから話が印象深いのか。この人は生活保護を受けながら3人の子ども(すべて男)を育てており、生活保護や児童手当だけでは足りないからセックスワークをしているとのことだった。なにより、一度止めたのにまた復帰したのは一番上の子どもが大学進学するからという理由だそうだ。生活保護では当然のことながら子どもを大学になんてやれないし、18歳過ぎたら逆に児童手当が打ち切られるんだからね。別れた元旦那は事業に失敗したりギャンブル依存になってたりしてお金を渡すどころか逆にお金をせびりに来る。ので、住所、電話番号その他一切を変えたという。ただ、これほどの内容なのに、インタビューは全然暗くない。淡々と話しているような感じ。あれから10年ほど経っているが、この人は今、どういう暮らしをしてるんだろうと気になる。

    摂食障害の人の話で一番印象に残ったのは「苦しみは回復の途中にはないと思っている」というところ。摂食障害を克服するためには苦しまなければならない、苦しみは、摂食障害を克服するためだということが世間では「肯定的にとらえられている」というが、この人はそうじゃないと思っているとのこと。でも確かにうつ病に対して「この苦しみは、うつ病を治すためのものだ。だから、今、苦しんでるのも無駄じゃない」とは言わないよね。うつ病にとって「苦しみ」は病気の症状であり、それは完全に「無駄」なものだ(寛解したあとで「あれは自分にとって無駄な経験ではなかった」と感じる人もいるだろうが、でも自分の人生を無駄に痛めつけているという点では苦しみなんかない方がいいとわたしは思う。苦しみはその人のその後の人生を完全に曲げる)。うつ病は「苦しんだら回復するよ」と言われないのに、なぜ摂食障害だとそれが成り立ってしまうのだろう?あとその人は「摂食障害が治った」と言う表現も違和感があるという。読んでてきっと「支援者」と「当事者」の間に感覚の齟齬があるんだろうなあと思った。これはね、摂食障害の分野だけに限らずね。ありがちな話なんだろうけど。

  • ふむ

  • 【やっぱね、人ってね人間てね、一人では絶対生きていけん】(文中より引用)

    立場も環境もまったく異なる5人のライフストーリーを収録した一冊。著者は、社会学を専攻している岸政彦。

    語りを編集することなく、読みづらさが残ったとしてもそのまま収録している点が特徴的。その分本当に語りかけられているかのような錯覚を覚え、それぞれの人生がより生々しく伝わってくるような気がしました。

    読後にふと散歩に出かけたくなるような作品でした☆5つ

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/688267

  • 柳田国男の[山の人生]になぞらえて、外国籍のゲイ、ニューハーフ、摂食障害の女性、シングルマザーの風俗嬢、ホームレスの老人のインタビューのルポ。一般人とはかなりかけ離れている人生だが、読んでいると引き込まれていく。共感というか、ふーんそうなんだという感じ。

  • この本は、社会学者の岸政彦先生とその学生が聞き取ったインタビュー集です。日系南米人のゲイ、ニューハーフ、摂食障害の当事者、シングルマザーの風俗嬢、元ホームレスの、人生の記録が収録されています。私はインタビューの仕事をしていて、何か偉業を成し遂げた人にだけフォーカスすることにジレンマを感じていました。電車に乗り合わせた人がなぜか気になって、その人の人生を想像することがあります。ただ、その人に実際に話を聞けるかと言えば、それはすごく難しい。そういったことを読みたい人がどれだけいるのだろうかとも。この本は、きれいに文章を整えるのではなくありのままの語りを載せているので、一言一言がリアルです。だからこそ、残る。インタビューはその人のすべてを知れるわけではないけれど、少しだけ覗き見したような気持ちになる。岸先生は「『断片の断片』をなるべくそのまま記録することで、結果的にいちばん『人生の形に近いもの』を世の中に残そうと思いました」と書かれていました。フィールドワークとして沖縄や被差別部落で聞き取りをしている岸先生の人柄も感じさせる1冊です。

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著者プロフィール

岸政彦(きし・まさひこ)
1967年生まれ。社会学者・作家。京都大学大学院文学研究科教授。主な著作に『同化と他者化』(ナカニシヤ出版、2013年)、『街の人生』(勁草書房、2014年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015年、紀伊國屋じんぶん大賞2016)、『質的社会調査の方法』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣、2016年)、『ビニール傘』(新潮社、2017年)、『マンゴーと手榴弾』(勁草書房、2018年)、『図書室』(新潮社、2019年)、『地元を生きる』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版、2020年)、『大阪』(柴崎友香と共著、河出書房新社、2021年)、『リリアン』(新潮社、2021年、第38回織田作之助賞)、『東京の生活史』(編著、筑摩書房、2021年、紀伊國屋じんぶん大賞2022、第76回毎日出版文化賞)、『生活史論集』(編著、ナカニシヤ出版、2022年)、『沖縄の生活史』(石原昌家と監修、沖縄タイムス社編、みすず書房、2023年)、『にがにが日記』(新潮社、2023)など。

「2023年 『大阪の生活史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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