詩集 若葉のうた

著者 :
  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326850174

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  • 毎月掲載していたという、その年ごとの孫娘の成長を詠った詩がよい。季節ごとの変化と成長していく姿が重なる。

    こちらの思惑やら心配やらにわき目もふらず、すくすくと育たんとする孫の様子がほほえましい。筆者自身も、自分の期待や不安を裏切られることが嬉しいのだろう。

    どう育っていくのか分からない若葉。

    その隣で少しずつ枯れていく自分の木を感じながら、少しでも若木の養分になることができないか、誰かがこの芽を汚しはしないかと目を光らせたくなる、そんな気持ちが伝わってきた。

    (もし若葉さんがご存命なら五十歳をこえている計算、自分の名前の詩集が本屋に並んでいる心中はいかばかりなのだろう、ちょっとくすぐったそう)

    ひとつだけ、まだ若木として思ったのは、著者の世の中への反感が傲慢すぎるということ。1966年頃にはそんな不安が渦巻いていたのかもしれないけれど、それをどうにもできなかったことで、こんな世の中に誕生させてしまったのを不安がるというのは気持ちが先走りすぎているように感じた。
    若い人がどうにかしてくれる、ということでもなく、少しでも現状に何か思うところがあるならば、生きている限りそれを変えようとすることはできるはずである。どんな木であったとしても。老人というテーマは好きなのだが、自己憐憫は好きではない。老いゆくほど、中身は若々しくなっていくべきだと思う。

    全体的には気持ちのすがすがしくなる、よい本だった。今とは違う時代の空気と、時代を超えて共感できる新しい命へのまなざしのないまぜになった、生命力あふれる詩集。

  • 生まれたからはのびずばなるまい

    愛しさで泣けることがあるんだなあ

    特に『ぶらんこ』が好き。

  • 爺であることのやさしさ。父であることのやさしさ。男であることの欲望。男であることのやさしさ。金子光晴のなかでそれはひとつのこと。どれも決して別人格のことではない。光晴は孫の若葉をやさしく詠った日にも、街角で女性に声をかけたことだろう。だがそれは背信ではなく、彼の偽らざる気持ちだ。若葉、来年は海へ行こう。なんとあたりまえでやさしく、強く響くことばだろう。

  • 孫娘が生まれてからの思いを綴った詩編。全て読んでいないのですが、じじの視点から、ありのままの人間の姿、愛が溢れています。

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著者プロフィール

金子 光晴(かねこ・みつはる):詩人。1895年、愛知県生まれ。早稲田大学高等予科文科、東京美術学校(現・東京芸術大学)日本画科、慶應義塾大学文学部予科をすべて中退。1919年、初の詩集『赤土の家』を発表した後に渡欧。23年、『こがね蟲』で評価を受ける。28年、妻・森美千代とともにアジア・ヨーロッパへ。32年帰国。37年『鮫』、48年『落下傘』ほか多くの抵抗詩を書く。53年、『人間の悲劇』で読売文学賞受賞。主な作品として詩集『蛾』『女たちへのエレジー』『IL』、小説『風流尸解記』、随筆『どくろ杯』『ねむれ巴里』ほか多数。1975年没。

「2023年 『詩人/人間の悲劇 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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