受験英語と日本人 ――入試問題と参考書からみる英語学習史

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784327410766

作品紹介・あらすじ

「受験英語」を抜きに、英語教育の未来は語れない。英語の入試問題、参考書、受験生をキーワードに、初めて明らかになる日本人の「本音の」英語学習史。予備校や通信教育も視野に入れ、先人たちが開拓した日本人にふさわしい英語学習法の意義を考える。人物誌・図版多数。

感想・レビュー・書評

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  • 先週の大学入学共通テストが開催された、。数多くの受験生が苦しんでいるのが英語。




    「入試問題と参考書からみる英語学習史」というこれまでお目にかかったことのないのが今回の本。




    読んでいて不思議なのは政財界の要請で文部科学省が「実践的コミュニケーション能力」重視だ。




    英会話、英会話という「英会話市場主義」あるいは「英会話カルト教」がはびこることになったが、果たして昔と比べてオーラルコミュニケーションとやらは伸びたのかな。




    リーディングやリスニングで、正確に理解できないで何を話したり書いたりできない。




    外国語学習に文法を理解するのは、交通ルールを知らずに車を運転するようなものだ。




    青木常雄(1886-1978)という戦前から戦後を通じて英語教育会の重鎮の言葉が『新制・英文解釈精義 改訂版』(1956年)の「はしがき」に載っている。




    読む書くためにも聞き話すことがたいせつなのである。元来この四つを別々に考えるのがおかしいのであって、もともと一体不可分のものであり、それが生きた言葉なのである。したがってよく読める、よく書けるとは、当然よく聞ける、よく話せることを意味している。





    一斉を風靡した駿台予備校の英語講師を長年務めた伊藤和夫は『伊藤和夫の英語学習法』で次のように述べている。




    英語の入試は、与えられた英文をいかに読み解くかではなくて、与えられた大量の英文の中から要求され情報をどうやって見つけるか、必要でない所をいかに読まずにすますかという競争に変わった。




    学習参考書は、終わったらゴミとして捨てられる運命にあるが、英語学習に必要不可欠で、明治から昭和の英語学習者がどのように学んでいたのか分かる貴重な資料だ。




    文科省の「実用的コミュニケーション能力」教は、いつになったら見直すようになるか。




    受験生のみならず小学校から高校までの学生と教員がこれからも振り回され続ける。

  • 受験英語について、明治以後の歴史が書かれている本。
    プロローグが伊藤和夫についての話から始まるので、良さがある。伊藤和夫の功績を本書がちゃんと評価しているということがうかがえる。
    個人的には、英語受験参考書の進化の話が興味深かった。

  •  西洋の知識を吸収するために英語を学ぼうとした明治時代から、受験地獄が社会問題となる大正、戦前、敵国語とされた戦中を経て、大学全入時代に突入する現代までの、英語の入試問題、参考書、予備校、通信教育の歴史。
     帯には「『本音の』英語学習史」、あとがきには「『裏の』現実」と書かれていて、これまで英語教育学でもなかなか習ったことのない、日本人としての英語学習に焦点をあてている点が、まずユニークで面白い。受験勉強を経験し、例えば伊藤和夫の参考書を使って勉強したことのあるおれのような読者にとっては、受験英語に対する色々な「思い」を感じながら読むことができる。
     今でこそ、ピンからキリまで参考書が出回っているように感じるが、名著、と言われ、何十年にも渡って版を重ねた、重みのある参考書が多く紹介されている。ぜひとも読んで、勉強したいと思った。戦後のものだけでも、復刊されたという山崎貞の『新々英文解釈研究』や伊藤和夫の『ビジュアル英文解釈』、多田正行の『思考訓練の場としての英文解釈』、佐々木高政の『和文英訳の修行』、古藤晃編『クラウン受験英語辞典』など、手にしてみたい。
     随所に、昨今のオーラル重視の学習指導要領批判が展開されている。著者のような先生が、文科省のご意見番になったりすることはないのだろうか、と思う。(12/02/26)

  • 平均的な日本人であれば、受験対策時に英語を習得しようとしてそれっきりになることが多いような気がします。なので、日常英語にふれあう機会の少ない多くの日本人は、オーラルコミュニケーションより文法と単語の習得により、英文を読む力の方が、息長く役立つのではないか、という気がしてきました。

  •  日本で勉強する、いわゆる”受験英語”は外国ではほとんど役に立たないと以前聞きました。
     そして、私自身が2週間カナダへ短期留学した際にそのことを痛感し、その謎を知りたかったのでこの本を選びました。
    (教育学部・学校心理過程/匿名希望)

  • 「受験英語」といえば、今までその負の面ばかりクローズアップされてきたが、その正の部分にも光をあて、英語の入試問題、参考書、受験生をキーワードに、日本人の英語学習の歴史の本当の姿を鋭く描き出し、その多様な遺産を検証する。特に英語参考書に注目し、懐かしの「山貞」シリーズをはじめ、「赤尾の豆単」や森一郎の「でる単」(「しけ単」)、受験の神様・伊藤和夫の数々の参考書など、歴史的な価値の高い参考書の中身を検討し、豊富なエピソードとともに紹介する。貴重な図版を多数掲載。

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著者プロフィール

江利川 春雄(えりかわ・はるお):1956年埼玉県生まれ。神戸大学大学院教育学研究科修士課程修了。広島大学で博士(教育学)取得。専攻は英語教育学、英語教育史。現在、和歌山大学名誉教授。著書に『英語教育論争史』(講談社選書メチエ)、『日本の外国語教育政策史』(ひつじ書房、日本英語教育史学会著作賞受賞)、『英語と日本軍』(NHKブックス)、『受験英語と日本人』、『英語教科書は<戦争>をどう教えてきたか』、『日本人は英語をどう学んできたか』(以上、研究社)、『英語教育のポリティクス』(三友社出版)、『近代日本の英語科教育史』(東信堂、日本英学史学会豊田實賞受賞)、監修・解題『英語教育史重要文献集成 全15巻』(ゆまに書房)など。

「2023年 『英語と日本人 挫折と希望の二〇〇年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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