水戸岡鋭治の「正しい」鉄道デザイン 私はなぜ九州新幹線に金箔を貼ったのか? (交通新聞社新書)
- 交通新聞社 (2009年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784330087092
感想・レビュー・書評
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デザインという整理、という言葉が印象的。
デザインの背景にある想いの深さ。
利他主義、社会デザインなどについての話題もあり、対人援助職の方に特にお勧めしたい一冊。
JR九州の列車に乗って、旅に出たくなりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この書籍では、鉄道デザイン家でも有名な著者のデザインとはが書かれています。
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本書はライターの渡邉裕之氏が水戸岡鋭治氏にインタヴューしたものをまとめたものださうです。聞き書き。ゆゑに読者の眼前で語つてゐるやうで、まことに分かりやすい。
実は水戸岡氏に対するイメエヂは、わたくしにとつて必ずしも芳しいものではございませんでした。評判を取つた787系にしても、外観はともかく居住性に関しては不満が残るものでした。あれなら783系(ハイパーサルーン)の方が陽気でエキサイティングで、乗つて愉しい電車だと思ひます。
ところが、九州新幹線が開通して800系が登場しますと、一気にこの電車に惚れこんでしまひました。続いて「いさぶろう・しんぺい」をはじめとするキハ40系改造車。走行路線の魅力と相まつて、実に愉快痛快であります。少なくとも国鉄時代では考へられぬ概念をもつた列車群と申せませう。
『水戸岡鋭治の「正しい」鉄道デザイン』は、水戸岡氏が鉄道デザインについて如何なる思想を有してゐるのか、その一端に触れる事ができる一冊であります。デザインに正しいとか、正しくないとか区別が有るのか?とも思ひますが、まあいいでせう。特に第三章・第四章は、鉄道を離れて、一般ビジネスマンの仕事にも参考になると存じます。
「これまでになかつたもの」を求めるJR九州と水戸岡氏との、世にも幸福な出会ひが実現した経緯も面白い。
ただ、第五章で述べてゐる「大鉄道時代」は、もう来ないと思ひます。水戸岡氏は、鉄道が「再び注目」されてゐると語つてゐますが、残念ながら陸路交通の手段としては、新幹線と大都市交通線以外は衰退するでせう。否もう既に瀕死の状態ですね。
例へ「ななつ星in九州」のやうな超豪華列車が花盛りになつても、それは鉄道の復権とは関係ありますまい。むしろ滅びゆくものへの挽歌を連想するのはわたくしだけでせうか。ああ、さうですか。それなら良いけど。
国が「クルマがなければ生活出来ない」社会を目指してきたわけで、現状は十分予想できたと申せませう。特に地方では少子化・過疎化も著しく、鉄道の衰退に拍車をかけてゐます。
理想を語るのも大切ですがね......
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-660.html -
一つ一つのシーンをイメージし、感動するシーンを作る
――そのために、最後の1%を担うのがデザイナーである(1%がだめだとそれまでの99%が台無しになる)ということ、
服飾や列車名の印字までなんでもやる(分業制にしない)ということ、
また、ファミリーを作る(PTのようなものを自分の周りにつくる)ということ――など、、
グッとくる教えが多い。
公共空間の在り方について真摯に考察し、おごらず、サービス精神をもって、そもそものところから熟考し、よいものを作ろうとする。その姿は、土木の者には心に響くものがあるのではないか(土木のデザイナーにも通じるところがあるようにおもった。そういえば土木デザイナーも、NHKのプロフェッショナルとか出てほしい!)。
土木との関連でいえば、フィールドも、全体的に土木デザインの世界に近い。効率から、工業的に、形態が決まってきたことの多いこの分野にあって、いかに人のことを考えて良質な空間をつくれるかという発想は、本質的だし、一方でしがらみの多さゆえこれまで難しかったのだという状況も、近いと思った。だからこそ、「ファミリー」(コラボ)のことも重要。
また、「サービス」のところで、客人のためにお茶や弁当や和菓子を、考えて(相手を想って)出せるか、というのは確かにサービスであり、そしてデザインである。本質的。
デザインって、結局、サービス精神だと改めて思った。 -
単に鉄道デザインのあり方の話だけではなく、仕事への関わり方や生き方についても水戸岡先生の考えが述べられており、刺激を受ける一冊ですy
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車両で話題を提供し続けるJR九州の鉄道デザインを一手に引き受ける水戸岡鋭治さんの一冊。予算面やいろんな制約がある中であれだけ尖った鉄道を生み出してきたのはすごいし、素直に感動。まして最初の頃は既存の車両を改造というか少しいじるだけで全く違った印象にしていたわけだし。
九州新幹線も良いけど、九州はあえて新幹線でなくのんびりな旅行でよかったのかもしれないですな。最終的に彼の思いが実って寝台列車が走るのはスローライフ志向が芽生えた現代にぴったりなのかも。 -
どういう分野であれ、「或る仕事で一定以上の実績を挙げた人達の貴重な経験談」というものは傾聴に値する。そういう意味だけで本書は一読に値するであろうが、鉄道車輌や駅施設、更に多くの人の目に触れる包装紙やロゴマーク等の“公共”のモノを造る、或いは創ることに関る意見というものは非常に貴重で、より広く読まれなければならないものであると思った。評価の高い車輌が登場した背景に興味を抱く「鉄道ファン」に奨めるべき一冊であることは間違いないが、これは「“鉄道ファン”は特殊な領域に居る人達で、自分は無関係」と思っている人達にこそ奨めなければならない一冊かもしれない。更に加えると…「“鉄道ファン”は特殊な領域に居る人達で、自分は無関係」と思っている人達の中にも「“公共”のモノを造る」ということに携わっている人は多い筈で、そういう人こそこの種の意見には耳を傾けておかなければならない筈だ…
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今や鉄道車両のデザイン(特にリニューアル)については第一人者となった著者。既成概念を打ち破りつつも伝統を重んじようとする感性には好意が持てる。しかしながら、九州だからこそ成功したことを軽視して、他の地方に持ち込むのはどうかと思う。
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博多駅にいくと、九州新幹線つばめをはじめ、かもめ、にちりんソニック、ゆふいんの森号・・・とユニークな列車が多い。外観だけでなく、車両のなかも和装のデザインだったり、質感高く個性的だ。
きっと通勤客で稼げないJR九州の戦略として、バカンス客に力を入れているのだろうと思っていたが、その背景には一人のデザイナーの熱い思いとそれを支える人たちからなる、何とも素敵なビジネスストーリーがあった。
いまの仕事に悩みがある人、仕事で成長したいけどその将来像が見えないと悩む若い人すべてに読んでほしい! -
お会いする度に、素敵な笑顔が!その笑顔が醸される所以がここにあるなと感じた!デザインが支えるもの、ことが、キッチリと描かれた!それが水戸岡さんの仕事になっている。この本を読み終え、小布施に存在する水戸岡さんデザインの小布施鈴花さん、レストラン花屋さんをまた楽しもうとわくわくしている。小布施に素晴らしい記憶と仕事が刻まれているんだという実感!