- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784331057834
感想・レビュー・書評
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ぶたのぬいぐるみが、当たり前のように喋ったり動いたり食事をしたりと、まるで人間のような日常生活をしていると聞くと、単に、ほっこりとした可愛らしさを持った、癒やし系ファンタジーと思われるかもしれないが、これが意外と、様々な生き辛さを抱えた多くの人にとって、ひとつの救いとなっていることには、さすがに驚きを隠せなかった。
本書(1998年)は、全9つの中短篇で構成されており、それぞれに異なる職業などで登場する、ぶたのぬいぐるみには、「山崎ぶたぶた」という歴とした名前があり、そんな彼が(年齢的にはおっさんらしい)偶然なのか必然なのか、出会う人それぞれの心の澱を、そっと吐き出させてくれる不思議な存在感に、最初こそ、「えっ、ぶたのぬいぐるみがベビーシッター!?」といった、シュールな面白さにクスッと笑えるものがあったものの、回を重ねる毎に自然と居住まいを正してしまうような、ハッとさせられる気付きも促してくれた。
印象的なお話としては、「銀色のプール」の、小三の少年の大人への第一歩とも感じられた、彼との素敵な一夜の体験や、「殺られ屋」の、彼が身をもって教えてくれた、主観的思いと客観的思いとを混同しない大切さに加え、「ただいま」での、謎の疾走を遂げたきり何年も帰ってこない兄を忘れられない家族を描いた、シリアスなストーリーを、ぬいぐるみが何の違和感も無く、より味わい深いものにしている、その緻密な構成には、こうしたファンタジーもあるのだといった、ぬいぐるみが現実世界への干渉を為すことで、より良い世界へと変貌していく点に、何かメッセージがあるような気がしてならないものを感じられた。
その根拠として印象に残っているのが、「ストレンジガーデン」での『見えるままを受け入れられる』ことであり、最初はぬいぐるみという、夢物語みたいな存在であっても、その中身が大切なのだと言っているように思われたが、実はそうではなく、ぬいぐるみであろうと人間であろうと、それ自体の存在を敬い受け入れる姿勢が大切なのだと感じ、そうした視点で自分以外の人間や物事を眺めたときに得られる、自分自身のフラットな立ち位置には、もしかしたら、私も人間の姿をしたぬいぐるみなのかもしれないと思わせるくらいの妄想を逞しくした、そんな臨場感がありながらも、奇妙な世界に於ける白昼夢といった面白さであった。
それから、矢崎存美さんが、ぶたぶたという名前のぬいぐるみを実際に大切に持っているエピソードには、これだけ彼に愛情を込めに込めた、そうした思いが幾度となく見え隠れするものを空想で書かれたとは思えなかったので、とても納得出来るものがあり、『私にとって、ぬいぐるみも人間も、それほど違いはありません。余計なことをぬかすあいつより、この無口なくまちゃんの方がよほどまし、と思ったことないですか?』への共感も抱いた、そんな彼女のフラットな愛情は、最後の「桜色を探しに」での、ここまで読んできた読み手への感謝の気持ちを込めたような、ぬいぐるみと人間、相互にとっての粋な計らいにもよく表れていると思われたのである。 -
基本的にシリーズ物は、単行本なら単行本、文庫なら文庫でそろえるのだけれど。この表紙の愛くるしさに、これだけは単行本で買ってしまった…!ぱっと見「ぷたぷた」って読めちゃうのも、ぶたぶたさんなら許しちゃう。
外見は愛くるしい桜色の(ちょっとくたびれた)ぬいぐるみ。
中身は中年男性ぶたぶたさんが、ある時はベビーシッター(の責任者)、フレンチシェフ、ある時はおもちゃ屋の店員、またある時はタクシードライバー…etc.と大活躍。
自分に降りかかる、良いものも悪いものもそのまま静かに受け止めるぶたぶたさんの在り方に、自分もそう在りたいと願う。
(シリーズも回を重ねるごとに、ぶたぶたさんもまろくなっていくのだけれど)まだこのころは少しクールさが勝っている感じで、ちょっぴり新鮮。
ただ、鼻をもくもく動かして喋る様子や、短い手足でちょこちょこ動いてるさまを想像すると、やっぱりすごく癒されてしまうからか、すぐ眠くなっちゃってどうしようもないのが困ったところ(笑)
短編集かと思いきや、最後に大きなまぁるい円を描くように繋がる1冊。
「殺され屋」は少し苦くて、それでもぶたぶたさんの温かさが伝わるお話。
「桜色を探しに」 ぶたぶたさんを通じて知り合ったふたりの関係が自然で、なんだかわからないけれど嬉しくて。
すごく良かった。-
「ぶたぶたさんを尊敬する会」に、末席でいいので私も入れてくださ~い!
レビューの、「自分に降りかかる~」のところが永遠ニ馨ルさんらしくて、...「ぶたぶたさんを尊敬する会」に、末席でいいので私も入れてくださ~い!
レビューの、「自分に降りかかる~」のところが永遠ニ馨ルさんらしくて、感動しました!
と書こうと思ったら、takanatsuさんがもう書かれていて
これが知らないおじさんとかだったら「くやし~!」って思っちゃったかもしれないけど
takanatsuさんならいいや♪
っていうか、むしろうれしいし♪
とか思ったりしました(*'-')フフ♪
それにしても、「ぷたぷた」って読めるとこまで含めて、
なんて可愛らしい表紙なんでしょう!!!2012/08/16 -
「ぶたぶたさんを尊敬する会」
素敵ですね!
ぶたぶたさんの話が出来てとても幸せです♪
「takanatsuさんならいいや♪」
あ、良かったで...「ぶたぶたさんを尊敬する会」
素敵ですね!
ぶたぶたさんの話が出来てとても幸せです♪
「takanatsuさんならいいや♪」
あ、良かったです。(ほっ)
私もとても感動したのです。本当にその通りだなと思って…。
なので、本当にありがとうございます、です。
「ぶたぶたさんを尊敬する会」の会員に恥じない人間になりたいと思います(笑)2012/08/17 -
感動したとかそんなー!お恥ずかしい・・・恐縮です(*ノノ)
まろんさんが「ぶたぶたさんを尊敬する会」の末席に居ていいわけないじゃないですか。...感動したとかそんなー!お恥ずかしい・・・恐縮です(*ノノ)
まろんさんが「ぶたぶたさんを尊敬する会」の末席に居ていいわけないじゃないですか。
さぁ、真ん中へどうぞ♪
もちろん、takanatsuさんも真ん中ですよー。
これからもみんなで会員の名に恥じないファンぶりを発揮していきましょう(*´▽`*)ノ2012/08/17
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ある時はベビーシッター、ある時はおもちゃ屋の店員、その他タクシー運転手、フレンチのシェフ、サラリーマン…いろんな顔を見せてくれる山崎ぶたぶたはピンク色のぶたのぬいぐるみ。「ホンマにぬいぐるみか!」と最初は戸惑うが、いつの間にかぶたぶたワールドに引きずり込まれていました!作中の人物だけでなく、読み手まで幸せな気持ちにしてくれるぶたぶた。まだまだシリーズが続くので楽しみです♪幼い頃のぶたぶたの記憶で出会う、あの2人…ラストの話も最高!
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珍しくミステリ以外の本を。いつもはけっこう意識的に選んでいたりするのですが、この本は一目ぼれみたいなカンジでした。表紙とタイトルと中身にこころがきゅんvとしてしまった(笑)
山崎ぶたぶたさんは、男性です。見たカンジからはわからないけど。
山崎ぶたぶたさんは、けっこう年齢が上の人…中年?少なくとも30歳以上…?
山崎ぶたぶたさんは、けっこう器用。ベビーシッターにシェフにタクシー運転手。どんな仕事もお手の物。縫い物も得意!
山崎ぶたぶたさんは、礼儀正しくて、優しい。とっても。
山崎ぶたぶたさんは、かわいい。
…え?そうはいっても中年のおじさんでしょ?かわいいワケないじゃない!と思った方。
いえいえ、本当なんですよ。全然おかしいことないんですよ。
だってね、山崎ぶたぶたさんは正真正銘、桜色でビーズの黒い目をしたバレーボールくらいの大きさの、ブタのぬいぐるみなんですから。
そんなぶたぶたさんと、彼に出会った人々の、ほんわかファンタジー。
「初恋」「最高の贈りもの」「しらふの客」「ストレンジガーデン」「銀色のプール」「追う者、追われるもの」「殺られ屋」「ただいま」「桜色を探しに」以上9作の連作短編集です。
すいません、手にとってすぐにぶたぶたさんのファンになってしまいました!行動は普通の男性なのに、ピンク色のぶたのぬいぐるみなんだと思うと、なんでこんなにかわいいのでしょうね?やっぱりぶたぶたさんの人徳なのかしら。
「本当は普通の姿なのに一部の人間にはぬいぐるみに見える」といった設定ならばよくある話なんですが、この話は本当に、誰から見てもぬいぐるみです。でも、動くぬいぐるみなんて常識的にありえない。初めて会った人はほぼみんなビックリするんですけど、そのうち慣れていちゃうんですよね(笑)そうして彼の魅力にノックダウン!
でも、ぶたぶたさんの素敵さはその見かけだけではないと思います。「殺られ屋」でのように、優しいだけではなくて厳しく間違いを指摘できる強さを持ってる彼だからこそ、と。
どの話も好きですが、やっぱり1番は「桜色を探しに」でしょうかねー。ちょっとお見事!と思ってしまったし。個人的に、あえてこの1冊を「連作」短編集とした理由はこの作品ですしねv
余談ですが。
ダレか桜色の黒いビーズ目のぬいぐるみを私にプレゼントしてくれませんでしょーか…!ちょっと今、本当に欲しいんですけども!!
あ、ぶたぶたさんみたいに動かなくていいですので!(笑) -
区切りの300冊目はぶたぶたさん。ぶたぶたさんってば…なんてぶたぶたさんなの❤ちょっと町でぶたぶたさん探してみます。牛乳飲むぶたぶたさん、耳を洗濯ばさみで吊るされたぶたぶたさん、轢かれるぶたぶたさん、からすにさらわれるぶたぶたさん、もうっ!ぶたぶたさんってば!!って感じです。
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はじめまして、こんにちわ。
突然コメントをしてしまいすみません(^_^;)
ぶたぶたさん!とっても可愛いですよね!!
りぶれさ...はじめまして、こんにちわ。
突然コメントをしてしまいすみません(^_^;)
ぶたぶたさん!とっても可愛いですよね!!
りぶれさんのレビューを拝見したら
再読でまた読んでみたくなりました(〃ω〃)
読む機会があったらまた読みたいと思います!
きっかけをくださってありがとうございました(〃^^〃)
2015/03/29 -
なめこさん、コメント有難うございます^^
私も友達から教えてもらってあっという間に
はまったシリーズです❤読み返せるように、シリーズで特...なめこさん、コメント有難うございます^^
私も友達から教えてもらってあっという間に
はまったシリーズです❤読み返せるように、シリーズで特にお気に入りの数冊を手元に置いてます^^2015/04/02
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何かに疲れてしまって、今は何も考えたくないとき、ちょっと現実のごちゃごちゃから離れたところに身を置きたいとき… そんな時に読むといい。さらりと読めるし、ぶたぶたさんに癒される。
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本の世界っていいよなぁと、しみじみと思わせてくれました。
主人公の山崎ぶたぶたさんは、バレーボール大の淡いピンクのぶたのぬいぐるみ。彼は人間が出来ているというか、とにかく懐の広さ、心の細やかさを感じさせます。
彼の存在感。安心感は抜群でした。
小さな体なのに、何でも出来る人(豚?)で、彼と初めて出会った人たちの反応も、とても面白くて、「そういう反応になるだろうなぁ」と思いながら、読んでいて心地いいです。
彼の仕草や表情もとても可愛いくって、想像すると笑顔になっていました。
こんなシチュエーションはありえないと思ってはいけないし、思えなかったです。この物語の世界を楽しめないのは損な気がしました。
この本を読むと、幼い頃にお気に入りだったおもちゃを思い出す人も多いかも。そんなどこか懐かしい感情を呼び覚ますような、素敵なお話でした。
気持ちがリフレッシュしましたよ。彼に会いたいです。 -
ぶたぶたさんの魅力に引き込まれたキッカケの一冊。
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ぶたぶたの短編集。
「殺られ屋」と「ただいま」が好き。 -
あるときはベビーシッター、あるときはタクシードライバー、あるときはコックさん…見た目は可愛いピンクのぶたのぬいぐるみだけど、中身はすごく紳士で優しいおじさま(?)その名も山崎ぶたぶたさん。ぶたぶたさんかわいいいよー癒されました。話すと鼻先もくもく動くのかわいすぎる……。
ほのぼの短編集だなーと思ってたら「殺られ屋」みたいな重い話があったり「ただいま」みたいな泣ける話もあったり、そして最後の一話で綺麗に話が繋がって、すごく満足。 -
ぶたぶたシリーズの第1作。相変わらず、ほのぼのしていて、安心できる。
しかし、なんとなくぶたぶたさんの過去?みたいなものも出てきて、気になるところ。 -
ずっと気になっていたのをやっと読めました。
ぶたぶた癒される。
ちょっと疲れたときとかに読むと、
癒されるし勇気をもらえるし、
心がほっと温かくなるお話です。 -
タクシー話が面白かった。
読み始めた時に笑える話が続くのかと思ったので、後半ちょっと物足りなかった。
ぶたぶたさんと交流できたら楽しいだろうな。 -
謎のぬいぐるみ「ぶたぶた」。人間みたいに何でもできますが、ぬいぐるみです。心があったまるお話です。
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表紙のデザインや生きているぶたのぬいぐるみという設定は面白いが、すごくワクワクや感動という感じではなかったのが、本作品に関しては少し物足りなさを感じた。
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ぶたぶたさんシリーズ始まりの物語。
ぶたぶたさんの謎は謎なままで、何故かほっとしてしまった。
重苦しい話もあったけど、最後の話で救われた気分。 -
ぶたぶた可愛い。
短編が何作か入っている形式、一話読みきりなので、どの巻からでも読めます。
ぶたぶたさん、家にも来て欲しい。
タクシーの話が一番好みです。
妹に巡り会えて良かったですね(^^)
まこみさんのコメントを読んでいたら、著者の矢崎さんのあとがきに書かれていた、
『このぬいぐ...
妹に巡り会えて良かったですね(^^)
まこみさんのコメントを読んでいたら、著者の矢崎さんのあとがきに書かれていた、
『このぬいぐるみは、別に特別なものではないので、おもちゃ屋さんに行くと同じものが置いてあります。けれど、ぬいぐるみというのは手作りなので、顔がみんな違います。ぶたぶたと同じ顔をしているぬいぐるみは、一つもありません』を思い出して、そこにはご本人にしか分からないような特別な思いを感じられたことから、きっとまこみさんのお子さんも、たくさんの愛情をいっぱいに受けて、ここまで来たのだと思うと、見た目は関係なく、とても感慨深い気持ちになりまして、まこみさんのぬいぐるみ、私にはピンク色に見えますし、とても愛嬌のある横顔で好きですよ。
『ぶたぶた』、本当に構成が素晴らしいですよね。古本屋で安く見つけるとつい続編買っちゃうもので何冊か持っ...
『ぶたぶた』、本当に構成が素晴らしいですよね。古本屋で安く見つけるとつい続編買っちゃうもので何冊か持っているんですけどほとんど積読状態、でもそれって、この第一作を初めて読んだ時ほどの衝撃と満足感は得られないんじゃないかという怖さもちょっとあるからかもしれません笑。
続編への期待感は、一作目が良ければ良いほど、高まりそうですし、本書の場...
続編への期待感は、一作目が良ければ良いほど、高まりそうですし、本書の場合、綺麗にまとまっていたから、尚更そう感じますよね。
後は、矢崎さんが、どのような心境で書いていらっしゃるのか気になるところですが、読んでみますよ。
確か、次は刑事ものっぽいタイトルだったので、早速、脳内で妄想して楽しんでます(笑)