2045年問題 コンピュータが人類を超える日 (廣済堂新書)

著者 :
  • 廣済堂出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784331516836

作品紹介・あらすじ

2045年にコンピュータの能力が人類を超えるという説がある。実際に、近年のコンピュータの進化はその説に沿っており、またいま欧米では人工知能開発に一層の拍車がかかっている。意識を備えたコンピュータが人類を支配するというSF映画の世界が、現実になるかもしれないのだ。コンピュータと人類の未来を展望する。

感想・レビュー・書評

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  • カーツワイルの「収穫加速の法則」に従えば、このままテクノロジーが加速的発達を遂げて2045年には人類を凌ぐコンピューターが出現する。これを「2045年問題」と呼ぶ。

    最近、耳にすることが多くなった「2045年問題」の入門書として購入。興味深く読んだ。

    ただ、よくわからないのは「知性」というものの取り扱い方。「知性」とは目に見えるものでもなければ実在するものでもない。養老猛司先生の著書に出てくる比喩だが……心臓をいくら解剖しても「循環器」というものは出てこない。なぜなら、循環器とは機能だからだ。肛門も同じである。お尻の穴の周りの皮膚のことを肛門と勘違いしがちだが、あれは肛門ではない……

    つまり、知性というのもひとつの機能である。この機能の一部分を我々はコンピューターに依存している。例えば計算や検索をパソコンにさせているように。

    我々は自分自身の「知性」すら把握できていない。この状態でそもそも2045年問題を理解できるのか?という根本的な疑問だけが残った。

    付け加えるならば、私の中にも「2045年問題」に対する漠然とした不安がある。ならば、私は何を恐れているのだろう。

    それはパラダイムシフトに対する恐れなのだろうか。
    かつて鉄道が初めて敷設される地域には、激烈な反対運動が起きたという。今から見れば笑い話だが、当人たちは必死だったろう。「今間にないもの」で「生活や考え方を根本から変えてしまうようなもの」に対して、人々は恐怖をいだくのは当然なのだ。

    2045年問題もその類なのだろうか。

  • 2045年技術的特異点を迎え、ここを境にコンピュータが人類を上回るというコンピュータ学者のレイ・カーツワイルの主張を関連する論文や著者なりの考えを交えて解説している。その内容は「ターミネーター」や「マトリックス」が現実になるというものである。関連する研究がたくさん紹介されていて、そこそこ納得できる話だ。 冒頭で「2001年宇宙の旅」などのSF映画に触れていたり、用語解説を適切にまじえて説明していてわかりやすく書かれている。
     アメリカやヨーロッパはこの手の研究に相当なお金をかけているようだ。これを読むと、「2番じゃダメなんですか」と発言があった日本の政治はまるでわかっていないことがよくわかる。
     関連するプロジェクトしてIBMの「シナプス計画」とヨーロッパの「ブルー・ブレイン・プロジェクト」を紹介して、シナプス計画のフェイズ2では国防省が25億円弱、EUでは「ブルー・ブレイン・プロジェクト」の後継に1000億円の予算をつけているらしい。

    ロズウエルのUFO話は魅力がなくなってきている今、この話は比較的現実感があり、わくわくする。

    今後も注目していきたい。

  • 「コンピュータが人類を超える日」という副題。

    本書では2045年(2099年という学者もいるそうだが)にコンピュータが人類の知能を超えるという予測と、それが起こった場合の影響を考察している一冊である。

    しかし、そもそもコンピュータの知能とは何だろうか。本書がそれに回答しているのは、本書の後半であり、読み手にとってはイライラします。
    だって、本書の前半では、計算のスピード=知能の高さという説明が100ページ続くのですもの。
    スーパーコンピュータといわず、一般の家庭用のPCでも今はCPUクロック数が2GHz程度あるのだから、1秒間に10^9回程度計算ができるわけだ。
    つまり、人間が10秒に1回程度とすると、PCは人間と比較して10^10倍知能が高くなるというロジック。
    少し考えればわかるが、それは知性とはいわない。
    計算能力に物を言わせ、人間よりも計算が早く頭が良いでしょ、というのは違う。
    一般には、PCの知性とは、Alan Mathison TuringのいわゆるTuringテストをパスできることを判断基準として使用するのが普通であり、必ずしも計算能力は必要ではないように思える。

    本書では、むしろ過去の研究結果と現在の進捗を説明して、2045年にはこれくらいの能力までになるでしょう、というやや消化不良気味の説明。
    さらに一歩進んで、計算にものをいわせるPCではなく、知性をPCに持たせるための具体的な研究状況と課題を詳細に説明し、それを踏まえ、2045年に人間以上の知性を持ったPCが誕生したときに我々の生活にどのような影響を与えるのかを考察してほしい。

    前者は、ニューラルネットワークによる実装という古典的な方法を簡単に説明するだけで、冗談だろうと思ってしまいます。
    後者は、ロボットが仕事を奪うとかこれもありきたりなことしか書いていないです。
    もう少し、実現可能性と実現した場合の影響評価をまとめて欲しかったです。
    しかし、PCの知性とはという問題意識を提起する上では良い一冊であると思う。

  • 経済学部 上野勝男先生 推薦コメント
    『人工知能の急速な発展がこのまま進み、人類を超えたあとはどうなるのかということに関する「シンギュラリティ」についての、ざっくりとした入門です。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/575751

  • 2045年問題コンピュータが人類を超える日

  • 積読本をかたづけようシリーズ。
    2013年の出版。
    
    コンピュータが人類の能力を超える「技術的特異点」。2045年に技術的特異点を迎えるという予測の可能性を論じる。
    
    著者は宇宙物理学者なのだが、SF好きだそうで、『2001年宇宙の旅』、『マトリックス』、『攻殻機動隊』、そしてもちろん『ターミネーター』などを引用しつつ、特異点の未来を予想する。
    
    また、現在欧米で行われている人工知能開発計画から特異点到達の可能性を探る。
    
    「特異点」はSFではおなじみで『月は無慈悲な夜の女王』のマイクも、『ぼくらのよあけ』のナナコも特異点を超えて自我をもっている。
    私のイメージもそれに近いわけだけど、実際にスーパー・コンピュータが人間の脳をシュミレートできるようになって、その先に特異点があるとすると、人間の脳とネットが接続して、ネット上に思考がアップデートされて……という現在の予測だと、どちらかというと『マトリックス』とか『攻殻機動隊』の世界。
    
    「特異点(シンギュラリティ)」自体、まじめに論じられるようになったのはレイ・カーツワイルの『ポスト・ヒューマン誕生』(2007年)あたりからだと思う。
    
    著者は特異点を超える可能性を探ると同時に、現在のままでは『成長の限界』がきて近代文明が崩壊するというメドウズの予測も論じている。そうなると特異点どころではなくなるのだが、その悲観的な予測を覆せるのも特異点による技術革新かもしれない。
    
    文明が崩壊するよりは『ターミネーター』や『マトリックス』のように機械やコンピュータに支配された未来のほうがましなのかもしれないが、私的にはマイクやナナコと仲良く暮らす未来がいいなと思う。
    
    以下、引用。
    (ネットと脳が接続されるようになると、引きこもり人間が増えて二次元美少女を相手にするようになるという部分は突っ込みどころ満載。)
    
    「ターン・アラウンド・タイムとは計算を入力してから、結果が返ってくるまでの時間です。当時日本で、その研究に使えるコンピュータは大学では東大にひとつしかありませんでした。プログラムをつくってカードに打ち込み、郵便で東京に送ります。着くまでに1日かかります。向こうでの計算に1日、返ってくるのにも1日かかります。都合3日です。週6日で、1週間で2回のターン・アラウンドができました。」
    
    「当時、そういう計算に使えるコンピュータは東大以外に、大阪のIBMにもありました。そのコンピュータは、IBM360-50でした。そこでもターン・アラウンドは1日に2回くらいでした。IBMは民間企業ですから、1秒あたりの使用料金がかかるので、私はライン・プリンタの前にはりついて出力を見て、すこしでもおかしかったら止めてもらいました。それでも大学院生の分際で30万円ほど使いました。」
    
    「アルフレッド・インセルベルクというイスラエルの研究者は、平行座標という概念を導入して、多次元の相関関係を視覚化する技法を開発しました。たとえば13次元の空間を可視化することにより、イスラエルの軍用トラックの音を大量に集めて解析すると、エンジンにロシア製の部品が使われているというようなことがわかるそうです。」
    
    「現在でも二次元症候群などといって、美少女アニメなどにのめり込む人たちがいますが、人間同士のコミュニケーションは基本的にはしんどいことです。技術的進歩によってその必要性がなくなれば、これを避けるようになっても不思議はありません。多くの男性が、二次元美少女を相手にするようになるでしょう。テクノロジーが進めば、二次元ではなく三次元になるでしょうが、結局は同じです。」
    
    ジョン・D・バナール『宇宙・肉体・悪魔』
    
    「彼の時代にコンピュータはありませんでしたが、彼は脳同士をつなぐ、いまでいえばイーサネットのようなものを想像し、人間は最後はエーテル状になって宇宙に漂うようになるのではないかといっています。エーテルとは、古代ギリシャの哲学者が空間を満たしている元素と考えたものです。19世紀の物理学者は、光を伝える仮想的な媒質をエーテルと呼びました。ちなみに「イーサ(ether)」とはエーテルの英語読みです。」
    

  • 人生を考えさせられるテーマになっています。

  • 2001年宇宙の旅、ターミネーター、マトリックス等の「コンピューターが人類を支配する系」映画を例にしながらの解説。2045年くらいにはコンピューターがそこまでいく(自らの意思を持つ)ことになってもふしぎではないそうだ。

  • 2015年展示「IoT、ビッグデータ、人口知能」

  • 2045年コンピュータは人間を超えるらしい。アメリカのシナプス計画、ヨーロッパのヒューマンブレインプロジェクトなど、人間のシナプスをシミュレートするアプローチの人工知能計画が進んでいる。それらがうまくいけば、2045年に、人間を超える知能が誕生するそうだ。若干、SFチックであるものの、前半は最先端の技術をわかりやすく紹介する科学入門、中間は、人工知能の話、後半は若干宗教がかるので?だが、全体的には、なるほど!これが平積みされる本なんだ!と思った。

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