第三の眼―デジタル時代の想像力 (広済堂ライブラリー) (廣済堂ライブラリー 2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784331850015

作品紹介・あらすじ

デジタルの海で溺れないために。電子化された情報がすべてであると、信じきっていいのだろうか?見ること、知ること、学ぶことの本質を問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 密教的な内容ではない
    想像して表現するデジタルイメージについて

    フロイトの間違えは記憶をマジックメモという
    魔法の黒板だとしたことな始まる
    これは脳をPCという演算装置だとすることに似ている
    しかし記憶とは蝋板や配線ではない
    記憶とは変化しながら全体として形態を保つ
    ダイナミックなシステムのことである
    それはデッサンの結果ではなく過程なのだ
    意識とは物質でなくプロセスなのだ

    痕跡を残す主体(原因)と痕跡が残された表面(結果)
    この結果を観測して解釈する主体(観測者)の
    三項の関係の中から生成するのが痕跡という記号なのだ
    例えるならば
    個人の遺伝情報の総和であるゲノムは
    生態の作り方に関する記号の乗り物である
    個体発生の軌道は記号によって書き込まれている
    しかしゲノムだけでは生体を生み出さない
    ゲノムと個体発生の軌道は二項で成り立たず
    記号を読み解くモノが必要である
    それが受精卵なのであり
    ゲノムを生体制作の支持として解釈し
    細胞分裂をして生体を作り上げる
    発生とはDNAと軌道と受精卵からなる三項関係の記号過程である
    生命は記号過程と記号操作に立脚し元来柔軟であり
    間違いを避けられない
    しかし間違いの結果が反映され様々な方向へ移行し
    時空間の中で新しい何かとなり習慣化していく

    内部観測とメディア・アート
    ハイゼンベルクは私達の経験世界から大きく隔てられた
    極微と極大の世界で
    観測という手段の独立性が保たれなくなる
    不確定性原理ではミクロの世界における観測が
    対象物に影響してしまうということに注目する
    観測しなければ情報を得られず
    さりとて観測すれば意識の内部に入り込んでしまい
    対象に影響を与えてしまい本来と違う情報となってしまう
    知ろうとすることは知ろうとする者に依存するわけである

    見ることは脳だけでなく身体の潜在性から投射されることなのだ
    主体は光学的情報を受け取ることで情報を得ているわけでない
    イメージの再構築を通して主体が生まれてくるのである
    デジタル技術は感覚とは何か・見るとは何か・経験とは・
    こうした根本的な再考を迫っているのである
    脳に描かれる像を見ている眼が第三の眼なのではない
    第三の目は見ることの豊かな謎に向かって開かれている
    脳と結びついた身体が見るということ
    感情と記号感覚が世界と繋がる絶え間ない交換
    そこに第三の眼が開かれる契機を見なければならない
    とこの著書は結んでいる

  • 色んなことに不安になると、読み直す本

  • 「日常の考古学」のところ面白かったです

  • 見る、ということについて考えることが未だにすこし恐い。
    色ひとつを取っても、自分が緑と呼ぶものと、人が緑と呼ぶものが同じだとは、決して証明できない。名前が同じだからといって、それが同じだとは限らない。いきなり頭のなかを入れ替えたら、そこにはまったく違う色や形があっても、絶対それは確認できない──ということに、小学校から家へと帰る最後の曲がり角の、植え込みの固いソテツの緑のまえで気付いたときの子供らしい誰にでもある恐怖をまだ覚えているからだ。
    私たちは脳以外でモノを見ることができない。
    その危うさと可能性が来た道と、これから。

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著者プロフィール

写真家、映像人類学者。多摩美術大学教授。1960年神奈川県生まれ。南米滞在後、パリを拠点に写真家として活躍。1995年より多摩美術大学美術学部で教鞭をとり、現在は同大学情報デザイン学科教授。2006年〈市民の色〉で伊奈信男賞受賞。2007年第52回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展における日本館の展示企画コミッショナーをつとめる。

「2019年 『現代写真アート原論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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