キヤノン特許部隊 (光文社新書 26)

著者 :
  • 光文社
3.62
  • (37)
  • (68)
  • (83)
  • (12)
  • (2)
本棚登録 : 521
感想 : 73
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334031268

作品紹介・あらすじ

一九五〇年代には未だカメラ専業メーカーであった、キヤノンの奇跡ともいえる六〇年あまりの歴史に、丸島の展開してきたビジネスはどのような役割をになったのか。企業戦略として特許を活用するとは、具体的にどのようなことなのか。昭和九年生まれの日本人が、朝からステーキを喰うアメリカのビジネスマンたちとどのように渡り合ってきたのか。そして私たち日本のビジネスパーソンは、特許あるいは知的財産権をどのように考え、仕事に生かすべきなのだろうか。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • キャノンの知財部門を築き上げた丸島儀一に、キャノンの特許戦略を、その歴史的経緯と共に語ってもらい、まとめた本。

    著者は丸島儀一となっているものの、予想に反してインタビュー形式となっており、強力なテーマ性に基づいて取材が行われているわけでもないため、内容は「私の履歴書」のそれに近くなっている。

    丸島氏は2011年に名著「知的財産戦略」を執筆しているが、その9年前に執筆された本書は、前者の内容を薄めて読み易くしたものに等しく、氏の特許戦略への導入として最適である。逆に、本書の内容は、キャノンの歴史的経緯に纏わる詳細を除いて、全て「知的財産戦略」に(濃度100倍で)記載されているため、先にそちらを読んだ場合、本書を読んでも得るものほぼない。

    著者本人が特許マン人生の集大成として、自身の哲学を体系的かつ詳解に記述した「知的財産戦略」には当然及ばないものの、技術部の源流に入り込むことを重視する点や、特許を「攻めの特許」と「守りの特許」に分類しそれぞれの戦略的運用方法が異なる点、交渉の際は相手に「欲しい」と言わせることが重要でありその方法として如何なるものがあるか、など、極めて重要な点がいくつか本書でも触れられている。

    丸島流特許論が要領良くまとまっている好著。☆4つ。

  • キャノンの特許戦略の歴史がわかったが、2002年の本ということもあり、制度関係の記載は古い。
    キャノンの特許戦略について詳細に書かれているわけではないので、少し期待外れかな

  • ずいぶんまえに古本で購入していたもの。
    2002年の本。

    知的財産に関する丸島儀一個人とキヤノンの取り組みの歴史紹介、これからの知的財産権の在り方の話、みたいな感じであろうか。

    以下、昔製造の現場にいたけど、すっかり忘れてしまった人間のメモ。

    ・(p43にちらっと出てきた公告について)公告制度は、特許庁の審査官が権利化を認めた出願について、公告公報によって公衆に知らせ、特許異議申立を待つというもの。 現在、公告制度、公告公報は廃止され、その代わりに特許公報が発行されている。
    https://www.jpo.go.jp/toppage/dictionary/japanese_ko.html

    ・アメリカはレーガン政権時代からプロパテント政策を進めてきた。それまではむしろ安置パテントだった。特許よりも独占禁止法を重視する考え方のほうが優勢だった。筆者が見るところアメリカは、独占禁止法が強まると特許権が抑えられ、特許権を強まってくると今度は独占禁止法が弱まってくる、そういうサイクルを波のように繰り返している。もしかしたら何十年か後、アメリカの産業力が弱くなったら、振り子のようにアンチパテントに戻るかもしれない。現在のアメリカのプロパテント政策を考える場合も、重要なのはこのような背景。(p90-91)

    ・特許権の訴訟だけだったら、特許を使っているかどうかというのは、特許権というはっきりしたものがあるし、現物もあります。ところが技術情報を使った使わないという場合、使わなかったという立証も難しいし、使ったという立証も難しいのです。しかしアメリカの裁判は陪審裁判です。一般のアメリカ人には、日本人はアメリカの技術をまねするんだという感覚が刷り込まれています。(p121-122)

    ・交渉ができない人ほど裁判に頼るのではないのか、あるいは弁護士に頼るのではないか、と私は思っています。(p.132)

    ・p163あたり、標準化問題。国際標準化機関(ISO、IECなど。この公的な標準はデジュール・スタンダード)では最終的な決定はは各国の投票によって決まる。一国一票。なのでヨーロッパが強い。ヨーロッパ規格をつくれば世界規格になってしまう。反発したアメリカによって、現在は、技術開発の段階で憂慮奥菜企業同士が手を組み、標準化を進める(コンソーシアム標準)。企業戦略としての標準化活動が大切になってきている。
    ↓この辺も参考に。
    https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/ta/de_fact

    ・結局日本が最先端を行っている標準(CDとかDVD)というのは、みんなハードの分野。ネットワーク上のソフトの標準では日本はリードできていない。ソフトが強いのはアメリカ。通信のインフラはヨーロッパが支配。ハードの標準は一時はいいが、別のもっと優れたハードに置き換わってしまう。ネットワーク上の標準は大きなインフラで置き換えるのは大変。これが産業競争力につながる(p168)


    ・私がむしろ問題にしたいのは、職務発明に対する相当な対価を、法律で決める制度はやめてほしいということです。(p195)

    ・(職務発明について。p196あたり)相当な対価というのは法律ではなくて、市場原理にのっとって企業が決められるようにするべき。発明の対価が低ければまずそういう会社に優秀な研究者は行かない。

    ・インターネットの普及に伴い、国を跨って特許の侵害が起こるようになっています。しかし、現在の日本の法律で、国を跨った実施をおさえるのは無理なのです。例えばクレームに、サーバーと端末の両方を入れたとします。でもサーバーは日本にあるけど端末が外国にある(逆でもかまいません)と、現在の特許法ではさばけないのです。(p190)

  • 読んだ。
    今の法制度と比較すると、その後採用されたり改正されたものもあるし、そうでないものもある。この本は2002年2月発行だが、例えば知財高裁発足(2005年4月~)とか、職務発明制度関連(2005年以降何度も)とか。読んでいると自分も諸制度を調べなおそうという気になれたので読んだかいがあった。大学の話はちょっとね…。
    この本自体は読みやすく、1時間あれば読める本。失敗談と成功談の両方載っているのは良いですね。この本の詳細版が出ていると他の方のレビューで見かけたので、そちらも読むかもしれない。

  • 読んで何年も経ってからの記載だがキヤノンへゼロックスが訪れてきてIJの技術情報を技術者自らリークしてしまったストーリーは衝撃的で今でもよく覚えている。

  • キャノンの丸島儀一さんの作り上げた特許戦略。最近はそのとおりやっていないとこぼしていた。

  • 丸島ドクトリンの教科書。どちらかというと知財マンとしての考え方を説いた本だ。技術から知財の道に移った時に購入し、何度か読み返している。先日、丸島ゼミ最終日に先生にサインをいただいた。

  • 第1章 巨人ゼロックスとの闘い(キャノン、多角化への野望
    シンクロリーダー ほか)
    第2章 戦略的特許ビジネスとは(NPシステムの展開
    世界初の液乾式PPC ほか)
    第3章 交渉(海外体験
    屈辱の旅発ち ほか)
    第4章 何のためのプロパテントか(プロパテント政策とは
    アメリカで始まったプロパテント政策 ほか)

  • 図書館の除籍本

  • 組織外に対して交渉をやるには、組織内を固めておかないと分かりやすいが不合理な成果を求められる… それはそうと、後半の諸提言は残念ながら、財界からの提言の悪しき典型例という感じでなんとも。

全73件中 1 - 10件を表示

丸島儀一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジェームス W....
マーク・ピーター...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×