スティグリッツ早稲田大学講義録 グローバリゼーション再考 (光文社新書)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334032722

作品紹介・あらすじ

「非対称情報下の市場経済」の研究によりノーベル経済学賞を受賞し、現在も精力的に世界政治経済システムに警鐘を鳴らし続けているJ・E・スティグリッツ。早稲田大学で多くの聴衆を魅了した、彼の歯に衣着せぬ情熱的な講義を収録すると共に、その裏側にある理論的背景を丁寧に解説する。グローバリゼーションが人々の反感を呼び、不平等が生じ続けているのはなぜか。IMFが推奨する自由化政策の矛盾と、アメリカ型資本主義の問題点を明らかにし、相互依存が深まる世界における国際機関の改革を訴える。-新しい政治経済システムを構築するための貴重な論考である。

感想・レビュー・書評

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  • 思ったのと違った。
    基本的にずっと何とか機構の批判だった。

  • 4

  • 198円購入2014-12-31

  • IMFやワシントン=コンセンサスが示す新古典主義的な市場原理主義に基づいたグローバリズムへの、合理的反論の書。スティグリッツは情報の非対称性は、市場の振る舞いも、政府の振る舞いも最適にし得ない、という。少なくとも新古典主義者たちのいうような、市場による資源分配のパレート最適は起こり得ない。見えざる手は、見えないのではなく、存在しないのだ、とスティグリッツは言い切る。近年のグローバリズムの進展に、付随して起こる金融危機や貧困拡大などの矛盾に、正面から理論武装して戦っているのがスティグリッツなんだな、とわかる。
    前半は早稲田大学で行われた講義録、後半はスティグリッツの弟子でもある藪下史郎氏による、スティグリッツ経済学の解説と展望、という構成。前半の講義録は大変分かりやすい。ただ、後半の理論面の解説がストンと落ちないと、深まりが足りなくなるだろうな、という印象。

  • グローバリゼーションに関して、市場メカニズムの果たす役割を認めつつも、適切な規制や仕組み作りによって市場をコントロールし、GDPだけではない広い意味での発展を目指すべきだという主張は共感できる部分が多かった。

  • 経済学初心者のためにわかりやすい説明が著者によって加えられている。非対称情報の経済学―レモン市場―などスティグリッツのエッセンスに触れられることのできる良書。

  •  グローバリゼーションは様々なリスクをはらんでおり、発展途上国はそのリスクをコントロールするだけの経済力を持たない。したがって、政府が資本の自由化を適切にコントロールする必要がある。グローバリゼーションによってもたらされた東アジアの経済発展は「例外」であり、アメリカ財務省、IMFなどの言うなりに経済を自由化すると、多くの途上国は貧困化する。
     そこで、国際的な金融機関が市場の失敗をリカバリーする必要が出てくるが、IMFはその役割を全く果たせていない。本来IMFなどの国際金融機関は、民間銀行が行う順循環的な貸し付けとは逆のことをしなければならない。しかしIMFは経済危機が起こるとすぐに資金を引き揚げたり、好況期に資金を余計に貸し付けたりなど、民間銀行と全く同じ原理で動いているため、市場の失敗を防げていない。このような状況にIMFが陥っている原因はいくつかあるが、基本的にはIMFの主要委員を民主的に選び、意思決定プロセスを透明化していくことで、改革が可能である。
     このように本書は、「グローバリゼーション下での国際金融機関の役割」について論じている本である。スティグリッツがどのような立場をとっているのかということがわかりやすく書かれている。本文でも言及されていたが、現在の世界経済を理解するには、新古典派経済学、ケインズ経済学だけでは不十分であり、シュンペーターやハイエクなど、これまで異端とされてきた経済学も学んでいく必要がある。これからも幅広い社会科学系の勉強を進めていきたい。

  • とても興味深い本だった。

    経済学的な細かい説明はよくわからなかったが、IMFが抱えている問題などについては理解できた。元々は世界経済の安定化を図るために設立された組織であったが、様々な環境の変化(固定相場制から変動相場制への移行など)や徐々に本来の使命から離れていってしまったことなどの影響により、もはやうまく機能しなくなってしまっているようだ。

    中でも一番問題だと感じたのは、運営および意思決定を行うのが先進工業国の代表者だということ。つまりIMFにおける投票権は経済力に応じて配分されるのだ。そして唯一拒否権を持っている国がある。それはアメリカ。

    ということは、IMFは世界経済の安定化を図るのではなく、先進工業国、特にアメリカの経済の安定化を図るようにその運営および意思決定が成されていくことは目に見えているのではないか。このようにIMFが抱えている問題を理解できただけでも、この本を読む価値はあったと思う。また、他の国際機関も似たような問題を抱えているのではないかという目で、これからはそれらを見守っていきたい。

    なぜなら本書の解説を書かれた荒木一法さんのように、私もスティグリッツ教授のストーリーを「買い」たいからである。

  • IMFの実態 そして市場原理主義への批判

  • 机の脇の本棚を眺めていたら、目に飛び込んできた本。
    最新ではないが、4〜5年前に早稲田大学で行われた講演録と、その解説を収めている。
    みなさんのコメントに詳しいので、感想を少々。

    講演の内容はいうまでもなく、二人の早稲田大学の先生方の解説も分かりやすくて良かったと思う。
    スティグリッツの研究業績や実務経験等を知ることは決してマイナスにはならない。
    痒い所に手が届いている。
    是非、官僚や経済団体の方々に読んでもらいたい。

    【キーワード】
    グローバリゼーションの功罪、国際金融機関の役割、ワシントン・コンセンサス

    「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞」受賞者の講演を生で聴くことができるとは、なんとも素晴らしいことではないか!
    ボブは直接聴けませんでしたので、Podcastなどで生の声を発信してもらいたいなぁ。

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2013年 『入門・経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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