マルクスだったらこう考える (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334032814

作品紹介・あらすじ

民族、宗教、家族、二極化、戦争…。19世紀の「あの人」が解く21世紀の超難問。

感想・レビュー・書評

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  • 2004年刊。著者は神奈川大学経済学部教授。本書は、マルクス理論を現代的に再構成し、各諸問題を解読しようとする書である。著者の試みや意気は買う。しかし、現実政策に落とし込む段になると途端に夢物語と化すのはいかがか。流石に世界同時革命の必要性などを説かれても、実際どうするのか…となってしまう。本書のようなマルクス理論の現代的リビルドに必要な項目は、➀現代における社会事象の問題意識、②かつてのマルクス理論の通説的理解の解説、③②への批判と再解釈、④③の根拠、⑤③から見た➀の解読と問題解決への指針や理念形成、
    ⑥⑤から導かれる具体的制度や方法論か。勿論、全てを網羅できずともよいが、本書は精々①と③④の一部。加え、近代(特に西洋中心主義)への批判言説(構造主義等)を紹介するが、それも新たな枠組みを生み出さず。憲法論・民主主義論として言えば、人間中心主義である近代思想は、個々の人間の尊厳を尊重する理念や、自由主義国での立憲主義的民主主義(単純な多数決支配にしない)に親和的。近代否定は共産主義国的な民主主義(党と国家と国民の一体性を擬制する民主集中制)か、近代以前の絶対王政の許容という、凡そ採用し難い帰結になりがち。
    その意味で、経済学者に有りがちな憲法論の基礎への不味い言及(誤解ではなく、舌足らずの可能性もある)は散見。かつ、先の③において歴史的事実を根拠とする場合もあったが(例えば、資本蓄積のための植民地からの収奪。欧米のみならず日本も含む)、この事実に関する基礎データ、数値データ等根拠が判然とせず説得力がない(せめて植民地大国の英仏のデータは必要だろう。)。現代グローバニズムに対する指摘や、国家超越する資本(多国籍企業等)他、興味深い指摘も多いのに、煮詰めず書かれた著作という印象は拭い去れない。
    なお、19世紀の労働運動の担い手に「職人」と呼ばれる零細資本が含まれていた指摘は興味を引く。思わぬ辛口評となったかもしれないが、マルクス主義のリビルドにチャレンジしている研究者を余り見ず、本書への期待度が高すぎたのかもしれない。

  • 『資本論』解釈を丁寧に始め各分野の理論応用を概観。そのままでは使えないっていうのもポイントで、実現可能性みたいなところに踏み込んでいて楽しかった.

  • マルクスって名前と顔しかわからなかったけど、結構わかりやすく読めた。
    経済学はややこしいな。でも世界を知るいいヒントになるみたいだな。
    いままで金、集団の人間の仕組みを知らない世界にいたから本当に世界って本当に歴史ってあるんだなー。自分の世界の隣にも世界って続いてるものなんだなー。当たり前のことにびっくりする。

  • 筆者のマルクス愛が読み取れる本。
    「あらゆる『地域』の『他者』よ、団結せよ!」

  • 今まで、もやもやとしていたことが、この本を読むと、とてもよくわかったような気になれます。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 21世紀の東京にマルクスが現われたら、グローバル資本主義の跋扈と自分の思想の凋落について、どのように考えただろうか、という導入がおもしろい。

    元来マルクスは、イギリスを中心とする世界市場を前提として資本主義の考察をおこなったのだが、19世紀後半になって、マルクス主義はマルクスの思想を、国民国家を準拠枠とする体系に編成しなおしていった。こうした国民国家単位の社会主義は、グローバリゼーションの進展に対応できなくなり、影響力を失うことになったのである。著者は本書で、グローバル資本主義を準拠枠とする「21世紀型」のマルクス主義の形を描き出している。

    レーニンの『帝国主義論』は、先進資本主義国と植民地との結節点にあるロシアにこそ、革命が起こると論じられている。だが、そうした資本主義国の半「外部」で起こった革命は、共産主義革命ではありえない。むしろそれは、資本主義の「外部」による資本主義への闘争というべきだろう。その後の歴史は、ネグリ=ハートのいう〈帝国〉が、資本主義の「外部」であるロシアを「内部」に取り込む方向に進んでいった。21世紀型のマルクス主義は、こうした〈帝国〉に対抗する、グローバルな連帯の形を求めなければならない。

    そのほか、オリエンタリズムやポスト・コロニアリズム、フェミニズムなど、ポスト・マルクス主義の政治思想が取り組んでいる諸問題について、分かりやすく解説している。

  • 結局マルクス主義とは何たるかを知らねばならぬ、と気がつき、読みやすそうだったこの本を手に取ってみた。

    共産主義=危険思想、資本主義の敵っていうイメージがあったけど、それはわたしも資本というか西洋近代というか、そういうものに締め付けられている証拠だったのね・・・

    勉強が足りないから、まともな感想も書けない。

  • 久しぶりに一冊読了した。現代社会の様々な問題をマルクスの理論をもとに分析、解説。マルクスの現代的意味を問う。社会運動における経済闘争と政治闘争の合一化の必要性や人間の共同性(類的存在)を基底とした社会の創造、それに外部や他者という収奪される側の存在から見えて来る新しい連帯の在り方など、21世紀型マルクス主義が見えて来る。

  • 税金上がってきたし、所得も横並びになってきたし、

    これ、マルクス勉強するしかなくね?

    との思い出購入した本。

    資本主義はひたすら回りに敵を作り、その敵から資本?を搾取することで成長していくんだけど、搾取する対象が減ってきたり、今まで搾取してた国も搾取する側に回ったりと、資本主義に翳りが出始めたのは良くわかった。
    グローバル化することで、地球という一つのコミュニティーを地球人として行き抜く、ということが必要でないか?との話もあった。

    ただ、日本は部落や村八分に代表されるように、常に外的を作る、そういう陰湿な関係みたいなものを作ることに長けており、この構造というのが資本主義そのままの体制な気がして、
    結局共産主義にはなりえないんだという結論に至った。

  • もしマルクスが現代に来ちゃったら現代の諸問題をこう考えるだろうって始まり方だったのにそれは最初だけだったのが残念です。
    的場さんの視点からマルクス主義とは、その現代における意味とは、を解説した感じで、そこまで新鮮さはなかったです。ただアメリカに共産コロニーを作ろうとしていたいわゆる粗野な共産主義や、プルードンの集団労働の価値の考えや、労働者の労働を支えてるのは他のいろんな人なんだから賃金を労働者だけに払うのもなんか違うって考え方はおれには目新しかったです。

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著者プロフィール

的場昭弘(まとば・あきひろ)1952年宮崎県生まれ。マルクス学研究者。1984年、慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。一橋大学社会科学古典資料センター助手、東京造形大学助教授を経て現在、神奈川大学教授。マルクス学の提唱者。マルクスの時代を再現し、マルクス理論の真の意味を問い続ける。原資料を使って書いた作品『トリーアの社会史』(未來社、1986年)、『パリの中のマルクス』(御茶の水書房、1995年)、『フランスの中のドイツ人』(御茶の水書房、1995年)をはじめとして、研究書から啓蒙書などさまざまな書物がある。本書には、著者による現在までのマルクス学の成果がすべて込められている。

「2018年 『新装版 新訳 共産党宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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