わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 296
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033224

作品紹介・あらすじ

「わからない」ことよりも、「わかったつもり」でいることの方がはるかに問題だ!理解力・読解力を磨くための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ある事柄についてわかったと思っていたものでも実は理解が不十分でわかったつもりだった、という経験はないだろうか。実際には不十分な理解なのに分かったと思い、理解を深める歩みを止めてしまう。なぜこんなことが起こるのか。それは「わかった」というのは、「わからない」がない状態であり、すでに自分の中にある程度意味の関連がついている状態だからである。説明を求められればこの状態でもそれなりにできるので問題ないというわけだ。

    これは、理解の安定状態と言える。しかし、悪く言えばわかった状態というのはわからないがない状態なので理解度の停滞、行き詰まりとも捉えることができる。もしわからない箇所を見つけそれを解消できたとき、今までの分かった状態は「わかったつもり」状態だったこととなり、そして、「よりわかった」状態へと更新する。こうした、後から振り返れば不十分な理解こそがわかったつもりである。

    分かったつもりは簡単に脱却できないことを示唆している。なぜなら、もし今(わかった状態)以上の深い理解を求められても、分からない箇所が見当たらないので次の手を打てないからである。故に、わかったつもりというのは、もっとわかった状態へ移行するための障壁となるのだ。では、どうすればこの困難性を乗り越えることができるのか。読み手の持つ文脈を変更し文章から新たな意味を引き出すことで矛盾や不備を炙り出し、読み手の整合性のある想像、仮定、知識の導入によってそれらを解消することである。これが、わかったつもりを脱却する鍵となる。

    本書を読めば分かったつもりからより分かった状態になる体験ができる。小学生用の国語のテキストでも深く読むことで、細かなニュアンスに気づく高揚感が得られる。その体験こそが、深みのある読書を目指す動機となるのだと実感した。

  • 1.なんとなくの理解から抜け出したいと思ったので購入しました。

    2.わかったつもりは「読んだ時の全体の雰囲気を自分の都合のいいように解釈する」ことから起こってしまいます。そのため、理解できたかどうかで判断するとできたのですが、内容を説明できるのか、ここはどうやってこうなったのかという細かいことまで突かれるとわからなくなってしまいます。
    本書では本当の意味で「わかった状態」にするために、段階的に理解力を高める話をしてくれています。

    3.「この内容わかった?」という質問は「この文でわからない単語・言い回しはあったか」だと間違えて捉えてしまう人が大半なので「わかったつもり」が蔓延したのだと思います。
    ただ、質問者側からすると「この内容をしっかり要約して言えるのか?対象との関係性を理解しているのか?」ということを意図して質問してきます。受け手としてやることは、この話しは何がメインで、どのように繋がっていくのかを説明できる状態に持っていくことが真の「わかった」状態だと思います。

  • 文を読んだ時、大体内容は理解できたと思っていたのに改めて聞かれるとよく分からないという事はないだろうか?
    「分かったつもり」とはどういう状態なのか、その原因と対策を順を追って丁寧に解説してくれている。付け焼き刃のテクニックではなく「読む」という事の根本的なことから解き明かしていて、読み方の本を10冊読むよりこの本だけを10回読む方がより理解が深まると思う。


    人は何かを読む時文脈とスキーマを連動させて内容を理解する。
    分かったつもりになるのは要はきちんと文を読めていないという事なのだが、それは「文脈」と「スキーマ」が間違った使われ方をしている事が主な原因だという。


    きちんとマニュアルを読み込んだはずなのに、毎回分かったつもりになって仕事内容が理解できないのをどうにかしたいと思っていた所に出会った本。よく読むと文だけでなく人との対話にも共通する所があるので「自分は人より理解力がない」と思っている人に是非読んでもらいたい。

  • 読解に限らず、人とのやりとりでも、
    「もうちょっと考えたら本当の意味、わかったのに…。オレの馬鹿」と自己嫌悪に陥ることはよくある。

    もうちょっと考えないのは、決して時間がなかったわけではなく、その時点では、分かっていたから。

    その辺の心の落とし穴を国語教材を通して
    明らかにしてくれる好著。

  • この本は文章をよりよく読むための精読法を提示している本です。

    つまり、「わかったつもり」になることで読み飛ばしや勘違い、誤解などが生じて正しく読めないので、それを回避するためきちんと精読しましょう、という内容です。
    そのため、この本では「わかったつもり」の事例を紹介して、よりよく読むためには精読法が重要性であると説いています。
    考え方としてはわかりますが、本書では事例紹介に重きを置いて、具体的な方法論の記載に乏しく、実際の行動につながりにくいのは残念である(つまりいまいち使えない)。

  • お薦めされて読了。
    とても、「わかりやすい」一冊だと思う。

    文章を読めることと、その文章を分かっているかどうかというのはベツモノだと思う。
    ただ、初読がいかに「わかったつもり」な状況であっても、そこで得る感動は他に代えられない。
    同じく、結果・結論によるミスリーディングが起こり得るとしても、一読してみなければ俯瞰的に文章を見つめることは出来ないだろう。
    つまり、「わかったつもり」であることは意識すべきだけれど、未然に防ごうとはしなくて良いということだ。

    「読み」を深めるためには、結局何度も文章に立ち返り、スパイラルに理解を続けていくしかないのだと私は思う。
    そして、そのスパイラルの過程で各々が「わかったつもり」から抜け出していく。一つの作品から、沢山の論文が生まれるのは、決して一つが正しくて、後は間違った読みをしているわけではない。
    どの方向へ認識を持っていくかというのも、その人の経験則やひらめきに左右される。もちろん、それは文を離れてはいけないのだけれど。

    そこでは、書き手の、読み手への配慮も本当なら必要だろう。スムーズな理解を促す文章ではない作品は、幾らでもある。
    また、わかっていないことと知らないことにも隔たりはある。書き手が明示しなかった情報で、我々が路頭に迷うことだってあるだろう。

    「わかったつもり」が「わかった」になる瞬間の満足。
    今迄に気づかなかった伏線から、思いもよらない道が拓けた時の高揚感。
    「読み」を深めることは、読書を楽しむ者にとって一つの目的である。非常に良かった!

  • まさか、小学校の教科書をテキストに文章の奥深さを解説されるとは思わなかったよ。簡単だからといって見逃してはいけないサインが必ずあるし、理解にはそれまでに蓄積された知識が使われることも分かった。
    分かった=停滞状態、のままにするのではなく、その先に何があるかを考えることが大事、ということ。

    • 双竜さん
      裏を読み取るのはビジネスも一緒。それが小学校の教科書で学べるんだから、すごいよね。
      裏を読み取るのはビジネスも一緒。それが小学校の教科書で学べるんだから、すごいよね。
      2012/01/07
  • 自分自身、文脈を勝手に設定して相手の言いたいことを誤解してしまうことがあった。安直に分かったつもりにならないように、どのような文脈で言っているのかを意識することとしたい。

  • 読む時、結論ありきで読んでいないかとか、読み手に都合がよいスキーマを当てはめて文章を理解したつもりになっていることが何回も指摘されています。内容的に示唆に富むと思います。

  • わかったつもり
    →浅い理解から抜け出せない

    わからない→わかる
    はできる
    わかる→よりわかる
    は、「わかる」が、邪魔をする

    ■文脈がわからないとわからない
    →どのスキーマを使ったらいいかわからないから

    私たちの中に既に存在しているひとまとまりの知識
    →スキーマ

    頭の中には膨大な知識がある
    全体の知識の一部分にスポットライトを当てて使えるようにすることを 、 「活性化 」と呼びます

    訳がわからなかったのは 、 「文脈 」がわからず 、したがって 、 「スキ ーマ 」の発動のしようがなかったから

    男の朝の支度の描写も
    「失業者」であることを想像すると
    ひとつひとつの読み込みがかわる
    それは、
    「意識されないほとんど自動的 」なもの


    同じ部分から 、異なる意味を引き出して

    「文脈」から「意味」が引き出され
    部分の「記述」につながる


    文脈は 「諸刃の剣 」です 。適切な文脈がなければ 「わからない 」状態を引き起こしますが 、存在する文脈が強力であればあるほど 、それによる間違いを引き起こす可能性が高くなる

    ■読み飛ばし、わかったつもりの種類
    ・最初から
    ・結果から
    →変化を読み飛ばす
    ・いろいろあるのだな
    →いろいろというので、もう追求をやめてしまう

    読み手が自分の持っている 「ステレオタイプのスキ ーマ 」を文章に簡単 ・粗雑に当てはめてしまうこ
    →間違ったわかったつもり、を生み出す

    ■わかったつもりの壊し方


    自分は 「わかっている 」と思っているけれど 、 「わかったつもり 」の状態にあるのだ 、と明確に認識しておく

    文脈による意味の引き出し
    →引き出された意味による、矛盾、無関連
    →関連づける


    ■仮定を構築することは 、無限定に許されるものではない
    →整合性があるかどうか

    ■整合性と正しさは異なる
    →正しい、と言い切れるものは無い
    →整合性をたもっていればその解釈は認められる

    ■わからない、について

    ①文章や文において 、その部分間に関連がつかないと 、 「わからない 」という状態を生じます 。
    ②部分間に関連がつくと 、 「わかった 」という状態を生じます 。
    ③部分間の関連が 、以前より 、より緊密なものになると 、 「よりわかった 」 「よりよく読めた 」という状態になります 。
    ④部分間の関連をつけるために 、必ずしも文中に記述のないことがらに関する知識を 、また読み手が作り上げた想定 ・仮定を 、私たちは持ちだしてきて使っているので
    ■文脈

    ①文脈がわからないと 「わからない 」 。
    ②文脈がスキ ーマを発動し 、文脈からの情報と共同してはたらく 。
    ③文脈がそれぞれの部分の記述から意味を引き出す
    ④文脈が異なれば 、異なる意味が引き出される 。
    ⑤文脈に引き出されたそれぞれの意味の間で関連ができることで文がわかる


    ステレオタイプ
    無難
    よきもの

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