統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか? (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033750

作品紹介・あらすじ

政府や民間の調査会社など様々な機関が発表する統計は、私たちが経済や社会の動きを数字で把握するのに、とても便利なものである。しかし、世の中に氾濫するたくさんの統計を正確に読みこなすことは容易ではない。「積極的な人」、「大人しい人」、「怒りやすい人」、「泣きやすい人」、「せっかちな人」、「のんきな人」など、人間一人一人が独特の性格や行動パターンを持っているのと同じように、ひとつひとつの統計も、「上振れしやすい統計」、「下振れしやすい統計」、「変動の大きい統計」、「変動の小さい統計」など、独特のクセや動きのパターンを持っているのだ。具体的事例で統計センスを身につける本。

感想・レビュー・書評

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  •  交通事故死亡者数は、ここ10年間で4割も減っている。なぜだろう。警察が努力したから? ドライバーが気をつけるようになったから? いやいや真実は意外なところにあった。警察庁の定義による交通事故死亡者数は、事故が発生してから24時間以内に死亡したケースのみをカウントする。救命医療の進歩によって少しでも延命できれば、最終的には死亡しても「交通事故死亡者数」は減る計算になるのだという。
     また、少子化はほんとうに急速に進んでいるのか?という疑問もおもしろかった。少子化の指標として、よく引き合いに出されるのが合計特殊出生率。15歳から49歳までの期間について、一人の女性が何人の子供を産むかを計算した数字である。これを真っ正直に算出しようと思うと34年間かかるので、実際のところは年齢別に出生率を掛け合わせるという工夫をしている。
     ここで、晩婚化・高齢出産化が進んでいる社会を考えてみよう。それまで全員20歳で結婚・出産した女性が、ある世代以降全員30歳で結婚・出産するようになったとする。この場合、あるタイミングでは「すでに出産を終えてしまった女性と、これからする女性ばかり」という期間が存在することになる。つまり、晩婚化が進んでいる社会では、合計特殊出生率は実際に比べて低めに数字が現れる傾向がある。反対に、早婚化が進んでいる場合は高ぶれする。
     本書はこういった意外な「統計数字」のクセやパターンを解読することで、隠れていた真相を浮かび上がらせる。「統計を疑え」というスタンスの、いわゆる「リサーチ・リテラシー」についての本は、たとえば『「社会調査」のウソ』(谷岡一郎/文春新書)がすぐに思い浮かぶ。本書がちょっと違うのは、統計としての条件を満たしていないゴミ・クズ統計や、ひきょくさい統計数字の使い方を批判するというのではなく、よく引用されるメジャーな統計にもそれぞれの個性があり、見方があるのだという点だろうか。
     第1章は平均貯蓄残高1728万円という数字がいかに「実感」からかけ離れているかという話から、「平均」の裏側を解説してくれていている。
     第2章は、犯罪統計や有効求人倍率、所得格差、などを題材にしながら「みせかけの相関」の解説。
     第3章は、「経済効果」について。景気がいい話のほうがマスコミに取り上げられやすいので、どうしても数字は上ぶれする。さらにたとえば「愛知万博」のおかげで中部圏のほかの遊園地で閑古鳥が鳴いたとしても、そういったマイナスは計上されない。
     第4章はGDPをはじめとした経済統計について、第5章は地下経済について。ここらへんはちっと「実感」と照らし合わせるのが難しい話も盛り込んであるか。前の章になるほどネタもおいしいしとっつきやすいというのは、読者が見えているというか、よくコントロールが効いているということなのだと思う。
     うーん。「どっちが先か」と聞かれたら『「社会調査」のウソ』からと答えるけど、「統計そのもの」の横顔が見えるという点で、これはこれでおもろい本。

  •  著者自身も言っていたが、途中難しくてかなり読み飛ばした。テレビでの印象と違って、かなり固い文章を書かれる人だ。
     様々な調査機関で発表される統計は、色々なバイアスがかかっている、またはバイアスを考慮されていないものや、定義が途中で変わっているものがあるとのこと。交通事故や犯罪の検挙率の実態が興味深かった。2011年発刊のため、経済効果の章で冬ソナについて述べられていたのが、何とも懐かしかった。

  • 「バレンタインデーやホワイトデー、ひな祭り、五月の節句、父の日、母の日、クリスマスなどは、毎年必ず訪れるイベントであるから、経済効果など全く発生していない。」

    統計の数字を読むときに、その統計のもつくせを意識しよう、という本。統計をそこそこ勉強している者には特に面白いと思われる。少々かじっただけだと、あまり興味がないかもしれない。地下経済の話が最終章であり、それがGDPに与える影響については、なるほどー、と思った。

  • 経済統計や平均寿命など、サンプリングや調査の前提条件に思いを巡らすと、確かに様々な制約が課され、その結果実態と多少なりとも乖離してしまうことが起こるということを気に留めておきたい。

  • 平均、通説、経済効果に疑いの目を持つことが大事。なぜならば、統計上の数字が本当に正しく現状を示しているとは限らないから。何を分母にしているのか、どうやって調査をしているのか、何をもってその数字を出しているのか確認するべし。

  • ウチの業界では、作為や偽装まではともかく、意図的に都合の悪い情報は軽く扱ったり(割愛するとか)、たまたま入手できた情報だけからストーリーを組み立てたり、結局は“ひらめき”(クライアントのツルの一声とか)で結論が語られたり、ということが日常チャメシ事である。

    だがそれは一概にインチキだろうか。

    統計を見る目的がそもそもプレゼン対策だったり、時間的制約があったり、所期の目的そのもののが厳密でなかったりすることから、それらはフツーの要請であるし、それによって大きなクライシスが生まれることはまれである。

    一方、統計は過去の事実の集積(を大括りにしてはみ出した部分をカットしたもの)である。「次に起こる一事」が、統計が示す大括りな法則の通りに起こるのなら、例えばケイバなんぞは当たりまくりで成り立たないだろう。(ケイバでいう情報は、統計というには余りにも断片的に過ぎると思うが、喩えばの話で^^;

    そも何かを「やる」ことが重要なのであって、統計を使って「どうやる」かを説得しようというのは、単なる手続きに過ぎないのではないか。なにしろ統計は単なる影絵なのだから。

  • 「社会調査」のウソと一緒に購入。
    ニュースに出てくるような統計がどんな風につくられてるのか、どんな風にいえば、数字で嘘をつけるのかがわかる。

  • 【由来】
    ・弾本の「地下経済」から作者の本をamazonで検索して

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • どうにも中途半端。例に出す数字・計算の細部を掘るわけでもなく、統計との付き合い方を示すわけでもく。「統計ってこんな感じで算出するから信用できないよ」止まり。もう一歩踏み込んだ何かが欲しかった。

  • この本読むと統計数字って信じられなくなる。

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著者プロフィール

神奈川県立横須賀高等学校出身。慶應義塾大学経済学部卒業。浜銀総合研究所入社。1999年日本経済研究センターへ出向。2000年シンガポールの東南アジア研究所(ISEAS)へ出向。2005年6月まで第一生命経済研究所経済調査部主任エコノミスト。2005年7月からBRICs経済研究所代表。2007年同志社大学大学院非常勤講師。日本で初めて地下経済の研究に取り組み、地下経済に関する著作も多数発表している。またワーキングプアの啓蒙書も多数発表。BRICsに続く経済発展が見込まれる国々として、ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチンを総称したVISTAという造語を提唱した。

「2018年 『日本の「地下経済」最新白書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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