- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334033873
作品紹介・あらすじ
西洋、とくに地中海諸国は古来、食べることに貪欲であり、食にかける情熱はしばしば料理を芸術の域にまで高めた。また、食べ物や食事は西洋美術においては常に中心的なテーマであった。中世にキリスト教によって食事に神聖な意味が与えられると、食事の情景が美術の中心を占めるにいたる。この伝統が近代にも継承され、現代もなお重要な主題であり続けている。このことは西洋特有の事象であり、西洋の美術と文化を考える上できわめて重要な手がかりとなる。本書は、食事あるいは食物の美術表現を振り返り、その意味を考えることによって、西洋美術史を別の角度から照らし出そうとするものである。
感想・レビュー・書評
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人間の家族は、もともと食べ物を分け合ってともに食べるという人類特有の行為から形成された。食事は単に生存の手段であるだけではない。日々の食事は家族団欒の場でありコミュニケーションの場。そもそも食物とは、粗野な自然を加工して人の口に合わせたものであり、自然の征服という側面をもっている。食べ物を描いた絵画は、自然が切り取られて人に提供されているような快感を観者に与えたのである。食物と絵画にはともに、生や現世を肯定しつつ、自然を克服して人の手に入れられるようにしたものという共通点があり、それ故に食物を描いた絵画が多い。食事こそコミュニケーションの最大の手段であり、宗教と芸術につながる文化。その意味において、食事と美術、さらに宗教は一直線につながる。
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本書においてはキリスト教を背景にした食事の情景を主たるテーマに論じられているが、必ずしも西洋社会に限らない普遍的な価値観を示しているように感じられた。
あと著者がジロリアンで吹いた。 -
感想
食べることの意味を考える。西洋の歴史観自然観で食事を分解再構築する。より自然との調和を目指す東洋ではどのように考えるのか。考察を進めたい。 -
「食べること」「食べもの」の西洋美術(一部、日本と中国)における表象を、古代から現代まで詳細に語る。
キリスト教を基調に、食べる、生きる、死ぬ、を聖と俗、善と悪を反転させつつ、論じる手腕はみごとだ。
引用作品が白黒で見にくいものが多かったのが少し残念。 -
「食べる」という概念の変遷を軸に、美術史を概観した本。書きぶりは実に平易で、かつ著者イチオシの作品は熱く語られ、実に面白くスイスイと読める。
やっぱ知識があると、美術の楽しみが数倍にふくれあがるなあと再確認した次第。 -
キリスト教というのは確かに食べ物に関するエピソードが多い。パンとワインの話しかり、最後の晩餐しかり。そもそも原罪だってリンゴの果実を食べたのが原因だ。だからこそ西洋美術史にも食の描かれ方についての系譜が存在し、そこに時代の変遷を読み取ることができるのだろう。イコンとしての食材や祝祭としての食事、貧困と、祝宴。印象派の時代になると食は主題から外れつつあるものの、ウォーホルがそれを新しい形で捉え直したという話も納得。色の喜びと愉悦を描いた作品の数々は特に印象的であり、著者の言う通り愛すべき作品だ。
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「食」という観点から西洋絵画の歴史を推察した本。普段目にしない絵も載っており、面白かった。
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絵画は宗教との結びつきが強く、キリスト教は食物との関連事項が多い。だから西洋美術には食物が登場してくる。
食物は生きること・死ぬこととも深く繋がっているから、宗教だけでなく画家の思想も反映されてくる。
宗教画~二重空間~静物画~近代美術への変遷が追えて面白かった。知的好奇心が満たされました。笑
豊かな表現力が読んでいて心地よく、ずっとこの人の話を聞いていたいな~という感じ。 -
食物もしくは食事をテーマにする作品は、西洋美術以外ではあまり見られないという。(いわれてみれば、確かにその通りかもしれない。)『最期の晩餐』に代表されるように、キリスト教と美術の関係性がその大きな理由だったが、時代とともにそうした精神性が変化し、写実主義や印象派を経て、キャンベル・スープの缶がメッセージを持つ時代になる。ルネサンスから現代までの食の美術的解釈を一挙まとめているが、結局『最後の晩餐』に帰着するのが興味深い。本書では、有名なダ・ヴィンチ作品以外にもあ、幾つかの『最後の晩餐』が引かれているが、ダリの作品はちょっと驚いたし、ウォーホールもこのテーマの作品を残していたとは知らなかった。