字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033927

感想・レビュー・書評

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  • ・新書の中でも表現がわかりやすく、中学生でも読みやすい。

    ・字幕映画の裏側を初めて知った。字幕屋が、元の言語の表現により近い表現を選びつつも、字数制限や配給会社の要求に従わざるをえない状況。
    ヒットのために表現を捻じ曲げ、「涙、感動、泣ける」と歌って観客を呼び込むこと。それにまんまと乗せられる観客。

    ・観客が漢字を読めない、文脈を読めないせいで、説明しすぎな字幕を要求される字幕屋の苦悩。

    ・私だったら、あえて変な日本語に変更させられるのは、仕事であっても我慢ならないと思う。字幕屋ってすばらしい。

  • 映画の字幕ができるまでにこんなにも翻訳者が急かされていることを知り驚いた。
    翻訳者がどのように字幕を作成しているのかを知るためにも、映画の字幕を依頼している側の人にぜひとも読んで欲しい。
    http://ayakakingdom.blog.jp/archives/5439932.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「映画の字幕を依頼している側」
      いやー多分知ってて、遣ってるのよね。悲しいけど、、、
      「映画の字幕を依頼している側」
      いやー多分知ってて、遣ってるのよね。悲しいけど、、、
      2014/05/01
  • 気楽に読める、映画翻訳の舞台ウラ話。楽しく読みました。
    さすがにコトバを職業にされているだけありますね、文章が
    キャッチーです。
    1秒あたり4文字程度しか使えない、という制約のなかで、
    悪戦苦闘しながら字幕をつむぐ苦労ぶりが、よくわかりました。

  • 再読

    最初に読んだ時には爆発的に面白く感じたのに
    今回はそうでもなかった。

    その時にぴったり旬の本、だったのかしらん?

    なんだか怒りっぽい人なのかな?
    って言う印象が今回は強かった。

    字幕屋さんの現場は過酷なようです。

    映画(字幕)業界の裏話に興味がある方、
    日本語にこだわりたい方に、お勧め。

  •  輸入映画につける字幕を作成する職業がある。業界では字幕屋というらしい。
     これは一字幕屋の字幕にまつわる辛口エッセイ集。業界の舞台裏,職業倫理からくる配給会社とのバトル,そして愚痴,ぼやきが満載で,実におもしろい。そして,これは重要なことだが,万人に読みやすい。
     字幕屋さんは皆英語が堪能で,映画を見つつスラスラ訳出しているのかと思ったら,これが大間違い。送られてくる英語の台本をもとに,辞書を引き引き仕事をするらしい。大物字幕屋ならいざ知らず,少なくとも筆者はバイリンガルとはほど遠いそうだ。映画一本,納期はふつう一週間。これはきつい。そして最も悩ましいのが,字幕特有の「一秒四文字」という長さの壁。この点,吹替原稿は自由がきくそうだ。本ではいくつも例が挙げられているが,いかに苦心惨憺の末,字幕が捻り出されているのかを思い,ほとほと感服する。
     しかも,映画の扱うテーマについては,翻訳前に予備知識を仕入れておくことが必要だ。仕事を受けたらまずは本を買い込み勉強。英語以外の映画にも,たいてい英語台本があって仕事になるというが,二重翻訳は誤訳の危険をはらむから,原語の辞書を買ってきて万全を期す。日々勉強なのだな。とはいえ,仕事で勉強した知識をため込んでいる訳ではない。そんな余裕はない。必要な知識を次々仕入れ,仕事が完成すると忘れるに任せる。著者は「ざるのごとく」というおもしろい形容を使っている。
     仕事内容に関しての配給会社とのバトルがこの本のサワリだろう。著者は結構歯に衣着せずに書いていて,それがためにおもしろいのだが,こちらの方が心配になってしまう。相手はクライアントなんだし。まあ作品名は伏せたり,フィクションを入れたりしてぼやかしてはいるようだが。争点は大きく三つ,字幕に盛り込む内容,適切な表現の問題,そして字幕の表記に関することである。
     売るための字幕を作れという,クライアントの要求は時に厳しい。ラストで「泣かせる」ために,台本にない台詞を是非入れて欲しいというような注文があるそうだ。無言のシーンなのに,字幕で喋らせろということさえある。全くの商業主義で撮られた映画なら字幕屋も折れるが,製作者が人々に伝えようとした,誠実なメッセージをねじ曲げてしまうのは字幕屋魂が許さない。資本主義の巨大な圧力に,ドン・キホーテのように立ち向かう字幕屋の姿は輝いて見える。
     表現を適切なものにする。まことに結構なことだが,臭い物にフタをすれば問題は解決するのかというとそう単純なことでもない。差別表現などに関し論争の歴史は古いが,前世紀後半にアメリカで発祥して日本にも波及した「政治的正しさ」論は極端に潔癖なところがある。「子供」も「肌色」もダメとか,おかしいと感じる人も多いはずだ。字幕屋は製作者の意図や観客の受け止め方を想像して表現に苦しむ。一方,クライアント側は禁止用語集に登載されているかどうかという形式的基準に敏感で,両者の間にはかなり温度差があるようだ。用語集という権威に従っておれば大丈夫,というのは安易に過ぎ,自らを萎縮させることでしかないのでは?と思うが,図体が大きく自分が大事な会社という組織では不可避の行動なのだろう。
     表記について。観客が読めないから,難しい漢字は使わないでくれという注文。難しい漢字だからといってこれをひらがなにしたのでは字数が増える。これが字幕屋には恐ろしい。無難に別の語に言い換えられればいいが,言い換え困難な語の場合が悩ましい。字数が増えないまでも,いわゆる「まぜ書き」は避けたい。「比喩」を「比ゆ」と書くのは字幕屋の良心が許さない。著者は「比喩」でも読めるでしょというスタンス。ごもっとも。会社の意嚮によりやむなくフリガナをつけることもあるが,まぜ書きはやらないようだ。エライ!読んでいて大いに溜飲が下がった。小説家や大学の先生なんかが四角い顔でまぜ書き批判をしていても,むべなるかなという感じだが,庶民にもっと近い字幕屋さんも同意見なのはうれしい。確かに,映画字幕でまぜ書きを見た記憶はないな。テレビ局も見習うべし。
     字幕屋は世間の平均を模索する。海外映画の多くは,日本人向けにつくられたのではない。アメリカならアメリカの,フランスならフランスの観客向けに創られている。映画製作者は,その主要な対象者がもっているであろう教養を前提にして,作品をつくるのだ。聖書に出てくる警句など,欧米では常識なのに日本であまり知られていないものも多い。そういった海外映画を観る上で前提となる知識を,字幕はどこまで伝えられるか。正解はないが,字幕屋は努力する。タダでさえ字数制限がある字幕。映画の背景,メッセージを余すことなく観客に伝えることはむづかしい。最近,日本の観客の教養レベルが下がってきているともいう。確かに,そうかもしれない。私も妻と映画を観ると,だいたい妻より内容理解が不十分で,解説を加えてもらったりする。耳が痛い。
     いま字幕屋さんは誠実に仕事をしているのだな。ただ最近は配給会社でも字幕を軽視する風潮が強い。以前は考えられなかった,大人向けの吹替版上映はもはや普通になり,字幕のための予算は減らされる。新人の字幕屋が安いギャラで使われ,潰されてしまうこともあるという。そんなことでは職業倫理は保てない。
     字幕もいろいろ大変そうだが,読み終えて,映画が観たくなった。

  • 映画の字幕翻訳は、普通の翻訳と大きく違う。俳優がしゃべっている時間内しか翻訳文を出せないので、セリフの内容を100パーセント伝えられない。いうなれば字幕は、「要約翻訳」なのである。映画字幕翻訳を始めて約20年、手がけた作品数は1,000本余りの著者が、外国映画翻訳の舞台裏、気になる日本語などについて綴る。
    (「BOOK」データベースより)

    あなたは字幕派?それとも吹き替え派?
    最近は外国映画を吹き替え版で観る方が増えているというニュースをしばらく前にテレビで知って驚いた。私は断然、字幕派だからだ。その方が臨場感が伝わると思うし、映画自体の雰囲気が味わえるような気がするので。
    吹き替え派の方々が言うには、字幕だと読むのが面倒になるとのこと。そうなのかぁ・・・。
    外国のTVドラマだと吹き替えの声のほうが馴染んでいる場合があるので、両方楽しんだりする。「フルハウス」「フレンズ」「名探偵ポワロ」「刑事コロンボ」など。DVDを観るときは吹き替えのほうが多いかもしれない。けれど、ストーリーがわかっているので、字幕版の音声を聞きながら英語の聞き取り練習をすることも。

    さて、字幕を創っていらっしゃる方が書いた本ということで、お堅い日本語批評本かと思っていた本書。読んでみると、かなり柔らかいので驚いた。帯に「爆笑御礼申し上げます。」とあるけれど、そのとおり、数カ所で爆笑してしまったほどだ。かなり軽い口調でポンポンと言いたいことを書いているという印象。字幕屋さんの苦労というか、愚痴というか、文句というか、そういうことがいろいろと・・・。ただそれが、ネガティブな感じではなく、笑い飛ばせるような雰囲気で書かれているので、読んでいて気持ちがいい(Amazonレビューを読むと、文体に好き嫌いはあるようだけれど)。

    字幕を創るという作業は、映画の演出と似ているのかもしれない。その台詞の表現の仕方一つで登場人物の印象を変えてしまう可能性もある。だから、その映画自体を何度も観たり、台本を熟読したりして、映画の世界を理解しなければ、字幕を付けることはできない。ときには、その国の歴史や文化を知る必要だってある。大変な作業だなぁと改めて思う。それに、「読むのが面倒だ」という方々が増えつつある今日この頃。字幕に用いる言葉にも難易度の高いものを使うな、という要請もある様子。より短く、簡潔に、そしてできるだけ正確に。難しいよ、この作業。正確であればいいというものでもないし、原作通りであればいいということでもない。字幕には字幕のルールというものがあるわけだ。台詞一つ一つが単独で存在しているのではなく、前後のストーリーの台詞でいろんな部分をフォローし合って、成り立っている。原作通りに訳せばいいのなら、楽だろう。けれど、それじゃ字幕がメインになっちゃって、大事な映画自体を楽しめなくなってしまう。「字幕は空気のように」。それがあることを感じさせない字幕が理想なのだそうだ。

    配給会社の思惑によっては、表現を変えさせられたり、削りたくない部分を削らされたり、逆に入れたくもない台詞を入れさせられたりといろいろと不満もあるようだ。その気持ちはわかるなぁ。泣ければいいってもんじゃないでしょ、というのは私もよく思う。「感動させよう、泣かせよう」というあざとさが見え隠れする映画は、好きではない。映像を見て、そこから何を酌み取るかは人それぞれであるし、それを強要されたくはない(強要されもしないけれど)。

    最近は、映画館に行くと、人気のある外国映画には必ずと言っていいほど「字幕版」と「吹き替え版」がある。「吹き替え版」は子供用というわけでもないのは前述したとおり。そのうち「字幕版」が無くなってしまわないかと、私も不安になる。本当は言語そのものを理解できればいいのだろうけれど、それを達成するまで映画が楽しめないとなると、それもまた非常に困る。永遠に邦画以外は楽しめない、ということにもなりそうだ。「字幕版」よ、消えないで!と心から祈る。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      決まった文字数に無理矢理押し込む(失礼な言い方になってしまった)。意訳を越えて雰囲気だけのコトもあるのでしょうが、とっても素晴しいですよね。...
      決まった文字数に無理矢理押し込む(失礼な言い方になってしまった)。意訳を越えて雰囲気だけのコトもあるのでしょうが、とっても素晴しいですよね。
      私は学生時代、字幕派だったのですが、PCとにらめっこしている所為で視力がガタ落ち。已むなく吹き替え派になりました。。。
      2012/08/07
    • れもんさん
      厳しい制限の中でそのシーンに最適な言葉を選ぶ"字幕屋"の方々のお仕事はすばらしいですね^^
      吹き替えも、すてきな声優さんもたくさんいらっしゃ...
      厳しい制限の中でそのシーンに最適な言葉を選ぶ"字幕屋"の方々のお仕事はすばらしいですね^^
      吹き替えも、すてきな声優さんもたくさんいらっしゃいますから、楽しんでください^^
      2012/08/08
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「最適な言葉を選ぶ"字幕屋"の方々」
      制限が素晴しさを生む例ですね。
      「すてきな声優さんもたくさん」
      淡々と喋られる方は結構好きだったりすの...
      「最適な言葉を選ぶ"字幕屋"の方々」
      制限が素晴しさを生む例ですね。
      「すてきな声優さんもたくさん」
      淡々と喋られる方は結構好きだったりすのですが、お名前を覚えようと言う気が無いみたいで(他人事ですな)失礼なコトに誰が誰やら、、、
      2012/08/10
  • もしあなたが翻訳(特に映像関連)に興味があるのであれば
    ぜひ読んで欲しい本。

    翻訳家のエッセイにありがちな単なる自慢話にならず、
    たんたんと筆者が経験した翻訳上のよもやま(+苦労)話を
    分かりやすく書いてあるので、とても勉強になるし共感できる。

    翻訳自体に興味がなくても、吹き替えや字幕と言語の違いに
    疑問を持ったことがある人も、文句を言う前にぜひ一読して欲しい。

  • 字幕翻訳家の著者が字幕をめぐる悲喜こもごもを書いている。とても文章力があり楽しくよめた。全体的にはtoo muchなcostumer friendlyと日本語力、語感力の低下に警鐘をならしているようによみとれた

  • 軽妙洒脱な語り口調で、ドキリとするようなことを言い当てていて、
    読んでいてスカッとします^^
    私は各章でくすくす笑ってしまっていました。
    映画翻訳についても、ことばの遣い方についても、参考になりました。
    素人としても楽しめる一冊だと思います。

  • 文句なくおもしろい!<BR>
    そして太田さんのキャラ、好きです。<BR>
    「あきらめずに、すくい続ける」ざる知識のススメは見習いたい。<BR>
    過度な営利主義に対して「なにかを売るというのは、その商品を大切に扱うということのはずだ」という指摘、<BR>
    過度な効率主義に対して「プロとしての誇りはないのか」という批判、<BR>
    まさにその通りだと思う。<BR>
    私が最近憤っていることを代弁しているかのよう。<BR>
    某会社の人たちに読ませたいです。<BR>
    それに限らず、最近の世の中の営利主義と効率主義には<BR>
    ほとほと嫌になります。消費者なめんな。

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