バール、コーヒー、イタリア人: グローバル化もなんのその (光文社新書 296)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033965

作品紹介・あらすじ

バールとは何か?単にお酒を提供するカウンター形式の店でもないし、喫茶店とも少し違う。コーヒー(エスプレッソ)に軽食でも大丈夫なら、お酒におつまみでもかまわない。気軽に入れる立食中心の店で、時にケーキ屋やジェラート屋、タバコ屋、トトカルチョ屋、コンビニにも化ける。そんなバールが、人口五八〇〇万の国に、個人経営の店を中心に一五万五六〇九軒も存在する(二〇〇六年)。そして、イタリア人の九八パーセントがバールを利用し、外食費の三分の一をも投じている。イタリアの象徴、そして、スタバ化、マクドナルド化に抗う最後の砦としてのバールの魅力を、書き尽くす。

感想・レビュー・書評

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  • イタリア・バールマン協会 アンジェロ広報部長のことばが印象的。

    「僕はね、バールマンというのは、とてつもなく大切な仕事じゃないかと思ってるんです。客の立場になってみれば、バールというのは、街の入り口、覗き窓ですよ。どんな街なのかな、ということを知るための要所なんですよ。つまり、たまたま立ち寄った一軒のバールで、街の印象はがらりと変わってしまう。そうじゃないですか」

    「店が人を惹きつける力は、結局、バールマンと言う人間にあるんです。その観察力、目と目で交わす会話、そこから生まれる小さな信頼関係です。それがなければ、僕らは、カフェを入れるだけのただのマシーンと変わりありません。日に何百杯もエスプレッソを淹れて、注文通りのカクテルを作り、その間に皿とカップを洗う。こんな重労働はないですからね。客が自分を信頼して通ってくれるという張り合いが、この仕事の本当の面白さでもあるんです」

    店づくりは、まちづくり、なんだよなぁ。やっぱり。

  • ◆バール(BAR) はどんな場所かというと、じつはなんともいえない。字のとおり酒を提供するバーかと思いきや、コーヒーやパニーニを提供するカフェやコーヒーハウスともいえるし、生活必需品を提供するコンビニでもある。なにより、その地域の人はもちろん観光客も集まる情報の拠点(本書の言葉を借りれば、”共同体への入り口”)。そこにいるバールマン(バリスタ)は、コーヒーやお酒に関する知識を備えたスペシャリストというだけではなく、共同体の入り口を守る番人というべきかもしれない。

    ◆他方で、バールをモデルにしたスターバックス(おそらく、ドトールも)との違いも明らかになる。それは、徹底してマニュアルと画一化を嫌うイタリアの気風だ。その地域にはその地域のメニューがあるし、客が気まぐれに注文したものも出来る限り対応する。一般には「全国どこでも同じ品質」で「素早く提供される」ことは便利なことだけれど、イタリアはそれを徹底して拒否する。この点でバールは「グローバル化」とは異なる信念に根付いているし、バールをモデルにしたこれらのチェーン店とバールは大きく違うのだと思う。なんとも面白い。

    ◆それにしても、イタリアではチルコロなどの社会的な活動が活発なのに、どうしてフェアトレードは下火なのか。気になる。

  • 読みやすい。パラパラとイタリア行の飛行機で読み終わった。
    フェアトレードに全く興味が無かったけど、知らないふりして安い商品を買うのってやっぱ悪いことだよな…
    実情を知りつつも商品化して利益がっぽりのメーカーにお勤めの方の心中を聞いてみたい。

  • イタリアのバールのことをもっと知りたくて読んだ一冊。バールの奥深さを知ると共に食と伝統を重んじるイタリアの頑なな姿勢とこだわりに改めて敬意を示したくなった。バールマンになることは狭き門のエリートというのも驚き。バールって本当に面白い。

  • イタリアにはスタバは入らない。。

  • コーヒー好き。イタリア好き限定本です。
    両方好きなら、何度も読みたくなり、挙句の果てにイタリアまで
    行ってしまうでしょう。
    それくらい、情報盛りだくさん。
    カフェも文字だけで勧められているので、
    想像力をかき立て、旅情を誘います。

  • スローフード発祥の地イタリア独特の店『バール』をスローフードを日本に紹介した著者が語る本。
    カウンターのある飲み屋でもなく喫茶店でもない、その土地に馴染んだ独特の空間は読んでいて「行って見たい」と思わせられるほど魅力的でした。
    仕事に誇りを持つバールマンの話や歴史からコラムでのこまごまとした情報、世界の情勢とコーヒーの関係と幅広く扱われていました。

    余裕のある人が1杯のエスプレッソを注文して2杯分の代金を支払い、窮した人がその1杯分の代金でエスプレッソを口にできる『カフェ・ソスペーゾ』がとても素敵でした。
    リーマンショック、通貨危機とこの本が書かれてから起きたけれどこの素敵なシステムが残っているといいなぁ、と思います。

  • イタリアには電車のホームでフラフラしているような酔っ払いがいないと言います。バールがあまりにも身近にあり、家のすぐそばで引っ掛けるから、なのです。
    趣味の発信も打ち合わせもバール的なところから行われ、飲食なしの会合などそもそもありえないと。そして、スターバックスを小馬鹿にした(あるいは知らない)態度。
    日本のバール風なところや、会合と飲食が組み合わさっているものは、グローバル的視点、経済的視点からの取り組みが多く、歴史あるご近所のお店とはまるで異質で、これからも多分異質なままでしょう。イタリアが、なかなか羨ましい。
    この本の通りなら、まさに「グローバル化もなんのその」ですが、書かれて数年たち、「金融危機もなんのその」になっているのか、気になります。お上が悪いことをしてもなお、お上に期待する我が国とは違い、なんのその、になっている、ような期待をします。

  • イタリアのバールに行ってみたくなった

  • コーヒー文化を取っかかりにイタリアという世界を覗く試み。
    最後の方では
    コーヒー豆のフェアトレードの話題が出てきたりして、
    いろいろタメになりますが、一番唸ってしまったのは、
    ナポリの古いしきたり(?)「カフェ・ソスペーゾ」。
    もう廃れてしまったのでは?と言われているそうですが、
    是非、残っていて欲しい風習ですね。

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著者プロフィール

島村 菜津:ノンフィクション作家。福岡県出身。東京藝術大学芸術学科卒業。十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!』(新潮文庫)はスローフード運動の先駆けとなった。著書に『フィレンツェ連続殺人』(新潮社、共著)、『エクソシストとの対話』(小学館、21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞)、『スローフードな日本!』(新潮社)他。最新作は『バール、コーヒー、イタリア人~グローバル化もなんのその~』(光文社新書)。

「2017年 『ジョージアのクヴェヴリワインと食文化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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