高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334034238

作品紹介・あらすじ

非常勤講師とコンビニのバイトで月収15万円。正規雇用の可能性ほぼゼロ。

感想・レビュー・書評

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  • 専門性が極めて求められる大学院はほとんどの大学に備わっています。
    国の支援による大学院システムが学生搾取へと繋がるプロセスを見出した本です。

  • 私もなりかけていたので、この問題には切実な思いをもっているつもりです。そんな私であっても、この本は私怨がずいぶんとまじったじめじめ本だと思いました。文系での大学院進学は、よほど研究がしたいから、あるいは、それしかできないから、するものであって、それに政策のバックアップが十分になされるべきだというのは、どうにも筋違いのような気がするのです。そりゃあ、いろんなケースがあると思うので一概には判断できないでしょうけど。(2015年8月7日読了)

  • 高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書) 新書 – 2007/10/16

    大学院(特に文系)に進学したら地獄にまっしぐらです
    2016年1月14日記述

    水月昭道氏による著作。
    2007年10月の本である。
    ただ指摘している事は全く古くなっていない。
    残念ながら現在進行中のままなのだ。
    本書内では主に文系の大学院進学者を想定している感じ。
    理系だともう少し具合が違うのだろうか。

    自分も文系で大学院進学は厳しいとは認識していた。
    しかしここまでとは思わなかった。
    大学院重点化策のあまりにずさんな、あまりに悲惨な、あまりに理不尽な結果に怒りを覚える。
    大学院重点化による計画的な大学院生増加政策とは悪質な振り込め詐欺に他ならない。
    どうなるか将来を検討もせず、そして誰も責任を取らない文科省官僚、大学経営者、教授には反吐が出る。

    90年代前半からスタートした大学院重点化で増えた大学院生数と少子化で減った学部生の数が奇妙にほぼ同じであることも驚くほかない。
    (90年代後半からの就職氷河期の学生の就職先が見つからないという問題を考えれば当時は雀の涙程度の意義はあったかもしれない。無論、今は無し)

    そして非常勤講師の待遇のヒドさ。
    正規、非正規の格差は民間、公務員でも酷い。しかしアカデミアほどではないのだ。
    専任講師や准教授になると実質的に終身雇用になり、教授になれば年収1000万円を超える。
    しかもその非常勤講師達は学費を払う為の奨学金(学生ローン)の返済も合わせると手元にお金は残らずむしろ赤字になってしまうだろう。
    リアルな地獄の行進をおこなっている。
    その非常勤講師達によって大学の授業は成り立っている。
    近隣の各地の大学で必至に教えている。
    入試難易度差はあっても大学教育に格差など実質無い。
    しかしこんな状態で授業料に見合うような高品質なものを提供し続ける事は出来ないだろう。
    日本の大学は、最低品質のサービスを最高料金で提供する産業なのだ。

    2015年6月12日の日経新聞夕刊記事だと会計大学院で既に13校中9校定員割れと報道された。
    立命館、甲南、法政、2017年からは中央も廃止。
    法科大学院もボロボロで先日成蹊大学法科大学院の廃止が決まったばかりだ。
    この流れは構造的なものであり本書の指摘する事を真正面から受け止め改善していかないなら一般の大学院も会計大学院、法科大学院のように廃止される事態になるだろう。

    労働力不足社会に突入した今後の日本にとって無用な大学院は廃止させるべきだ。
    昔の大学院生数7万人程度にまで縮小させて何も問題はあるまい。
    現行の大学院生数26万人は多すぎる。

    現状大学院生になってしまった者はアカデミアにこだわることなく民間、行政に就職される事を勧告したい。
    この腐った構造に身をおいてはいけない。
    水月昭道氏も指摘するように「末は博士か大臣か」なんて言葉は死語と成り果てている。

    本書終盤に水月昭道氏が書いていた学校法人は利他の精神を持てというのは理想論であろう。
    そもそも私立学校は経営が安定しているならともかく
    そんな綺麗事だけでは経営は難しそうだ。
    本書で登場した私立コースにいた女子学生がいざ国立大学に受けると手のひら返しをするのには呆れるばかりだ。
    当の女子学生が卒業後に不信感を抱き母校への寄付などしないのも当然だ。
    ただこの事態は私立高校ならば十分あり得るなと思ったのも事実だ。
    (私も私立高校出身だ。何をするにも金ばかりでうんざりした記憶が強い。よほど特別なトップ校以外は私立なんて行く意味ないと当時思ったものだ)

    利他の精神うんぬんについては、小中高は実際に数の上では公立学校がほぼメインだからまだマシだろう。
    大学は逆に数の上で私立が多い。
    経営的にも利他の精神どころではない。
    大学院生数を無意味に増やしてしまった遠因になっているように思える。

  • 高校生、大学生に読んで欲しい1冊。大学院の厳しい現実を書いた本。大学院への進学が普通となった今自分の進路を後悔がないように決めるためにこの本はとても役に立つと思います。

  • ここで出てくる高学歴とはAランクの院生。40近くになっても非常勤講師等の不安定且つ低所得の女性達。特に人文・社会系を専門としている女子は理系と比較して教授への道は絶望的であり、なのに多くの女性は理系にいかずに・・・(ま、理系にいっても厳しいんだが)

    娘2人をもつ私とすれば間違っても『パパ、あたい言語学者になるでー!』なんて言い出したら死にたくなるような悲しい現実。ま、ビッチだから心配ないわw

    で、一番印象に残ったフレーズが

    『磨き過ぎた女子力はもはや妖刀である』

    磨き過ぎた女は、自分はもはや抜き身の刀が持つ妖しい光しか放っていないことに気付いていない・・・・

    あっ、そういえば私の同級生には『妖刀』が・・・ゴホッ!ゴフッ!ゲフッ!・・・・・・

  • 大学院に進んだ挙げ句にフリーター、という道を辿る学生達を生産していく仕組みが作られたことを糾弾する本。

    発端は1991年に当時の文部省が大学のレベル向上を狙って大学院の設置を増やすよう促す政策ができたことに始まる。この制度が、少子高齢化を見据えた大学の「経営」と既得権益を守ろうとする層の思惑に利用され、折しも就職氷河期と重なったために「一時避難」的に大学院に進む学生が増え、その結果が高学歴ワーキングプアを大量発生させた、というものだ。

    学生の弱みにつけこみ、教授という立場を使って既得権益層の利益のために誘導した挙げ句、教授の限られたポストはその層が独占し、学生達を「大学の経営を支えるための人柱にした」と結論付けている。フリーターにならざるを得なくなった大学院生達は「自己判断と自己責任」の名のもとに切り捨てられていく。

    仕組みを作り上げた既得権益層に対する恨み辛みに満ちた本書。確かに、当時の既得権益層による悪巧みはあったのだろう。このような話は大学だけでなく、民間企業でも「老害」という形でよく見聞きする。それでもなお、「ポスト(市場)がない所で待ち続けるくらいなら、博士や教授の立場に見切りをつけて他の世界に踏み出すべきではなかったのか」という感想も持ってしまう。

    騙された当事者達にとっては非常に気の毒な話なのは確かだが、かたやそんな見方もしてしまう本だった。

  • 15年くらい前の本ですが、今に通ずる内容も多く、あのときのこんな政策が今に繋がっているのかと勉強になります。

  • 13年前の本だが、その後の状況はさらに酷くなっているように思える。法科大学院は有名大学でも撤退が相次ぎ、大学院への進学者も減り続ける傾向にあるのを、留学生(主に中国人)で定員確保しているのが実情である。クラスの半分以上は留学生なんてのは当たり前で、中堅以下の大学では日本語教室化しており、学部よりもレベルの低い講義が行われている状態のようである。
    著者は国や大学側の責任を追及したいようである。確かに詐欺まがいの事が行われて不幸な人々を数多く生んでしまった結果に対する道義的な責任はあるかもしれない。しかしながら、団塊ジュニアをピークとして少子化で子供が減り続ければ需要が減るのは明らかだし、そこに教員志望の供給が増えれば、需給ギャップが生まれるのは当然であり、この程度は少し考えればわかる事である。また、大学教員に限らず自分のなりたい職業に付ける人はごくわずかであり、サンクコストの呪縛で狭き門に拘り続ける愚かさも問題ではある。
    一般国民としてこの問題に関して考えなければならない事は、高学歴ワーキングプアを単なる自己責任として切り捨てるのではなく、大学には莫大な公金(6000億以上)が投入されており、それが適切に社会資本として蓄積されているのか否かをチェックする事だろう。概して教育領域は聖域としてメスが入りにくいが、教育は国家の投資であるので、そのリターンはしっかりと精査すべきである。

  • アメリカでは博士号は生涯のキャリアパスとして認識

  • 大学院生となった人たちの就職難は、なぜ起きるのか?
    →起業が大学院生の実力を信用していないから。

    なぜ、就職できない人たちがあふれるのか?
    →文部科学省の大学院奨励化による予算25%up策
    に各大学が踊らされているから。

    国立大学は、自らの既得権益のため。
    私大は、淘汰されていく。。。

    ここでも、やはりロスジェネが割を食っている
    とのこと。

    うーん、、若者のしあわせ感が低下するのも
    ムリないわな。


    〜 以下、本書より気になった箇所 〜

    ○2014年の18歳人口の予測は、118万人。
    2004年から23万人の減少
    これは、1975年レベル。
    この後、おおむねこのラインで推移すると予測

    ○血液型と個人の性格については、相関関係
    がないことは、心理学の世界では広く知られている
    『オールザット・血液型』
    http://tinyurl.com/2bob7yo

    血液型占いには意味が無い

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著者プロフィール

立命館大学衣笠総合研究機構研究員・僧侶。1967年福岡県生まれ。長年、子どもの道草研究に取り組む。無用の用を可視化する作業を通して現代社会文明批評を行い続けている。著書に『子どもの道くさ』(東信堂)、『高学歴ワーキングプア』(光文社新書)他。

「2009年 『子どもが道草できるまちづくり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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