学歴社会の法則 教育を経済学から見直す (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334034313

作品紹介・あらすじ

近頃の教育問題は、経済学的な知識なしに立ち向かうことができません。本書は「教育の経済学」の基本的な考え方を紹介しながら、「なぜ大卒男性の給料は高卒の1.5倍なのか?」「子どもの学歴を上げるのは働く母親か専業主婦か?父親か母親か?」「少人数学級は学力を高めるのか?」など、さまざまな角度から学歴社会のしくみを解き明かします。また「英語ネットワークへの投資法」や「いじめの経済学」など、専門の世界においても先駆的で、なおかつ問題解決に有効な視点を提供します。

感想・レビュー・書評

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  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000155566

  • 他の研究者の研究の成果を照会sているうちはいいのだけれど、自分の意見を述べる部分になると、トンデモさんになってしまう。事実に基づかない勝手な議論(風が吹けば論)と、自分に都合の良い資料のつぎはぎを繰り出す。
    教育者に都合の悪い結論が出てきそうになると、論理が怪しくなる、というのは、ある意味正直な人なのかもしれない。

  • 105円購入2011-12-22

  • 【目次】
    目次 [003-004]
    はしがき(二〇〇七年一一月 荒井一博) [005-009]
    登場人物紹介 [010]

    第一部 学歴社会には「法則」がある
    第1章 学歴はなぜ所得格差を生み出すのか 013
    学歴は所得を決める要因か/人的資本とは何だろうか/教育を経済学的に考えることの利点/高学歴の多様な利益/教育は被教育者以外にも利益をもたらす/正確に理解されていない教育の費用/人的資本論の論理/教育投資の収益率

    第2章 学歴シグナルによる「差別」は本当か 037
    シグナルとは何だろうか/シグナリング理論の基本的なアイディア/最も平易な説明/学歴が能力を示すメカニズム/シグナリング理論の解釈/お金がなくて大学に行けない場合は?/資金が自由に借りられないときのシグナル/学歴は富裕度を示すシグナルでもある/教育投資はポトラッチと似ている/正しい理論はどちらなのか/大学進学行動のネットワーク理論/教育改革の留意点/授業料は学生自身が払う時代が来た/シグナルの弊害を克服しよう/シグナル偏重が必修科目の履修漏れを生む

    第3章 働く母親と専業主婦、子どもの学歴を上げるのはどっち? 077
    親の学歴は子どもにどう影響するのか/社会階層の固定化に果たす教育の役割/父親と母親のどちらの学歴が重要か/経済発展と親の学歴の効果/女性の教育を再評価しよう/母親との読書や百科事典の効能/母親の学歴効果はなぜ相対的に大きく低下するのか/母親の所得を何に使うか/働く母親の子どもの成績はよい?/母親の就業は子どもの能力を下げるのか/軽視されてきた女子教育/なぜ短大進学率が急減しているのか

    第二部 経済学的に正しい教育とは?
    第4章 学校選択制と教育バウチャー制度で何が変わるか 113
    学校選択制と教育バウチャー制度/学校選択の自由と子どもの能力/需要と供給の調整/学校に選択の自由があるのか/教育バウチャー制度とは/バウチャー制度で誰が利益を得るのか/バウチャー制度で平均学力は向上するのか/好ましい学校選択制・バウチャー制度は?

    第5章 英語ネットワークへの投資法 131
    言語の経済学/ネットワーク外部性/なぜ英語は準世界共通語なのか/英語ネットワークに立ち向かう教育/ネットワーク外部性が生み出す不平等/英語の国語化が始まった?/英語は習得しやすいか/英語は準世界共通語にふさわしいか/日本語はなかなか使いやすい言語/収益率の低い日本の英語教育投資

    第6章 「いじめ」を経済学で解決する 157
    いじめは西欧でも広く見られる/自由主義といじめ/西欧と日本のいじめの比較/いじめのインフォーマル・ネットワーク/教師や親は頼れるのか/他の生徒は頼れるのか/いじめの経済学/いじめを防止・根絶する方法

    第7章 教師と学級規模の経済学 183
    教師という職業は聖職か/不適格教員排除で教育の質は上がるのか/教育の場に望ましい文化とは/どのような教師が望ましいのか/学生による授業評価の問題点/少人数学級は学力を高めるのか/多数の実証研究の結論/計量経済分析の結果が異なる理由/学級規模と学力に関するテネシー州の実験/学級規模の経済理論/クラスにおけるビア効果/学級規模は何人が最適なのか/能力別クラスは好ましいか

    実践編 収益率をアップさせる学習法 215
    I 学習の一般理論 215
    教育の経済学はどんな能力が有用と考えるのか/道具・体系・独創の理論の提唱/道具の習得を楽しくする工夫/数学力が個人所得を高める/思考のパターンを身に付けよ/体系的思考の利点/独創(応用)と体系の関係/常に考える癖をつける/数学の難問練習は役立たない
    II 英語の学習論 237
    日本人の英語はカタカナ英語/収益率を考慮した英語の人的資本投資/英語の難問練習も不要/英語を書く能力の育成法/正しい英語の話される環境を整えよ/どうしたら英語が話せるのか/英語の早期教育は好ましいのか/小学校で英語を教える条件が整っているか/自動翻訳機の作成に本格的に取り組め

    あとがき [258-263]
    参考文献 [264-269]


    【抜き書き】
      教育投資はポトラッチと似ている
     中学入試だけでなく、小学校や幼稚園の入試にまで莫大な費用とエネルギーを投入する人たちがいます。テレビでもその姿がしばしば放映されます。そのようにして、ゆくゆくは有名大学を卒業したとしても、多くの人が格別優秀または有為な人材になるわけでもありません。なぜ、それほど教育投資に熱中するのでしょうか。私には「ポトラッチ」と同じ現象のように見えます。それを説明するために、まずポトラッチの話をしましょう。
     カナダのバンクーバーを訪れると、多くの動物などを太いレッド・シーダ(杉の一種)の柱に彫刻したトーテムポールを公園などで見ることができます。北アメリカ北西海岸に居住していた先住民(アメリカ・インディアン)が、かつて家の前などに立てたのと同様なものです。
     彼らのなかのトリンギット族やハイダ族には、誕生・婚姻・葬礼・家屋の新築などの際に、招待した親族や村人に多大な財産を分配し、自分の富裕度を誇示する慣習がありました。これがポトラッチと呼ばれる慣習です。極端な場合には、高価な財産を招待客の面前で破壊したり焼却したりして富裕度を誇示しました。
     ポトラッチは文化人類学の重要な研究テーマです。『菊と刀』の著者で日本人に広く知られているルース・ベネディクトもその研究をしました。ポトラッチの目的に関する文化人類学の最も有力な説は、それが威信や名誉を獲得・維持するために行われたというものです。富裕が威信や名誉につながり、富裕であること、すなわち「余剰物」を所有していることを示すために、気前のよい財産の分配や破壊が行われたと考えられています。そうした行為はポトラッチの参加者全員が見ている前でなされたのです。
     ポトラッチは宗教的儀式でもありました。そこで行われた食事は死者を称えるためのものであり、燃え盛る火の中に投げ入れられた食料や毛布は、死者に届くと信じられていました。食料や毛布が火の中に投げ入れられる際には、それを受け取るはずの死者の名前が大きな声で唱えられました。他界にいる彼らがよく聞こえるようにするためです。
     宗教的儀式には、生きている人間に死や死者を意識させるという重要で崇高な機能があります。そのために、ポトラッチに含まれる威信や名誉の獲得・維持というもうひとつの目的が、ある程度薄められることになります。先述のように、富裕度を直接的かつ露骨に誇示することは、どの民族でも卑俗と感じられ、反感を招くでしょう。荘厳な儀式や宗教的な意味づけがあれば、反感をあまり抱かせずに威信や名誉を獲得・維持できます。富裕度は間接的に示すと効果があるのです。
     教育投資には、ポトラッチの性格が部分的に含まれていると私は考えます。富裕な人々は富裕度を誇示するために、多大な資金を教育サービスの購入に投入して自分の子どもを有名大学に行かせます。換言すれば、そのようにして自分が上流階級の人間であることを示します。するとその子どもの就職も有利になります。企業が、彼らを有能とみなしてくれるからです。ヴェブレンの誇示的消費と違って、この場合の誇示的行動は大きな実利も生み出します。
     前述のように教育を受けることには知識の習得という崇高な目的があるため、ポトラッチ的な教育投資に対する反感は少なくなると考えられます。知識の習得という目的が、ポトラッチの宗教的な目的と類似の機能を果たします。そのため、教育投資によって富裕度を間接的に示すことが可能になるのです。
     「富裕度を誇示することが、教育の唯一の目的である」と私が考えているわけではありません。教育は複雑な営為であって、そこにはいくつかの目的が含まれています。そのひとつが富裕度のシグナルを発することであると考えるのです。

  • ざっと読み。
    英語には「公共財」と「ネットワーク投資」、人的資本投資の両面がある。
    いじめは教師が頑とした態度を全体に示すことで減少する。
    少人数学級では学力が上がるのか
    などが経済学の立場から書かれている。
    なるほどと思うところもたくさんあるので、よく読んでみたい。

  • 読みやすくて興味深い内容だった。英語教育には否定的? 数学を投げ出した私としては読んでいて辛いものがあった。もう一度勉強し始めようかな。

  •  学歴社会について、また教育政策について経済学的な観点からの考察を載せた本。教育政策についての考察も興味深いものはあるけれど、やはり本書のタイトルにもなっている学歴について論じた章の方が構成もよく面白い。学歴社会を論じた章の内容は、主にシグナリング理論と人的資本論の紹介、そして親が子に与える影響についての諸研究の紹介である。全体として平易で読みやすく、教育の社会的な意味について学ぶには良書かなという印象。

     さて、何故高学歴は高収入を得るかという問いは、教育経済学において重要な問いであるらしいのだが、それを説明する主な理論がシグナリング理論と人的資本論である。本書では、新書らしい分かりやすさでその理論を解説している。経済学にはあまり興味が無かったが、これを読んでその有用性を少しばかり感じさせられた次第だ。

     昨今話題となった教育による格差の固定化に関しても知見が得られる。親の学歴・親の所得が、子の学歴に影響を与えることは、誰もが当たり前のように思うことかもしれない。しかし、それを説明する一つとして「富裕な人々は富裕度を誇示する為に、多大な資金を自分の子供の教育サービスに投じて有名大学に行かせる」という指摘は自分の中には無かった。というか明確でなかった。他にも興味深い研究結果の紹介は多い。専業主婦に比べ、母親が働くことは子供の学歴にいい影響を与えない、なんてのは今後特に切実な問題になっていくんじゃないだろうか。


  • 2004年の統計によると、高卒男性と大卒男性の平均賃金の差は、
    60歳までで約7000万円になる。
    このような差が生まれる理由として、教育経済学では2つの理論がある。


    1つは人的資本論と呼ばれるもので、工場の設備(資本)に多くの金を投入すれば生産性が高まって結果的に収益が増えるように、人間にも多くの時間や知識を投入すれば生産性が高まり、それによって収益が増えるという考え方。


    もう1つはシグナリング理論と呼ばれるもの。この理論において、まず初めに企業は「大卒者は高卒者に比べて仕事がよくできる」という仮説に基づいて、大卒者に高い賃金を与える。すると、同年代の高校生のうち、能力の高い者は高い賃金を求めて大学に進学する。能力の低い者もできることなら大学進学を志すが、能力の低い者にとってはそのためのもろもろの費用が高くつくため、大学進学を諦め、高卒で就職する。すると、企業は求職者の能力を問わずに学歴だけで判断したにも関わらず、結果的には高能力者に高い賃金を払えていることになる。この時点では求職者の能力について企業は情報を持っていないが、10年後に彼らの能力者をよく把握した上で検証してみると、やはり大卒者の方が高い能力を示していることが確認される。もともとの能力が高い上に、高所得によってモチベーションも高いためである。このようにして、初めは単なる思い込みでしかなかった「大卒者=高能力者」という理論が実質を帯びることとなる。
    企業の採用決定者が責任回避的なほど、シグナリング理論が成立しやすくなる。採用決定者は、自身が採用した社員が入社後に成果を上げないとその責任を問われるが、その際にシグナルに従って判断したと言えば責任が回避できるためである。逆に言えば、シグナルにとらわれずにリスクをとって採用活動を行うことで、他の責任回避的な企業では気づかない優れた学生を採用する可能性もありえる。


    オーストラリアの学校納付金の支払い方法は、在学中にはそれを支払う必要がなく、卒業してから一定水準以上の所得(最近では400万円以上)を得るようになったら、その所得額に応じて徐々に返済を開始するという無利子のローン制度。しかも、その支払いは税金とともに行われる。
    この制度によって、貧しい家庭の子が大学に行けないということがなくなり、かつ、大学を卒業したはいいがその後何らかの理由により職につけず、借金地獄に陥るという可能性もなくなる。


    子どもの学歴に対して影響が大きいのは、父親よりも母親の学歴である。子どもが成人になるまでの接触時間・会話時間を考えると、朝早く会社に行って夜遅くに帰ってくる父親に比べて、基本的には家にいることの多い母親の方が子どもとの接触時間が圧倒的に長いためである。すなわち、子どもと多く話す人の知的レベルによって、子どもの将来の学力が規定されるということになる。


    体系的学習をすることの利点は、何か問題が起きたときに、既存の体系の中に位置付けてその問題を理解できることである。浅くとも広い知識を備えていれば、多くの問題に対して適切なアプローチを生み出すことができ、誤った判断をすることが少なくなる。


    新しい考えを生み出すためには、まずは豊富な既存知識が無ければいけない。閃きとは本当に何もないところからは生まれず、潜在意識下にある豊富な知識の組み合わせから生まれるためである。豊潤な土壌が無ければ、種が芽を出すことはないということである。

  • 今問題となっている、教育格差について学歴をもとに書かれている1冊。
    現実として起こっているだけに、考えさせられました。

  • 大学に関わることだけでなく、いじめや英語学習、女子教育などに経済学を応用して解説。

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