- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334034740
作品紹介・あらすじ
「生命の基本仕様」-それは女である。本来、すべての生物はまずメスとして発生する。メスは太くて強い縦糸であり、オスはそのメスの系譜を時々橋渡しし、細い横糸の役割を果たす"使い走り"に過ぎない-。分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと駆け引きの息吹を伝えながら「女と男」の「本当の関係」に迫る、あざやかな考察。
感想・レビュー・書評
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分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと駆け引きの息吹を伝えながら≪女と男≫の≪本当の関係≫に迫る、あざやかな考察。(カバーより)
『生物と無生物のあいだ』以来だったけど、さすが福岡先生。教科書的な記述は少なく、生物学の知識が少なくても読める。美しい文章で、理系な内容を取り上げているのに、文学作品を読んでいるような錯覚さえ起こしそう。
生命の基本仕様はメスであり、オスは急ごしらえのカスタマイズでつくられる。オスは感染症にもがんにもなりやすいし、寿命は短い。しかしオスがいるからこそ多様性が生まれる。エピローグを読んでいて、ジェットコースターを楽しめない自分は生物としてダメなのかもと思ったり…
『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン)とかもそうだけど、研究者のドラマはやっぱり好きだな。高校一年のときに、生物は暗記ばっかりだなと思っちゃって一気に興味を失ったけど、こういうふうに紹介してくれればもっと興味が湧いたのになー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生物学的に人類は女性が起源であり、男性は生命の基本仕様である女性を作り替えて出来上がったものであるので、ところどころに急場しのぎの不細工な仕上がり具合になっている箇所がある、ということ。
合わせて、性別を決める遺伝子に迫る科学者たちの先頭争いにも触れており、どちらの内容も専門分野の境目まで踏み込んでいるけど、素人でも興味深く読めるように描かれたいつもの福岡節の一冊。
こんな内容を目にすると、益々家内に頭が上がらなくなるような気がしてきてしまう。
ここのところ福岡氏に遭遇する機会が多く、本を読んでいるとPodcastやTVで焼き付いた声で本の中の文章が聞こえてくる気がして仕方がない。
ちょいと浸かりすぎてしまったか。。。 -
本というものが「知らない世界」を教えてくれる喜びを得ることができるものとするならば、本書はその資格十分のおもしろさ満載の本である。
「博士号」取得者の世界が、高度な知性と高い評価の割には、経済的処遇に恵まれていないことはよく知られているが、本書はその世界もみせてくれる。
そして本論部分だが、「男と女」についての「生命の秘密」を、その研究手法の詳細まで素人にわかりやすく、かつ興味をつなぎつつ解説することは、なかなか難しいところだろうが、本書はそれに成功している。
その結論部分の「生物は女が基本型で男はできそこない」とは、実におもしろい。
その結論に至るまでの「分子生物学」や「解剖学」的考察は、反論を許さない具体性と説得力に満ちみちている。
本書においてはさほど言及していないが、本書の「メスが生物的基本型」との結論を知ると、人類の歴史の男優位の社会はなんと誤った世界であることか。
とりわけ、ある地位の「男系子孫相続」などには、生物学的裏打ちがまったくないことがわかってしまう。
日本においては、一般に社会においては男性優位でも、家庭内では、女性が男性をはるかにしのぐ高い地位を築いている場合が多いが、生物学的にはこちらのほうが正しい体制であったのかと、手のひらをぽんと打ってしまった。
本書は、極めて専門的な分野をわかりやすく教えてくれる良書であると高く評価したい。 -
何年も前からずっと読もうと思ってはどうも読み切れなかった本書だが、ようやく読み終えた。内容がすごく難しいとかあまりに長いとか、全くそういうことではないのだが、なぜか読んでいるうちに気が進まなくなっていたのだ。
男は”女系の遺伝子を混合するための横糸。遺伝子の使い走り”。男の身体は女性のそれを作り変えたもの。(心から)結構だと思う。むしろ言われてみればその方が何となく腑に落ちる気さえする。
最後の加速覚のエピローグは特に良かったです。
(ただ文章はやや冗長な気もしました。気分が乗ってすらすら書けたという印象ではない。「生物と無生物のあいだ」の方が文章が生きていたような気がする。今度久しぶりに読み返してみよう) -
面白かった! まず文体がすごく読みやすくて退屈しない。翻訳本みたいな活き活きした文。かっこいい。生物と無生物のあいだを書いた方なんですね。福岡先生初読。他の著作も読んでいきたいと思いました。
もともと単性生殖であった我々の祖先が、DNAを交換するという方法を作るためにメスをカスタマイズし作り出されたオス。最初はアリマキのオスがそうであるようにただ単純にメス同士のDNAの交換だけ(Y染色体なし)だったが、人にはY染色体がある。Y染色体のSRY遺伝子が、基本はメスである人をオスにする。XX型男性(女性型男性)にはSRY遺伝子が紛れ込んでいる。XY型女性(男性型女性)にはSRY遺伝子が欠落している。
男性の精管と尿管が一緒なのはもともと女性のためのつくりである体をつくりかえたため。男性の蟻の門渡りが女性器の名残なんておもしろーい。
それから男性が女性より短命で、男性が女性より発がん率が高くて、自殺率が3倍で、一卵性双生児も女女率の方が高くて、多くの病気も男性の方が罹患しやすいのは、主要な男性ホルモンであるテストステロンの、体内濃度が上昇すると、免疫細胞が抗体を産生する能力もナチュラルキラー細胞など細胞性免疫の能力も低下するためである可能性があるとのこと。
ジェットコースターで落下する加速感を射精感にたとえた仮説はジェットコースター嫌いな男性もたくさんいるので納得しかねたけど、男性がどうして女性に尽くすのか、それはあの感覚にとりつかれているからだ、というのは納得しました。
ただ、女性はよくばりすぎた。男性に子を作るためだけではなく、その有用性に気付き、食料や住処などを求めた。その余剰を男性が女性に気付かれず溜めることに気付いて、男性が余剰を持つようになったから、男性に力のある社会になった、と。 というか多分男性は、女性は子孫を残したいものというのに対して、女性に遺伝子を運ぶために作られたから、それ以外の、余剰的なものがより好きなんだろうな。 -
染色体を軸にして、男女の性を追求してきた生物学を遡っていきます。
そこから男の役割が見えてきます。
そもそも男が生物としてどう振る舞うべきなのか。
生物学的な見地に立った結論は、人間の理想像のようなものを知らせてくれます。
生物学は面白い。
我々は生物でしかなく、そのため生物学には道徳や思想以上に根源的なものがあります。 -
この方は文章が読みやすく、明瞭で引き込まれますね。この頃何冊か読んで居るのですがこの本もとても面白かったです。
女の赤ん坊の方が育てやすいとか女性の方が長生きする理由がその遺伝子上の安定性にあるのか、としみじみ納得するような気分でした。
そして世紀の大発見の為昼夜を問わず研究に邁進する科学者たちの手に汗握るドラマの面白いこと。知らない世界を垣間見ることは何とも面白いなあと思うのです。また他の本も借りて読もうと思います。 -
ききスミス
ピーボディ -
迷わずに買った。前著「生物と無生物のあいだ」がとてつもなくおもしろかったから。そして、2匹目のドジョウはいた。本書は前作をさらに凌ぐおもしろさ。特に男と女の話だから。行きの電車の中で読んでは生徒に話し、帰りの電車の中で読んではパートナーに話し、とにかく誰かに話したくなる話題が満載。そのなかでも、ミュラー管とウォルフ管の話し、つまりヒトの発生段階において、いかに基本形である女からカスタマイズされた男になるのか、というくだりは群を抜いておもしろい。尿と精子が同じ管から出てくるようになってしまった原因らしきものが見えてくる。精巣を包む袋からペニスの裏側に縫い目のようなものがある理由も分かってくる。実に興味深い。さらに科学者たちの、ドロドロとした先取権争いとか、人間模様も前作同様おもしろい。そして、最後のあとがき、これがまたおもしろい。遺伝子をシャッフルするために作られた使い走りの男たち。それでも女性に尽くすのはなぜ。生物学ではHOWに答えることはできてもWHYに答えることはできない。その禁を破ってあえてそのなぜに答える。それが、あのときの快感? 逃れられない快感。それは何と似ている? ジェットコースター??? 加速の感覚? うーん、奥深いような、浅いような・・・。女性の快感はどうなのか、これまた興味駸々。ところで、第1章では精子を初めて見た男の話が出てくる。迷わず購入した理由の一つでもある。