亡国の中学受験 (光文社新書 432)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035358

作品紹介・あらすじ

「お値打ち校」に本当に値打ちはあるのか?理解不能な先取り授業、スタンドプレーの学校改革、蔓延するいじめ-受験産業と私立中高一貫校の黒い霧。

感想・レビュー・書評

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  • 2013年6月20日
    "どうしたって優劣がつくことを目標に掲げながら、過剰な親の期待に警笛を鳴らし、無条件の肯定による子どもの自尊感情の育成を促すところに、最初から無理があるんじゃないのか?"

    "子どもの成績を伸ばすためにいくら「褒め」ても、子どもの自尊感情は育たず、むしろそんな親の「本当の期待」や「コントロール欲」を見抜かれてしまい、自尊感情とは逆の感情が育ってしまう。"

  • あまり文章が賢くない。批判したい内容を引っ張ってきて、一側面のみの批判に終始している。
    中学受験の問題点との論調だが、何をターゲットに批判しているのかが今ひとつ不明。勉強が得意ではない子供を無理やり中学受験受験の舞台に引っ張ってくる様な構図(塾や一部の私学のビジネス優先で)は危険と言うのは分かるが、それは中学受験のごく一部の側面でしか過ぎない。「小学校の授業が遅すぎてつまらない。校風に憧れてどうしても行きたい。」と考えて上位校を目指している様な家庭であれば、一つも参考にならない本だと思う。

  • 著者は社会人経験がなく、まず根底に企業の営利行為に対する否定感がある。たとえば食品企業は食品の製造販売を通じ利益を上げているように、私立学校も、教育の提供を通じて利益を上げている。当然、販促活動の一環として、自校のよいところは宣伝し、悪いところをあえて公表する必要はない。保護者はそのようなことを既に了解済で、学校の情報を取りに行っている。

    極端に私立学校のダメな点を引合いに出し、断片的な情報のみで論じている傾向がある。もちろん、私学にもダメな点はあるだろう。著者が指摘するように、私学批判の情報が圧倒的に少ないのは事実だと思うので、私学批判の論評は必要だろう。また、公立は自ら宣伝もできないため、私立からの批判に一方的に甘んじなければならないのも事実であろう。

    であれば、適切な私学批判であればよかったのだが、著者の社会経験のなさ、偏った論評によって、残念な批判になっている。

    2012.11.25 読書開始
    2012.12.01 読了

  • 塾はビジネス、私立学校だってビジネス、という当たり前のことを忘れないようにしようという教訓は得られるものの、序盤はあまり面白くなく、これは前著のほうが良かったなぁと思っていたのだが、最後の数章が素晴らしかった。

    本当に理解するということはどういうことか、勉強を作業だと思って無駄な時間を使っていないか、というのは、まさにその通り。だけど、多くの子供たちはそういう勉強をしているのではないだろうか?

    (108)

  • 中学受験における偏差値からすれば、上位校ではないところに進学させたが、あまりここで書かれているような問題は感じない。結局、学校次第、親次第、塾の利用スタンス次第ではないか。今となったらこんなふうに感じる。本書よりも「ツカレ親」編の方が有益だった。

  • 中学受験ブームは、少子化を生き残るために私立学校と受験塾が手を組んだプロパガンダによるものであり、ゆとり教育やいじめ問題をことさらに取り上げて親の不安をあおったり、データをゆがめて比較対象とならない部分で公立と私立を比較するなど不当表示まがいであるので、その点をよくよく注意して、子供を私立中高一貫校に入れれば安心といった誤解をしないよう親もよく考えるべし、という内容の本。
    著者がかつて受験産業の内側にいたこともあり、極めて説得力がある。塾と学校に高い授業料を払うのだから、本当に気をつけないと。ただ、情報の非対称性があって、どれだけ注意できるか、気付けるかは分からないが。

  •  昨今の「中学受験ブーム」は私学の利害関係者による「公立不信ビジネス」の結果として生まれているものだとし、中学受験や中高一貫校のデメリットについて、多くの生徒や保護者の意見を取り入れながらルポルタージュ形式で書かれている。
     確かに、公立が悪くて私立が良いみたいな単純で分かりやすい構造を信じて、子どもを中学受験させる親というのもいるのだと思う。というか、人集めに苦労して訳の分からない施策を押し出す私立大学と同じように、中高でも同じことが起きているだけだと思う。要するに私立の中高の中で二極化、格差拡大というのも起きていると思う。本書で述べられているのは偏差値が四〇台、とかそういう学校が多い。一方、本書の中で批判の標的にされている「日能研進学情報室」著の『中高一貫校』というちくま新書で取り上げられている学校は、もっと偏差値的にはレベルの高い学校が多いという違いがあって、そのギャップが本書のような言説を生んでいるのではないかと思った。
     本の中で納得できるのは、学力底辺層にいる生徒で、「『勉強』を『作業』とカン違いしている」(p.157)生徒がおり、「『勉強ができない』のではなく、『勉強』がどういう行為なのか、分かっていない。もっと正確に言うと、『勉強』ということと『理解』ということが結びついていない」(同)という部分で、実際にこういう生徒はいるということだった。もうまさに、この部分はあいつのことだよな、という感じだった。
     それじゃあこういう生徒が行くべき学校は中学受験をして入るような学校なのか、というと、それは違うし無理だと思う。そういう生徒が行くべき塾も、進学指導をする塾ではない。まずはふつうの小学校の教科書レベルが理解できることが目標であって、行くべき塾は補習塾なんじゃないかと思う。そういう子を持つ親が、中学受験に煽られて、その幻想に踊らされてしまうというのは、あってはならない。
     塾の種類とか、子どもの学力といった要因を無視して、本書は中高一貫校・中学受験に対するネガティブ・キャンペーンを繰り広げている。さらに著者は「本書が一冊の本として、プラスとマイナス、ポジティブとネガティブのバランスを取るべき必然性を感じなかった」(p.14)とまで言っているが、議論の前提や先行する著作を整理し明らかにしてから考察を加えて行くというのは、ごく当たり前の作業であって、そこを敢えて抜かした揚句にごちゃごちゃにして感情的な議論を進めている。一体この人は「大学院博士後期課程」に在学して何をやっているのだろう、と思ってしまう。「軽い本」を目指してこういう書き方になっているのだろうけど、随所で引用される言葉には典型的なステレオタイプな「若者言葉」もおかしい。例えば「現代文でフル得点目指して、古文は捨てるっす」(p.165)とか(こういう若者言葉以前に、そもそも古文の方が得点しやすいんじゃないのかとかいうツッコミを入れたくもなるが)、もっと冷静な議論を展開するための障壁でしかないのではないかと思った。(14/01/27)

  • 2014年3月31日読了。

  • 前著「中学受験の失敗学」が面白かったので手に取りました。1.8歳児を持つものですが、マイノリティな側の意見として受験という本質を自分なりの解を出すために非常に参考になりました。特に塾はわんこそばのようにカリキュラムを進める一方、子供が基礎ができていない場合は一向にその後の講座が分からなくなる「つまづきの飽和」は頷くこと多かったです。塾も私学もビジネス面でアクションを進めることはある意味当然であり、色々な事情を知った上で最適解を模索続けなければならなさそうです。

  • 加熱するブームとその裏にある公立不信についての本。

    今の公立学校の不信ならば、猫も杓子も私立が良いというわけでもなく、やはり中堅校以上でないと期待ほどの効果はないのだろうか。

    ともあれ、今の受験はブーム、ゲーム感覚になりすぎている感じはある。そのあたりはもう少し冷静に考えたりするべきだと思うのだが。

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