- Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334035686
作品紹介・あらすじ
日本経済にとって、外国人労働者は都合の良い存在であり続けた。企業の繁栄を支え、あるいは不況企業の延命に力を貸してきた。しかし日本は、その外国人を社会の一員として明確に認識したことがあっただろうか。第一部では、「奴隷労働」とも揶揄されることも多い、「外国人研修・技能実習制度」を使って日本に渡ってきた中国人の過酷な労働状況を概観する。第二部では、かつて移民としてブラジルへ渡った日本人の主に子どもや孫たちが、日本で「デカセギ労働者」として味わう生活と苦労、闘う姿を追う。こうした中国人研修生・実習生と日系ブラジル人を中心に、彼ら・彼女らの心の痛みを描きながら、日本社会をも鋭く映す、渾身のルポルタージュ。
感想・レビュー・書評
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そのモノにとって都合の悪いことは
なかなか表に出てこない
悪意がからんでいる場合は
なおさらのことである
あらためて
隣の国との間に地面に国境線がない
日本の有り様を考えてしまった
ちょうど 今欧州の難民の問題のことがニュースとして飛び込んできた
私たちは地球の上に暮らしている
今 地球上で起こっていることは
決して 私たちと無関係なものは 何一つないのだ
と 改めて 考えてしまった詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
外国人の支援ボランティアを数年来やってきましたが
就労に関しては最悪の状態になってきていますよね。
単純労働の製造関係から、現実の舞台は福祉介護現場へとシフトしつつあると思います。いろいろな意見はあると思いますが、彼らの置かれている状況をぜひこの本を読んで知っていただきたいです。 -
中国人研修生、実習生の日本での過酷労働レポート、ブラジル日系人の出稼ぎ実態レポートの2本を柱に書かれている。中国人の研修生は時給300円、残業代はさらに安く、休みなしで働かせているようだ。労働者ではなく、あくまで研修生という立場らしいが、今でも改善されていないのだろうか。マスコミではほとんど取り上げられていないように思える。
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日本の「民度」の低さを露呈させる作品。 あとがきに少しの希望が見いだせるが、全体的にはなにも進展していない現実。
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登録日 2015/09/24
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ルポ 差別と貧困の外国人労働者。安田浩一先生の著書。日本の重労働は外国人労働者が支えている面が大きい。そんな外国人労働者を差別したり、外国人労働者が貧困に苦しむような社会は絶対に間違っていると思います。日本社会を支えている外国人労働者に対する敬意と尊敬の念を形にして示すような社会であってほしい。
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外国人労働者の問題を、中国人の研修生問題とブラジル人の派遣切り問題に焦点を絞って、具体的な事例を紹介していく。これらの問題は統計的なデータを見て考えることより、多くの事例に触れていくことがまず大事であることを再認識した。
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レビュー省略
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中国やブラジルから日本に働きに来る人々の状況をレポートするノンフィクション。想像以上に悲惨なものだった。特に、低賃金で搾取されている中国人研修員(労働法を適用しないためにそう呼ぶ)たちが気の毒になった。経営者に繰り返し性的暴力を受けても、強制帰国を恐れて逃げ出せない研修員もいるという。
ここ数年は中国も豊かになったので、こんな思いをするために日本に来る人は減っているかもしれない。というより、将来的には日本と中国の立場が逆になるのではないだろうか?お金がある中国に日本人が出稼ぎに行き、現地の人に奴隷のように扱われる日が来るかもしれない。もしそうなったら、同じ日本人として許せないだろう。
日系ブラジル人も、昔は同じ日本人だったのに、雇用する側とされる側になってしまい、出稼ぎに来ても貧しい生活を強いられているという。移民対策は世界中の先進国で深刻な問題となっているが、解決が見えない。
外国では、正規の就業ビザ取得が困難なため、法定賃金以下で働くことに甘んじている日本人がたくさんいる。もしくは、ビザサポートと引き換えに、ごく低賃金で働かされている例もある。
外国で働く者として、いろいろ考えさせられた。 -
中国人技能研修生と「デカセギ」をする日系ブラジル人の実情がテーマのルポ。前半の内容は、以前の職場で中国人農業研修生と関わることが多かったため、他人事とは思えず、天草では裁判事例に至る事件もあったことすら、正直知りませんでした。どちらも奴隷制や人身売買に近いような際どいことをやっている人達がいるとわかり、ショックを受けます。
このテーマは難民受け入れ問題にも必ずつながることだと思います。他にも身近に似たような世界があるはずなので、アンテナを張って周囲を見渡そうと思いました。最後の方で介護職にやりがいをみつける人達の話に感心しつつも、どこか日本のエゴという側面を感じてしまいました。そういえば介護職の中に海外から来た人は増えている実感があります。 -
日本で外国人労働者がどのように働いているか知るいい機会でした。
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つらい。
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S366.89-コウ-465 300386729
(光文社新書 465) -
この本と「フラット化する世界」を同時並行に読むと、同じ時代の同じ世界の話だと思えない。
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奴隷のような扱いを受ける研修生の実態を初めて知った。えげつないな。
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外国人労働者の賃金が安いとよく聞くが、実態はこうだったのかと、ショックとため息の連続だった。
さらに、3年も前に刊行された書なのに初版というのも驚き。
一人でも多くの日本人に読んでいただきたいと思った。
日本で生まれ育っても、自国から働きに来ても、日本では外国人は差別される。
同じ人間なのに。
理不尽だ。。 -
前半は、研修制度に名を借りた中国人研修生の過酷な実態。後半は、安価な労働力として使われた日系ブラジル人の実態を描く。どちらも日本企業や農業を陰で支えてきたにもかかわらず、安易に首切りされる。メイド・イン・ジャパンの高い評価は彼らによって支えられていたとは、皮肉だ。
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「では、日本人の側は、本当に我々ブラジル人と交流したいと望んでいるのですか?」
自分が生きるこの日本のどこかで…もしかしたら目と鼻の先で…虐げられ続けている人たちがいることを知ることで、彼らの視点を知ることで、自分たちの見えていなかった日本の別の姿が見えてくる。
すなわち、外からやってくる人たちに冷たい日本という国、日本人たち。それらは任される仕事のキツさの差であったり、ヨソ者に対しての無関心・非協力的な態度・姿勢etcに表れているように思える。
時代の流れで苦境に立たされた中小・零細企業の弱みにつけ込み、研修生を充てがい、暴利を貪る送り出し機関…
マトモな労働契約を結ぶことなくこき使われ、リーマンショックという不況の波に飲まれた途端、ポイされる出稼ぎ労働者たち…
本書の基となった、中国人やブラジル人相手の取材において、著者は時折、外国人の立場に立っていない発言をうっかりしてしまうが、そういう様子の描写に、著者の「相手と真摯に向き合おうとする姿勢」が表れているように感じられ、また良かった。
冒頭の質問は、とあるインタビューにおける著者の「ブラジル人の側も、もっと積極的に日本人、日本社会と関わりをもつよう、努力すべきではないか」(P226)という発言に対する返答であった。"ありがちな日本人"が実は著者の中にも存在しており、それに関して苦笑する著者の姿が垣間見得るようでもある。 -
『ネットと愛国』の人の、別の本を読んでみる。奴隷労働ともいわれる「外国人研修・技能実習制度」(政府は、これが国際協力であり国際貢献だと言い続けている)によって日本で働く中国人の状況を第一部で、移民としてブラジルへ渡った日本人の子孫が、日系デカセギ労働者として働く状況を第二部で、それぞれ追ったルポ。
「単純労働者は受け入れない」というタテマエを崩ささない日本政府は、日本において単純労働に携わる研修生・技能実習生や日系人を、あくまで「例外」として位置づけてきている。けれど、その「例外」と位置づけられる人たちの働きによって、食べるもの、着るもの、自動車、家電など、日本の産品の多くは成り立っている。
研修生・技能実習生の制度がひどいものだということは耳にしていたけれども、第一部で明らかにされていく、この制度によって「働く」人たちの実態を読むと、たまらなくなる。消費者として手にするものの「安さ」や「国産という安心感」みたいなもの、それは下へ下へとしわ寄せされた要求を、最後のところでこうして「働く」人たちに無理やりのんでもらうことで成り立っているのだと、ぐさぐさと突き刺さる。
▼過疎地の農場や、元請けからの無茶な要求に泣かされる縫製工場の経営者が追い詰められた挙げ句、さらに弱い立場の者を下部に置くことで、帳尻を合わせる。なんと残酷なピラミッドなのか。真っ先に傷つくのは研修生であり、そして、その責任を取らされるのは受け入れ企業である。大手スーパーも、デパートも、メーカーも、アパレル会社も、地場産業の衰退など知ったことではない。大企業から見れば、下請け工場や農場など、研修生同様「使いまわしのきく労働力」に過ぎないのだ。ミシンの軋む音は、研修生の悲鳴であり、零細経営者の慟哭である。
「国内産」「Made in Japan」──食料品や洋服に貼られたラベルを見るたびに、私は目に見えないもうひとつのラベルを想像する。
Made by Chinese──。
日本の地場産業を支える、外国人の姿だ。(pp.149-150)
日本人の「労働者」に対して、携帯電話やパソコンをもつのは禁止だとか、残業の時給が300円だとか、1日十数時間働いて5万円だとか、どんなにブラックな企業であっても、それはしないだろうということが、外国人の研修生相手にはまかりとおっている。
しかも、トイレの休憩時間さえわずかな対価から引く会社さえあるという。ぎちぎちにつまった、しかも長時間の労働。研修生かどうかはわからないが、勝山実さんが「おでん工場」でバイトをしたとき、人間のスピードに機械をあわせるのではなくて、MAXを振りきるような最速の機械のスピードに人間があわせることになっていたと、『ひきこもりカレンダー』で書いていた。
勝山さんはその仕事から「降りる」のだが、周りで働いていた外国人労働者は、その非人間的なスピードの仕事に文句も言わず、黙々と働いていたという。その光景が、この本で書かれている過酷な現場に重なる。
未払い賃金や慰謝料を求めて実習先企業を訴えた研修生が、判決後、「勝訴」の垂れ幕とともに「我們不是奴隷(私たちは奴隷ではない)」と掲げたところに、問題がはっきりとあらわれていると思う。
▼派遣切りは外国人から始まった。もっとも弱い部分から、はじかれる。
人手が足りないときは形だけ持ち上げられ、不況のときは真っ先にクビを切られる。これが、いわゆる非正規労働者というものだ。昨今、この非正規をめぐる議論は喧しい。だが、外国人は30年も前からずっと、こうした働き方を強いられてきた。日本経済にとって、ひたすら都合の良い存在であり続けた。企業の繁栄を支え、あるいは不況企業の延命に力を貸した。しかし我々の社会は、その外国人を社会の一員として明確に認識したことがあっただろうか。(p.311)
フリーターが問題になったのは、大卒の男がフリーターに現れはじめたからだった。女性の多くは、ずっとずっとそういう働き方をしてきたけれど、問題にされることはなかった、というのがぼんやり思い浮かぶ。……"女は前からずっと、こうした働き方を強いられてきた。日本経済にとって、ひたすら都合の良い存在であり続けた。"と、読みかえても、同じように通じるなと思う。
(5/6了) -
日本での実際の仕事を通じ母国にその技術を持ち帰ろうとする外国人労働者のドキュメント。
職業体験とは言葉だけの低賃金での労働や、劣悪な条件での生活。
力のないものからあらゆる手段を使ってなけなしの金を搾取する日本人の話とかがあった。 -
前半は中国の研修生制度、後半は日系ブラジル人に関する労働問題について。
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とても読みやすい。
現地取材が多く、専門書を読むよりもわかりやすかった。 -
少なくとも農業研修で、まともな「研修」として機能しているところなどほとんど無く、以前畜産農家の地域を実習で回っていた時に、「ここの農家はこき使いかたが酷い」と苦笑交じりに言われたことに対して何も出来なかったのを思い出す。畜産動物の飼養環境を気を使っているのを売りにしているところがあるが、そこで働く人の環境や権利を我々は気にしているのだろうか。奴隷労働に依存しなければ維持できない産業など滅びてしまえと思う。
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2005〜2010年の中国人不法労働者(研修生)、日系ブラジル人移民労働者の環境について記載されています。
一番衝撃的だったのは、日系ブラジル人労働者の雇用を、違法な中国人研修生の"雇用"が奪っていっている点です。
グローバル化の波の中で、世の中はどんどん仁義なき展開を見せるのでしょうか。
1)
中国人研修生制度の実態は、記載が真実なら陰惨です。奴隷労働に近いそうです。
中国側・日本側双方に不法な人材紹介ビジネスを営むひとたちが居るそうです。
ビジネスを手掛けるひとたちは斜陽産業に身を置いていて、手を出さなければ自分たちも路頭に迷うとのことです。
敗者が別の敗者を生む構造です。
凄惨な実態が書かれているのですが、少なくともぼくは全く無知でした。
入管で働いてる友人も「なんか聞いたことはあるけどよく知らない」と言っていました。
「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」(不管 猫白猫,捉到老鼠就是好猫)で発展してきた中国。
グローバル化の波に耐えかねて不法に手を出さざるを得ない斜陽産業の経営者。
狭間で世代を越えて搾取される中国農村部のひとたち。
手出し無用を決め込む日本の警察。
知ってか知らずか殆ど何も報道しない日本のマスコミ。
東京に来てみて「東京の居酒屋とコンビニは中国の店員さんばっかりだなぁ」と驚いてから数年経ちますが、
実は田舎にも中国のひとたちは少なからず住んでいるようです。
ぼくが住んでいた北国や、いま住んでいる所にも、外出の自由もなく、インターネットの自由もなく、ただ缶詰めで不当・架空の借金に縛られている中国のひとたちが居るようです。
そして彼らが「国産」の農産物・畜産物や、衣料品などを作っている〜〜と、書かれていました。
憤ると共に、自分はそのような立場に、搾取する側にも、される側にも堕してはいけないと、決意するのでした。
いや、大企業で正社員をしているだけで、充分搾取する側に身を置いています。そのことは、自覚しなければならない。
ある移民問題に関連する仕事をしている友人は移民反対派の考えを持っていました。「治安悪化」という考えが論拠でした。
一方で、この本の内容が本当であれば、問題は移民労働者個々人のモラルなどというミクロな問題ではなくて、社会構造というとてもマクロな問題です…
2)
日系ブラジル人労働者の話は、陰惨な中国人研修生の後だっただけに、むしろすこしほのぼのした雰囲気すら漂っていました。
いや、リーマンショック後の彼らの境遇もまた不遇なのですが…
不遇な境遇すら牧歌的に思えてしまうほど、中国人研修生問題は悲惨です。。
日系ブラジル移民の歴史と現在をすこし知ることができました。 -
今や中国人を時給300円で輸入できるので600円もするブラジル人なんていらない。は?日本人?あんな800円もする奴ら使うわけないじゃないか、高いだけで文句もいうし役に立たん。
これは恐ろしい事です。外国人が日本人の職を奪っている!という意見がよく聞かれますが、ではあなたは低賃金で月一しか休みがない状態でいらなくなったらはいさいならという会社で働けますか?人権の“じ”もない職場で奴隷のように働きたいですか?
彼らに文句をいう前に、まず自分たちの社会を振り返って見てください、悪いのは何かが見えてくるはずです。
自分の国が実はどのような状態なのかが詳らかにされる良書です。読んでいてあまりの痛ましさに涙が出てきました。 -
私は中国人研修生受け入れの仕事に足を踏み入れようとしたことがある。業務上仕方がなくて、最初は中国にいけるとか結構乗り気だったのだけど、だんだん嫌になってきて、けっきょく逃げた。
今はその自分の過去を深く恥じている。
まさに、恥じているという以外に言葉がない。
「いいこととは言えないけど、世の中ってこんなものだろう。それに自分も状況的にしょうがないし。俺に何をしろっているんだ?」と考えていた過去の自分を憎んでいる。 -
[ 内容 ]
日本経済にとって、外国人労働者は都合の良い存在であり続けた。
企業の繁栄を支え、あるいは不況企業の延命に力を貸してきた。
しかし日本は、その外国人を社会の一員として明確に認識したことがあっただろうか。
第一部では、「奴隷労働」とも揶揄されることも多い、「外国人研修・技能実習制度」を使って日本に渡ってきた中国人の過酷な労働状況を概観する。
第二部では、かつて移民としてブラジルへ渡った日本人の主に子どもや孫たちが、日本で「デカセギ労働者」として味わう生活と苦労、闘う姿を追う。
こうした中国人研修生・実習生と日系ブラジル人を中心に、彼ら・彼女らの心の痛みを描きながら、日本社会をも鋭く映す、渾身のルポルタージュ。
[ 目次 ]
第1部 中国人が支える、日本の底辺重労働(北京政府公認の「最優秀校」;「日中のビジネス」が生んだ悲劇;研修制度とは何か;強制帰国;私たちは人間扱いされていないんです;二十一世紀の人身売買;目に見えないラベル)
第2部 日系ブラジル人、移民たちの闘い(デカセギと移民の血;繁栄を支える;「例外的に自由に働ける外国人労働者」;共生への実験;行き場を失う人々;泣き寝入りはしない;サンパウロ―「日本」が息づく街;トメアス―日本から最も離れた場所で)
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[ 参考となる書評 ] -
バランスが大事。現実を知った上で、感情に流されずに移民問題に向き合っていきたい。