「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035884

感想・レビュー・書評

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  • ネットワークに着目して、さまざまな領域を分野横断的に分析した一冊。かといって、決して研究論文然とした書物ではなく、著者がネットワーク・サイエンスという学問と格闘してきた、ドキュメントのような仕立てになっている。その格闘は迫力に富み、まるで著者の息づかいまで伝わってくるようである。

    TwitterやFacebookの登場により、ソーシャルグラフというものが昨今、非常に身近なものとなっている。ただし、これらは可視化かつオープンになっている、ごく一部のネットワークに過ぎない。世の中にはまだまだ可視化できないソーシャルグラフ、クローズドに閉じたソーシャルグラフが、たくさんある。そして、そのような幾多のソーシャルグラフに、著者は負の側面、正の側面から真に迫っていく。

    本書の最大の特長は、”お題設定のうまさ”に尽きると思う。ネットワーク・サイエンスという普段は縁遠い学問を、実に自然な流れで”自分ごと化”させてくれる。

    ◆本書において触れられているお題は、以下のようなもの
    ・社内における電子メールのやり取りから分析したハイパフォーマーの特徴とは?
    ・SNSの人脈連鎖と、実際の人間関係における人脈連鎖は、どう似てる?
    ・彼氏の元カノの元カレは何人いるか?
    ・新型インフルエンザ発生時の休校措置は正しいか?
    ・6次の隔たり(6人の知人を通せば世界中の人とつながる)は、過大推定か、過小推定か?
    結論が明確に出ていないものもあったが、実に多種多様で、興味深い内容ばかり。

    ネットワークという壮大な観点から世の中を見ていくと、まるで宇宙の歴史でも聞いているかのような気分になる。自分などネットワークの一部にすぎない、ちっぽけで相対的な存在であることを、痛感せずにはいられなくなるのだ。なんだか、多少鼻っ柱を折られた気分だ。

  • 本書「つながり」を突き止めろ は、ネットワークに関する本であるが、その辺の婚活本よりも恋愛の参考になるのではないだろうか。

    重要なのは、“入りを制する”ことだ。

    白馬の王子様を探すことは当然として、いかに探されるかも大切だ。見つける努力だけでなく、見つけられる努力も忘れてはならない。
    これは、職探しにも応用できる考え方だ。

    肉食系男/女子は必読!

  • 「カレシの元カノの元カレを知っていますか?」このセリフに見覚えのある人は多いと思う。エイズ検査に使われていたフレーズである。ネットワークサイエンスというと、ピンとこない人も多いだろうが、つまりモノやヒトの連鎖の科学であり、上記のフレーズはヒトの連鎖を端的に表している。本書ではあるSNSを例にあげてヒトの連鎖についての研究結果を述べているが、データを解析により、ヒトの連鎖がどうなっているか、その紐帯の強さ・方向性は一目瞭然である。自分の人間関係は自分だけが知っているわけではない。連鎖の先にいるヒトも知りうる可能性があることを理解したうえで、行動することが必要であろう。
    また、著者は最後に人の実生活での行動における感染症のアウトブレイクについて触れているが、こちらは感染症にかんする医学的・微生物学的知見とあわせて考えると、効果的なアウトブレイク防止が見えてくると私自身は考えている。

  • Social Network
    専門学術誌

    マーク・ブキャナン『複雑な世界、単純な法則』
    →スケールフリー

    Burt,1994
    構造的空隙論
    むしろ、今存在しない関係の空隙を見つけ、関係を橋渡しする位置を占めよ

  • その人について知りたければ、その人ではなく、その人の人間関係を見ればいい。なるほどと思った。この本は、人間関係のネットワークを専門にする分野について書かれている。small worldや6という数字との不思議な関係など、人間関係において、不思議な法則らしきものがいくつかあることに驚いた。

  • 話がいろんな方向に広がっていて、面白かったです。

  • ネットワークサイエンスについてあれこれ紹介してくれる本。
    といっても総合的な解説というよりは著者のこれまでの研究とか思い出を中心に語る感じ。
    文系の社会学の研究と理系のネットワークとの予算や機器の違いなんかは「まあそうだろうなー」という感じで文系の研究費の低さを改めて実感。


    繋がりの中でも、二つのコミュニティを橋渡しするような人がネットワークにおいては重要なのは納得。


    有名な6次の繋がりについても色々な条件での実験や説が載ってて面白い。



    仕事に活かすところでいうと、
    ・仕事のメールは「即レス・短レス・頻繁に」。社内のネットワークで中心的な位置を占める。


    ・重すぎる関わりにはまり込むな、冗長な関係に埋もれるな。むしろ、今存在しない関係の空隙を見つけ、関係を橋渡しする位置を占めよ。


    ・SNSのターゲティング広告とんちんかんなの多い。人は同質的なつながりだけでなく、一番繋がっていたい集団は異性、ちょっと年上や年下など。


    ・「入りを制す」自分に入ってくる関係の認知と活用。
    出る方は自分でコントロールできる。大事。



    あとはネットワークサイエンスにはあんまり関係ないけど、後書きが面白かった。著者の今までとこれからとが語られていた。
    その中で興味深かったのが「時間の先に夢を見るか、空間の先に夢を見るか」という話。
    今の人・場所との時間の先に何かを求めるタイプの人と、人・場所をどんどん先にいって何かを求める人。
    農耕民族は前者で開拓者は後者。
    自分がどちらかのタイプか分かっておくといいよと。


    自分は空間の先に夢を見るタイプかなぁ。
    世界は広いし、今の周囲の環境なんていうのは偶然で出会ったごく狭い人・場所なんだから、それが全てだと思って固執するよりどんどん新しいところへ行ってみればいいじゃん、って思う。
    「自分にはこれしかない」「この人しかいない」っていうのは初期条件だけでいうとありえないんじゃないかと感じてしまう。
    それが「これしかない」というのは、運命じゃなくて費やしてきた時間や執着の結果ではないのではないか。限られたネットワークの中での最的化みたいな。
    もちろんその執着の結果なにかを成し遂げて幸せになることだってたくさんたくさんあると思うのでそれでもいいと思う。
    でもそんなネットワークの中だけじゃなくて、どんどん飛び出せばいいじゃん!となってしまう自分は間違いなく時間ではなく空間派でした。


    小さい頃から転出入が激しかったから、出会いなんて偶然たまたま近くだっただけだろという思いが身体に染みついてるのかな?


    もちろんこんなに広い世界で偶然出会えたこの関係を大切にしたい、というのはあると思う。
    前々回のシュタゲの日記とちょっと関連するけど、「ありえたかも知れないいくつもの可能性」に想いを馳せ、その分だけよりいっそう今を大切にするってこと。
    でもその今だけに固執して他が見えなくなるのは勿体無いかなあと。


    昨日『思想地図』東浩紀×宇野常寛トークショー -インタビュー:CINRA.NETを読んでそこに
    『たとえば舞城王太郎の『九十九十九』に「だから僕は、この一瞬を永遠のものにしてみせる」ってフレーズがありますよね。しかし、95年以降は誰もがループの果ての一回性を愛するかのごとく、「この一瞬を永遠のものに」するべく物語回帰していったわけです。ゼロ年代に問われていたのはむしろ「誰もが九十九十九になった世界」「誰もが物語回帰を決断した世界」がどうなるか、じゃないでしょうか。』
    という発言があって、この偶然を愛しすぎてしまうことの弊害とかどうなのと思っていた自分にはほーほーときたわけで。


    僕たちは可能性は無限だけど、ゲームや物語のように無限のループするわけじゃない。逆にゲームや物語よりもはるか無限に近く世界は広い。
    だからこの一回性を愛するのもいいけど、もっと広いところにどんどん出てみようぜ!ってことが言いたかったみたいな。


    もちろん世界の全ての人や場所や仕事を経験できる時間は僕たちにはないから、ある程度のところでその中で決める必要は出てくる。
    そのときになって初めて一瞬を永遠のものにして、広い世界の偶然の中からこれを選んだという覚悟を持てばいいんじゃないかなあ。


    つまり、
    若いうちから「これだけ!」と決めつけないで、世界は広いんだから色々やってみなよ!会ってみなよ!そのうちに本当に大切にしたいものが分かってくるから!
    みたいなありがちな意見が言いたかっただけなんですけどね!w
    ただもちろんひとつひとつをおろそかにするわけではなく、もちろんある程度大切にはするけど!




    というわけでした。
    ネットワークサイエンスからはだいぶ脱線したけど、無理やりまとめて繋げると、ネットワークのハブを伝って広いネットワークを構築してみろ!ってことかな?w

  • ネットワークサイエンスという学問をご存じであろうか。9・11以降米国では、犯罪捜査と軍事関係の仕事をするネットワーク研究者が膨大に増えているという。
    ただネットワークサイエンスが身近なものでないかと言えば全くそういうことではない。本書を読めばいかに日々ネットワークサイエンスの分析対象の中で生きているかがわかり、いかにそれが「魅力」的でありかつ「怖い」ものであるということを実感するだろう。ネットワークサイエンスとは抽象的に言えば、多様な関係の型を分析してその特徴を理解し、関係そのものの連鎖、拡散や成長、そしてその上に流れる情報、金、質の変異などを明らかにしようとする学問の分野である。本書で出てくる具体的な例として、恋人、SNS、新型インフルエンザのつながり、対ゲリラ戦略などと多岐にわたっている。「カレシの元カノのカレシを知っていますか」という広告作品ついてはまるまる一章分書かれており、筆者はこの広告を見た瞬間「自分は何かをしなければならない」という本能的な衝撃が走ったという。このお題自体非常に興味深い事ではあるのだが、このようにネットワークサイエンスに対する筆者の使命感というものが本書を読んでいると強く伝わってくる。最後まで一気に読み通させてしまうほどの力強い筆致も魅力的だ。

  • さまざまな問題を「ネットワーク」の視点から考察していく、ネットワーク研究の本。6degreeの話や、実際の社会実験の話など、身近で非常に面白く読めました。自分から出ていくネットワークだけでなく、自分へ入ってくるネットワークにも目を配り、人間関係を俯瞰的に見るべしというのはそのとおりだと思った。
    「およそ上司たるものは、人間関係に鋭敏でなければならない。人間関係オンチな上司を持つと部下が苦労する。」「すきまを埋めるように、人間関係に橋をかけると徳だ(構造的空隙理論)」「旅先で一人、未知の人々のあいだを通り過ぎていく感覚は快感ではあるが、ある程度の深みを持った安定的な他社との関係は、安心感につながるし、かけがえがない。」

    それにしても、あとがきの生々しさがすごすぎて「何が起きた!?」と思わざるを得ないな。

  • ネットワークサイエンスという言葉は初めて知ったけれども、身近なところに対象となる事象がたくさんあって興味を持てた。弱い紐帯の重要性やスモールワールドの話は聞いたことがあったが、シミュレーションを通じて広がり方、関係性を解析していくのは面白い。目に見えない人と人との関係性だけれども、そこには無数に張り巡らされたネットワークがあって、その太さや長さもきっと異なっている中でお互いに影響しあっているのが人間社会なのだと思う。自分が他者に向けて出す関係は制御できるけれども、他者から自分に向けられてくる関係をどこまで認知、制御、活用できるか?という言葉が印象的だった。今後フェイスブックなどでネット上でリアルな人間関係が可視化されるようになっていくと、また面白いのかもしれない。

著者プロフィール

関西大学社会学部教授

「2018年 『社会ネットワークと健康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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