ニッポンの書評 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
3.37
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本棚登録 : 699
感想 : 149
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036195

作品紹介・あらすじ

いい書評とダメな書評の違いは?書評の役割、成り立ちとは?一億総書評家時代の必読書。

感想・レビュー・書評

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  • 私は、2年に一度、ボランティアではありますが、市の発行するこどものための選書本の編集委員をやっています。

    主な任務は2つ。
    ①予め図書館で選ばれた(図書館員未読のものも多い)候補本の中からおすすめの本を選び、
    ②その本を読んでみたいと思われるような紹介文を書く、
    ことです。
    なんと文字数は119文字。絵本や低学年対象の児童書であればなんとかなるかも知れませんが、背景が複雑なことが多いYAにはきつい作業。おまけに翻訳ものは地名や人名に文字数をとるんです(涙)。

    今回で5回目の作業中ですが、今回こそは、他の編集委員さんたちの手間を取らせない完成度の高い文章を書きたい、そのためにツボを抑えた、読者の興味を喚起するあらすじの書き方を知りたいと思って本書を手に取ってみた次第です。


    いやいや次元の違う世界でしたね。
    実は私、学生時代から国語が大の苦手で(そんなのでよく編集委員なんかやっているなと言われそうですけど、これが実に楽しいのです)、高校3年生の娘の模試の現代国語読解問題の解答にも納得できないことが多いありさまなんです。
    そんな国語音痴で、おまけに高校生までは読書嫌いで読書量も少なかったので、題材となっている本はほとんど未読。ですから、本書に掲載されている書評が理解できないところも多々ありました。

    普段、ビジネス本が多いですが、小説を含めて大人の本を読むこともありますし、日常生活で、読解力がなくて苦労した経験もさほどないので、この本の難解さには舌を巻きました。

    例えば「あとがき」。
    連載から刊行まで時間がかかったことを述べた上で「こうして読み返してみると、内容的にはさほど古びた感がないことに安堵しています。が、それは、つまり、たった1年を経たぐらいでは、書評をめぐる状況には何の変化もなかったという証左でもありましょう。しかし、内容に関してはちがいます。少なくとも、ここ20年においては、ニッポンの書評には変化があったのです。」
    とありますが、ごめんなさい、私にはその変化した「内容」が何を指しているものなのか読み取れませんでした。

    いやぁ、でもね、
    「自分が理解できていないだけなのに、「難しい」とか「つまらない」と断じる。……自分が内容を理解できないのは「理解させてくれない本のほうが悪い」と胸を張る。……」と書かれては、いやもう何も言い返せないですね。



    ……書評が、難しいものであることだけは理解できたような気がします。


    私自身も気になっていたことではありますが、ネタバレと批判については、今まで以上に気をつけようと思います。
    でも、たとえは、挿絵と本文や、本文中の内容どうしに矛盾があったりとかすると、混乱しますよね。特に文字に慣れていない子どもはその傾向が強いので、そういうところは注意して、安心できるものを手渡したい。そのためにこの本にはこういうところがあるんですよと未読の方にはお伝えしたいという思いもあるんです。

    本の紹介記事を読むのは、何読もうかな?できればおもしろい本が良いなと思っているときだと思うんです。そんなときに、”自分にとって”信頼できる情報を与えてくれる、自分と感性の合う書評家さんなりレビュアーさんがいてくれるといいですよね。
    そのためにも、「伝え方」には注意しつつ、やっぱり自分に正直に書くことはしていきたいなと感じました。


    第15講「トヨザキ流書評の書き方」の付箋の付け方ポイントが、私も同じだったので嬉しくなりました。ただ、私の場合は、ほとんど図書館の本なので、書き込みやマーカーはできないんですけどね。
    著者の書評講座も一度受けてみたいですね。ボロボロになるのは目に見えているんですが。

  • 多くのブク友さんが読まれたようですでにレビューもたくさん。
    その様々な声に興味を持って読んでみたが、これは面白い。
    書評家の豊崎さん、明るく軽快でユーモアもあり、お話の展開が上手だ。
    「いわんや・・・・に於いておや」という漢文調の表現が55ページまでで3度も登場し、ひょっとしたら20ページに一度くらいの割合で出てくるかと思ったがその3度だけだった・笑

    真摯なお人柄らしく、一億総批評家時代のネットリテラシーについても考えさせられる。
    Amazonにおける素人の不遜なレビューには怒りの表明も。
    賛否両論ある箇所だろうが、私は好意的に解釈した。
    豊崎さんは、作品が世に出るまでの労苦を熟知しているからこそ言われるのだろう。
    書評ひとつでもこれだけ努力が必要なのだ。
    いわんや、作家の作品に於いておやだ。(真似してみた)
    忘備録だろうが娯楽だろうが、アップする以上は責任を持たねばならない。
    また、書評と批評の違い、ネタばらし問題や海外と日本の書評の違い、「良い書評」と「ダメな書評」の例も挙げられ、書評のルールまで教えてくれる。

    特に面白いのは各新聞の書評欄の採点結果。もう容赦がない。
    「IQ84」の書評を書くことに消極的だったという理由も、とても納得が行くもの。
    書評という応援を必要としている作品にこそ、上手い書評を書いてほしい。
      
    「面白い書評はあっても正しい書評はない。だから書評論はレビュアーの数だけあっていい。」
    さんざん言った後のこの「あとがき」が爽やかだ。
    良い書評を書くために役立つ点をまとめようとすると、どうしても矛盾が生じる。
    あらすじ紹介も書評のうち。けれどもあらすじと引用だけでも、内容と方法と文章が見事ならそれも立派な書評。情報も大事、作家と作品へのリスペクトも大事、でも読み物としての面白味も大事ということになる。
    ではどうすればそんな良い書評が書けるようになるかというと、ここのハードルが相当高い。
    目のつけどころ、あらすじのまとめ方、言葉のセンス、解釈、訴求力等々。
    なおかつ面白く、これからその本を読む人の読書の興をそいではならない。
    ・・・・プロを目指したいかたはどうぞ。

    とりあえず今まで通りでいいかと考えるワタクシは、作品と書き手さんに対して失礼のないよう、愛情をもって書くことに注意を傾けよう。
    あらすじのまとめ方に工夫を凝らし、ネタばれと「援用」にはくれぐれも気を付けて。
    ああ、ここまで書いたらなんだかとてつもなく大変なことをしている気がしてきた。
    もしやこの本のねらいは、レビュアーへの注意喚起なのかもしれない。

    雑誌に連載された記事なのでサクサク読めるし、向上心のある方にはとても良い本かと。
    巻末の「ガラパゴス的ニッポンの書評」という対談記事では、自分の作品をべた褒めしてくれた文章に対して言い返す金井美恵子さんの話が載っていて、大爆笑。
    「良い書評」の一例として大好きな岸本佐和子さんの書いたものが採りあげられているのも嬉しかったり、私には、読み物として大変満足のいくものだった。

    • naonaosampoさん
      こちらこそ、コメントやフォローありがとうございます!どうぞよろしくお願いします^ - ^
      こちらこそ、コメントやフォローありがとうございます!どうぞよろしくお願いします^ - ^
      2020/05/15
    • 夜型さん
      トヨザキさんのプロの妙味を堪能しました!
      https://allreviews.jp/review/883
      トヨザキさんのプロの妙味を堪能しました!
      https://allreviews.jp/review/883
      2020/07/17
    • nejidonさん
      夜型さん、こんばんは(^^♪
      んもう!恭子さんの写真でびっくりしてしまいました・笑
      そして、いきなり「持つ」を「待つ」と読み間違いました...
      夜型さん、こんばんは(^^♪
      んもう!恭子さんの写真でびっくりしてしまいました・笑
      そして、いきなり「持つ」を「待つ」と読み間違いましたよ。
      トヨザキさんの狙い通りとなった私です。
      いやぁ、本当に巧いですよね。
      きっちりツボをおさえて、でも自分の言葉で語る。すごい人です。
      本にまつわる本を読みだしてから、美文・達文を書く人にたくさん出会いました。
      今夜のトヨザキさんの書評で、眠れなくなりそうです。興奮して・笑
      夜型さん、ありがとうございます!
      2020/07/17
  • ブクログには登録して、まだ1年と少しです。
    ブクログはブックレビューサイトですが、私は自分の書いているものがまるで書評とは思えず、読書感想文ですらなく、こんな文章人目にさらしていいものかと、思いつつ、でも投稿はやめられずでした。
    それで、書評とは何かとか、書き方を教えてくれる本はないかと探していたら、この本をみつけました。

    この本の著者の豊崎由美さんはブックレビューの仕事を中心に、池袋コミュニティ・カレッジ(西武)で実践的な書評講座も開講されているそうです。
    という訳で、この本は私にとって大変良書で、読んでおいてよかった本です。

    書評と批評の違いから始まって、どういう書評が、いい書評であるか。「ネタばらし」はどこまで許されるのか。書評の読み比べ。プロの書評と感想文の違い。新聞書評を採点してみる。など、気になる項目でいっぱいでした。
    その中で、アマチュアのブックレビューに対する言及や「自分で知って驚いたり泣いたり考えたりする権利を奪うというペンの暴力」ということばは、少なからずショックでした。
    心して気を付けようと思いました。
    文中にでてくる丸谷才一さん編集のイギリスの書評を厳選収録したという『ロンドンで本を読む』は読んでみたいと思いました。

    巻末の大澤聡さんとの対談で、豊崎さんが「畏れ多いにもほどがあるけれど、映画で言うと淀川長治さんみたいな書評家になりたい」とおっしゃっておられます。

    私は、ブクログでも淀川さんのような書評を書かれていらっしゃる方多いと思っています。
    私は全くダメだと思いますが、アマチュアの書評でも、本に対する愛情でいっぱいの方、もうこれは「いいね!」しなくちゃと毎回思う方、たくさんいらっしゃいます。せめて、そういう時は、すかさず「いいね!」をしますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

  • ブックレビュアーの豊崎由美さんの書評論。
    ブクログでレビューを読んでとても気になった本。

    たとえ、読書感想文であっても、メモ、備忘録のつもりでも、アウトプットの練習であっても、ブクログでレビューを公開しているということは、人様に読まれる可能性があるということ。
    著者やレビューを読んでくれる方へと礼儀があると思う。ブクログはじめてはや半年近くになるが、ずっとそれは考えていた。
    この本はその礼儀に関して、ずばり参考になる。

    豊崎さんの書評感は以下の3点。

    1 自分の知性や頭の良さをひけらかすために、対象書籍を利用するような「オレ様」書評は品性下劣。
    2 贈与としての書評は読者の信頼を失うので自殺行為。
    3 書評は読者に向かって書かれなければならない。

    ブクログのレビューについても、当てはまることだと思う。常に心に留めておきたい考え方だ。

    そして、「優れた粗筋紹介は、それ自体が書評になっている」という。
    粗筋書くのってめんどくさい。正直、どっかの本の紹介サイトからそのままかっさらってきて、ちょい手直しして貼っつけとけばいいかなって気分になる時はある。
    でも、本の内容を伝えるためには、しっかり読んでその本を理解しなければならない。本を理解してないと粗筋は書けない。つまり、粗筋が書けないとレビュー書けない、ということになる。
    本を理解するためにも粗筋はちゃんと書こう、と思った。

    また、プロの書評は、本を読むたびに蓄積されてきた知識や語彙や物語のパターン認識、様々な要素を他の本の要素と結びつける「本の星座」を作り上げる力があるのだ、という。

    そうなんだよね。
    全く深みがないレビューしか書けないのは、自分に絶対的な蓄積が足りないからなんだよね。もっともっと読書して知識や語彙を吸収していきたい。心を豊かにしていきたい、とブクログ始めた時の初心を思い出した。

  • 『文学賞ぶった斬り!』で有名なブックレビュアー、豊崎由美さんが日本、そして海外の書評について書いた新書。

    ブクログで「感想」を書き始めた頃にその気になって買ってしまった。

    読んだ感想は「うう、ごめんなさい、ごめんなさい、こんな×××レビューばかりかいてごめんなさい社長!」というものでした。

    豊崎さんが思う上手い書評、上手くない書評には納得。
    特にネタバレはいかんでしょう!って自分もやってるかもですが。

    特にネットの匿名素人レビュアーさんについての苦言には耳が痛い。
    「あなたたちは守られているけど批評された作家さんたちは逃げも隠れもできないんだよ」

    表に出てる目立った人をサンドバックにするようなことは書かないように「書ける範囲で愛情を持って」書こうと思った。

    絲山秋子『ばかもの』
    カズオ・イシグロ『日の名残り』
    ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
    村上春樹『1Q84』

    のネタバレがあります。

  • 自分の書いたものも含め、ブクログに載っているのが「書評」なのかどうかはよくわからないが、まあ本の紹介という意味ではいずれにしても似たようなもんだよな、と思って読んでみたのが本書。

    著者は「書評家」らしく、最初のほうはへー、そうやって書くのか、なるほどなー、と読んでいたが、途中から素人の「書評」について怒りはじめて、別の意味で面白かった。
    「匿名のブログやAmazonのカスタマーレビュー欄で、なぜ他人様が一生懸命書いた作品をけなす必要があるのでしょうか。卑怯ですよ。」
    なんでやねん。

    ぼくが知りたいのは「その本が自分にとって面白いか=時間を割く価値があるか」の一点のみ。そのために先に読んだ人のコメントを参考にしたいのだ。大切なのは正直に書いているかどうかであって、実名だろうが匿名だろうが、プロだろうとアマだろうとどうでもいい。そりゃ難しくてよくわからないこともあるだろうけれど、「読んだけどよくわからなかった」こと自体だって大事な情報なのだ(ぼくもちょくちょくある)。
    むしろ実名であること、プロであること(対価をもらっていること)が理由で、思ったことを書かなかったり、著者に気を使ってバイアスがかかったりするようなら、実名プロの書評はぼくには必要ない。ステマと似たようなものだ。

    ちなみにぼくが読書メモを書くのは、
    1.同じ本を何度も買わないように
    2.その本を読んでどう考えたのか忘れないように
    するのが目的だ。だったら自分のPCにでも放り込んでおけばいいのだが、PCが壊れて消えてしまったら嫌だな、と思ったのが、ブクログみたいなクラウドサービスを使い始めたきっかけだった。
    使い始めて気づいたのだが、自分と読書傾向の似たひとを探して、その人が面白がっている本を読むと、アタリ率がとても高い。いままでは書名や目次や、それこそプロの「書評」を頼りに本を買って「またつまらぬ本を読んでしまった・・・」とげっそりすることがちょくちょくあったけれど、その割合は確実に減った。これはぼくにとっては素晴らしいことで、それで十分だ。
    いつもお世話になっています。

    いっぱい本を読んでいるひと、思ったまま書いているひと、読書から得たもののことを深く考えているひとは、不思議と文章からわかるものだ。ぼくは実名でもプロでもなく、そういう人にくっついていきたいと思う。
    ぼくのメモも誰かの役に立っていると嬉しい。

  • 耳の痛い話。プロだけでなく、アマチュアの人々の書評に対しても厳しい。私は書評というよりは自身の読書記録として感想を載せているだけと言い訳しつつ、
    でも人の目に触れる場所に本に対しての意見を言うのなら、少なからずその本に対して愛ある態度を示さないとと痛感した。

  • ブクログさんのレビューで知って。

    はいすみません。本当にごめんなさい。

    私のは読書感想文です。
    いや、感想文でもないかもしれません。
    ただの独り言です。
    何しろ覚書なものですから。

    ①書評家の果たしうる役目
    これは素晴らしいと思える作品を、一人でも多くの
    読者に分かりやすい言葉で紹介すること。

    ②書評と批評
    書評
    読む前に読むもの
    だから読者の初読の興をなるべくそがないよう
    細心の注意を払って書かれるべきもの。
    批評
    対象作品を読んだ後に読むもの。

    ③書評を書くとき
    1 倍の文章を書く。
    2 自分にまつわるエピソード部分を削る。
    3 遊び部分を削る。

    ③媒体に応じて選書する。

    ④誰のために書くのか。
    私の場合、完全に自分のために書いている。
    誰かの目があったら、多少はがんばれるかなと思い
    ここに書いているだけだ。

    ⑤ミステリーが流行した1980年代に、非ミステリー系もネタばらしをしないように、世の中が変化していったのではないか。

    読む人の楽しみを奪わないよう、物語系をここに載せるときには一応気遣う。
    気遣いすぎると疲れるので、情報系の書物は
    自分がなるほどと思った部分は結構書いてしまっている感がある。
    でも、書くというのは結局、自分の頭で読んだ文章を
    変換しているので、他の人が原書にあたったら
    必ずしも同じ意見にはならないんだろうな
    と思っている。
    だから、原書にあたるのは大事だ。

    ⑥批判は返り血を浴びる覚悟あって初めて成立する。
    はい、その通りです。
    ものすごく時間かけて書いてるもんね、本。
    本が出るレベルなんだから、本になっているだけで
    すごいのだ。
    愛情をもって紹介できる本のことをこれからも書いていく。

  • 著者豊崎氏のプロとしての書評感を海外との比較、ネタばらしの範囲、粗筋紹介、書評の読み比べといった切り口で展開。かなり過激で危ない論調もありハラハラしながら読んだ。後半には我々素人に対する厳しい指摘も用意されている。自分が理解できていないだけなのにつまらないと断じる自分の頭と感性が鈍いだけの劣悪な書評ブロガーの文章がネット上に多々存在する。批判は返り血を浴びる覚悟があって初めて成立するのであって浅薄なだけの悪意ダダ漏れの感想文は誰の心にも届かない。著者への冒涜と営業妨害以外の何物でもない。どうしても書きたいというのなら愛情をもって紹介できる本だけに限定すべきである。思わず本に向かって「はい」と返事をしてしまった。言辞は辛辣まことに耳に痛いが本というものに対するこのうえない温かな愛情も感じた。

  • 私はこの本を読んで初めて、書評という書き物/読み物ジャンルがあるということを認識したと思う。


    もちろん言葉としては知っていたけど、考えてみたら私はプロの書く書評というものを読む習慣がない。「新聞の書評」なるものも読んでないし(そもそも新聞を読んでない)、たまに美容院なぞで雑誌を読むと最後のほうに小さな書評?新刊紹介?コーナーがあったりする、あれはまあ読むが、でも美容院にいったときくらいしか読まない。「ALL REVIEWS」という書評サイトを知って「これはおもしろそう」と思っていたものの、そういえば最近はわざわざ覗きに行くこともなくなっている。


    一方、プロじゃない人の書いたいわゆるブックレビューはよく読む。自分がまだ読んでいない「面白そうな本」を見つけたいときや、逆に読んだ本について他の人がどういう感想を持ったのか知りたいときに、Amazonレビューやブクログといったブックレビューの集まるサイトを見に行く。だけでなく、自分でも書いてる(Amazonには書いてないけど)。


    はじめは、それも「書評」かなと思ってこの本を読み始めたけれど、いろいろ考えながら読み進めているうちに、私が書いたり読んだりしているものは「感想文」で、それとは異なる「書評」という世界があるんだなということがわかり、冒頭に書いたような認識につながったのである。


    ※「こんなのしょせん感想文だわ」と卑下したいのではなく、本の紹介及び批評をしたいのか、自分がどう感じたかを述べたいのか、そもそも目的の違う別物として整理して考えたほうがいいようだ、と思うに至った。私の場合ふだん書きたいのも読みたいのも「感想文」なので問題なしだが、「書評」を求めているところに「感想文」がきちゃうと「おいおい違うよ」と言いたくなるのだろう。


    丸谷才一が「書評の芸」について一家言持っていて書評という文章ジャンルの価値を云々した、という話も何度か出てきた。知ってる人にとっては知ってる話なんでしょうが、丸谷才一の書いたものを読んでみたいと初めて思った。そうしたら私にも、書評を読む楽しみという新しい世界への扉が開くときが来るかもしれない。


    書評の歴史、書評と批評の違い、世界の書評と日本の書評、などについてを知ることができたのも面白かった。


    この本のあんこはもっと別のところにあったのだと思うが、その点についてはさほど感銘を受けなかったので特に触れない。でも、自分はなぜ書くんだろう、とか、この人なんでこんなに怒ってるんだろう、とか、、、考え出すとけっこう止まらず、思いのほか思索の深まる読書だった。

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著者プロフィール

1961年生まれ。書評家、ライター。「GINZA」「TVBros.」「共同通信」などで書評を多数掲載。主な著書に『ニッポンの書評』、大森望との共著に『文学賞メッタ斬り!』など。

「2017年 『村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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