検証 東日本大震災の流言・デマ (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036218

作品紹介・あらすじ

チェンメ、リツイート…災害流言という人災!流言やデマはどのように生まれ、どのように広がるのか?真偽を確認するにはどうすればいいのか?そのメカニズムを解説し、ダマされない・広めない基礎知識を伝授。

感想・レビュー・書評

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  • 今年の三月は東日本大震災に関する本を読もうと決めて、『想像ラジオ』に続いて二作目。

    本書は2011年5月、まさにデマや流言が飛び交っている最中に出版されている。リテラシー(情報を見抜く力)の底上げに関しては普段からの備えとしてやり続ける必要があるとしながら、「流言ワクチン」の摂取が重要とする。過去の事例から学ぶこと。

    流言の広まるメカニズム、「うわさ屋」と「検証屋」とに分けての分析など勉強になった。そして検証屋も自分の不得意分野ではうわさ屋になり得る。友人同士で「あなたは間違っている」などと言うと人間関係が険悪になることもあるため、非難モードではなく共有モードでコミュニケーションをとることが重要。

    東日本大震災のあと、放射線に関するデマや間違った情報が出回って、放射線の専門家のはしくれとして勉強したり職場内の情報発信に協力したことを思い出した。
    「政府や東電は嘘をついている!」という先入観を持って、とにかく誰かをバッシングしたい人が多かったように思う。物事を批判的に捉えることと非難的に捉えることをはき違えた人が多かった。

    自分はLINEを少し使う程度で、SNSとは距離を取りたいと思っているけど、とにかく情報に接するときには鵜呑みにすることはしたくないと思う。当時読んだ『風評被害』には「うわさは智者で止まる」という言葉が紹介されていて、できることならデマを止める側になりたいとは思うけど、検証屋がうわさ屋になりえるという話もあるし、慎重でありたい。

    震災後早期にこの本を出版したことの意義はとても大きかったことだと思う。そして、とりあえず平和に過ごせている現在、リテラシーの向上に努めなければと思わされた。

  • 東日本大震災にまつわる、流言・デマの検証本。当時Twitterは相当見ていたので、大体知ってるけど、見なかったらデマにかかることもないのかなと。まあ、少なくとも無闇に拡散することだけは避けようと思う。

  • 当たり前のことだけど、なかなかできていないことが書いてある実用書。

    震災のときとか非日常はもちろん普段から情報のソースはちゃんと確認しないといけないなと改めて思う。

    萩上チキさんはほんとちゃんとした仕事をしているなぁ。誠意があるってこういうこと。

  • 東日本大震災でネット上で観測されたデマについて解説。デマに対処するには、ソースをきちんと調べることが重要と認識した。

  • 実用的な良書。「コスモ石油の黒い雨」に始まり、東日本大震災で流れたデマが、どのようなメカニズムで流れたのかを検証した一冊。要は、「情報に飛びつかずに、ウラを取ろう」という話だが、以下の側面によりとても面白かった。
    (1)【拡散希望】とか「○○から聞きました」のようなデマの典型を示してくれているので、情報のウソホントを見分けるためのちょっとしたマニュアルのようになっていること
    (2)ツイッターという新しいメディアが浸透してから起こった大震災におけるデマの特徴を描いていること

    著者はこの本を「流言ワクチン」と表現しているが、確かに、これを読んでおくことでデマを真に受けない・自ら拡散させないという耐性が前よりはできた気がする。

  • デマに踊らされないために、情報を丸呑みしない心構えが大切。
    世の中のことを斜めから眺めるくらいの方が、これからの時代、いいのかも…さみしいけど。

  • 積んどいた本でした。流言・デマはこれからも増える一方でしょうから、受けるサイドがうまく対応するしかないでしょうね。限界あるとは思いますが

  • 前に受けたとある論述試験で、災害時の情報提供がテーマになっていた。その時は全然知識なんてなくて、ただ思い付いたアイデアなんかを書きつづって終わったけど(もちろん落ちた…)、今の情報社会に生きてる一人として、知っておきたい分野だなと思って読んでみました。
    流言についてケース別に構成・説明されている。社会心理学とかヒトの行動心理の分析も合わせてなされていて最後まで興味深く読めた。
    デマを頭から信じない、「流言ワクチン」を持つこと。こういう考え方を学校とかで教えていかなきゃいけない時代なのかもしれない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「流言ワクチン」を持つこと。」
      ナルホド、この本読んでみます。
      「「流言ワクチン」を持つこと。」
      ナルホド、この本読んでみます。
      2012/03/05
  • 検証 東日本大震災の流言・デマ
    荻上チキ著
    2011年5月20日発行 
    光文社新書

    東日本大震災が起き、フクイチ事故に至った時、一時、石原都知事(当時)が、パチンコ屋の営業や自販機を止めれば、節電が出来ると繰り返し訴えていましたが、あれは実はネットでのデマから始まったことをご存じでしたでしょうか。
    私は知らなかったが、この本に経緯が詳しくかかれています。

    セ・リーグの公式戦を予定通り開催すべきかどうかの議論が起きた時、試合を強行しよとして批判を浴びたジャイアンツ。親会社の読売新聞が「東京電力管内の主な産業や施設などの電力消費量」という表を掲載したが、誰かが、その一部だけを切り取り、ランクの下の方にあったパチンコや自販機があたかも一番電力を消費しているかのように見せかけて拡散させた。そのランク表では東京ドームが最下位で、読売にとってもその拡散は都合がよかった。
    それに引っかかった都知事が発言、これはいいとばかり、読売がそれをまた報道した、という図式。

    さて、
    この本の著者は、「シドノス」を設立し、メールマガジンなど情報発信メディアを確立しつつ、自らも発言する若手の学者系言論人、とでもいうべき人かな。肩書きは、批評家、編集者、となっています。
    テレビで見るディベートの仕方はあまり好きではないけど、比較的まともな人ですね。

    チキ氏が、東日本大震災で飛び交った流言・デマについて、具体的に取り上げ、なぜ起きたのか、それがどんな迷惑を及ぼしたのか、それにひっかからないためにはどうしたらいいか、などを記している本。

    大災害時に流言・デマはつきもので、歴史上、一番有名なのが関東大震災時におきた「朝鮮人来襲説」。全くのデマにより、何の罪もない、そして自らも被災して苦しんでいる在日朝鮮人や朝鮮人と間違われた人がたくさん殺されました。

    20年前に私も軽く被災した阪神・淡路大震災でも、こうした外国人に関するデマが関西の都市部には出回った。当時はインターネットがほとんど普及しておらず、みんな口から口への噂で伝わっていきました。
    代表的なのは、神戸でカップルが電気がまだ復旧していないバーで飲んでいると、東南アジア、イラン系の男が2人(3人)入ってきて、彼女を強姦、止めに入った彼氏とバーテンはボコボコにやられて重傷。警察もマスコミもパニックを恐れて発表していない、という話。私もあちこち(飲み屋の女性からがほとんどだった)で聞いたもんです。
    これについては、同時に読んでいる「うわさとは何か」という、こちらは専門家である社会心理学者が書いた本に、もとネタが説明されているので、また書きます。

    さて、今回も外国人に関するデマが随分あったようです。
    この本によると、
    「仙台市三条中国の避難所で中国人がトマトの皮をぺっ!と吐いて汚し、ストーブ前にいた高齢者を足で払って独占。近隣の外国人留学生(7割強が中韓)が避難所用救援物資を根こそぎ運びだした」
    というようなデマが出たらしい。
    この避難所はその日はまだ閉鎖されていたので、真っ赤な嘘。
    しかし、デマにも世相が反映されているというか。

    関西の人にも関わりのある、流言・デマも出てきます。チェーンメールを受け取った皆さん、書き込みを見た皆さん、多かったでしょうけど、「関西電力に勤める友人からのお願い」と称する節電要請メールが代表例。関電も、平松市長(当時)も否定のコメントを出すに至った件です。これも個人が要請するわけがないということを考えれば、すぐにデマだと分かるのだけど。今はそういえても、みんな“ハイ”になっている時は判断を誤りますね。

    そう言えば、ボランティアに入った人による不確かな情報発信、拡散についても取り上げています。「ボランティア・ハイ」の状態になると解説。・・・確かに、それはあるかも、という内容でした。

    この本では、
    1.注意喚起として広まる流言・デマ
    2.救援を促すための流言・デマ
    3.救援を誇張する流言・デマ
    の三つに分けて事例紹介し、時間の経過とともに情報提供した者の書きようが変化していたった様子なども含めて分析しています。

    最後の章では、どうしたらこういう情報に踊らされずにすむか、ということも考察。その一つに、NGワードに注意というのがあって、その中に「日本のマスコミが報じていない・・・」という書き出しがつくのは要注意というのがありました。

    私も、マスコミは信用できなから一切見ない、読まない、と主張している人が、「マスコミが一切報道していない事実・・・」なんて書いていると、マスコミに一切目を向けない人が、なんで分かるの?と不思議に思います。それに、一切報道してないことを証明することなんて、ほとんど不可能、いわゆるブラックスワン(悪魔の証明)なのにね。
    といいつつ、「マスコミであまり報道されてませんけど」とついうっかり使ってしまいがちなので、他山の石とすることにしましょう。

    この本、面白い。東日本大震災時の過去の話ではなく、ネット、とくにソーシャルメディアを利用する人には必読の教科書かもしれません。

    内容を書きだしたノート、かなり長いので省略します(^_^;)

  • 有事の時こそ冷静で在れ。興奮せず淡々と。「拡散依頼」や「皆に教えて」って言うのを右から左に流さずソースの確認しようってのはいいが、誤ソースだったり操作されてる可能性もあると言われるとコンスタントに止めるってのがいい気がする。。ソースの質の判断は素人には難しい。それと、有事のときに悪事をはたらく奴は問題外だけど、震災関連の本を読む度に出てくる「善意の人」ってのがやっぱり厄介。「善意」に基づく言動が必ずしも「善行」にならないってのがイタイ。ボランティア一つとっても「善意」ではなく効果や結果で評価されるべき。

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著者プロフィール

1981年生まれ。評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事。ラジオ番組『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)メインパーソナリティー。同番組にて2015年度、2016年度ギャラクシー賞を受賞(DJパーソナリティー賞およびラジオ部門大賞)。

「2019年 『ネットと差別扇動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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