検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036744

感想・レビュー・書評

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  • 財務省、大蔵省は、元々増税なんぞ最後の手段で、徹底的に避けるものだと考えて抵抗し続けていた。

    なんて言われても、全く信じられるところではないのだが、そうだったのだ。

    腐った政治家、国民の方を向いてる降りして、利権と権力に腐心する政局に対抗して巻き込まれて戦っているうちに、ミイラ取りがミイラになりまともな判断もできなくなって現在に至る。

    そんなところか。

    この本の時代はまだ民主党政権だったが、防衛力増強にこれ幸いと増税を放つ、まさに倉山先生が心配していた通りの時代になっております。

    悪じきに悪い奴らが重なったんだな。
    ま、最後に責任取らされるのは国民なのは、戦争と同じ。

  • 主観が前面に出ている。これ自体は良し悪しではないが、解釈を混同した文献紹介は誤誘導。

  • 図書館で借りた。
    タイトル通り、戦前から大蔵省~財務省がどんな立場で日本の財政政策を歩んできたかが記されている。
    序盤は非常に理解できたが、後半(=現代)になるにつれ、「いつのまにそんな立場になったの?」「急に消費税が強くなったな」等、展開が理解できなく、かつ財務省の立場ではない政治家の争いの色が強い記述になっていった。
    この理由も明確で、最後に著者の政治意見があるので、「あぁ、客観的事実を伝えたいのではなく、賛同者を求めたいのね」と納得した。

    とは言え、出典も細かく書かれており、近現代史を知るには良本とは感じました。

  • 大蔵省から続く財務省の通史。
    大蔵省~財務省目線での近現代史が書かれており、必然的に同情的・共感的な書かれ方をしている。
    昨今の増税をしたがる財務省の癖を、本来の大蔵省の遺伝子ではなく、歴史の中で政治家に際限のない財政拡大を飲まされてきたことと、日銀独立により金融政策の自由を奪われていることと結論づける。その上で日本の財政浮揚作として日銀を再統合し地上に出すお金の量を増やせばいいと主張している。
    執筆が2012年のため、その後日銀が日経ETFの買い支えで通貨供給量を増やしても株高となるだけで、国民生活には変わりがなかったことまでは反映できていない。金融経済の難しさと言うべきか。
    また、財務省にとって健全財政とは収支の黒字化ではなく、政治家に口出しされず予算を組み上げることだと書かれているが、試験に受かっただけの官僚が投票を経て国民の代議士たる政治家の指揮を受けるのは当然である。省の中の省、官僚の中の官僚と呼ばれた旧大蔵省時代からの自負と傲岸さは未だ健在とみえる。

  • 歴史を知らないと明日が見えない
    荒れ狂う現代で生きていけない
    正しい知識を得たうえで正しい判断を下すこと
    何をすることが正解かを考える力が
    現代人にもあることを信じて、
    倉山満は歴史と知識を語り、
    荒波をこぎ出す無謀な冒険者の背を押す

  •  読みやすく、また読み物としても結構面白い本です。
     ただ、文章の中身は、アーカイブ的なものではなくて、良くも悪くも著者の政治史認識とか、財政金融政策観が披露されておりますので、そういうのが苦手な方はおやめになったほうがよいと思います。
     なんというか、折角多数の参考文献が挙げられているにもかかわらず、いまいち文章が信用ならないというか、大蔵省の正史を紹介しておきながら、著者の考えが惜しみなく書かれておりますので、いったいどこからどこまでがその正史の引用なのかというのがわかりにくくなってしまっているのです。
     もちろん、著者の考えが展開されているところが正史ではないというのはわかるのですが、では本文からそれを控除したものが全て正史準拠かといえば、それがそうは読み取りにくいのがこの本のもったいないところでして、事実の記述はもう少し淡々と書くとか、メリハリのある文章を書いて頂きたかったなと思います。
     学者先生の文章のお堅さは、その信頼性や権威という点でいえば、決して無用の長物ではないのだなと思った本です。
     

  • 最近、ある軸に基づく歴史書が百花繚乱状態である。本書は、明治維新以来の大蔵省〜財務省の歴史をふり返り、現在、財務省は日本をどこへ導こうとしているのかを考察する。

    以上、未読メモ。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 2012年刊。最初、叙述の根拠・ソースが明瞭でなく(特に戦前期)、重要な事実の欠落?との危惧を生んだ上、城山三郎の小説の内容批判が挿まれて??の感。その後の「小説吉田学校」批判の件で大爆笑。簡明な研究書程ではなく歴史小説並のレベルと見てよいと了解し読破。なお、戦後を含めた大蔵省の史的展開の説明なので、岸宣仁氏(10年刊)の著作と被るのは仕方ないが、言い回しもよく似ており再度??。まぁ角栄と大蔵との関係(竹下分派期迄)・竹下登の大蔵支配はそれなりだが、ソースは不明。参考文献付記は多くはないが最低限は有。
    ①大蔵省内部の派閥と自民党の派閥との合従連衡、②戦前の馬場鋭一大蔵大臣の政策に関しては興味深かった。最近は、昭和20年までの経済史研究でよい本があるらしいので、それに当たりたい。なお、バブル崩壊後の日銀対応への批判は合理的だが、歴史研究者の専門的守備範囲かは疑問だし、本書との関連性も薄い。また、各権力者・陣営が親中・親米・親ソ等と見る点はかまわないが、単なる権力闘争にすぎないことを、ある立場のみが国益代表かのごとく見る書き振りは、些か筆が滑りすぎ。外交的状況との連関性も不得手か?。
     まあ、望むべくもないが、新書サイズでも加藤陽子教授のような、引用が丁寧で根拠やソースが明快かつ豊富に記述する書に比すれば…。

  • 財務省の歴史と言うのはうまい切り口だ。しかしそこここに陰謀論があふれだし、デフレは悪、増税は悪とそれだけが基準ではあまりに何の解決にもつながらないだろうと思う。

    関東大震災と昭和2年の金融恐慌の後、アメリカに続いて日本も金本位制復帰を目指した。昭和4年に成立した濱口雄幸内閣は衆議院第二党の立憲民政党で解散総選挙で第一党を目指すために国民の支持を得る政策が必要でそれが金本位制への復帰だった。ライオン宰相と呼ばれた濱口の政策としては緊縮財政政策で小泉首相時代に比較されたのを思い出す。この政策を実現するために蔵相に選ばれたのが井上準之助で軍部の反対を押し切り金本位制復帰を実施したが1ドル2円ほどで固定されたレートだったため日本の金貨は割安になっており円が買われた。各国とも金本位制を急がなかったのは通貨発行料を増やしてデフレ脱却を急ぐためであり、直後に起きた世界恐慌の影響もありこの金輸出解禁は不況を進めてしまった。

    昭和5年のロンドン海軍軍縮会議は大蔵省の予算削減方針にそったものでこの当時は大蔵省が陸海軍に対し優位に立っている。軍事と社会保障が金食い虫なのは今も昔も一緒なので大蔵省が予算引き締めに走るのはまあ当然だろう。しかし軍には火種が残ったのだが。昭和6年には満州事変に対する方針を巡って井上蔵相は陸軍と歩み寄り関東軍の張学良討伐は陸軍の命令でストップさせられた。これをもって関東軍の専横など対したことはなく大蔵省の方が権限が強かったとまとめてしまうのはあまりにも雑だろう、その前の柳条湖事件等々全部はぶいているのだから。ともあれ若槻内閣は安達内相の閣議ボイコットのため総辞職し、続く犬養内閣で高橋是清が蔵相として金輸出を再度禁止し積極財政を押し進め不況を脱した。現在でもリフレ派が積極財政を推す根拠としてよく引用されている。昭和7年井上は総選挙中に血盟団事件のテロに倒れ民政党は総崩れ、勝った政友会の犬養も五・一五事件で暗殺された。元老の西園寺公望は海軍大将齊藤実を首相にすえ、この時高橋が日銀国債直接引き受けを実施している。

    齊藤内閣は国連を脱退し、海軍は英米に対抗して海軍増強を求め、陸軍はソ連を仮想敵国として満州の関東軍の強化を図る。一方不況から脱したあとインフレ懸念が強まり高橋は軍事費圧縮をすすめ二・二六事件で高橋も暗殺された。大蔵省史観では「大蔵省は満州事変以来の陸軍の圧力に抵抗して来たがとうとう軍国主義が勝利した」と記述されている。「金融の世界史」によると当時のアメリカは満州の権益の解放を日本に要求しており、対日戦略に備えるオレンジ・プランを策定し、金融封鎖をすでに計画していた。日本が戦争をするためには石油などを買うために決済資金としてのドルが必要であり、資金封鎖をしたあとでは上海などの闇市場で金をドルに帰るしかなく、円は暴落していっている。

    大蔵省としての危機は高橋を失ったことではなく最も許しがたい大臣馬場鍈一だというのが本書の指摘のポイントだろう。馬場は歳出(30億)と軍事費(14億)を33%膨張させ、公債(9.6億)を40%増額させるとともに4億の増税を実施した。著者の批判は軍事費拡大→政治家の煽動と世論の支持→増税を含めた財源確保→軍事費の拡大というサイクルを作った馬場の政策とポピュリズムに乗って戦争を煽った近衛内閣を批判している。しかし、陸軍は日中戦争に反対でありソ連に嵌められた(ゾルゲ事件など)「近衛はソ連のスパイだったのではないか・・・そう言いたくなります」と言うのはこれまた雑だ。そして戦後は中国陰謀説が続く。

    増税はダメだが日銀の国債引き受けはデフレ脱却のためにはやるべき。増税は結局税収を減らすというのが著者の主張ではあるのだがインフレ/デフレを生産と貨幣の供給だけで述べており需要を全く無視している。金をばらまきゃ需要が増えるのか?戦時中の歳出拡大は軍事費によるもので今では社会保障費拡大が原因なのだから、増税しなければ歳出=社会保障のカットしかない。リフレ政策は問題の先送りにはなるかも知れないが、それで景気が良くなるかというと資産インフレはすすんだが燃料の輸入を除けばコアコアCPIは全く上がってないと言うのが現状。アベノミクスの成果はこのままでは先行きが怪しい。日本を救うには日銀法を元に戻し直接引き受けをさせろと言うのだがそれはいつか来るハイパーインフレリスクを軽くみ過ぎている。増税反対というなら歳出カット策を出さないと話にならないし少なくとも天然ガスを安く買えないと円安政策もとりにくい。方々が手詰まりなので特効薬みたいな話は素直には信じがたい。

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著者プロフィール

憲政史家

「2023年 『これからの時代に生き残るための経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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