天職は寝て待て 新しい転職・就活・キャリア論 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036775

感想・レビュー・書評

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  • 未来を予知しようとするのは 、夜中に田舎道をライトもつけずに走りながら 、後ろの窓から外を見るようなものだ 。一番確実な未来予知の方法は 、未来自体を作り出してしまうことである 。ピ ータ ー ・ドラッカ ー 『マネジメント 』

    違う考え方とは 、すなわち 、日本ではむしろリスクをとったほうが有利だ 、という考え方です 。なぜか ?理由は単純で 、リスクをとる人が少ないからです 。リスクをとる人が少ないということは 、 「チャンスがそこにある 」ときに 、リスクをとってそれを獲得しようとする人が少ない 、ということを意味します 。これを競争戦略の枠組みで言えば 、心理的な参入障壁が高いために競合が少ない 、ということになります

    必要に迫られた際に大胆で不敵であるのは 、思慮に富むのと同じである 。マキアヴェッリ 『フィレンツェ史 』

    かつてサッカ ー日本代表の監督を務めたフィリップ ・トルシエは 、初めて来日した際 、 「誰も赤信号を渡らないことにショックを受けた 」と述懐しています 。なぜ 、赤信号を渡らないことにそれほどまでにびっくりしたのでしょうか ?彼にとって 「赤信号をただ待っている 」というのは 「自分で状況判断して行動できない証拠 」だというのです 。こういう文化の中で育った選手はフィ ールド上でも主体的な判断ができない 、まず 、自分で状況を判断しリスクをとって主体的に動くというメンタリティを選手に植え付ける必要がある 、というのが彼の最初の日本人観だったそうです 。私を含めて日本人の多くは 、 「たとえ車が来なくても 、赤信号は待つものだ 」と思っているわけで 、このトルシエのコメントには大変戸惑うわけですが 、裏を返せば 、それだけ 「抜け駆け 」に対する社会的な圧力や規範に 、我々が強く縛られているということでしょう 。 「出る杭は打たれる 」ということです 。

    *リスクテ ークは競争戦略的には有効 2 0 0 5年から 2 0 0 8年にかけて世界各国で実施された世界価値観調査によると 、日本は世界でもっともリスク回避性向が強い ( * 5 )という結果が出ています 。転職についてネガティブな先入観を持っている人は 、このデ ータを見て 「ほら見ろ 、だから転職は日本の民族性や文化には合わないのだ 。やはり一度入った会社で勤め上げるのが日本人には合っている 」と言い放ちそうです。すが 、私はちょっと違う考え方をします 。違う考え方とは 、すなわち 、日本ではむしろリスクをとったほうが有利だ 、という考え方です 。なぜか ?理由は単純で 、リスクをとる人が少ないからです 。リスクをとる人が少ないということは 、 「チャンスがそこにある 」ときに 、リスクをとってそれを獲得しようとする人が少ない 、ということを意味します 。これを競争戦略の枠組みで言えば 、心理的な参入障壁が高いために競合が少ない 、ということになります 。いま 、目の前に大きなぶどうの房がぶらさがっているという

    人生を見つけるためには 、人生を浪費しなければならない 。アン ・モロ ー ・リンドバ ーグ

    何々になろうという者は多いが、何々をしようという人は少ない。
    長岡半太郎

    速度を上げるばかりが 、人生ではない 。ガンジ ー

    これがどん底だ といっていられる間は、たいていどん底にはなっていないものだ。シェイクスピア「リア王」

    過ぎたことを悔やんでも仕方ないじゃないか。目はどうして前についていると思う?前向きに進んでいくためだよ。
    ドラえもん

  • 要約すると「鬱になりそうならすぐさま転職しなさい。そうでないなら、一度これまでこびりついた自己愛やら虚栄心を清算してじっくり考えてから、行動を起こしなさい」ということか。先ごろ読んだクランボルツ&レヴィン『その幸運は偶然ではないんです!』と同じことを指摘しており(実際に引用もされている)、いまどこに立っており自分がどういう状態なのかを冷静に見極めることで、展望が開かれることが多いと説く。あと「平均への回帰」。人生は帳尻が合うようにできているから、目先の損得に惑わされるな! 思い当たるフシがある。「果報はキョロキョロしながら身構えて待て」ということか。あと、二十代、三十代は、馬車馬で行こうということらしいです。もちろん心身の健康をギリギリ保つことが条件です。

  • 天職は寝て待ってもこない。

  • 転職は考えていないが著者の別の本を読んだ後にその他の本も読んでみたいと思い図書館で借りた。
    転職は慎重に、という話なのだが、人生の中で大きな位置を占める「仕事」というものに対してどう向き合い、良いキャリアを作っていくのが良いのかということが書かれている。
    「逃げ」の転職を行いたくなったときは半年待て。
    辛いことにも意味のあることがある。
    一定期間の辛抱は必要だ。
    転職しようと思っているときにこのような本を読む人はおそらく良い転職ができるのではないかと思った。

  • ■天職は偶然で見つかる。
    では、
    ①どうやって良い偶然を起こすか→人脈力×信用
    ②良い偶然をどうキャリアに結びつけるか→プロセッシングスキルとストックスキル

    ①人脈力×信用(鍵:同僚ゾーンの人たち)
    ・いまいる周囲の人たちに誠実に接する(立場によって接し方を変えない。(そうすれば年次が上の部下にも、ちゃんと指示を出せる)
    ・いまの仕事に全力で取り組む

    ②-1.プロセッシングスキル(与えられた情報を処理して出力する能力)
    ・必要最低限のロジカル・シンキング(3冊の概要を理解するレベルでOK)
    ・英語はTOEIC860点(日産がルノーに買収された時、英語ができないだけで優秀な人々が閑職に)

    ②-2ストックスキル
    ・読書
    メトニミー、メタファー双方で、関連分野をまとめて読む

     ■自由さ
    自由さ(会社に依存せずに生きる力)を手に入れるには、20-30代前半に不自由(会社に隷属して経験を積む)を経験する必要がある。

    ■逃げの転職は「半年待てないか?」を考えてから
    →続けているうちに問題が解決する場合が結構ある。

    ■攻めの転職
    ・「得るものより失うもの」を考えろ(例えば大企業の連帯感や社会的信用、外資の風通しの良さ等)

    ・報酬の高さに拘りすぎると、好き(内発的動機)な仕事がお金(外発的動機)のために変わってしまい、報酬のためだけにしかやりたくなくなる
    →世界三大幸福論より、精神の幸福のためには「誰かの役に立っている」という実感が必要

    ■就職・転職から数ヶ月後に訪れるショック
    ①こんな仕事だと思わなかった!?
    →正統的周辺参加(新人が、雑用などコアではない周辺的な領域から参加することで、コア領域の仕事に必要な知識を徐々に学習していくプロセス)
    例:料理人の「追い回し」
    新人は「追い回し」として、先輩方から雑用ばっかり頼まれる

    ↓それじゃ料理の腕は上達しない。でも...

    先輩の行動などから間接的に学ぶ
    例:料理の手順、食材の鮮度など

    ↓つまり
    雑用のなかにも、先輩が活躍するためのエッセンスが隠されているはず。


    ②組織の社風や価値観の違いへのショック
    ↓対処法
    ・新たな組織の社風や価値観を「受け入れる」
    ・昔の栄光、美しい思い出は「忘れる」
    =始まりは前のことの終わりを示す。終わりに目を向け、終わりを受け入れること。

    ■広告代理店とコンサルの仕事のやり方の違い
    ①スピードと精度のバランス
    ・広告代理店
    作業ミスが直接社会に影響を与えてしまう=精度重視
    ・コンサル
    経営層がクライアントなので、ミスの影響はすぐに社外には出ない
    &
    経営の舵取りに関する分野なので、時間をかけて検討するのがリスクになる

    ②実現可能性
    ・広告代理店
    最終的な実行までが業務範囲なので、実現可能性が、ないプランは提案しない
    ・コンサル
    とにかく「IF=もし〇〇が可能なら」という前提で考える。ロジックとして有効なら、まずはクライアント②提案してしまおうという体質。

    ③権威の扱い方
    ・広告代理店
    権威をよく活用。「〇〇大学の☓☓先生はこう言っています。従って〜」
    ・コンサル
    一番のオーソリティは自分たちである、という考え方。
    ファクトとロジックを最重要視し、どんな②世界的な権威の論考であっても、ファクトとロジックをもとにした自分の意見に反するなら無視。
    安易な権威への依存は戒められる。

    私の仕事で求められているレベルはどこらへんなのかを探りながら仕事をすること!
    ①スピードと精度のバランス
    ②提案するプランの実現可能性
    ③権威の扱い方

  • ためになったと感じた。日頃、キャリアアップと転職は念頭に置いているものの、安易に現状から逃げるだけの転職はしたくないと思っていた。本書を読んで、自分の譲れない価値観(キャリアアンカー)を見直して、今の職場にも活かしてみたいと思った。

  • 今のキャリア論に対する批判的考察が納得感のある論点から語られていると思う。

  • 想定されている読者は、外部環境と内部環境を冷静に分析して行動するような水準の人だ
    タイトルは呑気で安直な感じだが、
     想定されている読者は山口さん自身のように、外部環境と内部環境を冷静に分析して行動するような水準の人だ。しかしそのような人であっても、いやそのような人だからこそ、自分に出来ることと求められていることとのギャップに気付かず、望んでいない転職をしてしまう可能性がある。また、転職する人にとってはもちろん、受け入れる側にとっても、転職はリスクのあることであり、最も必要なのは信頼できる人の情報や推薦なのだ。これから就職しようとしている人、転職を考えている人に新たな視点を与えてくれる。

     電通のような大手広告代理店、外資系コンサルティングファームに就職しようとしている人、転職しようとしている人は限られた人だと思いますが、私のようなありふれた?サラリーマンにも参考になる示唆がありました。それは、読書中のコメントに書きました。

     山口周さんは「いまの仕事、いまの人脈をまずは大切に」と書いています。いまの仕事に全力をあげられる人、今の上司、いまの同僚に信頼される人が、良いキャリアを積むことができ、やがて天職に就ける人なのでしょうね(^^♪

    「天職とは自己によって内発的に規定されるのではなく、本来は神から与えらえるもの、と考えられていた…これは『自分は世界に何を求めているのか』という、我々がいつも抱えている問いを、『世界は自分に何を求めているのか』という問いへと180度切り替えることを意味します。」

     私たちは、仕事に限らず、世界から恩恵を授かることだけを期待しがちだが、生きるということは本来、自分が世界に何をもたらすことができるか、という営みなのかもしれない。だとしたら、仕事は自分のためではなく、世のため人のため延いては自分のため。

  • 自由になろうと思ったら、どこかで不自由を我慢しなければならない

    課題先行と好奇心駆動の2つのネイチャーがある

  • 転職初心者向け。「天職」を待つ者が期待する内容と違った。心理学者、哲学者などの研究成果・主張を引用しながら理論を展開し、最後に書物や名言・格言の引用で各章を締めるパターンがたいくつでだんだん嫌になってくる。

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著者プロフィール

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻、同大学院文学研究科美学美術史学修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動。現在、株式会社ライプニッツ代表、世界経済フォーラムGlobal Future Councilメンバーなどの他、複数企業の社外取締役、戦略・組織アドバイザーを務める。

「2023年 『新装版 外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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