ドストエフスキー『悪霊』の衝撃 (光文社新書)

  • 光文社 (2012年4月17日発売)
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  • レビュー :5
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036829

ドストエフスキー『悪霊』の衝撃 (光文社新書)の感想・レビュー・書評

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  • ドストエフスキーの傑作小説、『悪霊』について、あの亀山郁夫氏とロシアの研究者であるリュドミラ・サラスキナ氏の対談、往復書簡、論文が収録された本です。『悪霊』のレビューでも書いた通り、この小説はさらっと読んだだけですっきり腑に落ちるものではありませんので、このような「まとめサイト」が出版されていることはとてもありがたく思いました。

    対談と往復書簡は、主に亀山氏が問いかけ、サラスキナ氏が応答するという流れになっています。なぜニコライ・スタヴローギンのような人物が要請されたのか?という根本的な疑問に始まり、小説のストーリーとはあまり関係のない細部に関する質問まで、とにかくよく練られています。亀山氏の『悪霊』に対する思い入れは異様なレベルのものがあるように感じました。

    リュドミラ・サラスキナ氏の論文は、ドストエフスキーがちらっとストーリーに忍ばせた「アイスランド」というディテールを掘り下げていく内容です。正直に言うとこの論文はわたしにはものすごくマニアックなお話のように映り、あまりよくわかりませんでした。

    最後に収録された亀山氏の論文は、『悪霊』を善と悪のあいだにある「基準」ならびに「アウラ」の喪失、という軸で読み解いていくものです。徐々に、スタヴローギンとは何だったのかという多くの読者の問いに対する答えが導かれていく構成になっています。

    "スタヴローギンは、ニヒリズムに対して批判的である一方、キリスト教の信仰に対しても冷静に距離を置く。だからスタヴローギンは、『悪霊』という物語のすべての悲劇の根本原因であると同時に、そこからは完全に超越した存在でもある(…)スタヴローギンとは、楽園への帰還を拒否された堕天使=悪魔である"

  • 亀山氏が学生時代に「悪霊」に出会った衝撃は他のドストエフスキーの作品以上に強かったという思い入れの強い作品をロシアの第一人者と語った記録です。ラスコーリニコフとスタヴローギンの相違点、なぜ悪霊の主人公は醜悪な存在として著者は意識して書いたのか?ここまでリアリティがあるからにはモデルはあるのか?作者本人か?などと謎を二人で語っていくこの本はぞくぞくするほど魅力的です。登場人物の解き明かしも明快であり、また読みたくなります。この2人の読み方の違いもあるのが、一層興味を深めてくれています。キリストに対するスタヴローギン、ピョートル、キリーロフ、シャートフの4人主要人物の立場の違いの表現は一言が実に端的にものがったっています。「私にとってキリストは存在しない」「私はキリストの代わりである」「キリストが存在しないなら、それは私である」「キリストがいるなら、私も存在する」

  • 「悪霊」について解説を加えた本。
    前半の自分語りはどうでもいいとして、中身は亀山と本国ロシアのドストエフスキー研究者との対談及びメールによる質疑応答である。

    途中東京外国語大学の学長が執拗にマトリョーシャがM体質である事を主張(このことは学長が「神になりたかった男」でも強く(むしろそれが主題であると言わんばかりに)主張していたことではある)して、リュドミラ氏に軽くあしらわれているのには笑った。

    これまでいくつもドストエフスキーの評論を読んできたが、ロシア母国の評論家による批評を見ることは新鮮であった。

  • 自分の『悪霊』読み方なんて、表層的なものでしかなかったなあ、と痛感させてくれる刺激的な本でした。

  •  ドフトエフスキーの五大長編の中で、もっとも解釈に苦しむ「悪霊」。この作品につき新訳で知られる亀山氏、ロシアの研究者サラスキナ氏の討論と質疑応答を中心に組み込んだ、文学好きには必読の書。

     特に主人公スタヴローギンの「告白」の取り扱い方と解釈。また、彼のエルサレムからヨーロッパを縦断し、アイスランドに至る放浪をどのように位置づけるのか。という二点がヤマ。

     ロシア正教とその異端、ここのところが事前の知識として必要である。正直、自分はスタヴローギンのアイスランドへの渡航を、作者はどのようなバックボーンを得て作品に入れたのかを解説した終盤の部分にもっとも興味をそそられた。

     「悪霊」そのものを一度しか読んでいないので、とてもではないが、この考察には全てついて行けなかった。

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