なぜ、「怒る」のをやめられないのか 「怒り恐怖症」と受動的攻撃 (光文社新書 592)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036959

感想・レビュー・書評

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  • 「怒り」を自分で受け止めて、適度に放出しないと、こんな感じで発露するよという具体例がたくさん載ってておもしろい。何もしないことで怒りを伝えたり、自分を責めることで逆に相手を傷つけたり、ただ質問しただけという体で感情を逆なでしてほくそ笑んだり。怖いですが、自分もこれをやってないとは言えないよね…改めて振り返る。ちなみに怒りのコントロールについては、そんなに言及してないです。

  • 日常の中のちょっとした怒りの感情を飲み込んでしまう、そんな人に読んでもらいたい1冊です。

    具体例が多く載っており、難しい言葉もほとんどなくすごく読みやすい本です。
    怒りの感情を「まぁいいや」で解決せず、捉え直すようにしたいですね。

  • 心理士に受動的攻撃の傾向があると言われ、
    調べてみようと思い図書館で借りた本。

    怒りを無理に抑えると
    必ず別の形で現れてしまう。
    その一つが受動的攻撃。
    どういう原因・理由で、
    どういう症状(攻撃の仕方)が出てしまうのか、
    色々な例が上がっている。

    本の体系が少し読みづらく、
    また対処法を求めている読者には
    物足りなく感じると思うが
    タイトル通り、「怒り」の原因を多く知るには
    良い本かと思う。

  • 日本においては、聖徳太子の時代から「和を以て貴し」が美徳とされ、怒りの感情を表現することは「美しくない」という風潮で、しつけのなかで親や先生が子供に怒りを表出させずに抑圧してきた結果として、「怒り恐怖症」や、怒りが爆発して「キレる」こと、そして怒りを偽装する「受動的攻撃」など、複雑な形で抑圧された怒りが表出されていることが繰り返し述べられている。この怒りを醸成するのは「依存」「支配」「競争」という人間関係における形であり、そこから抜け出すためには抑圧的な「怒らない技術」ではなく、健全に「怒る技術」を身に着けることだという処方箋を示す。

     書いてあることは平易だが、これほどまでに複雑な精神病理が「怒り」を中心としたネガティブな感情と絡んでいることに驚いた。寺山修司の「怒りは排泄物のようなものなんだから、一日一怒」って慧眼だな。
     あとは、キュブラー・ロスの「喪失の受容」過程にも、実は怒りが重要な位置を占めるというのも改めて実感。死だけでなく、別離、失敗、挫折などの人生のいくつかの場面でも「否認」や「怒り」でとどまってしまっている人は実はとても多いのではないか? 
     同調圧力や親からの道徳の押しつけに代表される「子供を取り巻く環境(しつけ)の劣悪さ」を思うと、子供の時から自分の感情と向き合い、それを言語化する経験の重要性と、親子関係に焦点を当てた「カウンセラー」の役割の重大さを改めて痛感した。
     結局、当事者同士では、言語化することも憚れてしまう。「信頼できる第三者」が大きな意味を占めるのではないか、とこの本を読んでますますそう思った。

  • 短気な自分に飽き飽きしていた。そこで手に取った本。

    怒ることを前向きにとらえるという視点もあるのだ。

    怒ることで自己評価を下げ、自責の念にとらわれ、さらに怒るというスパイラルに落ちている私には、まさに目からウロコ。問題なのは表現力。筆者のいう「受動的攻撃」は女性ならみな経験があるのではないか。私も攻撃者であり受け手でもある。

    母親と自分、自分と娘の関係を見つめ直しながら読み進めた。

    賛否両論あるだろうが、怒りをポジティブに受け止め、健全に表現する訓練をすることは、私には救いになりそうだ。

  • 精神分析の見地から怒りについて書かれた本。
    精神分析に関する本は興味深く読み物としては面白いが、自分で日常生活に役立てられるかというと少し難しいのではないか。
    ネット環境などなかった10代の頃、心理学の本で面白かったのは精神分析の本だったが、現実的に私を助けたのは20代になって知った認知行動療法だった。
    3章の受動的攻撃あたりから気分の悪くなる様な事例が沢山出てくる。
    こんな言動と感情が異なるコミュニケーションを取ろうとしてくる相手とは深く関わらない方がいい(過去の私だ)。
    怒っているのに自分の意識ではその感情に気づいていないまま相手を褒めて嫌味にしかなってない、みたいな奴は危険だ。
    言動と感情の乖離度が高いほど危険度が増す。
    丁寧な嫌味になど付き合う必要はないので気付かないふりをしてやり過ごすのが最善だ。
    しかし自分にとって重要な人物から受動的攻撃を受けた場合は、本当に攻撃なのか直接聞いて確かめ、やめて欲しいと要求する必要があるし、その後も改善されなければ重要な人物の枠から外す勇気も必要になってくるだろう。
    「怒り恐怖症」への対処方法については6章で述べられており、具体的な「怒る技術」については239ページから246ページの8ページ分しかないため、実践的な部分はコーチングやソーシャルスキルトレーニングなどをあたった方が良い。

  • 受動的攻撃という言葉は最近精神科医のYouTubeで出てきて知ったワードだった。
    この本を読んでより理解が深まった。主に受動的攻撃の種類や例となぜそのような怒り方をしてしまうのかの話だった。最後の数ページに処方箋があるけどこれを読んで本人が改善できたり被害に遭ってる人が改善できるかといったらそうではない。

    幼少期の環境が大きく影響しているらしいので解決するのは難しいと思った。そもそも自分が受動的攻撃をしているという自覚を持つのが難しいと思う。

    怒りそのものをみっともないと思う社会だし同調圧力の強い教育システムだから日本人に多い現象だろうなと思った。

    ただ夫婦間の受動的攻撃はどこの世界でも多そうに思えた。正しい怒りの処理を自分の中で行い、相手と話し合うことは難しいと思う。

    よくある話の例が多く身近にあるものだと認識できたこと、難しい説明や単語がなく分かりやすかった点が良かった。

    過食、拒食症やリストカットなどの外に向けるはずのものを自分にぶつけることによって生じる話はとても納得のいくもので重要な場面で約束を忘れる(忘れたふり本人に自覚がないことが多い)などの妨害行為も確かになぁ…と思うことが多かった。

    よく聞く話や心の動きをこうやってカテゴライズして深掘りしてくれるのはありがたい。

  • 「抑圧されたものは回帰する」
    「いい人」でありたいと思う人ほど怒りを隠そうとする。いいところを見せたかったり、罰を下すのがめんどくさかっまり、あとで復讐されるのが怖いから。虚栄心、怠惰、恐怖の賜物。

    「自己非難とは愛する対象に向けられた非難が方向を変えて自分自身の自我に反転したものだ」

    「我々の美徳という仮面の下には悪徳が隠されている」

    フレネミーと遅刻への考えが面白かった

  • 受動的攻撃について書かれて入手可能な唯一の書籍だったので購入。
    「引き受けたことをやらないで人を困らせる」「何かを遅れさせて人を困らせる」「言ったことを忘れる」こういった攻撃方法や攻撃の理由、攻撃への対応について知ることができました。
    オススメ。

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著者プロフィール

1961年生まれ。大阪大学医学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。専門は精神医学、精神分析。フランス政府給費留学生としてパリ第八大学でラカン派の精神分析を学びDEA(専門研究課程修了証書)取得。精神科医として臨床に携わりつつ、精神分析的視点から欲望の構造について研究。日生病院神経科医長、人間環境大学助教授を経て、現在、神戸親和女子大学教授。著書に『オレステス・コ
ンプレックス—青年の心の闇へ』『17歳のこころ—その闇と病理』(共にNHK出版)『分裂病の精神病理と治療7—経過と予後』(共著、星和書店)など、訳書に『フロイト&ラカン事典』(共訳、弘文堂)などがある。

「2005年 『攻撃と殺人の精神分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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