元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037116

作品紹介・あらすじ

周期表は、実はこんなに面白い!元素が生まれる3つのケース。140万年狂わないセシウム時計。重い元素は恒星爆発のチリ。その仕組みから、自然科学の謎に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 著者吉田たかよし氏は、医学博士であり、大学教授であり、そこまでなら何となく分かるが、元NHKアナウンサーであり、タイタンに所属するタレントでもあると聞くと、何だか胡散臭くなってしまうのである。そして、そのせいで出版された本も程度の低いものではないかと、偏見をもってページを開いたが、これはもう、心でお詫び。非常に分かりやすく、読んでいてワクワクするような。何より勉強になりました。

    スイへーリーベーの元素周期表だが、その読み方や面白さを伝えてくれる。これを作成したメンデレーフは元素の一覧表の中で、該当する元素が見当たらない場所を空欄とした。そして、そこに入るべき元素を予言。例えば、アルミニウムの真下にはエカアルミニウム。エカと言うのはサンスクリット語で1を表し、1つ下という意味。ケイ素の下にはエカケイ素。今、エカアルミニウムと名付けた空欄にはガリウムが埋まった。ケイ素の下には、ゲルマニウムが埋まった。

    元素と周期表の関係で大切な事は、①周期表の縦1列は、最も外側の電子がよく似た状態であることが多い。②最も外側の電子の数で元素のおおよその性質が決まる という事だという。そこから考えると、セシウムはカリウムと同じ列の2つ下にある。カリウムは、神経や筋肉の細胞を働かせる人体にとって不可欠な元素だが、最も外側ある電子の数が同じセシウムを間違って体内に取り込むことがある。ストロンチウムはカルシウムと同じグループに属するため、骨に取り込まれてしまう。このため、放射性ストロンチウムが骨に悪性腫瘍を作らせ、骨肉腫が発生する。また、骨の内部の骨髄で赤血球や白血球を作っているが、骨髄の細胞にもダメージを与えるため、白血病を引き起こす。セシウムやストロンチウム。福島原発で有名になったアレだ。

    人体を構成する元素は、1番多いのが水素、順に酸素、炭素、窒素と続き、これらの4つの元素だけで全体の99.5%を占める。そして水素は第一周期、酸素、炭素、窒素は第二周期にあたる。宇宙に多く存在する元素ほど人体にも多く含まれる。周期表で人体がよく使う元素の真下にある元素は毒性があることが多い。例えば亜鉛とカドミウム、水銀。よくあるものから我々は生まれた。そして、似たようなものに、苦しめられる。

    後は以下のようなトレビア。ためになる。

    ー ギャバニューロンの細胞膜には塩素イオンを通す小さな穴が存在する。普段はこの穴は閉じているため、細胞の中に入っていけないが、アルコールや睡眠薬が作用すると穴が開き、細胞内に塩素イオンが一斉に入っていく。塩素イオンはマイナス1価のイオンなので、細胞の中も電気的にマイナスになっていく。そうするとギャバニューロンが働きやすくなり眠くなる。お酒を飲むと眠くなる理由。睡眠薬と飲酒を同時に行うと塩素イオンが流入しすぎて制御不能に陥るため命を落とすことがある。

    ー 二酸化炭素に比べて酸素は水に少ししか溶けないため、体の中で運ぶのが難しい。特に冷水なら酸素はそこそこ水に溶けるが37度まで上がると溶解量はぐっと下がる。ちなみに、南国の海が透明なのは、熱帯の海は水温が高いので、酸素の量が少なく、プランクトンが多く生きられないため。水温が低い海だと比較的多くの酸素が溶けているため、プランクトンが繁殖し水が濁って見える。水温が低いほどプランクトンを食べる。魚も豊富に育つ。

    ー 体内の血液は温度が高いので、酸素を水分に溶かして運ぶのが難しい。そこで登場したのが赤血球の中にあるヘモグロビン。ヘムと呼ばれる赤い色素に鉄がくっついている。この鉄が酸素を効率よく運ぶ。酸素の運搬と言う役割を果たす。金属は手だけではなく、クロムやマンガン、コバルト、ニッケル、銅などでも理論的には可能。しかし、こうした多くの候補から鉄が役割を果たすことになったのは、存在量が多かったからと言うことだ。もし宇宙がコバルトだらけだったなら、私たちの血液はコバルトブルーだったかもしれない。

    ー レアアースの各元素は、それぞれ電子配置がよく似ているので、化学的な性質も似ていて、同じ場所から産出される傾向が高い。レアアースの鉱床は、アジア、北欧、アフリカ、南北アメリカ、オーストラリアと世界各地で見つかっているが、そのほとんどが軽希土類の鉱床。重希土類の鉱床は現在のところ、中国南部でしか開発されていない。

  • 化学の周期表をただの表として嫌々眺めていた人間としては、その表が簡潔性があって美しいのか感動しました。難しいことも読者に分かりやすいように表現してあってとても面白かった。

  • 本屋さんで立ち読みし、
    高校生の自分にも読めそうなことと
    わかりやすそうだったので購入。

    周期表について少しは学校で習うけれども
    知らなかったことが多くとても勉強になりました。
    セシウムが吸収されやすい理由も初めて知りました。
    またランタノイドなどがひとつにある理由も
    知ることができ、買ってよかったと思っています。

  • 目の前にすごく便利な機器があったとしても、
    それが洗練されたものであればあるほど使いこなすのは難しい。
    いーいこーるえむしーにじょう
    がすごくシンプルで力のある方程式だということはなんとなく理解できても、
    使いこなすには他にもいろんな知識が必要だ。
    元素周期表も同じ、すごくシンプルで力のあるものだけれど、
    それがどういうものなのかを知らなければ
    あなたの人生で周期表はただの試験対策暗記物で終わる。

    本書は元素周期表のひとつの説明書だ。
    宇宙に、人体に、時事問題、いろんな角度からこれを解説してくれる。

    旅にでるために、人は地図を広げる。
    このとき地図は人にとってただの平面図だ。
    旅を終えると、地図から景色がみえる、人がみえる、時間がみえる。
    本を旅する、とは使い古された表現だが、
    読んだことで周期表がただの平面図に見えなくなることだけは保証できる。

  •  元素の性質にはなぜ周期が現れるのか。主量子数,方位量子数,磁気量子数と電子の軌道の関係にも言及。量子化学の威力が伝わってくる。
     レアアースが遷移元素の中の遷移元素だ,という話は知らなかった。シュレーディンガー方程式を解いて出てくる軌道間のエネルギー準位の関係が,こういう性質を余すところなく説明してしまうのは,ほんとに見事と言うしかない。

  • 周期表を見るのが苦にならなくなります。周期表の順番や性質について初めて知ったので新鮮でした。ただ、ところどころ説明だけの文章が並び頭に入らない部分もあります。

  • ふむ

  • 人体における各元素の働きには興味があったので手にとった。しかし、私は学生時代から周期表を覚えるのが苦手。ちゃんと理解できるだろうかと不安だったが、本書は誰にでも分かるような言葉で丁寧に解説されており非常によく分かった。
    もともとの目的であった人体については、特に神経や筋肉がナトリウムとカリウムによって動いているという話が興味深かった。オン / オフの切り替えを細胞の内外の電気的プラスマイナスで切り替えており、それを同じ 1 価で大きさの異なるナトリウムイオンとカリウムイオンで行っている。なぜナトリウムとカリウムなのかということにも言及されていて面白かった。
    他にも宇宙というスケールの大きい視点から元素の起源について語られていたり、少し前から注目されているレアアースについても解説されている。
    本書を読んで一気に周期表が理解できたし、好きになった。学生時代に読んでおきたかった一冊。現在勉強中の学生や私と同じように周期表に苦手意識のあった人に是非読んでみて欲しい。

  • 目に見えない一見難しそうな取っつきにくい世界を魅力的なサイエンスストーリーとして解説した本。知的好奇心をくすぐる内容ばかりで読後の満足度が高い。正直、電子や原子やイオンのプラスマイナスの話などを完全に理解しながら読めた訳ではないけれど、それでも十分に納得しながら元素および周期表の神秘さや不思議さ、美しさを感じることができた気がする。著者自身も魅せられていると語っていた「希ガス」の話は特に興味深く惹き込まれた。理科離れが叫ばれて久しいけど、こういう話を中高生の時にもっと知る機会があればサイエンスに興味を持つ学生も増えるように思う。

  • タイトル通り、周期表を通じて世界を眺めることができる。
    周期表を単に覚える必要はなく、列や行から何が見えてくるか。
    最後の周期表は曼荼羅に似ているというところに共鳴。

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著者プロフィール

医学博士・心療内科医師。本郷赤門前クリニック院長。新宿ストレスクリニック顧問。1964年生まれ。灘高校、東京大学卒業。東京大学大学院医学博士課程を修了。現在、脳科学とメンタル医学を活用した診療に携わる一方、TV・ラジオ・雑誌・WEBなどメディアに多数出演中。

「2019年 『「ついつい先送りしてしまう」がなくなる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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