辞書を編む (光文社新書)

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  • 光文社
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レビュー : 80
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037383

感想・レビュー・書評

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  • 辞書作りのドキュメンタリー作品。
    この本を読めば、辞書の見方が変わります。
    辞書とは、とてつもなく、地味で、途方もない努力の末に作られている、一つの作品であることがわかります。

    辞書づくりは、世界(街、書籍、テレビなど)でどのようにことばが使われているか、まずは、うん千、うん万という事例を採集。でも、辞書に書くほどでもない、一般化されているとは言い難いことばたちは、辞書に入れてもらえずに、編集会議でボツにされて。生き残ったことばたちに待っているのは、定義づけ(語釈)。

    この定義づけが、また各辞書によって、違いがあって、おもしろいです。たとえば、「女」ということば。
    硬派な辞書は、婦人、女子、雌性の人類などお堅い表現で定義するのですが、本書で紹介されている三省堂国語辞典は、「中学生でもわかる説明」をこころがけています。「人のうちで、やさしくて、子どもをうみ育てる人」。これはこれで、不妊症やジェンダーの観点から、今の世の中に合っているかは疑問ですが、一つの語釈ではあります。
    その他、「右」など、どう語釈するのか、腕の見せ所です。

    本書の最後に、辞書とは、「ことばで世界の模型をつくること」と書いてありました。
    つまり、「世界にある事象一つ一つを、私は、ことばで説明すると、こう解釈しています」と。素敵な考え方だと思いました。

    ことばの大切さ、味わい深さを教えてくれました。
    私も仕事がら、ことばには敏感ですが、ことばで作品をつくれる人間になりたいです。

  • 国語辞典編集の作業を紹介したエッセイ。
    章タイトルに沿ってざっと見れば「辞書の方針を決める→用例を集める→どれを載せるか決める→説明文を書く→既に載っている言葉を手入れする」となる。
    用例を採集し、そこから普遍的な語義と呼べるものを抽出する営みは、データや標本を集めて理論につなげる自然科学と似通っている。扱う相手が違っても、やっていることは同じくサイエンスなのだ。
    以前、著者の飯間氏がTwitterで「『乱れた使い方』を厳しく指摘することを私に期待する人がいるが、そういうことはしない」といった趣旨のことを言っていた。サイエンスという立場から考えれば当たり前のこと。変わった虫を捕まえたら喜び、新しい知識体系を紡ごうとするのが研究者であって、あるべき理論に沿わないからとその虫を潰すのは研究者ではないだろう。
    最終章で電子辞書やWikipediaにも言及がある。自分としては編集そのものより、用例採集について、ネットは革新を起こしうるのではないかと思う。イメージとしては星や鳥について、全国の愛好家から寄せられた観察データを専門家が活用できるような。
    それにしても、ことばをことばで説明するという行為は奥深い。手元の辞書の語釈をしみじみ熟読してみたくなる。

    p230で、各社国語辞典の特色を比較。使い分けに役立ちそう。
    ・そのことばが正しいか間違いか:岩波国語辞典、明鏡国語辞典
    ・そのことばがいつ頃から使われているか:新潮現代国語辞典
    ・そのことばがいつ頃から使われているか(明治以前も):新潮国語辞典、広辞苑、大辞林、大辞泉、日本国語大辞典
    ・そのことばについて、その辞書なりの解釈を知りたい:新明解国語辞典
    ・そのことばが、今、広く使われているかどうか:三省堂国語辞典

  • 面白い。
    辞書というものを、いろいろな人がその辞書の特色のもとに編纂して作っているという考えてみれば「当たり前のこと」を改めて認識できた。
    最近は、わからない言葉が出てきたら即スマホのブラウザで検索というパターンばかりだったが、辞書を買って引いてみることにしよう。

  • 好奇心のベクトルが裏方作業に向きがちな私には、とても興味深い本でした。

    著者は、三省堂国語辞典の「編纂」を担当している人。第7版という実際の改訂作業をベースに、追加掲載の言葉選びや、説明書きの文章を紡いでいく過程、既掲載の言葉の手入れといった編纂作業の一部について、著者の編纂作業の時間経過と同じ流れで、しかも、分かりやすく誤解がないように…という辞書編纂者ならではの配慮に満ちた(?)文章で紹介されています。

    辞書といってもいろいろあることは知っていて(読みものとしての可能性で一世を風靡した『新解さん』(新明解国語辞典)とか…)、それぞれ掲載される用語も説明文も違うので何かそれなりの理由があってのことだろうと、ぼんやり思っていたけれど、ボリュームだけではなく、誰がどのように使うものなのか、何を伝えるのか、という大きな編集方針のもとで編纂作業が進められており、その成果が各辞書の個性になっていることがよくわかりました。学生時代に辞書を買うとき、紙の質や文字の大きさくらいしか見ていなかった私って…と、今さらながら、反省した次第です。

    著者が携わっている三省堂国語辞典は、特に生きた日本語の掲載や解釈に力を注いでおり、編纂者たちは、世の中の言葉や用法に常に興味関心を注ぎ資料を集める想像以上に地道でアナログな作業をしているとのこと。さらに、編纂者が作る説明文の原案とそれに込めている思いと、どんな理由、議論を経て最終形に落ち着いたのか、というくだりも面白かったです。「右」をどう説明するのか、「カピパラ」の顔をどう表現するのか、恋愛関係の用語の語釈への「男女」「異性」の記載についての検討など。出来上がった辞書にある、シンプルで自然に読み流してしまいがちな説明文には、言葉と向き合う人たちのこんなに熱い思いや奮闘があったのかと驚きました。

    内容は辞書編纂の裏話ではあるものの、プロとしての責任感やプライド、世の中の変化にアンテナを張り巡らせ柔軟に考える姿勢、そして何より、おそらく傍から見たらものすごく地味でハードで退屈?かもしれない仕事に楽しみを見つけて取り組んでいるところは、仕事に向き合う姿勢として学ぶところがあるなぁとも思いました。

  • 辞書をつくることの面白さ、奥深さ、大変さを知ることのできる本。私たちが普段当たり前のようにことばの意味の拠り所として用いている辞書だけど、もちろんそれを作っている人たちがいる。辞書をつくること―ことばの拾い集めること、その中から載せるべきことばをえらぶこと、その意味や定義をわかりやすく記すこと、そして必要に応じてその内容に変更を加えること―の難しさって改めて考えると本当にすごい。たのしい作業にも見えるけれど、やっぱり気の遠くなるような作業に思える。
    わかりやすさを大事にしている三省堂国語辞典の編纂者、飯間さんによる本ということで、文章がとてもわかりやすく、興味を引くものであり、すっと頭に入ってくるものであった。私はまだ三国には触れたことがないけれど、きっと飯間さんのいう通り、わかりやすい辞書なのだろうということが説得力を以てわかる。また開いてみたい。
    ことばっておもしろい。

  • 『三省堂国語辞典』の編集委員が書いた一冊。国語辞典を編集するプロセスに合わせて章を立て、それぞれ実例を挙げながら解説する。昨年12月に出版された『三省堂国語辞典第7版』の編集作業と並行して書かれただけあって、臨場感たっぷりだ。
    著者によれば、辞書の編集とは、1.編集方針を立て、2.用例を採集し、3.取捨選択をして、4.語釈を書く、5.最後に手入れをする、というステップをふむのだそうだ。どのステップも面白いが、中でも語釈を書くところがいい。「右」の語釈を「南を向いた時の西にあたる方」としても「南」の語釈を「日の出る方に向かって右の方」としてしまうと循環論法に陥る。そこで「アナログ時計の文字盤に向かって一時から五時までの表示のある側」という語釈が登場し、さらに「この辞書を開いて読むときの偶数ページのある側」へと進化する。しかし、それでも満足せず、「『一』の字の書き終わりの方。『リ』の字の線の長い方」にまで至る。あくなき探究心と言葉への熱い想いを持つ辞書の編集委員たちに、敬意を表さずにはいられない。
    それにしても、こんな面白い新書が4月に出ていたとは。新書の新刊はだいたい書店でチェックするのが常なんだが、この本は見落としていた。

  • 三省堂国語辞書の編纂委員が書いた「辞書を編む」は面白かった。用例採集は面白かった。カメラを持って町に出て、用例を採集するなんて。知らなかったなあ。この辞書を買ってみようかな。iPhone版もあるようだし。

  • ・飯間さんの三省堂国語辞典と言葉に対する愛情に和む。
    ・辞書の違いは語数くらいだと思っていたけど、方針があることに気づけた。
    ・辞書作りの難しい点がわかる。たとえば、「右」をどう説明するか、「恋」をどう説明するか。時代の変化や、媒体の変化に応じて説明も変わってくるなど。
    ・とりあえず三省堂国語辞典が欲しくなる。

  • 先週6月11日、NHKの「プロフェッショナルー仕事の流儀」でも取り上げられていた飯間さん。
    番組でもワードハンティングや、データの整理、語釈執筆などの様子が紹介されていて、まさに本書での通りだったわけだが。
    『三国』への愛に溢れ、相当饒舌な印象さえ受ける。
    あ、勿論、悪い意味ではなく。

    本書は、辞書編纂の手順に沿って、章が割り当てられている。
    編集方針があって、用例採集、取捨選択、語釈を書き、既存の項目の内容を手入れする。
    語釈を書く苦労を、ある意味面白おかしく紹介するあたりは、さすがだなあ、と思う。
    特に「キャバクラ」のあたりは捧腹絶倒もの。

    一方、考えさせられるのは最終章の「これからの国語辞典」。
    紙辞書の敵は電子辞書にあらず、ウェブ上のフリーの辞典だという。
    紙辞書が淘汰されてしまったり、採算が取れなくなって、高価なものになってしまったりする未来は、ちょっと嫌だ。
    うまく棲み分けをしてもらいたいと望む一方で、こちらもお金を出して辞書を買うという協力をしていかなくては。

  • そもそも「辞書の違い」って知ってますか?
    この本を読むまでは、収録数の違いくらいだと思っていたけど、辞書ごとに「編集方針」があるそうな。著者は「三省堂国語辞典」の編集委員ということで、三省堂国語辞典のできるまでが克明に書かれている。ちなみに、こちらの辞書は「中学生にでも分かる説明」をモットーにしている。なんだか、とっても簡単なような気もするコンセプトではあるが、なかなかに奥が深い!ちなみに、この辞書は「ものを書く人」や「スピーチ」を良くする人が言い回しなどを調べるのに、重宝するらしい。これは久しぶりに辞書を手にしたくなってきたぞ!笑

    文字の専門家が書いた本だけあって、とても読みやすいのに、読み進めるごとに「なるほど!」が随所に散りばめられている。

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著者プロフィール

飯間浩明(いいま ひろあき)
1967年、香川県出身の日本語学者、辞書編纂者。『三省堂国語辞典』編集委員。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得。代表作に『辞書を編む』があり、その他著作も国語辞典や日本語にまつわるものが多い。

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