回避性愛着障害 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037758

感想・レビュー・書評

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  • 少し、自分語りをしたい。

    小学校のとき、友達同士でハグしたりすることに抵抗感があったり、人と帰り際にバイバイと言われるのがとてつもなく嫌で、またねと言ってくれる人に安心感を持っていた。

    親友を持つのが苦手な中学生で、吹奏楽部で女子同士仲良くし、時には大喧嘩をするする姿をみて、あそこまでお互い干渉し合えることを不思議に思っていた。

    高校はチャイムギリギリに着き、終わると即刻帰り、学校内ではひょうきんに振舞っていたが、家では引きこもっていた。

    大学生になってからは、彼氏が出来ても深い関係になるのが嫌で、かといって自分が告白を断れるほどの人間とも思えなかったので、来る人拒まず去る人追わず状態だった。

    社会人になって、家族のために遅くまで働き、休日も社会人サークルや家族サービスに切磋し、それなのに新人の自分にもきちんと接してくれる先輩に、どうやったら人と24時間一緒にいてストレスがたまらないんだろう、逆に裏があるのではないか、、、と穿った見方をした。

    私は、人仲良くなり始め、自分の暗い部分やわがままな性格が出そうになると、嫌われるのではないかと不安になって、自分から離れていった。

    周囲からは穏やかで誰にでも隔てがなく接していて、お母さん的なポジションだったが、お母さんのような無償の愛情は誰にも抱けず、そもそも自分対その他大勢だと思っていたので、そもそも特別な人も、蔑む人もいなかっただけだった。

    人並みの生活は送ってはいるものの、
    自分の社交的な部分と内向きな性格のギャップに苦しみ、そのとことを誰にも相談できず、人といても1人でも常に安心感がなかった。

    生きる意味が分からず、自死してしまいたいが、ただ振り返るとこれといって大きな壁にぶち当たったこともなく、今の環境も、人も、住むところも、お金も、異性からの対応も「割と」恵まれてて、自分が何故無気力なのか全くわからなかった。

    この本を読んで、回避性愛着障害という言葉を知り、
    世間の人同士の親密さへの疑問の解消、自分の社交性への苦しみから解放された気がした。

    原因は幼少期であっても、自分のこの性格を認めながら生活出来ることも分かった。

    ――――――――
    牛乳パックで作った紙を思い出した。
    色んなパッケージの牛乳パックを、水で柔らかくしてぐじゃぐじゃにして、型におしこめ、干す。

    私の感情も牛乳パックで作った紙のようにいびつだった。

    本を読んでいる間、その紙を再度溶かして、ひとつひとつ綺麗に濾しているようなそんな気分になった。



  • 子どもが小さいときの育て方で大事なのは、愛情をたっぷり注いで、安心・安全をしっかり感じられるようにすること。
    さまざまな育児本でも言われていることだが、それが将来のパーソナリティに深く関わってくることを改めて感じた。
    また、現代ではそれが個人の問題にとどまらず、社会としての傾向にも見られること、不幸な養育環境から生まれた著名な哲学者や文学者、研究者の具体例など興味深い話がたくさんあった。
    生物学的に、とか社会学的に、とか多様な角度から愛着障害について語られるが、最後は著者からの「それでも、逃げずに自分の人生を生きよ!」という熱いメッセージ。
    10年前に出版された本だが、今もこのメッセージは胸に響く。

  • ◯逃げるのではなく、面倒事にも自分から飛び込んでいくという攻めの姿勢に転じることが、回避からの脱却において決定的な意味をもつ。(280p)

    ◯主体的な転換が起きるために必要なのが、自分の気持ちや考えを言葉にするという作業である。自分が何を望んでいるかをあいまいにせずに明確にして、それを口にすることが大切なのである。(280p)

    ★私もそうだが回避型パーソナリティの人は多いのではないか。それが親の養育の仕方が原因と言われても、当人にはどうしようもないではないかと、少々うんざりしながら読んだ。だが最終章の「愛着を修復する」は力強い内容であった。結局、覚悟が必要というのは、真理ではあるが難しいようにも思えるが、誰かの安全基地となることで、自分も救われることがあるかもしれないと思えた。またマインドフルネスについても興味深かった。

    ★エリック・ホッファー、種田山頭火、ヘルマン・ヘッセ、キルケゴール、J.K.ローリング、エリク・エリクソン、井上靖、カール・ユング、鳥羽博道氏、武田双雲氏、トールキン、宮本亜門氏、養老孟司氏、マリー・キュリー、宮崎駿氏といった著名人の事例がたくさん出てくるので、楽しく読める。

  • 〈回避型の人は、感情の渦に巻きこまれないために、距離をとるという戦略に頼っている。積極的に探索したり、自分をありのままに表現したり、相手を受け入れる間口を広げるよりも、関わりを制御し、外界への窓口を小さくすることで自分の身を守っているのである。〉

    自分が愛着障害であるということはうっすらとずっと感じ続けてきたことだけれど、それがはっきりとした確信に変わるほど気づきの多い一冊だった。
    あれも、それも、これも、自分でも理解不能だったあらゆる行動の謎が解けた気がして爽快感さえある。回避性愛着障害特有のムーブだったというわけだ。このせいで、せっかく親しみを持って近づこうとしてくれていた人たちをたくさん遠ざけてきてしまったと思う。いわゆる人間関係リセット症候群とかHSPとか、そこらへんのも愛着障害をベースに複雑に絡み合ってるんだろうな。愛着は人間の土壌、根幹なのだから。
    巻末の愛着スタイル診断テストをしたら、回避型と不安型の両方が同じぐらい高かったので「恐れ・不安型」になるんだと思う。傷つくことに敏感で、疑り深くなりやすいタイプ、はいその通りです。自分の身を守っているのである。

    愛着形成に問題が生じる要因としては、やはり幼い頃の家庭環境や養育環境ということでさもありなん。親が徹底的に不仲な機能不全家庭で、つねに喧嘩に怯えて顔色を窺いながら大きくなったので絶対にそこに起因してる。あとは生まれ持った特性もあるんだろうけど。一人が大好きな私は猫ちゃんとの距離感がいちばん心地好いのだよ。
    とは言ってももういい歳だし、自分の子供もいることだし、上手く折り合いをつけながらやっていくしかない。幸いにも夫は私とは真逆の超絶安定型愛着スタイルであるようなので。子供に将来こんなふうな人生観を植え付けて虚しい生き方はして欲しくないので、最大の安全基地となれるように努めたい。
    私にとってはとてもむずかしいことではあるけれど、「そうありたい」という気持ちは確かにあるからきっと大丈夫。

  • 同著『愛着障害』の中で取り上げられている"回避性愛着障害"にスポットを当て、更に深く掘り下げて解説されている

    人と親密になるのを避ける、一人のほうが気楽、責任や束縛を嫌う、失敗を恐れる、、といった特徴は回避性パーソナリティと呼ばれるタイプの典型である。
    しかし、このような特徴は、一見社交的で人生をエンジョイしている人や、社会で活躍している人たちにも幅広く認められるようになっている。その背景を探っていくと、根底に愛着が希薄な回避型愛着スタイルが広がっていることが浮かび上がってくる。それが社会適応に支障を来すレベルになると、回避性愛着障害と呼ぶべき状態になる。

    私すぎる…
    どこを読んでも私のことが書いてある…

    ✏回避型の本質は、不安が強いとか消極的ということではなく、親密な信頼関係や、それに伴う持続的な責任を避ける点にこそある。

    ✏是が非でも結婚したい、子どもを作りたい、という意欲や関心が乏しい傾向が見られる。持続的な責任が生じることを意識したとたんに、愛の情熱さえ冷めてしまう場合もある

    ✏回避型の人が結婚するパターンの一つに、相手が自分のルールや基準に合致していることが挙げられる。
    この場合、パートナーに対する真の愛情や愛着があるわけではない。本当に愛しているのは自分の理想であり、現実の存在ではない。したがって、パートナーから期待外れの側面を見せられると、熱が冷めるのを通り越して、拒否感や嫌悪感さえ抱くようになる。

    ✏回避型の人が、豊かな人生をもつ上で、同好との交歓の場をもてるかどうかが、一つの重要な要素になる。

  • 中身は結構難しかったです。。
    回避性パーソナリティにもいくつか種類があるっていうのと、それがどういうものか、どう変えていくか、いろんな人のエピソードを交えつつ、といった話だったかと。
    ただ、あとがきの手前に書いてあった、結局のところ人は死ぬので、それまでの間どう生きるか。回避し続けるもよし、挑戦していくのもよし、あなたはどっち?と問われた点はインパクトあった。
    一般常識的には、挑戦する人生の方が良いとされてはいますが、それですら人によるわけなんで、どう行動するか読者次第なんでしょう。
    自分のことを振り返ってみると、ああいう過去があったから今の自分はこんな感じになってるんだなとか、逆に今の自分のこの性格は、過去のあのことから生じているのかな、と思ったり。とはいえ過去は変えられないので、今後どうするかのきっかけにしていくしかありません。

    改めて判定してみたら、回避型15点、不安型12点で結構な感じだった。いろいろやってみるしかないな

  • 安全基地をつくるのは大人になってからでも間に合う。希望が持てました。

  • 飢餓ラインぎりぎりで暮らしていても、家庭を持ち、子どもをつくり続けてきたのである。
    ところが、今では、多くの人が、自分一人で過ごす時間や自分のために使うお金を削ってまで、家族をもちたいとは思わなくなっている。それは経済問題とは別のところに原因がある。
    そこには愛着が稀薄になり、回避型愛着が浸透していることが関わっている。われわれの身には、人間から別の種へと分枝していると言えるほどの、生物学的変化が生じているのである。
    回避性とは、親密な関係を避ける、責任や面倒を避ける、チャレンジを避ける、傷つくことを避ける、感じることを避ける今こんなタイプが急増している。回避性愛着障害の原因は、ネグレクトである。
    子供が泣いても親が反応しなければ、親に期待するのを止めて傷つくのを避けるようになる。そして、正しいことを強要し過ぎる親などから過保護や過剰な支配によって、自分の感情が曖昧で、うわべと本音が乖離し、人を心から信頼できない。
    安定した愛着を育む上で必要なのは、安全で安心出来る環境であり、求めれば応えてくれる応答性と相手の立場になって気持ちを汲む共感性。
    そのことによって、基本的信頼感を育まれ、気持ちを共有する楽しさを学び他者との関わりを積極的に求める。
    だが、共感的応答が不足した中で育った子供は、他者に対して基本的信頼感を抱きにくいだけでなく、共感的応答をする能力が育たない。
    回避性愛着障害の症状が出てもやるべきことに集中したり、趣味や関心を共有出来る集まりに参加したり、自分にとっての安全基地を持つことで回避性愛着障害から抜け出す一歩となる。

  • この著者の愛着障害という本を読み、自身の愛着スタイルが不安定型(恐れ回避)であることに気がついてから、もう10年以上経っておりますが、まだ安定型にはなりきれていないことが確認できました。回避型の愛着スタイルについて詳細に書かれており、とても参考になる本でした。

  • この本を読んで、自分自身も回避性愛着障害のけらいがあり、その発生要因も何となく心当たりがあることがわかった。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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