教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」

  • 光文社 (2015年6月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784334038632

感想・レビュー・書評

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  • 現役の中学校教員である私が読んで、全面的に賛成な内容。
    私が言いたいこと全部言ってくれてます。
    教育という名目で、部活動で無謀で過酷な練習を強いたり、科学的根拠が皆無の、ただの根性論の指導がまかり通っていたり、2分の1成人式とか言って、親がいない子、親に虐待されている子に配慮もなく「お父さんお母さんありがとう~」って言わせるような式典を開催したりする、教育現場のおかしさについて論じています。
    ほぼ100パーセント同意します。
    私のこの25年間の、部活動に関する苦労について、著者の内田良さんに聞いてほしくてたまりません。
    本当は部活動の顧問なんてしたくなかったのに、仕方なく引き受けさせられて、休日も勤務時間外の夕方も部活に費やすしかなく、婚期を逃したり、心を病んだり、本来の仕事がうまくいかなかったりしてきた多くの同僚も同じ気持ちだと思います。
    最近は2分の1成人式や巨大組体操もあまり見なくなり、体罰も(多分)なくなり、体罰はどんな理由であれ絶対にダメだという価値観も浸透してきたので、世の中は良くなっているはずだと信じたい。それはやはり、内田良さんのような方の発言によるものだと感謝したい。

    しかし、最後の砦はやはり部活動だ。
    本書にもある通り、とにかく、矛盾が多いにも関わらず、なんとか学校で部活動を維持しようという雰囲気はなくならない。
    私の勤務している自治体でも、ようやく地域移行が始まっているが、2025年度にやっと、土日に教員が出勤しなくても良くなった、というのが現状で、相変わらず平日の負担はなくならないし、土日の地域クラブで人間関係トラブル、他校とのトラブル、マナー違反などがあったときは結局教員がしりぬぐいをしなければいけない(平日の部活動の延長線上にある活動だから)。
    だれか、早くなんとかしてくれ!助けてくれ!
    と言いたい。

  • 前半は小学校中心に行われている組体操と1/2成人式の問題、後半は部活動による事故と教員の働き方の問題を扱っている。
    それぞれデータに基づき論じられており、納得する。普段何気なく子どもたちを学校に送り出しているが、指導という名のもとにリスクが見えにくくなっている。これは教員だけではなく、保護者や地域の問題でもある。
    教育はなかなか当事者とならない限り、関心を持ってもらえないジレンマがある。
    柔道事故のように社会に広く問うていくなら、教育はより良い方向に行くことができるのではないかと希望を持たせる内容でもある。

  •  教育現場でのリスクは往々にして「善きもの」として、事故等が起こっても指導の一環の範囲内で処理されているとのこと。組体操は「感動ポルノ」とバッサリ斬っておられたのは爽快。そういえば私もピラミッドの1番上から後ろ向きに落ちたとき、教師は心配する一言もかけなかったことを覚えている。根性論教師め。上に昇るときも下の段の子から「痛い」と怒られ、連帯感が生まれるどころか関係がギクシャクした思い出がある。
     柔道の死亡事故やブラック部活動顧問、1/2成人式の件も教員はもちろん、私たち保護者側も問題をちゃんと認識し直視することが必要。

  • 教育とは子どものためを思って行われる営みであり「善きもの」としての性格があるゆえに、子どもや教員に生じるリスクを見えづらくしているという主張が、教育社会学の視点から書かれていました。具体的には、組体操・二分の一成人式・部活動を事例に、教育のリスクと向き合うために、まずはどのようなリスクがあるのかエビデンスをもとに明らかにされていました。

    この本の中で特に印象に残ったのが、感動がリスクを見えなくしているということです。運動会で子どもたちが必死になって人間ピラミッドをつくる様子を見た時や、二分の一成人式で子どもの成長を実感した時におこる感動。こうした感動に呪縛されることで、現実の危険性・問題を直視した議論が行われていないという筆者は主張していました。
    確かに、教育実習や社会教育において少しながら教育に携わった経験を振り返ると、子どもの姿に感動し、この感動があるからこそ続けていた自分もいます。しかし、教育者である側が感動すること自体を追い求めてしまったならば、それは教育という名を使って子どもを利用しているにすぎないことを改めて認識しました。日々、感動を求めることが教育に携わる目的になっていないか、自分を振り返りたいです。

    学校現場の状況を批判的に捉え直したい人におすすめですが、個人的には教育=子どものための善きものというように絶対視している人ほど読んでほしい本です。

  • 「善きもの」はほんとうに怖い
    学校、会社、国
    そして

    「善きもの」を振りかざし
    そこら辺のものをなぎ倒し
    傲慢になっていることに
    当人は 先ず 気が付かない

    「正しいことを言っている者には 気を付けろ」
    いつも思うことである
    「正義を振りかざす者には 気を付けろ」
    いつも思うことである

  • 巨大組体操、二分の一成人式、行き過ぎた部活動指導、教員のブラックな労働…など、学校の中に潜んでいる、あるいは堂々とまかり通っているリスクについて、エビデンスを用いながらわかりやすく解説されていた。

    エビデンスを用いながら検証していくと、実際に行われてることがありえないくらい高リスクなことばかりなのに、「教育だから」「子どものためだから」という理由で、それらのリスクが全く直視されず、対策も立てられていない。

    教育リスクの特質としては、
    ①リスクが直視されない
    ②リスクを乗り越えることが美談化される
    ③事故が正当化される
    ④子どもだけでなく教員もリスクにさらされる
    ⑤学校だけでなく、市民もまたリスクを軽視している

    と5つにまとめられる。

    ただ、だからといって学校を批判できない。自分も子どもの時に、組体操も、二分の一成人式も、部活もやっていた。その時は何の疑問ももたなかった。リスクを提示されて初めて気づく。

    学校という空間を客観的に見るとリスクを感じることができるけど、内部にいると「教育」という名のもとにそのリスクが見えなくなってしまうのもなんとなくわかる気がする。

    ただ興味深いのは、市民や保護者もリスクを軽視しがちだというところで、教員がやめたくても保護者からの要望があるという例。

    保護者が学校に求めているもの。
    学力は塾に通わせた方が圧倒的に身につく。
    だから、学力以外に関する要望が強くなったのでは?と感じた。
    組体操も二分の一成人式も、塾ではできない。
    学力は提供できないんだから、そういう感動くらい提供してくれ、とか。

    そうだとすると、一番置いてけぼりなのは子どもたち。
    子どもの意志は何一つ尊重されていない。配慮されていない。

    子どものためになるだろう、子どもたちにとってきっといいだろう、という根拠のない「だろう」ではなく、本当に子どもたちに必要なことなのか、子どもがやりたいと思うことなのか、という視点が欠けている。

    伝統だから、恒例だから、感動するから、ではなく、その活動を行う目的や意義と、伴うリスクはどのくらいなのか、その活動の内容や進め方が合っているのか、という所が大事だと思った。

    教育、という名のもとに、リスクもそうだし、それを行う目的や意義もきっと曖昧になってしまっているんだろうな。

  • 柔道での死亡事故が多いという話が何年か前に話題になったことがあった。しかし、ここ数年、死亡事故は起こっていない。海外では前からない。リスクをしっかり意識するかどうかではっきりと結果は違ってきている。「スポーツにけがはつきもの」などと言って、少々ふらふらしていても練習を続けてしまう。試合のときなどは、それが美談になりもする。しかし、脳震盪を起こしたあと、ゆっくり休めば問題なかったものを続けたために死亡へ至るということが今までに何度も繰り返されてきた。そういった事実(エビデンス=科学的根拠)を著者は提示し、問題提起をしてくれている。運動会・体育大会の組体操もしかり。感動、クラスの一体感などを持ち出して、どんどん高いタワーへとエスカレートしていく。重傷を負う子どもがいても、次の年も同じように行われている。これには、学校側だけではなく、保護者や地域からの要望もあるようだ。体罰で生徒を死に至らしめた教員の罪を軽減してほしいとの署名をするという生徒・保護者がいる。人の命があまりにも軽んじられていないか。たまたまですまされていないか。周りの意識が少し変わっただけで、助けることのできる命ではなかったのか。これは、教員だけではなく保護者・学校に関わるすべての人に読んでほしい本だ。ところで、ツイッターで著者の写真を拝見しました。茶髪か…見た目で判断してはいけない。若い!(奥付に生年月日がない)

  • ふむ

  • 客観的根拠に基づいて書いた、という割にデータの出所がまさかの著者のSNSに届いたDM。呆れて言葉も出ない。

  • プラットフォームがいる 世の中知らない人達だけに

  • SDGs|目標4 質の高い教育をみんなに|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/745426

  • 内田教授を知った一冊。

    金髪を振り翳して、アホっぽいなーっと思ったの自分を恥じたい。

    この先生の、情熱と緻密さがよく出た一冊。

    教員なら必携。

  • 教育と言う言葉に隠されてしまった様々なリスクをエビデンスに基づいてしっかりと論じた良書。

    美談や良きものということを大義名分にして、影で多くの子供を苦しめる教育には終止符を撃たなければと思ふ。

  • 組体操の高さは、労基法であれば違反、学習指導要領外。柔道とラグビーの死亡率の高さが顕著(諸外国は事例なし)。犯罪も教育の仮面をかぶれば許される風潮。

  • "全員"が"絶対に"というのはあり得ない。
    大人としていかなる可能性も考えなくてはいけない。

    しかし何もかも禁止や避けてばかりでは怖いなと思う。一歩間違えればいい公園から遊具がなくなるのとかわらない気がする。

    学校の主役は親でも先生でもなく、子どもたちだということに改めて考えさせらる。

  • 勇気を持ってリスクを直視する

    思考停止を防ぐ

    みんなが幸せになる

  • 【はじめに】
    【序 章】 リスクと向き合うために
    ―― エビデンス・ベースド・アプローチ
    【第1章】 巨大化する組体操
    ―― 感動や一体感が見えなくさせるもの
    【第2章】 「2分の1成人式」と家族幻想
    ―― 家庭に踏む込む学校教育
    【第3章】 運動部活動における「体罰」と「事故」
    ―― スポーツ指導のあり方を問う
    【第4章】 部活動顧問の過重負担
    ―― 教員のQOLを考える
    【第5章】 柔道界が動いた
    ―― 死亡事故ゼロへの道のり
    【終 章】 市民社会における教育リスク
    【おわりに】

    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038632

  • 組体操のピラミッドが流行ってるってのには驚いたな。
    あんなもの何がええねんって思うし、
    リスクがあるのはぱっと見でわかるやろうに何やっとんねん。って思ってたけど、意外とみんなクレイジーやね。

    教育というのは、医術以上に似非科学的なものが流行る傾向にあると思う。というのも医術以上に結果がすぐにわからないからなんじゃないだろうか。というかその教育が有効であったかどうかの結果を計測することは個人レベルでは不可能だと思われる。
    そういったわけで、みんな教育についてはよくわかっていない。例えば、体罰や危険な組体操が行われている時に教育です、と言われれば(まぁ、この本を読んだ人は別として)多くの人は、おっ、おぅ。と黙ってしまうのではないかと思う。そこまで極端ではないと思うが、教育と言われることで色々なリスクがマスキングされて見えなくなってしまっているのではないか、そういった本。

    この他にも2分の1成人式の裏側や、教育という善きものに押しつぶされる教員の話なんかが書かれている。
    物理的なリスクもさる事ながら、教育の名の下にボランティア精神で部活の顧問とかをやらされている先生には、本当に同情する。
    正直その辺りは、プロのスポーツ指導員にお金払ってやってもらって、先生には授業やクラスに集中してもらいたいものである。
    まぁ、田舎だと色々と難しいんだと思うんだけど、教師のQOLが低くて生徒のQOLが上がるはずないと思うんだよね。
    こういった話は、皆感情的になりやすいのでエビデンスベースで話するのが吉だと思われる。そのためにも教育関連のデータはもっと取得・公開されると良いなぁ。と思いました。(小並感)

  • 「感動」という心の動きには、危険な可能性が含まれていることを教えてくれた。
    感動的なパフォーマンスを意識してしまうようになってしまう背景についても理解を深めることができたので、今後気をつけたい。

  • 久々に、読み応えのある内容でした。
    息子が大きくなる成長過程にあり、考えさせられるテーマが多いのも良かった。

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著者プロフィール

名古屋大学教授

「2023年 『これからの教育社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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