ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

著者 :
制作 : 関根 光宏  山田 文 
  • 光文社
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レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334039790

感想・レビュー・書評

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  • 無名の31歳の弁護士が綴った自叙伝がアメリカで大きな反響を
    呼んだのは2016年。イェール大学ロースクール出身の白人男性。

    成功者であるとも言えるだろう。しかし、彼の出身はトランプ
    大統領の強固な支持層とされる白人労働者階級だ。自身の家族
    史を詳らかにし、育った環境を包み隠さず綴っている。

    アメリカの生まれの白人でも、黒人や南米からの移民と同じように
    苦境の中に生活する人たちがいる。

    アメリカの製造業が繁栄を謳歌した時代、安定した雇用を求めて南部
    から北部へ移住した白人は多くいた。誰もがアメリカン・ドリームを
    求めて、その夢を果たせた時代もあった。

    だが、繁栄は永遠ではない。製造業はより人件費の安い海外に転出
    し、労働者は置き去りにされる。引っ越し費用にさえ事欠く人たちは、
    その場所で生きて行くしか選択肢がない。

    罵詈雑言と暴力が、普段の生活のすぐ隣にあるだけではなく、家族
    への愛を口にしながらも家族間では絶え間のない軋轢が起きる。

    著者が育って来た環境には驚くばかりだ。生まれた時、母は既に
    実父と別離しただけではなく、次々と父親候補を連れて来る。その
    母に殺されかけたことさえある。そして、母は看護師の資格を持ち
    ながらも薬物依存に陥る。

    映画のストーリーかと思うような現実が、世界唯一の強大国アメリカ
    の片隅に、確実に存在しているのだ。

    しかし、著者には逃げ道があった。母親代わりに著者を守ってくれた
    5歳年上の姉の存在と、母方の祖父母だ。祖父母も強烈な個性の持ち主
    であるのだが、この3人が身近にいたことと、高校卒業後の海兵隊への
    入隊が貧困の系譜を断ち切ることとなった。

    「おまえはなんだってできるんだ。ついてないって思い込んで諦めて
    るクソどもみたいになるんじゃないよ」

    祖母はくり返し著者に言ったと言う。生まれ育った環境を、自分では
    どうすることも出来ないと思い込み、多くの可能性を封じ込めていや
    しないかと思う。

    それは本書に描かれている白人労働者階級だけではないだろう。私自身
    もそうだし、日本での貧困層もそうかもしれない。一方で、自分の力だけ
    でどうにかするにはやはり限界はあるのだろうとも感じる。

    アメリカン・ドリームが本当に夢になってしまったアメリカ。それは
    近い将来、日本でも確実に起きるはずだ。いや、既に起きているのか
    もしれない。

  • アメリカの中西部の白人貧困層の状況が、一人の青年の成長と共に鮮明に描き出されている。現代のアメリカを理解する上で欠かせない一冊。

  • 日本人の知らない今のアメリカの裏面を捉えた本。貧困とヒルビリーの文化的な気質複雑に絡まり、煌びやかに繁栄したアメリカの影のようにくっきりと浮かび上がる荒廃した白人の街。
    トランプ旋風は彼らの声を的確に代弁することによって生まれ、事実大統領になることになったことを考えると、この病魔がアメリカの根に広く巣食っているのかを想像せざるを得ない。

  • ダメな白人がどうしようもなくクズでダメで,トランプが選ばれるのも分からない訳でもないが,アホすぎ。
    「朝早く起きるのが嫌で仕事辞めた」って馬鹿かお前は!みたいな奴らじゃ話にならない。こんなのがトランプを選んだと思うとどうしようもない国だ。

    それにしても,酷すぎる話が多くて読むのが辛い。

    日経新聞の書評で知って図書館に予約,半年くらい(?)待ってようやく届く。

  • アメリカのラズベルトの街で生まれ育った筆者が、逆境や環境に打ち勝ち、弁護士になるまでのサクセスストーリー、なんだけど…
    環境がどーしょもない(家庭内暴力、ヤク中、度重なる離婚et cetera)という家庭は多いらしく、そのような貧困の世帯がワシントンや都市部のエリートに反感を持ち、真実でなくとも分かりやすい言葉で訴えたトランプを支持した、という話は複雑である。で、そのトランプがそのような人の頼みの綱であるオバマケアを廃止しようとしてるのは、うーーーーん…。
    ともかく、アメリカで起きてる分断について知りたい、アメリカの貧困に陥っている「白人」について知りたい場合、本書に当たることを強く勧めたい。

  • 動かされる本。
    高校の初めまで明らかに希望を失いそうな境遇にあって、その後数年で人生の進路の大転換を果たした著者。でもこれは、アメリカンドリームをどうやって手に入れるか、という文脈の話ではなくて、具体的な人々がどのように生きているか、という話。統計によって分かりやすく理解される社会について、それがいかに一人一人の血のつながりと愛情、経験と記憶の上に成り立っているものなのか、ということを伝えていると思う。
    著者がその劇的な変化を起こした数年間は決して数年間で起きたものではなくて、彼と彼の周りのこれ前までの様々な積み重なりから生み出されたものであるのだと思う。
    逆境に打ち勝った著者に感銘を受けるとともに、ストーリーを共有していただけたことに感謝したい。自分とはかけ離れた人生でありながら、同じ時代に生きていること、同じようにこの混とんとした社会で何とか生きようとしていること、共通するものを強く感じるからか、非常に大きな勇気とエネルギーをもらえた気がする。
    自分の可能性や社会の在り方についての想像力を広げ、自分に責任をもって最大限生きようと思う。

  • 抜群におもしろい。
    うちも貧乏だけど親戚はおらず核家族だから、ある意味賑やかな家族に囲まれていて羨ましい。子供のころ、悩みを親に打ち明けて答えてくれる習慣はなかった。その点、相談できる祖母がいるというのも羨ましかった

  • 社会
    ノンフィクション
    政治

  • 東2法経図・6F開架:361.85A/V27h//K

  • ケンタッキー州のアパラチア山脈東部地域の住民は自らをヒリビリーと呼ぶ。著者の祖母夫婦はオハイオ州へ職を得て移住。そこは現在ではラストベルトと呼べれ、白人労働者が明るい未来を描けない地帯となっていた。
    本書は祖母や母のヒルビリーとしての荒々しい気性とラストベルトの希望の持てない環境で揺れる筆者のティーンエイジまでの様子を主に描き、最後にそこからどのように抜け出して成功を収めたかを加えている。面白いのはその最後の部分。コネクション、成功者たちのルールの部分。

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