バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

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レビュー : 642
  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334039899

感想・レビュー・書評

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  • R2.1.9 読了。

     とにかく面白くて一気読みしました。
     ファーブルに憧れて、昆虫学者の道へ。サバクトビバッタの生態調査、防除技術の開発のために西アフリカのモーリタニアへ。モーリタニアと言えば某食品メーカーのCMで「モーリタニア産のマダコ」で名前は知っていたが、どの大陸の国かまでは知らなかった。
     海外生活でも言葉の壁、文化の違い、仕事のやり方、自然の猛威などにそのタフさで乗り越えていく前野氏。バッタにかけた生涯。この本を通して、モーリタニアについて、言語や昼夜の殺人的な気温差、人柄、ヤギ好き、アルコールが自由に飲めない環境等々も知ることができて良かった。
     モーリタニアで前野氏が出会ったババ所長とティジャニも素晴らしい人柄にも感動しました。
    そして前野氏が異国のサバクトビバッタの防除技術の開発に貢献されることにも期待したい。続編が出たら読みたい。

    ・「救いの手を差し伸べてくれる人がいるから、物乞いができるのだ。日本の道端で物乞いをしたって、最近は物騒なので見ず知らずの他人に誰が恵んでくれようか。私は物乞いを気の毒なイメージでしかとらえていなかったが、取り巻く環境を見ると、そこには多くの優しさがあった。」
    ・「バッタは漢字で『飛蝗』と書き、虫の皇帝と称される。」
    ・「異文化では、物事を正確に伝える必要がある。私の『普通』など、世界では所詮『例外』なのだ。」
    ・「自分たちがどんなに大変な目に遭っていても、自分よりも困っている人がいたら、自分の身を削ってでも助けようとする。このモーリタニアの献身的な精神は、いついかなるときでもぶれない。厳しい砂漠を生き抜くために、争い奪い合うのではなく、分け与え支え合う道を選んできた。この国民性が、サハラ砂漠という厳しい環境でも生きることを可能にしてきたのだろう。」
    ・「それにしても、目標とは生きていく上でなんと重要なのだろう。あるとなしとでは毎日の充実感が大違いだ。」
    ・「つらいときは自分よりも恵まれている人を見るな。みじめな思いをするだけだ。つらいときこそ自分よりも恵まれていない人を見て、自分がいかに恵まれているかに感謝するんだ。嫉妬は人を狂わす。」・・・ババ所長の言葉。
    ・「苦しいときは弱音が滲み、嘆きが漏れ、取り繕っている化けの皮がはがされて本音が丸裸になる。今回の苦境こそ、一糸まとわぬ本音を見極める絶好の機会になるはずだ。」
    ・「世界を我が身のごとく捉えていなければ、こんな感謝ができるはずはない。」
    ・「ご自身が大きな視野を持ち、数多くの困難を経験していなければ、このような大きな感性は身につかないはずだ。」
    ・「無収入を通じ、貧しさの痛みを知った。つらいときに手を差し伸べてくれる人の優しさを知った。そして、本気でバッタ研究に人生を捧げようとする自分の本音を知った。バッタを研究したいという想いは、苦境の中でもぶれることはなかった。もう迷うことはない。」
    ・「叶う、叶わないは置いてといて、夢を持つと、喜びや楽しみが増えて、気分よく努力ができる。」
    ・「何ゆえ過酷な状況にその身を追い込むのか。答えを求めて自分も彼らに倣ってたった3日間ではあるが、ラマダンをしてみた。…(中略)明らかに幸せのハードルが下がっており、ほんの些細なことにでも幸せを感じる体質になっていた。おかげで日常生活には幸せがたくさん詰まっていることに気づき、日々の暮らしが楽に感じられた。ラマダンとは、物や人に頼らずとも幸せを感じるために編み出された、知恵の結晶なのではなかろうか。」

  • 「さあ、むさぼり喰うがよい」

    ブクログレビューをみて知ったこちらの本。
    めちゃくちゃ面白かった!!笑いあり涙ありの一気読み。
    西アフリカに位置するモーリタニアを舞台に、バッタを偏愛しバッタ博士となる夢を追いかけるポスドク(博士号を取ったあと、任期付き研究職を転々として食いつなぐ人たち)の筆者が、アフリカのバッタ被害の撲滅のため、人生を賭してバッタ研究に挑むノンフィクション。
    バッタはひとたび大発生すると、その群れが500キロ(!!)にも連なり、緑という緑が食い尽くし、後には何も残らないというから凄まじい。バッタにより引き起こされる農業被害、そして飢饉はアフリカの深刻な問題なのだ。

    筆者は幾多の困難を乗り越え(バッタがいなくてゴミダマに浮気したりもする。「バッタの馬鹿!もう知らない!」に爆笑)、モーリタニアをフィールドとして研究を進める。
    しかし、2年の任期が終わり、無収入となってしまい、無収入でもアフリカでバッタ研究を続けるか、岐路に立たされる。
    「バッタの被害が出たとき、日本政府は数億円も援助してくれるのに、なぜ日本の若い研究者には支援しないのか?」
    現地バッタ研究所のババ所長の言葉に本当にそうだよねと頷いた。
    追い詰められ、自分の人生と向き合う筆者。

    "血が滲むくらいの努力じゃ足りない。血が噴き出すくらいの勢いでいくしかない。"

    筆者は夢に向かって突き進む。夢はキラキラしてるだけでは決してないけれど、こんな風に夢に向かっていける人生は本当にかっこいい。

    そして読んでいて考えてしまうのは、ポスドクに対する待遇の酷さ。正規のポストにつけるのは一握りどころか一摘み。日本の叡智でもある人たちを、こんな境遇に追いやったままでいいのだろうか…。そりゃ海外に活路見出して、頭脳は流出していく一方だろう。
    筆者の夢へ向かって邁進する姿に勇気をもらいつつ、日本の若いポスドク達への支援がもっとあればいいのにと思わずにはいられない。

    現地のモーリタニアの人たちがまた魅力的。
    モーリタニアについて何か知ってる?と言われたら、何も思いつかなかったのだけど、実は日本に流通するタコの3割はモーリタニアから輸入されているのだとか。
    外国人である筆者に賄賂を要求したり、ぼったくりをしたり、そういう輩もいるけれど、多くの人は遠路はるばるやってきた筆者に温かく接する。

    「我々モーリタニアの文化は、そこに、困っている者がいたら手を差し伸べ、見殺しにすることはない。持っている人が持っていない人に与えるのは当たり前のことだ。」
    こちらもババ所長の言葉。筆者の名前の「ウルド」は、ババ所長から授かった現地のミドルネームだ。

    モーリタニアと日本の架け橋となって奮闘する筆者に、心からの敬意を表し、これからも応援していきたい。


    追記(R2.1.24)
    一昨日のニュースで知りましたが、ポスドクの待遇改善のための対策が打ち出されたそうです。遅すぎるわ!という感もあるけれど、今より遅いときはないので、ひとまず前進を喜びたいです。

  • フォローしている方達の本棚に散見され、どのレビューも面白い!と太鼓判だったので、読んでみた。

    新書の割には厚みがあるような気がするが、著者のライトな筆致がグイグイ読ませる。
    運転手兼相棒ティジャニ氏とのやり取りも、モーリタニア(タコの輸入国くらいしかイメージなかった)という国を身近に感じさせてくれる。

    アフリカで大量発生する、砂漠トビバッタ。
    日本でもたまに、ニュースになり、今年2020年は、ケニアで70年ぶりの大発生。空を覆う真っ黒な大群の映像に鳥肌が立った。その光景は「神の罰」とも言われるそうだ。
    コロナで世界が大打撃を受けている上に、アフリカではバッタによる食害で、食糧危機が懸念されている。


    著者の前野ウルド浩太郎さんは、そんな砂漠トビバッタを生涯の研究テーマに据え、大学院博士課程を終了し、2年の研究期間を終えた後、西アフリカのモーリタニアで3年間苦労を重ねて研究を続けられた。

    いわゆるポスドクと言われる、就職先が決まらない博士号を持つ人たち。
    論文を発表し続け、なんとか就職に繋げようと努力しているが、なかなか空きポストはない。

    前野さんも、活路を見いだそうと退路を絶ってモーリタニアのバッタ研究所へ。
    ババ所長(現地の方)以外は、外国人が何しに来たんだ?という白い目を向けてくる。さらにサハラ砂漠の厳しい気候と、異文化に苦労の連続だ。
    しかし、持ち前の観察眼と人の良さ、モチベーションで、研究所の面々を味方につける。
    ようやく足元が固まったのに、まさかの大干魃で、バッタが出現せず、これといったバッタの論文も書けず、研究費が出る二年間が終わってしまう…つまり無収入になってしまうのだ。
    このまま日本へ帰国して地道に就活をするか、無収入でも貯金を食いつぶしてモーリタニアで粘るか…。

    無収入に陥ってからの、前野さんの自分プロデュース作戦がスゴイ。
    彼の人柄に惚れた人たちとの交流から得た柔軟な発想とバッタへの愛と執着の賜物だろう。

    一時はメディアへの露出も目立ったが、今は研究に邁進されているようだ。


    ポスドクは、社会問題にもなっているが、そんな彼らの厳しい現状を伝える役割も果たしているのではないだろうか。
    2020.5.18

    • マリモさん
      ロニコさんこんにちは!
      私もこの本面白くてとても印象に残っています。最近も、バッタ大発生のニュースを見るたびに前野さんを思い出しているところ...
      ロニコさんこんにちは!
      私もこの本面白くてとても印象に残っています。最近も、バッタ大発生のニュースを見るたびに前野さんを思い出しているところです(^^;
      バッタが大丈夫でしたら、前野さんの第一作の『孤独なバッタが群れるとき』もぜひ。こちらはモーリタニア赴任前のバッタの研究が中心で、バッタ度がさらに高いです(笑)
      2020/05/19
  • 講演会でお会いしたことがあるのですが、とても気さくでこの本のまんまな お人柄でした。会場は爆笑の渦。とても盛り上がりました。「職場がサハラ砂漠」で、転んでもただでは起き上がらない不屈な精神の持ち主で、こういう人の助手をすることが出来たら、砂漠だってすごく楽しそう!って思いました。結婚とかしても文字通りどこででも生きて行けそうな頼もしさがありました。話を聴いても本を読んでいても、この人は情熱的でひたむきな、閃きの達人なのだと感じました。

    昆虫&バッタ愛にあふれていて、ただ勇気を、ひたすら前向きにがんばろう!とかではなくて、信じることの大切さを(特に)子どもたちに教えてくれたような気がしました。夢も希望も大事だけど自分の好きなことを信じる=自分を信じる。

    あとがきのおにぎり一つのことについて“幸せのハードルが下がっただけで、こんなにもありがたみを感じるものなのか”…という文にブータン的なものを感じた。自然を相手にしていると様々なもののありがたみを実感するんだろう。便利になり過ぎると幸せのハードルもどんどん上がっていってしまうのかもしれない。バッタ奮闘記だけではない内容に驚きつつ感謝して生きることを改めて教えてもらったような気がしました。

  • 発売されてからずっと気になっていた本書。
    書店で見かけるたび、表紙のバッタ人間はリアルなイラストだと思い込んでいたのですが、ちゃんと手に取ってよくよく見てみたら著者ご本人の写真だったのですね…!
    著者のユーモアと並々ならぬバッタへの熱意がみなぎっているカバーです。

    大発生すると農業に大きな被害をもたらすサバクトビバッタ。
    このバッタの生の姿をフィールドで研究すべく、単身モーリタニアへ飛び込んだ著者の奮闘が、たくさんの笑いを交えながら綴られています。
    期待に反してなかなかバッタの群れに恵まれなくても、無収入の憂き目にあっても、くじけずバッタを追い求める著者の姿にパワーをもらいました。

    著者は自分をPRするセンスが抜群だと思いました。
    彼の人柄とユーモア、それに努力と度胸が多くの人の心を捕らえたのだな、と思います。
    そして応援してくれる人たちを裏切らない活躍を発信していけるところもすごい!
    「自分はやれる!」という強い信念は実現させることができるのだと、大きな勇気を与えてくれる1冊でした。

    余談ですが…
    モーリタニアでの食事に惹かれてしまいました。
    豪快に調理されるヤギ肉、特に割った骨の髄液を混ぜ込んで炊いたごはんがたまらなく美味しそう…じゅるる。

  • 一人のバッタ博士がアフリカでバッタと、いや人生と格闘する話。
    本屋で偶然手に取り読んだ本だが、結果的に2017年上半期一番面白い本となった。

    新書にしては厚めだが、文章・言い回しが面白く、飽きずに笑いながらスイスイ読める。
    スイスイ読んでるうちに、サバクトビバッタの生態からモーリタニアの生活・文化、
    はたまた研究者の苦悩から東北弁の雑学まで、様々ものを垣間見ることができた。

    それだけで十分面白いのだが本書の魅力はそれだけではない。
    筆者はモーリタニア赴任後、いくつもの困難・苦難にぶつかるが、
    工夫と努力と忍耐をもってして、また多くの人との出会いと助けを得ることで、
    それらを乗り越えて成長していく。その姿に感動するし勇気を貰える。

    終盤の「孤独の不安は友やファンが打ち消し、無収入の心配は京都大学が葬り去った」は笑える言い回しなのだが、
    多くの苦悩を乗り越え成長した上で決戦を迎えるところで、不覚にもホロっときてしまった。笑。

    超おすすめの一冊です。バッタにもアフリカにも興味が無くても十分楽しめるはず。

  • 予想以上の面白さで、一気に読んでしまった。よくある旅行記ではなく、昆虫学者が発展途上国で一人戦うアツい物語である。いくら不憫な場面に遭遇しても、前野ウルド氏は決して卑屈にならない。物事をポジティブにとらえ、自分の置かれた状況とうまく付き合われている様子には感服するばかりだ。遠い異国でなかなか出来ることではない。本書を読むまで、蝗害は対岸の火事程度にとらえていたが、これは深刻な問題なのだと改めて痛感した。今後、著者がサバクトビバッタの防除技術を開発し、モーリタニアのみならずアフリカ全土を救う救世主になることを強く願う。続編があれば是非読んでみたい。

  • モーリタニアという国の研究所で、サバクトビバッタの研究をしているポスドクの身辺記と書いても、あまり読む気が起きないかも知れないが、素晴らしく面白いし、前向きな気持ちにもなる。軽く読めて、元気が出るというような本を求めているような人には、ぴったり。
    作者は、ファーブルに憧れて、昆虫学者になることを志す。その過程で過ごした、西アフリカのモーリタニアでの研究や生活のこと、後半は日本での活動を中心に本書は構成されている。
    夢や志を暮らしのベースに置くこと、その実現のために、とにかくジタバタしてみることの、爽やかさを感じた。作者のように、それが上手くいくとは限らないが、でも、目指さないと叶わないということだなぁ、と強く感じた。

  • 面白い!
    お人柄がポジティブで、チャレンジャーで、柔軟性があって魅力的。
    また研究者という未知の世界を覗かせてもらえた。
    自分の知らない世界が広がっていて好奇心も満たされる。
    大満足の1冊。

  • 職なし金なし将来の保証なしの若者が一念発起で向かったのはアフリカの地モーリタニアだった。サバクトビバッタの生態とその食害に全力で向き合ったバッタ研究者の軌跡を描いたドタバタ奮闘記。

    ブログを読んでいるような砕けた表現で、肩を張らずに読み進められます。準備の時点でバッタに重きを置きすぎた結果なのか、現地で早々に言葉の壁に阻まれたり、漆黒の砂漠で迷子になったり…と著者の無鉄砲で前のめりな姿勢にハラハラさせられっぱなし。自身のトホホな体験談を盛り込みつつ、不器用ながらも健気に研究対象であるサバクトビバッタを追う著者の姿勢に気付けば読者も巻き込まれていきます。
    ポスドクの課題や実態も綴られ考えさせられる面も多くありました。昆虫学者でご飯を食べていけるまでの道のりはあまりに険しく途方に暮れそうに…。それらを悲壮感なく、むしろ著者であればそのバイタリティで明後日の方向から壁を乗り越えてくれそうな力強さすら感じるのが不思議。

    逞しく、まっすぐで、メディアを上手に活用する案外ちゃっかりした著者。これからも熱くしぶとく研究に専念して、バッタ博士として突き進んでほしいと思います。
    そしてぜひいずれ続編を!

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著者プロフィール

1980年生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農学博士。
日本学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。

「2012年 『孤独なバッタが群れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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