世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334039967

感想・レビュー・書評

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  • タイトルはよくある感じで好きじゃないけど、内容はみっちり詰まってて面白かった。サイエンスの世界、すなわち統計学的有意差と再現性と帰納法の世界で生きてきたからデザインとビジョンの世界が分からない。でも今後AIが合理性重視の判断に長けていき法整備も追いつかない中で必要なのは自然法定主義に則った理念の力、デザインの感覚、すなわち美意識。別にアートに拘らなくても、音楽でもスポーツでも美はあるよなと思う。特に音楽とか。あと西洋薬は帰納法的なアプローチだけどこれからは演繹法のアプローチを取る漢方に光が当たっていくのかもしれないなと漠然と思う。マインドフルネスとか内面との対話を重視する世界。

  • 周りの人に薦めたい良書

  • 欧米では今、グローバル企業が世界的に著名なアートスクールに幹部候補を送り込んだり、知的専門職が早朝から美術館に通っているという。その具体的な理由、および現在のリーダーに求められる「美意識」について説く。

    忙しい読者のために
    本書における「経営の美意識」の適用範囲
    第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
    第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
    第3章 システムの変化が早すぎる世界
    第4章 脳科学と美意識
    第5章 受験エリートと美意響
    第6章 美のモノサシ
    第7章 どう「美意識」を鍛えるか?

  • ビジネスの世界ではデータも論理的思考も外せない要素なのだけど、直感や人の感情を揺さぶる体験もこれからは必要だよね、という本。
    上の人達がこんな考え方を持ってくれると仕事もスムーズになりそう。
    以前からアメリカ人よりヨーロッパの人の方がデザインやアートに対して理解あるなぁと思っていた謎が少し溶けた気がする。


  • 今年は「言語/非言語」をテーマにしているのでとても面白かった。ということを前提にモヤモヤと。

    最近最も気になっているのは引用したところで、この前、デザイナーや藝大生とMTGしたときもこの話になった。
    「なんで絵画より言語の方が具体的、とか伝わりやすい。という言説が主流なのか、よくわからない。職業病?」みたいな話に 。

    たしかに、絵画のほうが一般的に言えば抽象的、と思われてるけど、実は情報量は言語なんかよりもはるかに膨大だ。それはテキストデータと画像動画データの容量を比べればすぐわかる。

    この点、「美」を鍛える(引き出す)には、「美」を創造(創作)するプロセスの体験は必要だろうなと感じた。写真にハマってるとよくわかる。面白いもの、美しいものを撮りたい、撮る、でもダメ、頑張ろう、、(以下略。

    サイエンスの知見もクラフトマンシップも総動員、緻密で繊細で気の遠くなるような営みを通じてはじめて、「美」は生まれるのではないだろうか?

    だとしたら体験の接点は多いほうがいいなと。

    ちょうど「言語/非言語」に関してワークショップを企画しているところだったので、なんともモヤモヤと示唆を与えてくれました。

  • 東2法経図・開架 B1/10/891/K

  • 最近、不要な修飾語がつくビジネス書イマイチ苦手で避けていたのだが、ブクログのタイムラインで回ってきた感想が興味深かったのでざっと読んだ。


    特に気になった箇所をメモっておく。感想は後で追記予定。

    ベンチャーで機械学習エンジニアとして働く身としては思い当たる節がチラホラ。
    アート、サイエンス、クラフトという言葉で物事の捉え方を分ける箇所が印象的。クラフトというのは我々の界隈ではエンジニアリングがそれに含まれるといって差し支えないだろう。
    アートに関しては再現性が担保されないが故にビジネスの場面では軽視されがちだが、マーケティングにおいてそれは好ましくないというのは同意。

    また美学を伴わない企業(事業)で人材のエンゲージメントが下がる理由をマズローの欲求階層説から捉えているのも印象的だった。

  • MBAのような積み上げられたサイエンスだけでは、ビジネスは勝ち抜けない。
    サイエンス&アート&クラフト が必要。
    非常に納得感がある論考でした。

  • 「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」山口周


    先進的なグローバル企業において、MBAで学ぶような分析的でアクチュアルなスキルよりも、美術系大学院で学ぶような統合的でコンセプチュアルなスキルの重要性が高まっている。

    分析、論理、理性に軸足をおいたサイエンス重視の意思決定では今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをする事はできない。

    正しく論理的、理性的に情報処理すると言うことは、他人と同じ正解を出すと言うことであり、必然的に差別化の消失が生まれる。

    問題の発生とその要因を単純化された静的な因果関係のモデルとして抽象化し、解決方法を測るという論理思考は、問題を構成する因子が増加し、かつその関係が動的に複雑に変化するようになると機能しなくなる。

    様々な要素が複雑に絡み合う世界において、要素還元主義の論理思考アプローチは機能しない。そこでは、全体を直感的に捉える感性と、「真善美」が感じられる打ち手を内省的に創出する構想力や創造力が求められる。

    世界は巨大な自己実現欲求の市場になりつつある。承認や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要。

    システムの変化に対してルールが事後的に制定されるような社会では、明文化された法律だけを拠り所にして判断を行う実定法主義は、結果として大きく倫理を踏み外す事になる。従い、内在的に真善美を判断する為の美意識が求められる。

    経営における美意識例
    ・社員や取引先の心を掴み、ワクワクさせるような「ビジョンの意識」
    ・道徳や倫理に基づき、自分たちの行動を律するような「行動規範の美意識」
    ・自社の強みや弱みに整合する合理的で効果的な「経営戦略の美意識」
    ・顧客を魅了するコミュニケーションやプロダクト等の「表現の美意識」

    計測可能な指標だけをひたすら伸ばしていく一種のゲームのような状態が続発するとコンプライアンス違反の元凶となる。

    認識のモードを理性だけに依存するのは危険であり、正しい認識や判断には快不快といった感性の活用が不可欠。

    美しいと人が感じる時、それはなにがしかの合理的な目的に適っている。

    私たちは世界という作品の制作に集合的に関わるアーティストの一人。だからこそ、この世界をどのようにしたいかというビジョンを持って毎日の生活を送ること。

    論理的で理性的である事を高く評価する傾向は、権力者が作り出す空気に流されている事への反動。

    非論理的ではなく、超論理的に。論理も直感も高い次元で活用する。

    欧州のエリート校では、特に哲学に代表される美意識の育成が重んじられてきた。

    文系理系を問わず、最重要科目は「哲学する力」

    論理と理性に過剰に依存する事は、意思決定の膠着と遅延を招く。

    論理と理性に軸足をおいて経営をすれば必ず他者と同じ結論に至ることになり、必然的にレッドオーシャンで戦う事になる。かつての日本企業はこのレッドオーシャンをスピードとコストで勝者になったが、現在ではこの二つの強みは失われている。

    経営における意思決定のクオリティは、アート、サイエンス、クラフトの三つの要素のバランスと組み合わせ方によって大きく変わる。トップにアートを置き、左右をサイエンスとクラフトで固める。

    Planをアート型人材が描き、Doをクラフト型人材が行い、Checkをサイエンス型人材が行う事が一つのモデル。

    直感こそがエキスパートの重要な要件。

    山の片側から緻密な思考を積み重ねながら、山の反対側からは直感に導かれたアイデアの正しさを検証する。

    高度に複雑で抽象的な問題を扱う際、解は論理的に導くものではなく、美意識に従って直感的に把握され、それは結果的に正しく効果的である。

    現代社会における消費は、自己実現的消費に行き着かざるを得ない。この市場では、顧客の感性を刺激する情緒的で自己実現的な便益が重要。

    実定法主義は「悪法もまた法である」という考え方。判断の正当性そのものの考察には踏み込まない。

    人が「美しい」と感じた時、前頭葉の一部にある内側眼窩前頭皮質に血流量が増加する。この部位はまた同時に、自分の意識や注意をどこに向け、コントロールするか、つまり意思決定の中枢に関わっている。

    社会というシステムの是非を問わず、そのシステムの中で高い得点を取ることだけにしか興味がない思考様式の人間の関心は「早く結果を出すこと」だけであり、戦略コンサルや新興ベンチャーに多い。

    その社会システムに自己を最適化している事で、様々な便益を与えてくれる事に拐かされずに、そのシステムを批判的に相対化する事が真のエリートの知的態度。

    法律という外部規範から、道徳や倫理という内部規範への転換が必要。

    客観的な外部のモノサシである真(論理)善(法律)美(市場調査)から、主観的な内部のモノサシである真(直感)善(倫理・道徳)美(審美感性)へ。

    デザイン思考は問題解決手法であり、創造の手法ではない。問題解決がゴールであり、感動は問われない。

    説明が必要なデザインでは、人は感動させられない。

    大半の大人はパターン認識を身につける事により、虚心坦懐に「見る能力」を失っている。

    純粋に「見る」能力を高める為に、VTSが有効。

    すぐに役立つ知識はすぐに役立たなくなる。

    哲学を学ぶ事で、無批判にシステムを受け入れるという「悪」に人生を絡め取られる事を防げる。

    システムの内部にいて、これに最適化しながらもシステムそのものへの懐疑は失わない。そしてシステムの有様に対して発言力や影響力を発揮できるだけの権力を獲得する為にしたたかに動き回りながら理想的な社会の実現に向けてシステムの改変を試みる事。

  • 借りたもの。
    MBA(経営学修士)よる理性一辺倒だった経営学に「美意識」――感性、この著作では直観力と記されている――が必要とされていることを説く。
    ”MFA(芸術学修士)が現代のMBAである”( https://hbr.org/2008/04/the-mfa-is-the-new-mba )というアメリカのセンセーショナルな見出しを挙げ、何故それが求められているかを懇切丁寧に解いてゆく。
    理性――数字一辺倒になった事で、儲けを優先し道徳が無視されてしまう――この傾向はベンチャー企業に多く見られる――ことを指摘し、そうした会社に限って自浄力(儲けだけでは真に良い企業ではないことを指摘する人材)が無いことを指摘。
    そうした人材は「美意識」を持っているとする。その美意識とは「直観力」(感性とも置き換えれるか)によって見出されていると語る。

    個人の技量としてだけでなく、そうした「美意識」が会社の思想としても求められていることも併せて提言。
    最近はやりの”イノベーション“も、単なる数字目標ではなく、この著者の言葉を借りれば「美意識」により導き出された「真・善・美」によって成り立ったものである。
    ※中川淳『経営とデザインの幸せな関係』( https://booklog.jp/item/1/4822235807 )参照。

    巻末になって、その「直観力」の鍛え方についての方法論を紹介。
    ◆絵画を見る
    ◆VTSで「見る力」を育てる
    ◆哲学に親しむ
    ◆文学を読む
    ◆詩を読む

    美術館賞に関しては、エイミー・E・ハーマン『観察力を磨く 名画読解』( https://booklog.jp/item/1/415209642X )参照。
    上記著書における「観察眼」がこの本における「直観力」に繋がるものだろう。
    社会のルールの変化や価値観の多様性が叫ばれる中、そうした変化に対応できる基盤としてのリベラルアーツの重要性が語られることからも、哲学や文学に親しむ理由である。

    この本で興味深かったのは、日本がこうした「直観力」を鍛えることに抵抗を感じていることを、戦時中の日本の失敗――現実的なデータに基づかず、精神論に傾倒し、場の空気に流されて下した決断が敗因になったこと――がトラウマとなっていることを指摘したこと。
    ※『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』( https://booklog.jp/item/1/4478016879 )参照。
    戦後反省というなら、同じ轍を踏まないためにも、現代人は良い「直観力」の活かし方のモデルケースにならなければと思った。

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著者プロフィール

1970年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科前期博士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社)など著書多数。神奈川県葉山町に在住。

「2018年 『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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