小説の言葉尻をとらえてみた (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334043162

感想・レビュー・書評

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  • 〇著者がiPad 片手に物語の中に入り込み、言葉について調査する。子どものときに夢想した感じで面白い。そのときは言葉の調査とかインタビューはしなかったけど。
    〇辞書の引きくらべ、面白そう
    〇自分の使っている言葉の適当さに気づく
    〇目次タイトルだけでなく、たくさんの小説や物語から用例を縦横無尽に取り上げている

    ◎筋を追っていくだけが小説の楽しみではない。そこに語られた日本語に着目すると作者が必ずしも意図しない部分で、読者は、ことばの思いがけない面白さに気づくだろう。
    辞書編纂者のガイドで物語のせかいを旅し、珍しい日本語や興味深い日本語を「用例採集」してみよう。
    異色の小説探検。

    プロローグ
    本書で取り上げる用例は「誤用」と指摘するものではなく、「なぜ、このようなことばが生まれたのか」「作者はどうしてこのことばを使ったのか」を探究する楽しみを味わう。

    『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ
    …若者言葉の変遷。現代の物語でも著者の知識と読者への翻訳と、当時と今が入り混じっている

    『風が強く吹いている』三浦しをん
    …言葉はやわらかく形と意味を変え続けている

    『残穢』小野不由美
    …可怪しい。著者が好んで使う言葉。物語の雰囲気。

    『オレたちバブル入行組』池井戸潤
    …業界言葉。お仕事小説。

    『チッチと子』石田衣良
    …心の準備をさせる言葉。相手を思いやる。

    『桜ほうさら』宮部みゆき
    …言葉は、物語の中で書き割りのように

    『横道世之介』吉田修一
    …登場人物の背景を言葉で表す

    『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子
    …言葉の東西。足か足下か。

    『マチネの終わりに』平野啓一郎
    …言葉の初出

    『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』伏見つかさ
    …一般小説を一冊読んだときと同程度の難しい語彙と出合うには、漫画は10冊、ラノベは3冊くらい読むといい(作者ざっくり調べ)

    『八日目の蝉』角田光代
    …方言とやおら問題。言葉の意味は時に反対になる。

    『阪急電車』有川浩
    …辞書に載る言葉、載らない言葉

    『グラスホッパー』伊坂幸太郎
    …語尾。作者の造語。

    『ギケイキ千年の流転』町田康
    …つづまる言葉

    『チョコレートコスモス』恩田陸
    …赤丸急上昇中を知っているか

  • 三省堂国語辞典の編集員を務める筆者が、辞書に取り上げる言葉を選ぶため、そしてその用例を探すために小説を読んでいる、その方法を紹介している本です。

    取り上げられている作品は『桐島、部活やめるってよ』や『風が強く吹いている』『俺たちバブル入行組』『残穢』など多くの読者がいる(=それだけ日本語として広くうけいれられている)作品で、本書で言及されている「いままでに辞書にない言い回し」はどれも「新しい/珍しい」日本語の使われ方でとしてとても参考になります。
    そもそも、小説のなかで使われる日本語に「誤用」はない(=日本語の使いかたも含めて「表現」なので)という視点は、いたずらに作者やその作品のファンを傷つけることもなく、読んでいて不快に思うことがありませんでした。
    文体が軽やかであるだけでなく、文章の端々から筆者の日本語への純粋な興味や愛情を感じられることもその理由かもしれません。まさに「小説を読みながら、一つ一つのことばに引っかかって、じっくり考える面白さ」を体感させてくれる本でした。

  • 著者が物語の世界に入っている設定が受け付けなかった。

  • 言葉は生き物で、小説は時代を写す鏡。

    国語辞典編纂者の著書が小説、しかも最近の本の中から、移りゆく言葉の用例採集をいていく。後書きに曰く、『物語を楽しむための小説の中で「ことばを発見する」という楽しみ』が伝わってくる。

    よく「誤用」とされる語句があるが、著書は単に誤用と決めつけることなく、これは言葉の変化であると、古い小説や新聞などと併用して調べ、解説していく。作家の愛用句や斬新な表現が今後辞書に載っていく可能性など、考察の方向も様々。

    言葉好き、辞書好きならワクワクできると思う。

  • 辞書の用例を採集しながら、小説の気になった言葉を掘り下げていく。小説の読み方としても、日本語解説としても、異色。面白かった。
    安易に「誤用」と言わないスタンスがいい。聞きなれない言葉が、実は昔よく使われていたり。何気ない言葉が、実は新しいものだったり。奥が深い。
    比較的新しい小説で、既読の作品が多いのもうれしかった。

  • 「小説の言葉尻をとらえてみた」は現代の小説十数作品から、現代的な使い方の単語を抜き出し、単語の成り立ちや歴史を紹介する本です。

  • 『つまずきやすい日本語』で飯間さんを知り、"ことば"の面白さに魅了された。本作ではことばの持つチカラやそれを使う人物や作者の人柄が背景が見えてくることを、小説の中に登場する文章を例に紹介していくもので大変興味深かった。

  • 筋を追っていくだけが小説の楽しみ方ではない。そこで語られた日本語に注目すると、作者が必ずしも意図しない部分で、読者は、ことばの思いがけない面白さに気づくだろう。『三省堂国語辞典』編集委員である著者のガイドによって、物語の世界を旅し、そこに隠れている珍しい日本語、興味深い日本語を「用例採集」してみよう。エンタメ、ホラー、時代物、ライトノベル…。「旅先」となる物語のジャンルはさまざまだ。それらの物語世界に暮らす登場人物や、語り手の何気ない一言を味わいながら、辞書編纂者の目で謎を見出し、解き明かしていく。ことば尻を捉えているようでありながら、次第に読者をことばの魅力の中へと引き込む、異色の小説探検。

    言葉のプロフェッショナルが注目する言葉遣いは、普段読み過ごしてしまう言葉がたくさんあって、言葉の面白さを感じることができた。
    ストーリーを楽しむ他にも、こんな楽しみ方があったのね、と新しい発見ができて嬉しい。
    国語辞典がどういう意図で編纂されているのかというのも知れて、二重に楽しめる。
    個人的に好きな作家さんの作品が多く取り上げられていて、もう一度読みたくなった。

  • いろいろなジャンルの小説の中の言葉に注目して、使い方や意味などを分かりやすく解説しているので、例えば銀行の話での「大店」「赤残」という業界用語など、知らない言葉を知ることにつながった。また、その小説の時代背景の解説を読んで、本の世界の裏側まで知ることができた気がした。

  • 小説の中に入って言葉を採集していくユニークな新書。小説を書いていた身としては、作者は何故この言葉を使ったのか?と考えてもらえるのは嬉しいし、楽しいと思った。BookBarでも出てきた「ギケイキ」はいつか読みたい。

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著者プロフィール

香川県生まれ。国語辞典編纂者。『三省堂国語辞典』編集委員。新聞・雑誌・書籍・インターネット・街の中など、あらゆる所から現代語の用例を採集する日々を送る。著書に『辞書を編む』(光文社)、『辞書に載る言葉はどこから探してくるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『辞書には載らなかった不採用語辞典』(PHPエディターズ・グループ)、『辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術』(PHP研究所)、「日本語をつかまえろ!」シリーズ(金井真紀・絵 毎日新聞出版)など。

「2023年 『けいごって しってる?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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