残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)

  • 光文社
3.85
  • (27)
  • (52)
  • (33)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 513
レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334043865

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • わたしの職場はいわゆるブラック企業で、みんなそれを承知で、昼食も食べずに働いているし、朝出勤すると、社員の誰かが徹夜をしている。公休なのに、働いていたりする。

    組織の体質を変える、ということは、それなりに時間がかかる。今の体質を作るにも時間をかけてきたように、ちょっとやそっとじゃ変わらない。
    これまでに政府が掲げてきた政策や、各会社が掲げている残業対策も、間違ってはいない。ただ、その政策や対策が、その会社にマッチしているかどうかだ。

    つまり。
    最後の方、ある企業の実際の取り組みが載っていて、けれど、頭に入ってこないレベルで現実味のなさを感じてしまって。
    残業をなくすには、長い時間をかけて、現場と上司(上層部含)が一体となって努力していくしかないのはわかる。また、単に「早く帰れ」というだけではいけないし、できる人に仕事が集中するのも得策ではない。現場によって、どんな残業対策がいいのか、それは会社によって異なるから、現場が問題点を挙げ、上司はツールを作り、現場はそのツールをもとに、試行錯誤を続けていく。

    言っていることはわかる。けれど、上司にはそんなツールを作る能力なんてないし、現場も、日々自分の仕事にいっぱいいっぱいで、なかなか試行錯誤をする余裕がなく、結局いつも通りに戻ってしまう。現場も上司も、常にキャパオーバーだから、こんな風に「どうしていったらよくなるか」を頭で考える余裕がない。そして上司も、「なんとなくうまくいかなかったね」「やっぱり残業減らすなんて無理なんだよね」と、ろくに深められずに終わってしまう。

    残業に対する価値観は人それぞれだし、残業に対する施策もたくさんあって。そんな中。
    結局、上司が残業遺伝子を持っている以上、何も変わらないし、変えられないのか。
    調査でわかった内容がとても興味深かっただけに、ちょっとだけ残念…

  • 残業が発生する仕組み、日本の歴史、残業麻痺に残業は集中し、感染し、遺伝すること。
    ブラック企業を糾弾したり、単に「働き方改革で残業をやめなきゃいけない」と主張するだけでなく、さまざまな観点から冷静に書かれていて勉強になった。少し厚めだけど、話し言葉で読みやすい。

    自分の職場は、まずサービス残業を見える化することからだろうけど…、あまりそういうことを言うと角が立ったりするだろうか…

    組織開発の基本は「見える化」「ガチ対話」「未来づくり」とのこと。最近とみにガチ対話の必要性を感じている。波風立てずになんとなく遠慮したままズルズルいくといつか取り返しのつかないことにならないかと。
    マネジメント層にはとりあえず読んでもらいたい。

  • すべてのマネジャー層、人事部門に読んで欲しい一冊。社内研修デザインに有用なインプット。昔は部下から仕事巻き取っていたなぁ...。あなたは「ジャッジ」「グリップ」「チームアップ」はできていますか?
    「教室を出たら、「事」をなすのみ」

  • 残業の歴史・構成要素等、暗黙の了解となっていたことが豊富なn値のエビデンスに基づいて紐解かれており、包括的な知見を踏まえて現場の抱える課題を考える上で、役立つ良書だった。

    自分が属する「ムラ」の住人をいかに幸せにするか、というミクロな起点から実践に移したい。

  • 『働き方改革』によって多様な働き方、労働力の確保を実現するために重要な『長時間労働の是正』。残業を減らし、持続可能な働き方で、うまく仕事と付き合いながら人生を歩む。
    残業文化その歴史についてや、残業発生のメカニズム、残業時間削減のためにはどうしたら?と言った内容が講義形式で書かれています。
    読後は『やはり特効薬はなく、地道に働きかけ、実践するよりほかない』『組織ぐるみで取り組まねば実現は難しい』『ネガティブなケースで、自分にも当てはまってるものがあるなぁ』『今の組織ってまさしくこの状態なんじゃ?』などと少し気持ちが暗くなりました。が、『自分自身』と『組織』の『未来』のために、今取り組む必要があることもひしひしと感じました。
    過去にすがらず今と未来を見る。これを肝に命じて粘り強く取り組んでいこう。

  • 前半部の日本の残業の現状整理は非常にわかりやすかったし、キーワードも学ぶことができたので、このキーワードを今後職場で活用すると良いと感じた。(残業麻痺など)
    ただ、後半部のhowの部分については、あまりインスピレーションを得ることができなかった。

  • 私自身も入社当時は、時間が助長されているとまでは言わないまでもサービス残業が当たり前で、それによって自己成長を得ていたと思っており、それ自体を悪いことだとは考えなかった。逆に労基法順守、働き方改革や生産性向上という名目でサービス残業撲滅や時間外抑制を会社から求められることに対して、反発を覚えたこともあった。本書でいうところの「昔の武勇伝」を部下に語ることもあり、今の若手たちは自由に残業もできず仕事をやりたいのにできないという環境をかわいそうにおもってしまうことさえあった。
    しかし、自分が若いころに得られていた成長感は効率の悪いものであり、誤った考え方であると大いに反省させられた。
    一方で、これが個人的な問題ではなく、日本社会に文化として浸透し待っており、個人の意識を変えただけで変えられるような問題ではなく、国や企業が働き方改革などの号令や規制だけではなく、各職場に合致した具体的な具体的な施策をもって推進しなければ容易に解決できない問題であるということを理解した。
    とはいえ、それを待つだけではなく、管理職の一人としてできることから少しずつでも始めてみる必要性を感じた。まずは、自分の考え方を改めることが最初の一歩だ。



    日本以外は「ジョブ型(明確に仕事の範囲を規定した契約書に基づき雇用契約)」、日本は「メンバーシップ型(人を採用してから仕事を割り振る)」。後者では仲間意識が強くなり、残業も組織や会社全体の文化になってしまう。

    欧米では「労働は」なるべく避けたいもの、といった「負の効用」を持つ概念。「国富論(アダム・スミス)」において、人間にとって労働とは「toil and trouble(骨折りと苦労)」と述べている。
    一方日本人は「仕事」が「希望(幸せ)」を規定する傾向にあり、仕事の中に何か「幸せ」を見出したいという価値観を持っている人が多い。

    従業員が雇用主や企業に寄せるこうした期待を「心理的契約」という。心理的契約はいわば労使間の「暗黙の了解」で明文化されたものではない。これまでの日本では、年功序列や終身雇用という「心理的契約」があったからこそ、残業も厭わずがむしゃらに働いてきたとしても、その「見返り」が期待できた。
    しかし、「終身雇用」と「出世への期待」は、以前に比べて「裏切られる」可能性が高まっている。

    経験学習理論では、①背伸びの原理(現在の自分の力では少し難しい能力が伸びる仕事をすること)、②振り返りの原理(過去の行動を振り返り、意味づけた上で未来に何をするべきかを自分の言葉で語れるようになること)、③つながりの原理(信頼のおける他社からのコメントやフィードバックなどを得て周りとのかかわりの中で学んでいくこと)、の3つの原理が欠かせない要素である。
    一方、長時間残業では①は機能しても、②と③が機能しなくなってしまう。つまり長時間残業で経験を積み重ねる(①)だけでは成長できない。日本人には「努力信仰」と結びつく「量をこなすことが成長につながる」といった思い込みが強い。
    日本企業では「残業あり、成果あり」(よく頑張った)>「残業なし、成果なし」(もっと成果を出せたはずだ)=「残業あり、成果なし」(まあよくがんばった)と評価される傾向が強い。

    日本人男性は残業時間が減っても「家事・育児」の時間に変化はないが、女性は増加する。つまり、女性が社会進出することで、今まで以上に女性への負担が増える構図になっている。

    残業が発生するメカニズムは、「個人の能力不足」ではなく、職場の雰囲気や人間関係の中で生まれる。「集中(優秀さに基づく仕事の振り分け)」「感染(帰りにくい雰囲気)」「遺伝(若いころに長時間労働していた上司)」。

    残業が定常化すると、生活費を残業代に依存する「残業代依存」になり、残業が助長される。

    残業削減は、個々人で解決できるものではなく、トップダウンで全社的に取り組まなかれば効果が出ない。単なる号令だけでなく、具体的な施策やフォローがなければ浸透しない。

    経営学において、マネジメントのもっとも有名な定義は「他者を通じて、事を成し遂げる」。

  • 残業代を家計に入れない

    やらない事をジャッジする

    業務を明確にし、見える化する

  • 長時間労働が常態化している原因を大規模な調査をもとに学問的な考察を加えて平易に解説した本。

    新書版で書きっぷりは柔らかいが、中身はずっしり。あとでまとめようと思って重要なところは付箋をつけながら読み進めたが、これだけ盛り沢山だとまとめるのも容易ではなく諦めた(ちなみに全9講からなる講義形式で、各講義の末尾にまとめがついているので、これを見れば要約だけならできる)。

    ということで、大幅に端折って言えば、長時間労働(残業)がなぜ日本企業に根付いてしまったのか、なぜ会社員の多くが(ときには自らすすんで)残業するのか、なぜ働き方改革がうまくいかないのかが豊富なデータとエビデンスをもとに説得力を持って書かれている。

    後半の3講では、長時間労働をへらすにはどうすればよいのか、その方法が解説されている。ここは著者の専門分野である組織開発・人材開発の領域だけあって大変参考になる。

    図書館で借りてきたが、購入して手元に置いておくべき1冊。

  • 2019/4/24-5/11読了

    *残業抑制施策は始まったその日から形骸化との闘い
    *人は経験を積み重ねるだけでは成長できない。経験したことについてフィードバックを受け、振り返って次の行動に活かしていくことが未来にむけた学びとなる
    *変えられるものを変える勇気と変えられないものを受け入れる心の静けさと両者を見分ける叡智

全55件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

立教大学経営学部教授

「2020年 『データ・ドリブン・マネジメント入門(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)のその他の作品

中原淳の作品

残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする