吃音の世界 (光文社新書)

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  • 光文社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334043926

感想・レビュー・書評

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  • 小説じゃなくて、新書を読んで感動して泣いたのは初めてかもしれない。興味深く、心を揺さぶられながら、二時間ほどで一気読みしてしまった。
    文学好きな人なら吃音になんとなく興味を持っている人は多いのではないかと思う。私はもちろん、村上春樹の「ノルウェーの森」に出てくる突撃隊で興味を持ち、小島信夫の吃音学院も読んだ。
    この本、タイトルからして「吃音」には「世界」があると思わされて良い。著者ご本人の体験から始まって、吃音のある人がどのように苦労しているか、親がどんなに悩むものか共感できる。どんな言語でも世界中に1%程度吃音の人がいるというのも興味深いデータだ。原因や治療法など、これまでの国内外の研究や治療の歴史も紹介してある。日本で「どもっている人を真似しているうちにうつる」とか、「親の接し方の問題」とか、「吃音を指摘することで意識してしまい、余計にひどくなる」というような認識が一般的だが間違っていることも指摘。
    4章では、著者ご自身の外来に来られた幼児から大人までの事例を紹介。どんな小さな子供にも、「きみが言葉に詰まってしまうのは、”きつおん”というんだよ」と優しく説明し、「意識させない」ではなく、はっきりと意識をさせ、からかわれたり、真似されたりしたらいやだよね、と共感し、時には学校の担任の先生宛に配慮を促す診断書を書く。成人男性で、会社を解雇されそうになっているという切羽詰まった状態の方に対しては、障がい者手帳を取得する手続きを取るなど親身になって”医師”としてできることをする。学校現場に関わる場合はいじめに関する法律、解雇をめぐる問題では障碍者福祉に関する法律など、法律についても勉強されて対処されている。
    悩んでいるお母さんとのやり取りのくだりで涙が出ました。
    ご自身が吃音で悩まれた経験から、「医師になって耳鼻咽喉科を専攻すれば吃音についてなにかわかるのではないか」という純粋な思いで努力され、そのような研究・医療が現時点でないという事実に直面してもあきらめず、同じ悩みを抱える人達に寄りそって臨床を続けてこられた。とても尊敬します。
    私は教職に携わっているが、入学時に緘黙や吃音、その他身体的な特徴や、糖尿(注射や捕食が必要)やアトピーなどの持病を抱え、周りからの誤解やからかいを心配して事前に相談される例は数多い。そんなとき、入学時にカミングアウトして周りから理解を得ておくべきだ」と私自身は考えるのだが、ほぼ100%、隠しておきたい、周りには言わないで欲しいと言われる。保護者がそのように要望されれば、教員が無理にカミングアウトを勧めることはできない。でも、本書を読んで、私ももっといろいろなことを勉強し、上手にカミングアウトできる方向にもって行くか、そうでなくても周りの子どもの理解を得られるようにしなければ、と思った。なによりも、吃音に限らずいろいろな不安を抱える子供たちそれぞれに対して、自分ではどうしようもないことを「もっと努力しなさい」とか「それじゃだめ」というようなメッセージを与えず、自分に自信をもって好きなことを頑張れたり、出来ないことや苦手なことがあっても自分が好きだと思えるように接していきたい。
    吃音をテーマにしながら、人としての成長や、これからのバリアフリー社会のあり方についても考えさせられる素晴らしい内容でした。

  • 吃音で悩む人だけでなく、全く吃音とは無縁な人生を送っている人にとっても、わかりやすく心に響くメッセージや発想が散りばめられていて。私は好きです。

  • 当事者のみならず、その他の人が読んでも分かりやすく書かれておりとても勉強になりました‥

    本書は吃音について薬のこと、対策、社交不安、これまでの歴史、実際の相談事例等についても触れられており、吃音に関する様々な知識を学ぶことができます!

    個人的には社交不安についての記述が読めて満足

  • Twitterでの投稿を見て、読んでみたくなった。
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334043926
    出版社サイトより引用
    吃音は、最初の語を繰り返す「連発」(ぼ、ぼ、ぼ、ぼくは)と、最初の言葉を引き伸ばす「伸発」(ぼ―――くは)と、言葉が強制的に発話阻害される「難発」(………ぼくは)の三種類がある。吃音症の人は100人に1人の割合で存在し、日本では約120万人、世界では約7000万人いると言われている。近年、吃音の専門教育を受けた国家資格である言語聴覚士の誕生、障害者の暮らしやすい社会へ向けた市民の意識の変化、そして発達障害者支援法や障害者差別解消法の成立といった時代の変化の中で、吃音者をめぐる状況にも変化が生じている。
    幼少期から吃音で悩み苦しんできた医師が、吃音の当事者のみならず、私たちがより多様な社会を生きるためのヒントを伝える

  • 難発性の吃音もちです。
    吃音でかかっている心療内科の先生に勧められて読みました。

    この本の序盤の「作者の体験」の部分は、本当に共感しかありません。
    今までずっと吃音が普通だったので「吃音じゃない人って、どうして吃音の人がこんなことするのかわからないんだ」とも、気づかされました。例えば、言いづらい言葉を避けるために、わざと言葉の順序を変える、などです。
    それと、私は喋るときにとても労力がいるので「私ってダメな人間なんだな」と思うことがあったんですが、それも「吃音はみんな大変なんだな、私だけじゃない」と少し元気をもらえました。
    なので、吃音で悩んでいる人は是非読んで欲しいです。
    そして、身の回りに吃音者がいる方にもお勧めします。
    どういう風に悩んでいるのかが、とてもよく書いてあります。

    「こうすれば治る!」のようなハウツーはあまり書いておらず(まだあまり確率もされていないですし)、吃音について、歴史的、医学的、社会的観点から解説してあって、昔から吃音もちの人は悩んでいたこと、いまは昔より吃音もちにとっては生きやすくなってきたことなどもよくわかります。

    また、作者の先生の吃音外来での相談事例なども書いてあり、吃音をサポートする方にも役に立つかと思います。

    吃音はまだ日本では「変な風に話す人」のような軽い認知で、酷い時にはからかわれたり馬鹿にされる対象になる状態なので、早く吃音で悩んでいる人がいるということがもっと広まればいいと思います。だからこそ、いろんな人に読んで欲しいです☺️

  • 人にはいろいろ悩みがある。見た目では、わからない所に。

  • 自分も吃音のけがある。軽い方だと思うけど、連発とか難発となる時がある。連発は結局言えるからいいんだけど、難発で出てこないときは困るし自分でも嫌になる。なんか違う言葉を先に出してクリアすることがあって、本書を読んでて共感していた。連発だとか難発だとか、そもそもそういう言葉をこの本で初めて知ったわけだけど。
    特定の言葉が出てこないというこの現象、自分でも不思議だったけど、メカニズムとか歴史的な背景とかあまり考えたことがなくてとても新鮮だった。
    どもることも含めて喋ることにコンプレックスがあったけど、同じように苦労している人がいること、治そうとしている人たちがいること、具体的な対処法などを知ることができて、今後はもう少し前向きになれそう。

  • 吃音の疑いのあるケースの相談があり、片っ端から本を読んでいました。とても読みやすく、サッと読めるのに、ポイントが押さえられている。
    当事者、家族、治療者など様々な立場について触れられている。

  • 吃音の治療の歴史や、本人の吃音のこと、また吃音外来の実際のケースについて触れている。

    この本を読んで驚いたこと:吃音について本人に話すと悪化するという話をよく聞くが、むしろちゃんと説明したほうがよいというのは驚いた。
    この本を読んで実践すること:子が吃音を持つ場合にはしっかり話をして向き合おうと思う。また吃音を持つ人との接し方についても参考になった。助けるつもりで言葉を先取りするのはかえって困るようだ。

  • なぜ吃音が終わったらあの嫌な気持ちは無くなるのは?
    気が付かなかったけどすごく苦労してたんだね。大変だったね。の一言。
    吃音が出ないことは一人で悩みを隠してしまっていること。
    頭の回転が早すぎて、口がついてこない?
    吃音は慣れた文章では減る。
    1-3年目までのフォローが必要を
    30歳をすぎると吃音は大丈夫になっていく。
    吃音の問題がどこにあるのかを見つけ、対応する。
    思春期になると劣等感から将来に対する希望を失ってしまう子供が多い。
    真似、指摘、問い詰め
    社交不安障害→LSAS-J
    インリアルアプローチ→SOUL
    静かに見守る、よく観察する、深く理解する?耳を傾ける

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著者プロフィール

九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 助教 医師 医学博士
Facebook:https://www.facebook.com/yoshikazu.kikuchi.92

中学1年生の時に、「吃音の悩みから救われるためには、医者になるしかない」と思い、猛勉強の末、鹿児島ラ・サール高校卒業後、1999年九州大学医学部に入学。医師となり、研修医を2年間終えた後、2007年に九州大学耳鼻咽喉科に入局。2008年より九州大学大学院に進学し臨床神経生理学教室で、「脳磁図」を用いた吃音者の脳研究を行い、今まで4度国内外での受賞をしている。吃音のある人の診察経験は500名以上。全国各地で吃音の講演会を行い、吃音の啓発に努めている。医師の立場で吃音の臨床、教育、研究を精力的に行っている吃音の第一人者である。


「2022年 『もう迷わない! ことばの教室の吃音指導』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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