段落論 日本語の「わかりやすさ」の決め手 (光文社新書)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334044619

感想・レビュー・書評

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  • 元々欲しかった本がAmazonで値引きされていたのですかさず購入。

    段落論、というタイトルの印象から、読み始める前はいかに段落をうまく切って読ませるか、という書くことのノウハウ本のようなものを想像していたが、違っていた。

    そもそも、段落というものが明確に定義されているわけではなく、またその性質自体英語と日本語で異なっている点や、読む媒体やツールに影響されることが指摘されている点、また話し言葉での段落(本書では広義の段)について言及されており、非常に興味深かった。

    段落、というと、ぼんやり「字下げされた文章の意味の切れ目」という風にとらえていたが、確かに(今書いているこの文章も含めて)インターネットに記載する文章については字下げは行わず、空白を入れることや、その空行の入れ方によって読み手の捉え方を変えさせる言わばレトリックのようなとらえかたまであるというのが興味深い。形式的な段落ではなく、読み手に伝えるための意味のまとまり、と大きくとらえるのが適切なのかなと思う。

    最後に書いてあるが、段落や文章の書き方の自由度は時代とともに(というより紙という文章形態からの開放とともに)増していく方向ではあるが、文章を書く側、読む側、話す側、聞く側の双方向のコミュニケーションがある限り、本質的な段落の役割は変わらない、ということを強く理解した。

    今後インターネットであれ本であれ文章を読むとき、また自身で文章を書くときは、段落について意識してみたいと思う。「あ、これ意味で切れてるな」「これはこのツールだからこういう書き方になるんだな」という見方をすると、幅が広がって面白そうだ。

  • 日本の段落は読み手のため

    英語の段落は書き手のため(読み手のためでもあるが)

    というのがなるほど、という感じ。

  • 長い文章を書くときは段落に分けないと自分でも読みにくいので、話題や内容の変わり目で改行し、次の文を一字下げて書き始めるのが当然だと思っていて、それはそれで間違いないのだが、「段落に分ける」ということ自体が日本語の発想であり、英語のパラグラフとは異なるという指摘が意外だった。書き言葉だけでなく、話し言葉にも段落を見出すことができるとか、紙から電子媒体への移行が段落を変容させているという話も興味深い。この本を読んだ理由は、仕事で他人の文章を添削するときに役立つかもしれないと思ったからだが、そういう用途には向いていない。2020年2月29日初版1刷発行。定価(本体820円+税)。2020年4月12日付け読売新聞書評欄。

  • 本書の構成自体が、段落とは何か、を示唆するもので興味深い。また、使用されている言葉が隅々まで的確で、読んでいて快かった。

  • 広い概念として「段落」を扱っており、書き言葉(文章)における段落から喋り言葉の段落まで射程が広い本である。

    ネットメディアにおける段落についても言及しており、段落という構造をみつめることによって、「どうしてネットニュースは現在の形式になっているのか」という疑問について秀逸な考察がなされている。

  • かなり面白い。
    日本語、文章論の研究者である石黒圭氏による、段落の原理、種類、コミュニケーションにおける段落の意味の3部から成る、新書作品。主題は、日本語の文章における段落であり、段落の使い方・読み方次第で文章のわかりやすさが変わっていくことを詳しく説明している。面白い点は、日本語の「パラグラフライティング」の作法を解説している点と、スマホ時代の新たな段落や文章の傾向の変遷を分析している点。

    日本語のパラグラフライティングは、なかなか教えられることがないと認識している。その上で、この本では、段落の中に、小主張文、支持文、小結論文、及び中心文があり、それぞれ、特定のパターンがある、という点を整理して、文章の作り方のルールを形式化し解説している。これ自体は論文を書く学生やビジネスライティングをする社会人にも非常に有用な考え方だと思う。特に、論理的に話を展開するために、鳥瞰して構える計画をして、しかし実際に書きながら魚の目で流れるようにその計画を修正していく、という執筆計画と執筆実践の両面を意識した書き方と考え方を書いており、役に立つ、という意味で面白さを感じた。

    もうひとつに、スマホ時代の段落や文章は、ページが小さくなったり、他方で紙幅に制限がなかったり、という環境変化によって、より展開を期待させる段落に、空白を作る段落になってきた、という。人間のコミュニケーションの中で、文章のあり方が変わってきていて、伝統的な文章のあるべき論よりも、フキダシを使ったLINEのような文章形式や、官公庁におけるポンチ絵のような文章が今後の新たな段落となるかもしれない、と、著者はかなりひらけた目線を提供している。

    論理的に日本語で考え、書くために、段落をどう捉えるかの考え方が整理され、面白い本だったと感じる。

  • 外人に日本語を教えている友人(もちろん日本人)から、日本語は膠着語であることを理解してもらうのが難しい、という話を聞いたばかり。文と段落は違うけど、それでも文章と文章がペタペタくっ付き合う日本語と、切れ目がハッキリしてロジカルに構成される英語の違いは、文の塊としての段落にもあるんだな、となんとなくシンクロして読み終えました。すごい論理的に日本語の感覚的な部分を分析している本で、たぶんAIによる自動翻訳ってこういうことをプログラムしてディープラーニングさせているんだろうな、と思いました。日本語と英語の違いというより、紙の本がスマホになり、文章がチャットになることによる段落のカタチが変わっていく、という指摘が新鮮でした。言葉は止まっていない、動いているのですね。LINEの吹き出し型の文章における段落論とか、テキストはグラフィックと一体化していくという未来予測として受け取りました。自動翻訳とか人工音声とか含め、文章ってこれからどんどん変わっていくのでしょうね。それにしてもいつもブクログの「レビュー・感想」はNO段落で、思うがままに書いていたことに、いまさら気づきました。

  • 小学校で習う段落という概念。確かに日常的に文章を書くときにも本を読むときにも触れてはいるのだが、ちゃんと理解できているという感覚はずっとなかった。
    何となくこういうものだろう、というぼんやりした使い方を今までしていたが、ちゃんと理解してみたくて手に取った。

    前半では段落というものの定義や使い方など基本的な段落の知識を教えてくれる。そして後半は文章の書き方や読み方、話し方での段落の使い方というより踏み込んだ使い方が記されていた。
    面白かったのはSNSの普及で段落の使い方が変化しているという点。
    確かにTwitterやLINEの文章で形式段落を入れてる文章は余り見かけない。その代わりに空白が段落の代わりに使われているのだという。更にその空白自体にも、長く空白を開けることで読み手に驚きや、長い間を表現したりなど、別の意味が含まれていたりするという話も面白かった。

  • 大学の履修科目の参考文献として載っていたので読んだ。
    段落とパラグラフの違いについて考えたこともなかった。また、web文章と紙の文章の構成の違い一「白地に黒」と「黒地に白」の対比一はとても学びになった。
    文章を書く機会がある際、段落に気を利かせ書いてみたい。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB29752348

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著者プロフィール

横浜市出身。1993年一橋大学社会学部卒業。1999年早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。国立国語研究所教授。一橋大学大学院言語社会研究科連携教授。著書に、『「接続詞」の技術』(実務教育出版)、『段落論』(光文社新書)、『よくわかる文章表現の技術』Ⅰ~Ⅴ(明治書院)など多数。明治書院教科書編集委員。

「2021年 『よくわかる文章表現の技術 Ⅳ 発想編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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