日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因 (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334044688

感想・レビュー・書評

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  • フランスに住んでいる友人(日本人)に、「今この本読んでるんだよね」と話したら、「え、日本て少子化対策なんかしてたの?」と言われた。
    確かに。言われてみれば。
    わたしはすぐに、日本が行っている少子化対策をあげることができなかった。
    この作品によるとそれは、育休制度であるとか、保育園増やそうとか、そういうことらしい。でもそれって、なんかずれているような気がする。

    なぜ日本で結婚・出産が回避され、少子化対策は失敗したのか。
    説明していくと、こういうことだ。まとめだけでなく小言が入るので長くなります。
    日本は欧米諸国の少子化対策をベースにして少子化対策を行った。
    しかし。
    欧米の価値観を前提としたまま、日本にあてはめてしまった。結果失敗した。その欧米の価値観とは。
    A.子どもは成人したら親元から離れて独立して生活することが当たり前の慣習
    B.仕事は女性の自己実現であるという意識
    C.恋愛至上主義
    D.子育ては成人したら終了という意識

    日本にA~Dが当てはまらないのに加え、日本特有の価値観がある。それが以下である。
    ①「リスク回避」傾向
    ②「世間体重視」
    ③子どもへの強い愛着―子どもにつらい思いをさせたくないという強い感情

    まず、Aについて。日本人は自立志向が弱い。特に女性の自立は不要と考えている人が親のみならず本人にも多く、18~34歳の未婚女性の約75%が親と同居している。これが「パラサイト・シングル現象」であり、日本の少子化の一因となっている。
    では、欧米ではどうか。欧米では、成人したら原則親元を離れる。しかし、収入は日本と同様そんなに高くないので、恋人関係に発展すると同棲するカップルが増える。そのうちに子どもができる。

    次にBについて。欧米では、仕事を持って自立することが男女問わず求められる。そして、仕事には自己実現という意味合いも含まれている。子育てをしながら仕事で自己実現をするため、両立支援策が必要となる。
    日本ではどうか。日本では、「女性には仕事による経済的自立が求められない」、「仕事で自己実現を得られると思っている女性が少ない」。
    でもこうなっているのはたぶん、高度経済成長期に完成した性別役割分業制と、それによる女性の自立志向の低さがベースにある。だから、男女問わず成人式終わったらみんな実家追い出されて、みんな生活のためにゴリゴリに働いてないと、両立支援策には意味がない。全員が「働かざるを得ない社会」じゃないと適さない。

    日本では、正社員なら会社への貢献的忠誠―長時間労働―家族を顧みない働き方、が求められる。それができなければキャリアコースからは外れる。そしてもともと女性にそれは求められていなかった。
    男性並みの仕事能力がある女性は、キャリアコースから外れると、仕事を継続する気をなくしてしまう。だって誰もそれを評価してくれないし、むしろそれで疎まれることだってあるからだ。男性の多くは、仕事での自立を求められ、かつ妻子を養う必要があるのでそれに従わざるを得ないが、女性にはそれに従わなくてもいい自由がある。というか、なんなら妻子を養っている男はかっこいいし、養われている妻子は幸せ、というWIN-WINの関係が成立してしまうのだ。なんてこったい!
    日本は結婚後、夫の収入に依存するのは当然であるという感覚が強い。スウェーデンでは、「結婚後の家計維持は夫の責任か」という質問に対して、大多数の女性がNOと答えるのに対し、日本ではYESと答える人が圧倒的である。なんてこったい!

    では、日本の女性がやりがい・自己実現をどのようなところに感じるか。
    それは「豊かな消費生活を送る」というものである。日本は、仕事を苦労して続けている女性よりも、仕事をしていなくても豊かな生活をして、子どもをよりよい学校に通わせている女性を評価する社会である。そのため、女性にとって仕事は、豊かな生活や子どもにお金をかけるための「手段」としての意味合いが強い。つまり、豊かな消費生活を送る見通しが立てば、無理に仕事と子育ての両立を目指す必要はない。
    そして現在、女性の労働者の半数は非正規雇用である。「総合職と一般職を区分した上で、一般職は女性に限るという慣行」「正規―非正規で処遇が大きく異なるなどの慣行」がなくなる見込みがない以上、一般職や非正規雇用の女性の専業主婦志向は弱まらないだろう。

    ここで、①~③を見てみよう。
    特に②世間体意識を先に見てみる。
    上記のように、「仕事を苦労して続けている女性よりも、仕事をしていなくても豊かな生活をして、子どもをよりよい学校に通わせている女性」が評価され、かつ男性が主な収入源となったWIN-WIN状態は、世間体を保っているとされている。世間体を保つということは、親などの家族、親しい親戚、学校や職場の仲間、友人から、マイナスの評価を受けないことである。
    日本人は、結婚から老後まで「世間からみて恥ずかしくない生活」をしなければならないと思っている。結婚したら、子どもを産んだら、子どもを育てたら、子どもが大人になったら、世間からどのように見られるかを常に意識して行動せざるを得ないのだ。その意識はSNSの発達により強まっている傾向にある。
    例えば、日本で「同棲」「婚外出生」「事実婚」が欧米のように広まらないのも、世間体が悪いからである。この「世間体」という言葉は英訳が存在しない程、日本人特有の感覚なのである。
    現在の日本には、経済的な格差が存在する。正規雇用と非正規雇用の明確な格差。未婚男性の38.6%は年収200万未満であって、貧困と隣り合わせなのである。しかし、人から下に見られたくないという世間体意識が、貧困を表に出させない。結果、政策にも反映がされない。

    Cについて。欧米社会では、恋愛感情に基づいて人生のパートナーを情熱的に求めることが人生の一つの目的として追求される。一方、日本で恋愛感情に基づいてパートナーを得るということが人生の目的であると考える人は、欧米に比べて少ない。恋愛を「リスク」と捉える人が増えているのである。
    ここで①を見ていく。
    ①リスク回避の意識
    欧米ではリスクをとって新しいことを始めることを評価する文化があり、転職も当然のように行われるため、やり直しがききやすい社会といわれているが、日本は新卒一括採用、終身雇用慣習に代表されるように、一度コースを踏み外すと、やり直しがききにくい労働慣行を持つ社会と考えられている。
    これは結婚・出産にも当てはまる。日本では離婚は失敗という評価がつきまとう。欧米では離婚や再婚を繰り返しても特に問題とは思われない。離婚は再婚を目指してお互いにとってよりよい相手を見つけるチャンスという意識がある。
    「仕事においても家族においてもやり直しがききやすい社会」にするということが最も効果的だが、雇用慣行や人々の意識を変化させることが必要になるので、たいへん困難な課題である。

    Dについて。欧米では、子どもを育てること自体に意味がある、子どもを育てることが楽しい、といった価値観が一般的である。一方日本で子育てとは、子どもをよりよく育てる、子どもが社会からどう評価されるか、に対して強い意味づけがなされる。
    その結果、子育て責任の年齢に大きな差が出てくる。
    欧米では、子どもが成人すれば親の責任は果たしたとみなされるので、親は原則、大学などの高等教育費を工面しない。それゆえ、少子化対策としての経済的支援は未成年の間だけで十分となる。
    一方日本では、学歴や職業ランク、娘の場合はどの職業ランクの男性と結婚したかということに価値が置かれる。そして、子どもが成人した後も子を支え続けることが求められるのと同時に、それが親の生きがいにもなっている。これもWIN-WIN!そのため、子どもにお金をかけざるを得ず、子どもの数を絞らざるを得ないのである。
    ここで、③を見てみる。
    ③子どもへの強い愛着
    欧米では子どもとコミュニケーションをとることが子どもへの愛情表現という考え方が強い。しかし日本ではなにをもってしても「子どもにつらい思いをさせたくない」が先にくるので、子どもに十分なお金をかけることが親の務めとなる。つまり、日本では父親が単身赴任で地方へ行っていても、その分家庭にお金を入れることは愛情表現の一つとなりえるが、欧米ではそれは愛情表現とはいえないのである。

    日本では、親の強い愛情、世間体、リスク回避、これら三者の結合によって少子化がもたらされているので、女性が働きに出やすい欧米型の少子化対策が、全く意味がないことがわかる。
    というかこうしてみると、社会の流れの中で女性は働かないことが推奨されてきたのに、急に欧米型の少子化対策が導入されたことによって「女性も働くことが普通」みたいになってきて、日本の女性はよくそれに柔軟に対応してるなって思う。世間体自体は何も変わってないのに。女性って強いね。しなやかだ。男性も「大黒柱」みたいに言われてきて家族を顧みない働き方が美しいとされてきたけど、それ自体を否定する人は多くなってきたように思う。それでいいと思う。でも、格差があることを認めたくないっていうのは、男女問わずみんなそうなんじゃないかな。男女ともにみんな年収200万が普通なんだ!じゃあお互いに手を取り合って一緒に家計を維持していこう!となれば平和的解決なのかもしれない。もう全人類フリーターでよくない?

    いよいよ最後のまとめ。
    現在の子育て世代の親が「中」の生活を送ってきたことから、現在の子育て世代が、自分がしてきたことと同じことを子どもに提供しなければならないと思っている。だって「子どもにつらい思いをさせたくない」。
    現代日本の少子化の根本原因は、経済格差が拡大しているにも関わらず、大多数の日本の若者は中流意識を持ち続け、「世間並みの生活」をし続けたいと思っていることにある。中流の意識だけが残っているのだ。だって自分が下流だって認めたくない!
    つまり、親が比較的豊かな生活水準を保っているのに自分が将来築くことができる生活が親の水準に達する見通しがない若者たち、彼らが結婚・出産を避けており、彼らこそが、子どもにつらい思いをさせてしまう可能性にさらされている。この層の増大がマクロ的に言えば、少子化の原因である。
    若者の「将来にわたって中流生活から転落する不安」を払拭することができなければ、日本における少子化対策はなかなか効果が上がらない。若者だれもが、育てている子どもにつらい思いをさせなくてすむような見通しをとることができる社会にすべきである。

    じゃあどうすればいいのさ。(ToDoリスト)
    ・結婚して子どもを2~3人育てても、親並みの生活水準(子育て水準を含む)を維持できるという期待を持たせるようにする。(経済状況、階層のあり方を変える)←無理がある
    ・親並みの生活水準に達することを諦めてもらい、結婚・子育てをする方を優先するようにする。(リスク回避、世間体意識を変える)←日本人にはハードル高すぎ
    ・仕事においてやり直しがきいて、不利にならない職業環境、共働きがしやすい社会環境、いざとなったときには社会保障で自立に向かっての再スタートが切れる社会。それは、「子どもにつらい思いをさせなくて済む」生活水準でなければならない。←無理がある

    つまり、日本に「世間体」と「やり直しがきかない感じ」が蔓延っている以上、どんな対策をしたって無理があるんじゃないのって思っちゃった。ToDoリスト、どれも夢物語のように感じるよ。

    本当に長くなりました。最後まで読んでくださりありがとうございましたm(__)m

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      naonaonao16gさん
      今も厳しく、此れから先もよくなりそうにない、、、
      でも、きっと若い人が新しいライフスタイルを模索して切り拓いて...
      naonaonao16gさん
      今も厳しく、此れから先もよくなりそうにない、、、
      でも、きっと若い人が新しいライフスタイルを模索して切り拓いて呉れるでしょう。
      人は一人では生きてはゆけないのだから、柔軟に相手の言い分を受け入れて、、、

      楽天能天気な猫でした
      2021/04/13
    • naonaonao16gさん
      猫丸さん

      わたしも楽天的になりたいものです…
      この手の話題になるとどうにも熱くなってしまい…(笑)

      まずは自分だけでもできること、相手の...
      猫丸さん

      わたしも楽天的になりたいものです…
      この手の話題になるとどうにも熱くなってしまい…(笑)

      まずは自分だけでもできること、相手の言い分を柔軟に受け入れることから始めてみます!
      2021/04/14
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      naonaonao16gさん
      ちょっぴり反省、楽天的になれるのは、他人事だからなのかも、、、駄目ですね。

      お節介過ぎて失敗の多い猫ですが、...
      naonaonao16gさん
      ちょっぴり反省、楽天的になれるのは、他人事だからなのかも、、、駄目ですね。

      お節介過ぎて失敗の多い猫ですが、懲りずに後押しします!
      2021/04/14
  • タイトルというよりも副題の方がメインの本だった。
    少子化は結果であってその前提条件となる結婚に至るメンタリティなどを考察に加えていてなるほどと思った。
    要旨としては、日本では結婚、出産、子育てというのは将来に対するリスクであるため行わないといったところだと思う。
    この本に書いてあることが本当なら、現在の日本の少子化対策は、対象者のことを考慮せずに机上で考えたことを実施しているということなんだろうか。

  • 「意識は中流、でも現実には貧困と隣り合わせ」日本の若者は自然に恋愛しないし、結婚しないし、子供も産まない。全てのフェーズで支援が必要

    ●感想
     文化的に、社会的に、豊かになったがゆえに、生きるために必要なお金が増えてしまった。親と子どもの関係性も、仕事上のつながりや、居住を共にすることはなくなったから、子どもを持つ具体的な意味も無くなってしまった。 
     社会的に精神が成熟してしまった以上、それを実現するためのお金が必要なのだが、、、若者の所得は減るばかりだ。当たり前に子育てをするために、かかるお金が、こんなにも増えてしまったとはなぁ。日本人の精神性と社会文化に根差した、政策的支援が必要となってくる。

    ●本書を読みながら気になった記述・コト
    ■「『親が比較的豊かな生活水準を保っている』のに『自分が書来築くことができる生活は、親の水準に達する見通しがない』若者たち。なぜなら、彼らこそが、『子どもにつらい思いをさせてしまう可能性に晒されているからである』」



    ■少子化対策が空回りした直接的要因は、第2章、第2節で述べたように、①未婚化を問題にしてこなかったこと。そして、経済的問題を軽視したこと

    ■「日本社会全体の出生率というマクロな数字を動かすのは、『大卒かつ大都市居住者かつ大企業正社員か公務員』というキャリア女性ではない。『大卒でなかったり、地方在住だったり、中小企業勤務や非正規雇用者』の女性」


    ■「日本では、子の自立志向は弱く、特に女性(娘)の自立は不要との意識が、親の方にも本人にも強い。自立が不要どころではなく、結婚前の未婚女性が親元から離れて暮らすことは、良くないことと考える人もまだ多い」

    ■「南欧を覗く欧米先進国では、成人すれば、親元を離れることが原則である。男性だけでなく、女性にも経済的に自立することが求められる。」

    ■「欧米型の支援では、日本の少子化問題は解決しない。日本と欧米とでは、恋愛や結婚に関する考え方、とらえ方が大きく異なっているからだ」

    ■「夫の収入が高い場合、夫の方から離婚するためには多額の慰謝料を妻に支払う必要がある」

    ■「日本は、仕事を苦労して続けている女性よりも、仕事をしなくても豊かな生活をして、子どもをよい学校に通わせている女性を評価する社会でもあるからである」

    ■近代社会になって、子どもは労働力としての意味を持たなくなった。核家族が前提となって、老後の扶養や世話を期待することが難しくなった

    ■「婚活」というワードを生み出したのは著者である山田氏

    ■「収入が少ない男性は結婚しづらい」という説が差別的だとして、メディアではほとんど取り上げることができない時期もあった

  • うーん、そりゃそうなんだけど。対策取る気は国には内容だなあと思う。たぶん、状況を理解する気がないのだろう。

  • NDC分類 334.31

    「「1.57ショック」(1990年)から30年もの間、出生率が低迷している日本。当然の結果として、21世紀に入り人口減少が始まっている。欧米人からは「なぜ日本は少子化対策をしてこなかったのか」と驚かれる。一方、アジアの国々の人からは「日本のようにならないためにはどうすればよいか」と聞かれる。日本を反面教師としようとしているのである。家族社会学者である著者は、日本の少子化対策が事実上失敗に終わっているのは、未婚者の心と現実に寄り添った調査、分析、政策提言ができていなかったからだと考える。具体的には、欧米に固有の慣習や価値意識をモデルの前提にし、日本人に特徴的な傾向・意識、そして経済状況の変化を考慮しなかったのである。本書では失敗の原因を分析・総括するとともに、日本特有の状況に沿った対策は可能なのかをさぐる。」

    目次
    はじめに―「子どもにつらい思いをさせたくない」日本人
    第1章 日本の少子化対策の失敗
    第2章 日本の「少子化対策失敗」の理由
    第3章 少子化対策における「欧米中心主義的発想」の陥穽
    第4章 「リスク回避」と「世間体重視」の日本社会―日本人特有の価値意識をさぐる
    第5章 日本で、有効な少子化対策はできるのか

    著者等紹介
    山田昌弘[ヤマダマサヒロ]
    1957年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学

  • 欧米の様々な国々と日本の価値観を比較することで、なぜ欧米の少子化対策が日本で上手くいかないのか(日本の少子化対策が的外れだと感じるのか)理解することができました。自分はオランダ人寄りのマインドだと気づくことができました。

  • 日本で女性は仕事で自己実現をできないので、両立支援では不十分。仕事で成果を上げるよりも、子どもを良い学校に通わせることの方で女性は評価されている。

    子どもは生産財から消費財に変わった。
    子どもを育てること自体に意義があるという使用価値を重視する訪米。
    子どもの持つ価値が自分の価値になるという市場価値の日本。

    欧米の子育ては
    1.成人したら未婚者は一人暮らしとなる
    2.仕事での自己実現を目指す女性が多い
    3.カップルを求める感情が強く、恋愛感情があれば一緒に暮らそうとする(日本はお金重視)
    4.子どもを持つことの価値は子育てを楽しむことにあり、成人すれば子育ては終了
    (日本は結婚まで実家暮らし)

    日本社会の特徴3つ
    ・将来の生活設計に関するリスク回避の意識(中流から落ちることを嫌う)
    ・世間体意識(子どもがおとなになったらどう世間から見られるかを意識して行動。)
    ・強い子育てプレッシャー(子どもにつらい想いをさせたくない)

    沖縄の出生率が高いのは、親同士の助け合いがあるからだけではなはい。大学進学率、平均所得が日本最低レベル。中流層が薄く、非正規雇用が多い。離婚率が高く、ひとり親家庭や再婚も多い。そのため、維持すべき世間並みの生活水準が低く、子どもへの期待値が低くなる。

  • 少子化に気付くことが遅かった。
    若者の未婚化と若者の経済格差

    欧米の国々の特徴は
    ①子は成人したら親から独立して生活するという慣 
     習(若者の親からの自立志向)
    ②仕事は女性の自己実現であるという意識
    (仕事=自己実現意識)
    ➂恋愛感情(ロマンティック・ラブ)を重視する意
     識(恋愛至上主義)
    ④子育ては成人したら完了という意識

    一方、日本は
    ①結婚前の若者は、親と同居をしている人が多い。 
     そして、親との同居は、避難されることはない。
    ②仕事による自己実現を目指す女性は少数である。
     仕事を続けることよりも、豊かな生活をすること
     に生活上の価値を置く。
    ➂恋愛感情は重視されない。愛情であれば配偶者よ
     り子ども、夫婦であれば恋愛感情よりも経済生活
     を優先する。
    ④高等教育費用を含む将来にわたっての子育ての責
     任が親にかかる。それは、子供の将来を第一に考
     えているのが、親の望みでもあるからである。恋
     愛感情に身を任すよりも、これから育てるであろ
     う自分の子どもの生活、特に経済生活を第一に考
     える。だから欧米の少子化対策は空振りに終わる

    日本の少子化を語るうえでは、
    ①将来の生活設計に関するリスクの回避の意識
    ②日本人の強い「世間体」の意識
    ➂強い子育てへのプレッシャー 
    (子どもたちにつらい思いをさせたくない)

    日本の少子化を改善するためには、
    中流転落不安をなくす
    ①結婚して子どもを2,3人育てても、親並みの生活 
     水準(子育て水準を含む)を維持できるという期
     待を持たせるようにする
    ②親並みの生活水準に達することを諦めてもらい、
     結婚、子育てをする方を優先するようにする。

  • 欧米的な少子化対策が上手くゆかないのは、そのとおりかもしれない。

  • 勉強になった。個人的な感覚として、日本特有の少子化の原因となる考え方や価値観に共感できないところはあるが、大きな傾向としてはそうなんだろうと理解。だからこそ、「誰の意見を聞いて少子化対策を検討してきたのか」は、重要な振り返りポイントだと理解。
    「子育て自体に喜びをみいだす」と、「子供の市場価値によって親としての肯定感をもつ」の違いにはなるほどと思った。
    また、中流階級意識が少子化の背景にあるというのも新発見。とくに、親の生活が安定していてそれなりの環境を準備してもらった人が、経済的理由で子供を持つことを躊躇うというのは納得した。でも、この変化の激しい時代に、先の見えない不透明感や不安だけみているよりも、楽しんで乗り越えるマインドを持った方が良いと思うのだが、、
    人から下に見られたくない、というプライドというのはわからんでもないけど、これは日本人特有なのか?マウントとる、とかいうのも日本特有?このあたりは謎が残った。
    バックデータも豊富で、読みやすく勉強になる本だった。

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著者プロフィール

大阪府出身。京都大学法学部卒。華々しい英雄伝が好きですが、裏話的なテーマも、人物の個性をあぶり出してくれるので、割と嗜みます。著書に『世界ナンバー2列伝』(社会評論社)など。

「2016年 『童貞の世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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