正義を振りかざす「極端な人」の正体 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
3.36
  • (3)
  • (8)
  • (9)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 155
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334044954

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ◯新たなマスメディアであるネットやSNSのもつ根源的な特徴を正確に捉え、旧来のマスメディアによって、ネット情報が拡散されることにより、ネットにおける局所的な炎上が社会問題のようになる構造を示している。
    ◯ネットという一方向からの議論ができるツールにおいてのみ生じてしまう。双方向でのやりとりの中では、変な人と思われたり、会話が成り立たないため周りからも相手にされない。また、そのような状況だからこそ自分も自重するということである。
    ◯極端な人は、己の正義に従って他者に攻撃を加える、不寛容な人であるという。上記のツールによって、その特徴が強まり、さらには拡散されてしまうのだ。
    ◯この著者はここで終わらず、さらにそのための方策を二方向から検討している点に好感が持てる。
    ◯一つは被害者側に対する対応であり、もう一つは極端な人にならないための方策が示されている。
    ◯このような議論の展開は、まさに最新の社会学であり、若い人たちによって開拓される分野であるなとも感じた。

  • "炎上"や"クレーム"を起こす人々とそれを増幅させる社会的環境について、学問的考察を加え、その弊害(社会全体の萎縮効果)とそれに対する処方箋を示しているのが本書である。

    前半はネット炎上における実相を解き明かす。なかのひと的には「そうなんですよ、実は」という話が多かったが、それを多数の学者がきちんと定量的に分析していて、そのファクトをここで俯瞰で見れるのはとてもよい。
    つまりは炎上に参加する人たちはごく少数であり、そのごく少数がとんでもない量の情報を創り出しており、ネットの可視化効果(逆に言うとサイレントマジョリティが可視化されない効果)によってさもそれが世論であるかのような幻想を創り出しているメカニズムを解き明かされている。

    中盤は、その炎上がネットや匿名性だけによって作り出されているかというとそうでもない事実を解説している。特にテレビを中心とした"マスメディアとネットの共振関係"については、これもまたなかのひとの感覚からして的を得た指摘である。匿名性については、韓国が実際に行った"ネット掲示板顕名化法律"という壮大な社会実験によって実はその効果が極めて限定的であり、むしろ普通のあるいは良い意見等も委縮させてしまうという言論の自由の構造についての深い洞察がなされている。(ちなみにその法律は違憲判断がでて廃止)

    最後は炎上に加担したりクレーマーとなる人の心理構造(ある種の病理?)に迫り、そうならない為の処方箋を解く。つまりは炎上に加担する人たちはそれが自分なりの確固たる正義感に基づいたものであり、が故に匿名だろうが顕名だろうが正義の行使は行われ、その正義の感覚は実は個人的な別の理由(社会的不遇感とか私生活が上手く行っていないとか)に起因する事が多いとのことである(この"別の個人的理由起因説"だけ定量的なデータが示されていないのはちと残念だが)

    そしてそうならない為の処方箋として「情報の隔たりを知る」、「自分の『正義感』に敏感になる」、「自分を客観的に見る」等の"5箇条"を提示する。

    この五箇条は総じていえば""メディアリテラシーの涵養"ということだと思うし、自分なりのこの問題に対する対処策と合致していたのは自信を得たような気がする。無論、この本でも提案されているような国家ないし事業者による対策は不断の努力がなされるべきだと思う(特に全体の閲覧母数に対する極端意見の割合の可視化とかはやるべきだなと本書をみて思った)が、根本的な対処は人々がこういう極端な意見の人の発生のメカニズムをリテラシー教育を通じてよく理解して、気にしないとなることだし、それを起こしてしまう人もまた自己の心理的構造を客観的に理解して上記の五箇条などが心の中のビルドインされて起こさなくなることが、「いつの間にか炎上ってなくなっていたねー」という未来に繋がっていくように思う。

    いずれにしても高度情報化社会はまた緒についたばかりであり、サイバーセキュリティと並び最初に訪れたこの社会萎縮の増幅という試練を乗り越えてこそ、より有益なネット社会は訪れるであろうし、乗り越えるためにこのような本質的理解の一助となる読みやすい良書が出回ることは重要であるように思いました。

    追伸:本書において画竜点睛を欠いているのは、正義感を振りかざす個人の他に、炎上をビジネスにしてしまっている事業者とその手法の存在とがある点の言及なり考察なりだと思います(若干フェイクニュースの項で触れられてはいるが)。この弊害もかなりあると思うので、ぜひ重版の際には追加の考察をお願いします。

  • とっても面白かった!
    ツイッターやSNSで誹謗中傷を書き込む人たちの「正体」が、ちゃと分析して書いてあります。ずいぶん前に「ウェブはバカと暇人のもの」という新書を読んで、これもかなり面白かったけど、本書の分析ではウェブで誹謗中傷を書き込んだりしている人は決して「バカで暇人」ではない。「今時の若者」が暇つぶしでやっているわけでもない。意外にも、社会的地位があり、経済的にも余裕があって、決して暇じゃないはずの管理職のおじさんだったりする。
    また、「炎上」とは、個人や企業に対して多くの人から批判が集まって収集がつかなくなる、というイメージがあるが、ちゃんと分析してみると「炎上」のきっかけになる書き込みをしている人たちというのはほんの数名、多くてもせいぜい十数名とかで、その批判をテレビなどのマスメディアが面白おかしく取り上げることによって本当の「炎上」が起こっているのだ。
    だから、誹謗中傷が飛び交い、人を傷つける(時には死に追い込む)ことがあるのをネット(ウェブ)のせいにし、ネットの匿名性を嘆いたりする意見をテレビで見るが、実はテレビが一番悪い(ネットに責任転嫁している)、みたいな。
    第3章までは、インターネットが普及して誰でも情報を発信できる現代社会で、どうしても「極端な人」が力を持ってしまい、本当はそうではないのにその極端な意見があたかも「みんながそう思ってる」みたいに誤解されてしまうシステムがよく分かる。
    第4章では、では「極端な人」に対して社会がどう対処すべきか、具体的かつ建設的に提言してあり希望が持てた。いろいろな具体的な方法があげられており、著者ご自身が「日本リスクコミュニケーション協会理事」というような肩書きをお持ちなので、本書に記された具体策は本当に実践される可能性も高いのではないだろうか。
    私自身もメディアリテラシーの教育に携わる立場なので、とても参考になった。
    あと、統計分析って面白いなーと思った!

  • 肌感外れてることは書かれておらず普通な感じだった。

  • 「極端な人」が増えているような気がするのは、この正体のせいか。昔からいたのだろうが、ネットで下手に発信するから鬱陶しくなってきたような気がする。

  • 「極端な人」にこそ読んでほしい。

  • 数字や具体的なエビデンスを用い、説得力のある話です。また「クレーマーは特別な人ではない」という話はわかりやすかった。
    ネットを扱う皆さんに読んでもらいたい一冊。

  • 「「ネットが普及してまだ数十年しか経っていない」のであり、我々はまだ情報社会の黎明期にいる」、産業革命でも序盤は児童労働など労働環境が酷かったが、だんだん改善された、というのが、本書で私が得たもの。過度な楽観はよくないが、過度な悲観もよくない。インターネットの環境も改善されると期待し、私も少なくとも足を引っ張らないようにしたい。

    「「極端な人」というのは、己の中の正義に従って他者に攻撃を加えている、不寛容な人」で、面白いとかストレス発散とかではない。
    私自身がそうならないために、とくに気をつけようと思うことは、自分の見える情報には偏りがあることを意識すること、自分の言動において「正義感」を使わないこと、他者を尊重すること。

  • 「極端な人」がどのような属性で、彼らはどのような社会の中で生まれてしまったのかを、調査や科学的分析で読み解いていく書。これまで断片的に見聞きしたことのある話もあったが、改めて整理して冷静に読むことができた。(今こそ読みたいタイミングだった)

    炎上や過度の誹謗中傷は特定のプラットフォームの問題ではない。ネットという社会は拡張する機能で、本質は、個々人の自尊心や、モノの見方、他人への姿勢の問題。

    いままで「正義の反対は正義」という考えかたで見ていたが、もはやそこで思考停止してしまうことも、実は正義を言い訳に不満をぶつけたい人の行動を正当化してしまう可能性もありそうだ。とても難しい。

    社会でどう対処するか?の章、"一歩間違えれば権力を持った人による言論統制となりかねない、バランスの難しさ"は、企業の外からはなかなか察することのできない課題だろう。
    緩める、厳しくする、どちらか一端の取り組みだけを取り上げて企業側の取り組みを否定したくなる人も多いと思うので、企業側も、ほんとうに健全な言論空間を作りたいと思うならば、取り組みの開示、透明化を勧めていくのがよさそうだ。(ただし詳細に明かすとハックされるのでその開示・非開示も難しい)

    リテラシー教育は、生涯に渡ってうけられるといい気がするんだけど、そういう機会を提供しているところはなかなか無いし、凝り固まったプライドを持つ人は再教育の場に来ないだろうなと…。
    自分自身が極端な人にならないことはできても、どうにか身近な人(親や友人)の「極端化」を防ぐ方法があったら知りたいところ…。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/533476

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

山口 真一(やまぐち・しんいち)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。博士(経済学)。専門は計量経済学。研究分野は、ネットメディア論、情報社会のビジネス論、プラットフォーム戦略など。「あさイチ」「クローズアップ現代+」(NHK)や「日本経済新聞」をはじめとして、メディアにも多数出演・掲載。組織学会高宮賞受賞(2017年)、情報通信学会論文賞受賞(2017年・2018年)、電気通信普及財団賞受賞(2018年)。主な著作に『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)、『ネット炎上の研究』(勁草書房)、『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(勁草書房)などがある。他に、日本リスクコミュニケーション協会理事、海洋研究開発機構(JAMSTEC)アドバイザー、グリー株式会社アドバイザリーボード、東洋英和女学院大学兼任講師などを務める。

「2020年 『なぜ、それは儲かるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山口真一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
出口 治明
アンデシュ・ハン...
ジェームス W....
有効な右矢印 無効な右矢印

正義を振りかざす「極端な人」の正体 (光文社新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×