宇宙に行くことは地球を知ること 「宇宙新時代」を生きる (光文社新書)
- 光文社 (2020年9月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334044978
感想・レビュー・書評
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野口さんの3度目の宇宙飛行前の対談。
表紙と題名からはちょっと想像できない内容だったが、野口さんの語られたこと全てがとても貴重で深いものだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
NY在住のミュージシャン・矢野顕子さんが、宇宙飛行士・野口総一さんに宇宙のことをたずねる対談本です。矢野顕子さんは宇宙に行きたくて行きたくて、宇宙飛行士になるために必須の「水泳」を、それまでは金づちだったのにがんばられて習得されたそうです。宇宙に関する知識・情報集めや勉強も盛んで、だからこそ、野口総一さんに対する質問が初歩的だったり表面的だったりせず、そればかりか質問自体からも教えられるものがあるレベルにありながら、そんな低くないレベルの質問に答えてくれる野口さんの発言も真正面から真摯なものなので、お互いのやりとりに読ませるものがあるのでした(たぶんに、お二人から様々な方向へ飛び交う言葉を、うまくまとめられた林公代さんの腕あってのことでしょう)。
本書による宇宙飛行の知識。たとえば、宇宙服は約120kg。同僚に手伝ってもらいながら、約三時間かけて着込むそう。行われる船外活動は約7時間が限度。酸素やバッテリーの限界があるからです。そして船外活動を行う、宇宙ステーションの外である宇宙空間は絶対的な「死の空間」を意識せざるを得ないのだと。そういったところから、あまり知らなかった宇宙飛行士の内面的なところなどをも知ることができます。
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宇宙空間に出た途端、「ここは生き物の存在を許さない世界である」「何かあったら死しかない」ことが、理屈抜きにわかります。(p76)
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物がぶつかっても音がなく、周りには生き物の気配はまるでなし。そして、一切の命を拒絶する、絶対的な闇がある。ゆえに、「死の空間」だと即座に感じられる。
船外活動の訓練は地球でもプールの中でたくさんの時間を使って行われているそうです。それでも、実際に宇宙空間に出るとほんとうの無重力にとまどってしまうといいます。たとえば手や足を伸ばしているのか縮めているのかも、重力を感じていないためにわからなくなる、と野口さんはおっしゃっている。また、45分毎に昼と夜がやってきます。そのため、宇宙服の冷却装置のON,OFFや、ヘルメットのバイザーの上げ下げを繰り返さないといけない。これらは、船外活動ならではの体験でしょう。
宇宙飛行士チームの話もおもしろかったです。「結果が出せない人は価値がないのか」という行き過ぎた能力主義の話から続いていく話だったのですが、弱さを見せ合えたチームのほうがうまくいくのだ、と。このあたりでは、東大先端研のアスリートや宇宙飛行士の当事者研究として「安心して絶望できる人生」というすごい言葉が出てきます。結果が出せなかった自分は価値がない、と絶望することがあると思いますが、そういうときの追いつめられた絶望はほんとうにつらいです。でも、「安心して絶望できる人生」というのは、絶望をチームにみせてよくて、チームもその絶望を包摂してくれる。こういうイメージというか、モデルというかは、復活するチャンスにあふれていて、生きやすいだろうな、と思えてきました。
あと、おもしろかったのは、イーロン・マスク氏率いるスペースX社をひきあいに、日米のビジネスモデルや研究開発モデルを比較したところ。日本の現状としては、どうも石橋を叩いて橋を渡ってばかりいるきらいがある。それが進んでいくと次のようになるのでは、と野口さんは指摘するのです
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結局一番安全なのは、橋を渡らないことになってしまう。あらゆる挑戦は避ける判断をするほうが楽なんです。リスクがないから。(p197)
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これって、僕の生活範囲にもありふれていて、この文章を読んだことで「これって、日本的な問題だったんだ!」と目からウロコでした。こういうことを言ったりやったりするのって、個人単位の問題じゃなかったんですねえ。
というように、抜き出し書きの感想を書くと、以上のようになります。いくつかの大きなテーマに沿って本書は進んでいきますが、その箇所その箇所での話のふくらみ方が豊かですし、なんというか知的好奇心を刺激してくる楽し気な対談になっていました。宇宙から、そして宇宙体験から、それまではまったく視界の外だったような知見が得られます。ほんとうは実際に宇宙旅行をみんなが経験できると、みんなの価値観がわーっと花開くのでしょうけれども、なかなかそうもいかないので、そういった新たな体験や価値観のちいさな欠片を本書から拾うことにしましょう。 -
とても面白く充実した対談集だった。熱意あふれる野口聡一さんの語り口、純粋で聡明な矢野顕子さん…お2人の対話に引き込まれ、宇宙の「いま」に触れることができた。対談をコーディネートした林さんという方の編集もまた素晴らしいんだと思う。
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最近のニュースで、日本人初の宇宙飛行士秋山さんが〈宇宙よりも土いじり〉みたいなことを言われていたのが印象に残っていて、ふと、人間は「土から離れて生きられないのよ」という『天空の城ラピュタ』の有名なセリフを思い出しました。(あ、いえ本書はとても面白かったので決して誤解されませんように)
感想
1.宇宙飛行士のリアルがよくわかった
2.人間の〈業〉も改めてわかった
3.地球で生きる意味も考えた
◯ ◯ ◯
「闇が襲ってくる」とは宇宙飛行士ならではの表現じゃないでしょうか。自分は高所恐怖症なのでそこまで宇宙に行きたいとは思わないのですが、野口さんは、そこは未知の世界だからと言い、矢野さんは、国境がない宇宙でピアノを弾きたいと言います。(矢野さんは宇宙に行くため苦手な水泳を克服さえします。このように夢を持ちながら、より良い生き方をしていくことはとても意味があると思いました)
しかし、国境はなくても「宇宙開発」という新しい〈争い〉が中国やロシア、アメリカなどの間で(ここでも)始まっていることにも触れられています。人間は未知の世界を開拓してここまできたので開発は止められないでしょう。
願わくは、夜空の星たちが戦場となりませんように、子どもたちにまだ夢を与える場所でありますようにと流れ星を探して空を見上げましたが曇りでした…。
願い事。 平和叶えて! 流れ星
(lem心の俳句)
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55歳で、宇宙飛行士として現役であられる野口さん。
そのモチベーションに触れることができました。
生きざまが格好いい。 -
宇宙飛行士の野口聡一さんとミュージシャンの矢野顕子さんの対談。
宇宙ビジネスの進化がここまで来てるとは!と驚きでした。
(お願いだから中国は余計なことしないで…と思ってしまった)
カーリングの吉田知那美選手の『私はオリンピックから帰還したけど、生還はしていない』という言葉の重みが印象に残りました。 -
"生き物の存在を許さない世界"が印象的。コロナ禍の現状も含め、宇宙にまつわるバックヤードが分かり面白かった。野口さん3度目の任務成功を祈りながら。
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「自分に過度の期待をしすぎない。ちゃんと食事をして休憩をとり、身体と心の健康を保つ。
何より大事なのは、遠くを見過ぎずに1日1日を積み重ねること。それが新しい道、大きな目標につながる」
野口さんの最後のメッセージはとてもシンプルだけど、激動の今の時代にとても大切なことのように思う。
矢野さんの宇宙愛がすごい。ぜひ宇宙でピアノを弾いてほしい。宇宙が人の情緒にどのような影響を及ぼすのか、これからの時代、文化人たちもどんどん宇宙に行ってほしい。
宇宙勉強3